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2006.04.02

44 格差社会論議

91年のバブル経済崩壊(資産の暴落)が起こり,高度成長,右肩上がりの日本経済が終焉した.株価,地価,物価の下落,担保や債権の不良化,消費の低迷などによって経済が縮少し,建築業,金融機関,流通業などの倒産,統廃合が起こった.

保険や年金の資産暴落,右肩上がり前提の資産運営の崩壊,高度成長下で許容されたオーバーカンパニー,公共事業のムダ,公務員のやり放題,などが露呈したのである.あたかも湖水の水が引いたら,ヘドロやゴミだらけの汚い湖底が現れた如くである.好景気で慢心の国民に手厳しい見えざる手が下されたのである.

世界に類を見ない日本の戦後の経済復興,高度成長は借金,税金,貯金,保険の資金を集め,護送船団政策,公共投資,さらには,あらゆる分野での官業展開と言う明治以来の官主導の混合経済によって進められた.

多くの銀行が全国に支店を持ち,全国の郵便局が貯金を扱ったのも市中のお金を集める目的であった.貯蓄性向の高い,皆が同じを好む国民性が見事にこの成長モデルを支えたのである.発展途上国にも参考になるスキームだと思う.

問題は高度成長真っ只中でも,このスキームを続けた事である.高度成長期にこそ構造改革,官のスリム化,財政改革が必要だったが,崩壊するまで,地獄を見るまで,変えられなかった事である.官も民もバブルに酔って,借金を大きくしていったのである.

又,バブル崩壊後の経済危機に直面した時も,成功体験から更なる借金と公共投資による景気回復,ソフトランデングを望んだ.結果,更なる借金の山を作ったのである.

そして,資産の膨大な評価損の中で,規制緩和,会計の国際標準化(時価会計)の導入,企業のリストラ,産業再生政策,ゼロ金利等の金融政策,金融機関の統廃合,不良債権処理,等に着手し,5年をついやして,やっと経済の明るさが見えてきたのである.これも後世への貴重な教訓である.

さて,経済の明るさが見え始めた現在,’格差の拡大’を問題視する論調が多く出始めた.世界的に見れば日本は格差社会に程遠い国であるが,改革の中で格差が拡大しやすい経済環境になったのは事実である.皆が中産階級,皆が同じ,との伝統的文化は復興経済の終焉,経済的合理性の追求によって,必然的に発生しているのである.いくつか列記したい.

①5年前からの金利ゼロ政策によって,利息分の資金コストの激減,貯金から資産投資へのシフトが資産価値を高め,デフレ脱却に効果を上げた.明らかに貯金,間接金融から投資と直接金融の時代に変わったのである.この事は当然,貧富の差を生みやすくなる.皆が同じ金利を得る社会ではないからである.

②グローバル競争,低価格化によって,効率の追求,独自性の発揮,国際分業が加速し従来の縦型産業構造が維持できなくなり,横型産業構造に変化していった.フラットな産業構造は各企業が厳しい競争に身をさらす事になり,企業の格差が出やすくなる.グローバル化で海外進出が進むほど,国内に格差が生じる.海外企業をもっと受け入れ,雇用の確保が必要である.グローバルな自由主義経済は海外進出と海外受け入れが両輪となる.

余談だが,95年以降情報システムの革命が起こった.メインフレームをサーバーにノンインテリ端末をインテリパソコンにし,パソコンをクライアント(主人)にした処理方式が出現した.まさに中央集権から分権,フラットな構造,国際互換への移行であり,その後で起こる社会の変化と同じ事がすでに始まっていたのである.企業も個人も個の自立へ向かう事も格差が生じやすくなる.

③経済規模も大きくなり,技術革新が経済を引っ張る社会は企業も個人も貧富の差が拡大しやすくなる.完全雇用も難しくなる.貧困国家からの経済成長なら別だが,先進国の経済成長に伴う格差拡大を防ぐ方法はない.防ぐ必要もない.勝者が経済を牽引しているからである.

④経済社会の活力を発揮するために,結果の平等から機会の平等に軸を移す考えが出てきた.規制緩和が代表的例である.規制や利権で安定的秩序を保持する制度の撤廃である.無秩序になってはならないが,機会均等,フェアーな経済活動を促す狙いである.その結果として勝者,敗者が出るようになるのは必然である.

⑤個人の力量が求められる社会,発揮しやすい社会,個の自立と連動した社会,への移行は個人の経済的格差を生みやすくする.

以上のように,伝統的混合経済の日本は,従来より格差が出やすい経済環境に移ろうとしている.今後の日本経済を維持向上するための変化だと思う.日本の政治・経済構造や,成長のやり方を変えていく改革である.ここ数年,国民は多くの経済知識を得,見識と自立の意識が高まったと思う.価値観も変わっていくと思う.

格差は自由な経済活動の結果であり,格差拡大の問題は格差が大きくなる事が問題ではなく,敗者・弱者をどうするかの問題である.格差拡大に名を借りた改革批判,政治批判だけであってはならない.分配論を主張してもパイの低下を招いては何の解決にもならない.

持てる者と,持てない者で大きな教育格差,ひいては人生格差がでる傾向を大問題視している人もいる.戦前戦後などの格差からすれば,きわめて小さな格差だと思う.経済力によって人格,能力が高くなるなら結構である.勿論,経済力が弱くても人格,能力は高められると思うが.

地域格差の問題は自然環境,交通環境,経済立地環境による都市集中の結果である.地域発展は国力を高める上でも,住民にとっても重要であるが,どんなに公共投資をしても,都市集中が限界に来ない限り,効果は出にくい.経済的地域間格差の拡大は益々増大する.

マクロで言えば人口の移動は経済的にはきわめて合理的な現象である.又,地域への平等な税金のばら撒きは,ムダと不平等を生んでいるとも言える.財政改革の大きな課題である.

今大事なことは地域公共経済,地域社会主義経済からの脱却である.この視点でポテンシャルを伸ばすしかないと思う.又,過疎を防ぐ方策だけではなく,過疎を前提にした方策,過疎地を移転する方策,も必要なのである.

しかし,地域活性化に取り組めば取り組むほど,地域間格差は拡大していく必然性がある.経済や人口以外の多様な価値観が必要な気がする.

所得格差,教育格差,地域格差,等の問題は日本の過去,世界の後進国,発展途上国から見れば贅沢な悩みかも知れない.大事なことは格差の発生を認めた上で,これをどのようにモチベーションし,行動するかである.価値観も多様化することは悪いことではない.政治は不幸の最小化に努めるべきなのである.

富める人は大いに稼ぎ,アメリカのようにボランティア精神を発揮し,老人施設や病院を応援して欲しいのである.勿論この場合,税金から控除しても良いと思う.税金より寄付の方が無駄な投資にならないからである.貧した人は経済価値以外の価値観を持ったり,ファイテングスピリットや自営業で立ち上がって欲しいのである.

このように格差社会を肯定した上で,価値観やモチベーションを変えていく必要があるが,弱者支援策は今以上に大事である.特に現国民年金は,これで生活できる,との狙いで作られてはいない.年金・介護・医療・生活保護を合体した保障制度が必要だと思う.弱者支援制度はまさに国の鏡なのである.

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