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2007.05.06

98 宗教に見る自力と他力

宗教に関しては,全く無知であるが,断片的な話や神社仏閣を見るにつけ,其の壮大な理論体系や人間への影響力に感心する.物は言いようだと,つくづく思ったりもする.

多くの信者や観光客を集めるマーケテングの仕掛け(縁起,由緒,御利益,花,名園,札所,仏像,美術骨董品,歴史資料,建築遺産,門前町,など)も,大したものだと感心する.

一方,私事であるが,父が亡くなった時,’無’になった実感だけで,延々と続く儀式が,むなしく感じた事を覚えている.

宗教は言うまでもなく,往生の道,苦しさからの救い,秩序の維持,生活や儀式・歳時の様式,などの教えである.時として,決意や願望の聞き役にもなる.心の安らぎ,気の持ち方,行動の仕方を教えていると理解している.

御利益は信仰する心,行動によって,本人が感じるものであり,願掛けも本人の安らぎを得るものである.先祖への尊厳や来世の極楽や地獄を説くのは,現世の行動を戒める為に考えられた論理だとも思う.そして,神社仏閣,は神・仏と人間との接点の役割りを担っているのだと思う.

さて,宗教で言う'自力’は自らの努力で信仰し,修業し,行動して困難と対峙する事であるが,なんとしても,救われた気持ちにならない事がある.絶望感,失望感である.僧侶で言えば,どんなに難行苦行をしても悟り(静寂)が開けない状態である.

法然,親鸞(浄土真宗)は,このような状態に'他力’が必要だと考えた.宗教で言う他力とは阿弥陀仏であり,人間は他力の中で生かされていると,とらえたのである(他力本願).

従って,絶望,失望に際し,生かされていると気付く事が自力をもう一度よみがえらせ,絶望感が安らぐと教えたのである.大衆に対しては,只,お経を唱えれば,往生の道が開かれると説き,大衆に広く普及したのである.(私なりの理解)

軽薄に言えば,願望に,がむしゃらに向かう心は,ともすると,ますます苦しく,心がすさんで来る.他力を信じて,現状を認め,寛容になれば楽になる.と言う事か.

アメリカ(アングロサクソン)は,神との契約の元に’自力’で頑張る民族である.希望・願望が行動のモチベーションになる.その反面,苦しさは神が受けるとし,その苦しさを和らげるのである.自由,競争,自己責任の強い国ならではのメンタリティである.

一方,日本は上述の通り,’自力’が及ばない事に対して,現状を容認し,寛容になる事で心を保とうとする.あきらめたり,慰めたりする傾向である.日本的な悲観論,謙虚,感謝,忍耐,我慢につながるメンタリティかもしれない.

この様に,世界の宗教はそれぞれの民族の環境に応じた生き方のバイブルであり,其の徹底の為に,神・仏,先祖,来世とリンクした論理体系を作り上げたのだと思う.

しかし,古代の宗教の論理体系は今となっては無理があるように感じる.宗教の形式,様式の意味はあっても,昔ほど,心の問題,人間力向上につながっていないのではないか,との問題である.

そこで,今後の宗教および心の支えについて,三つの方向があると考えられる.

①歴史遺産,冠婚葬祭の様式,お祭りや歳時などとして存続する.(古典文化)
②教義を現代風に改革し,存続する(新宗教)
③宗教に変わって,人間力や行動を律する教えが出てくる.(道徳・倫理など)

このように考えると,①は今後,顕著になる傾向だとすると,人間力の向上の為に③が大事になる.

例えば,人間,人生,先祖,お墓,親,兄弟,友達,地域,国家,学校,文武,友情,自由,平等,競争,和,奉仕,貧富,死などに対する考え方,行動,マナーである.一律にはならないと思うが,選択可能な指針があれば,人間力を学べると思う.現在,既に存在する多くの教えを集大成するだけでも立派な指導書となるに違いない.

もはや,心の問題を政教分離,宗教の自由などと宗教に丸投げしている場合ではなく,現代にふさわしい,指導書が必要ではないかと感じる.神,仏,先祖,来世を持ち出すまでもなく,人間の行動を律する教えがあって良いのではないかと思う.

ところで,仏教,道教,儒教,朱子学などの教えが,現在の中国で,どの程度思考や生活に溶け込んでいるのだろうか.共産主義が消してしまったのだろうか.政治,経済ばかりが話題になるが,中国人のメンタリティについて,ほとんど聞く事はない.中国人を理解する上で是非,知りたいものだ.同じく,共産主義を取ったロシアについても,其の国民性を知りたいと思う.

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