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2006.01.18

28 偽装問題への思考力

耐震強度偽装問題に対し,当コラムで,その本質,対策等を述べたが,マスコミや国会審議(参考人喚問,証人喚問)を見ていても,いっこうに前進していない.視聴率主義のマスコミ,スタンドプレーの代議士から,衆愚政治の様相を感じるのである.今後の為にも大事な点は

①賠償問題(賠償能力問題,国の賠償責任の有無
②退去命令を出した後の行政の支援範囲と法制度
③再発防止策(新建築法制度,検査機関のあり方)

の3点である.国会議員からも識者,マスコミからも主張が聞こえてこない.証人喚問をやらないと,これらの策が見えてこないのだろうか.犯人探しに熱心な喚問の質問者に,この3点の所見を聞きたいのである.国交省委員会でこの3点の議論を早くして欲しいのである.被害者も国民もこれを聞きたいのである.もちろん誰が悪いかは司法に任せればよいのである..

建築物や業界の不確実性にどのような法律で望むのか,責任の無い現検査機関の在り方をどうするのか,無過失・過失責任による賠償が履行できない時どうするのか,退去命令に伴う行政の対応に係る法制度をどのように考えるのか,消費者保護のPL法並みの制度が必要ではないか,罰則が軽い現行法でよいのか,問題だらけである.早急の検討が必要である.今後も起こる問題なのである.

ところで賠償問題であるが,長期大量に見逃してきた検査機関の責任から国の’賠償’は避けられないと思う.天災被害者への’支援’とは違うのである.個人財産へ税金を使う話とは違うのである.国は購入価格から償却費を除いた額を賠償し,その後,賠償責任企業から賠償金を少しでも回収する方法が必要と思われる.

建築基準法では検査機関の賠償責任は無いとしているが(これが大問題),これを突破できる方法を識者は考える必要がある.販売主は無過失責任があり,刑法抵触いかんに係らず,賠償責任があるが,しかし,その賠償能力は期待できない.

常識的に言えば,住民と販売主,販売主と検査機関・設計・施工業者の訴訟が展開され,販売主は賠償を得て,住民に賠償金を払うスキームとなるが,多分10年はかかる.しかもその結果,国以外は賠償能力はすでに無い事態が想定される.従って上記スキームが必要になる.ローン返済は賠償金が決着するまで停止する方法も検討する必要がある.

賠償金が取れない場合,泣き寝入りしかないとするなら別だが,被害者への賠償をすみやかにやるために,

①国の責任とする理屈,
②国が賠償金を一括して代行払いする理屈
③決着するまでローンを停止する理屈

が緊急の取り組みだと思うのである.(建築基準法の改訂案は前回のコラムにあり省略)その意味で販売主が瑕疵担保責任履行の為に建築確認をした国の責任を訴えている事はスキームとしては当然だと思うのである.

又,被害者は販売主の詐欺罪,宅建法違反を訴追しても,賠償をしてもらう可能性が大きくなるわけでもない.むしろ手にできる賠償額が減る可能性がある.販売主が得られる可能性のある賠償額が減るからである.

偽装問題の教訓は自由社会に必要なチェック機関の問題である.建築に係らず、薬,医療,証券,などトラブルの未然防止の仕組みが必要である.それを実現するために,あらゆるチェック機関が過失責任,無過失責任の取り方を総点検する必要がある.もちろん行政機関も例外ではない.責任の無いチェック機関は間違いを正当化する機関になる可能性を秘めている.政治家にはスタンドプレーや政争に明け暮れている時間は無いのである.

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