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2006.03.15

41 会社と社員の変貌

農耕民族の特徴である村社会の文化が日本の産業経済の発達とともに,その集団文化が会社に引き継がれ,それにともなって帰属意識が地域から会社に移って行った.同時に自分の職業意識より帰属する会社を第一義に考える会社人間が増えて行った.

仕事も会社の中で割り振られ,ジョブローテーションが行なわれる.組合もユニオンショップ(会社組合)の形態になって行ったのである.この会社人間の猛烈振りが戦後の復興を支え,まさに会社社会を作り出したのである.

一方,バブル崩壊後,肥大化した企業の脆弱性があぶりだされ,個性や優位性の競争,産業構造のフラット化が急速に起こり,企業や産業の再構築時代に突入した.年功重視の伝統的な人事制度にも成果・能力主義が導入され,社員は数値責任と専門性の発揮を求められるようになった.

当然,自己啓発は当たり前,教育に会社が面倒をみる時代ではなくなったのである.まさに企業も個人も経済の荒波に身をさらすレース的競争(皆が良い成績を出せる競争)からゲーム的競争(勝ち負けの競争)に変わって行ったのである.

卑近な例としてチェーンストアーをあげてみる.チェーンストアー(GMS)は呉服屋,衣料屋,家具屋,雑貨屋,魚屋,八百屋,肉屋,菓子屋等の個々の商売を包含した小売企業組織であるが米国のチェーンストアー理論を輸入して企業化された.セントラルバイイング,セルフ販売,マニアル化,システム化による,購買力の向上,ローコストオペレーションの実現である.これによる多店舗化,大量販売を可能とし高度経済成長の波にのって拡大していった.物流も含めた流通革命を起こしたのである.

バブル崩壊で拡大路線の崩壊,消費の低迷,競争企業の台頭,消費者ニーズの変化などによって危機的経営状況に陥った.大量仕入大量販売の経済成長時代のビジネスモデルが大きく見直される事となったのである.又回転差資金(仕入と売上のサイト差)や出店・改装が止まった時の自転車操業的経営のもろさも露呈した.さらにデベロッパー等への拡大路線も巨大な負債を残す事になったのである.

小売業界では産業再編成やリストラを経て,生鮮3品(魚,肉,野菜)と惣菜に経営の重心を戻す動きが始まった.地産地消,店内加工,対面販売,地元密着,商品郡別縦割り組織の見直し,など元来の店主体の八百屋,魚屋,肉屋への回帰現象である.

この方針を突き詰めると,当然,職人的社員の育成,人事制度,組合制度,仕入と販売の権限と数値責任,店長の役割り,インショップ制度(企業内企業制度,惣菜屋カンパニーによる全店舗展開の発想)等,従来のチェーンオペレーション経営を根幹から揺るがすテーマに突き当たる.

まさに,物あまり,顧客ニーズの変化によるチェーンストアー理論の終焉である.又,専門性の追求は会社への帰属意識から,肉屋をやっているとの職業意識に変化する事になる.就職もアルバイトも会社選択から職業選択に移る事になるのである.

厳しいゲーム的競争社会では,どんな企業でも専門性の追求はきわめて重要である.しかし経営者が社員に'専門家になれ,成果・能力で評価する’と言っても'勉強しろ,数字をあげろ',といっているレベルであったり,単に年功賃金を抑制したいレベルであれば専門性の追求は難しい.

真に専門家集団を形成したいのなら,チェーンストアーの例と同じように会社の組織制度,人事制度,組合,社員の意識,採用制度などのテーマに行き着くはずである.優遇を伴う専門職制度や職種別組合のような改革が必要になる.

しかしながら大企業における職業意識の向上には大きな課題がある.例えば職業意識は下請けにあり,社員はゼネラリストばかりであったり,人事異動の問題もある.専門職制度も管理職制度の亜流に位置付けられるケースもある.

そこで専門分野の分社化で特化する事も一つの方策となる.この意味で総合から専門へ,大きな組織から小さな組織へ,が大企業の活力と人材育成を促す方向だと考えられる.終身雇用の弊害を少なくする為にも必要である.

一方,中小企業は職業意識や専門性発揮に組しやすいと思われる.中小企業はそれが企業存続の柱であり,機動力も発揮しやすいからである.この特性をいかにフラットな産業構造の中で発揮していくかが重要となる.

産業構造のフラット化は専門性,機能性,効率性を持った特徴ある企業が多く存在する構造である.この縦型産業構造から横型産業構造へのシフトは中小企業の専門性の発揮によって加速するはずである.

さらに,専門性の発揮を目指す企業の組織は業務遂行と同時に教育機関としての役割りを高める必要がある.事業計画も活動計画も人材育成と連動していなければならない.その組織に所属している事で人材育成の方向をはっきりさせたり,育成を加速させることになる.そのような組織を作らねばならない.

その意味で会社全体が事業推進組織ではあるが人材開発会社と見えるようになるのである.学び,考え,切磋琢磨する風土が企業進化のエネルギーとなり,そのような会社に結果が付いてくるのである.専門性が不要な企業など世の中に存在しないからである.

この改革と並行して,’量から質‘から’質から量’へ考え方を変える必要がある.質を高めるためにも量が必要だという考えが高度成長期にあった.現在はそんな余裕,リスクは取れない.質がなければ量展開をしてはならないし,なによりも量には繋がらないのである.それほど競争はシビアーなのである.商品やサービスを打ち出す時,その質を支える仕組み,技術をまず先行させるためにも専門性は当初から不可欠なのである.

一方,専門家の増強は企業を超えて業界にも通用する人材が多くなる.当然,従来の’人材はストック’の考えから’人材はフロー’の傾向に変わる.またM&Aも多くなる.従って,これに対する対策も必要になる.かくて,会社村社会,会社人間の風土が変貌していく事になる.しばらくは生え抜きだけの会社,転出転入の多い会社,など会社の風土は多様化していくと考えられる.

最後に専門性の追求は事業の方針と連動しなければ意味がない.事業の方針が定まっていないところに専門家は育たないのは当然である.経営者の最大の仕事である.企業の存在価値を改めて見定め,企業に存在するナレッジを再認識するところから方向性をきめることになる.又,方針いかんにかかわらず,総務,人事,経理,の仕事は資格取得や専門性がきわめて高く,事業経営の重要な役割りを持っている事は言うまでもない.

専門家集団の企業になる事は生き続けるためには不可欠である.しかし掛け声だけではなく会社を根底から改革していかなければ実現できないテーマである.その事に気が付いていない経営者が多いように感じられる.従来,専門家より会社人間集団で経営をやってきた歴史が気付きにくくしているのかもしれない.

フレッシュマンが社会に出る季節だが,将来,職業意識(プロ意識と実力)を持てるようになって欲しいし,会社もそれを実現する改革を進めて欲しいのである.ヨーロッパのギルド社会の歴史や風土を少しは取り入れたいものである.会社帰属人間から自分のスペシャルティを会社で生かす関係になって欲しいのである.そんな社会がもう始まっているのである.’自分ー会社=0’の人生は個人にとっても会社にとっても望まないはずである.

今後は,より専門性があり,それを実現する風土・仕組みがあり,社員の職業意識がある企業が確実に生き残っていくと思うのである.

従来の会社人間に代表される社員と会社の距離感が産業のフラット化や社員や企業の専門性追及とともに,確実に変わって行くと思う.

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