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2007.03.27

89 百貨店の過去・現在・未来

百貨店業界の再編が話題になっているが,懸念される事について述べたい.

百貨店業界は長い歴史の中で,一定のステータスを築いて来た.同時に,百貨店商法も連綿と続けて来た.この百貨店商法は設備投資,催し,消化仕入,委託販売,派遣店員,テナント,外商,ギフト,中元・歳暮,返品,売り場毎の発注などが特徴である.総じて場作りに重点を置いて,その分,商品リスクを取らない経営手法と言える.

極論すると,百貨店商法は売り場を多くのテナントに提供し,その売上を自社売上に計上し,その売上から一定の利益を得るビジネスモデルである(勿論,直営売り場はあるが,その比率は会社の政策で異なっている).この意味で,百貨店の売上高は'取り扱高’なのかもしれない.(過去に売上の定義で議論を呼んだことがある)

この百貨店業界の売上は長い間,減少傾向が続いている.言うまでもなく,チェーンストアー,専門店,巨大ショッピングセンターの台頭もあるが,大きい要因は取り扱い商品が昔から固定的である点である.

家計支出の内容がデジタル家電,IT商品,レジャー,趣味,エクササイズ,車,などに移っていても百貨店の取り扱い商品は変わっていない.そればかりか,得意とする伝統的な家具,呉服等は減少傾向である.紳士服は品揃えが少なくなっている.ファッションは世界的有名ブランドが根強い人気である.社会の消費動向と売り場が遊離しては,売上減は避けられない.決して景気が原因ではないと思う.

百貨店経営の特質は設備投資(豪華な店舗,一等地,増床)や運営経費をまかなえる利幅がある商品しか扱えない事である.従って,ステータス等の付加価値をつけて,顧客に満足を提供する事が大事になる.必然的に客層も限定される.売上の拡大より,安定的な売上とステータスの維持が基本となる..

又,テナント依存から新商品開発や新分野への人材育成が行われていない事も原因であるように思う.時代の変化に取り残され,じりじりと'百貨店’が’百貨店'ではなくなって来た感じがする.

このような状況の中で,従来の百貨店商法を今後,どのように考えていくのか,が業界再編以上に重要なテーマだと思う.

アメリカでは昔から,小売業の業態は客層別,商品群別,に業態分化している.百貨店では,高額所得者と高級商品に特化している.

日本の百貨店は,顧客,商品,サービスのターゲットを鮮明にした方向で考えるのか,従来の商法を続けながら,高所得者層への更なる特化を進めるのか,の選択が求められていると思う.しかし,テナント依存の大きい百貨店は業態改革論議すら出来ないのかもしれない.

従来の百貨店商法のままでは,百貨店の売り場からどんどん商品がなくなって行くのか,テナントや納入業者が逃げて行くのか,あるいは,多くの世界のブランドショップが百貨店に結集されていく事になるのか、あるいは場を提供する不動産業に傾斜していくのか,など気にかかるところである.

百貨店業界の再編に際し,どのような事業コンセプトで展開されるのか興味が沸く.

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