« 24 談合問題の本質 | トップページ | 26 大義に潜む危うさ »

2005.12.06

25 建築業界体質

耐震強度偽装の多発事件は,危険な建築物を世に出さない,と言う仕組みが,全く機能していない事を,絶句する程に露呈させた.一件毎に検査を義務付けた厳重な制度がむなしくなる,深刻な問題を突きつけたのである.改めてこの制度や問題点を整理してみた.

①こんな責任重大な仕事にもかかわらず,建築基準法では,建築士の違法行為の処罰は極めて軽く,検査機関の瑕疵責任や罰則は無い(検査を役所もやっているからか)

②瑕疵責任は契約責任として販売主にのみ存在し(無過失責任),設計,施工,の責任は民法による不法行為責任にゆだねている

③建築物は不動産と言う事でPL法(消費者保護を目的とした動産の製造者責任法)の適用は無く,瑕疵責任を負っているのは販売主

④建築物は経年劣化するからかPL法を非適用としているが,理由が曖昧であり,これに隠れて,建築業界に甘い罰則規定になっている感は得なめない

検査機関が機能せず,危険物を合法化する機関となり,販売主,関係企業は責任を負う能力もない.

⑥購入者に巨額の負担のみが残り,退去命令が出される,行政も個人への救済策に限界がある.

⑦最終的に建築確認をした行政の責任,賠償に行く,又,関係者間で複雑な訴訟合戦が展開される.

⑧建築業界は地盤,地質,液状化,基礎工事あるいは建物のバランス等と耐震強度の関係にファジーな事があり,安全対策より,費用の意識が勝る風土が過激な競争の中で助長され,検査機関の通過を契機に,これを加速させた.

⑨耐震基準に合わない建築物が現実に多く存在している事も,遵法精神を弱めた.

⑩問題が発覚した時の責任を検査機関に問える余地を残す為に,設計主,施工主,販売主が違法性に気づいても,指摘する風土が無い,検査機関は甘い方が業界に都合が良いと思っているふしがある.

⑪地震はいつ発生するか分からないし,10年先で瑕疵責任が消滅しているかもしれない.会社もどうなっているか分からない.

⑫地震が発生し倒壊したとしても,設計との因果関係を立証する事が困難になり,ましてや,震度7以上で倒壊すれば,不法建築がうやむやになる.過去の震災で業界の瑕疵責任や損害賠償責任が発生していない事から,安全に対する経営感覚が薄い.

と思わざるを得ないのである.鉄筋以上に,基礎工事やコンクリートの質,量も手抜き工事も,’知らぬが仏の業界’なのかもしれない.業界体質の徹底解明と厳格な制度作りが必要である.

この事件に対する行政の対応は牛のBSE検査並みに全棟検査を改めて,やれるのか,何万棟も違法建築が出て,退去命令を出さざるをえなくなって,瑕疵責任も取れなくなって,住民はパニックになって,政治も行政もトラの尻尾を踏んだような,藪をつついたような状況となり,収集が付かなくなるのではないかと,放心状態に陥る可能性を秘めているのである.徹底的に調査をするのか,適当に幕引きするのか,行政の考え方が問われるのである.

すぐ取組むべき事は

①今回,今後も含めて,被害者救済策,業界の保険制度の検討

②建築物の安心安全の検査基準の再設定,徹底方法の検討

③建築物に関する専門裁判所の設置と迅速化の検討

④災害以外の退去命令と購入金額の返却のセット化の検討

最後に,この事件を契機に,社会の安全安心の関所である全ての検査機関.(企業・行政の会計監査,食品・薬品の検査,車・鉄道・飛行機等の検査,医療診断etc)を洗い出し,その在り方を見直す必要がある.そして,社会の関所に情報装備(データーベース&ネットワーク)の充実,定年退職者の能力活用が必要だと思うのである.

.

|

« 24 談合問題の本質 | トップページ | 26 大義に潜む危うさ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134518/7495120

この記事へのトラックバック一覧です: 25 建築業界体質:

« 24 談合問題の本質 | トップページ | 26 大義に潜む危うさ »