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2008.02.10

127 米大統領選挙制度

現在,アメリカでは大統領予備選挙がヒートしている.米国内の選挙ではあるが,世界に与える影響が大きいことから,人物,政策は世界から注目されている.一方,私も含めて,意外と選挙制度がよくわからないと言う人は多い.今回,調べてみても,素朴な疑問に答えてくれる資料がないように思う.そこで,自分なりに理解した内容を簡潔に整理してみた.

大統領選挙は各党の立候補者を決める予備選挙と各党の立候補者の中から大統領を選ぶ本選挙がある.制度の理解がしずらい点は次の3点だと思う.

①類似している予備選挙と本選挙の制度が混同されやすい事
②州の独立性から,制度の上では間接選挙制度をとっている事
③日本の様に住民台帳から選挙人名簿を作る律令国家ではない事

予備選挙は党の統一立候補者を決める仕組みである.最終的には党大会で決まる.全国区選挙のように,州の頭越しで,直接選ぶ形をとっていない.本選挙と同じ様に,投票によって州毎に代議員(DELEGATES)を選び,党大会で代議員が統一候補者を選出(候補者指名)する形をとっている.州の独立性,連邦国家の精神を取り入れているのである.

ところで,代議員は,州の勝者陣営の人,州党集会で選出された人,党の幹部(現職議員など)で構成されている.従って支持候補を拘束されていない代議員がいることになる.この非拘束代議員は選挙結果が接戦の時,キャッシングボードを握る.どちらが他党の候補者に勝てるか,などの判断が働くのである.

設定されている州毎の代議員の数(拘束,非拘束)は政党によって違うようである(未調査).選挙結果にもとづいて,州毎に,この設定人数を得票数で比例配分するか,第一位が総取りするかも,党によって違う.

この代議員は候補者の熱狂的な支持者だと思うが,州で勝って,党大会に出席する栄誉を得る為に,代議員になる戦い(選挙,集会)がある.予備選を盛り上げるもう一つの行事である.

予備選挙は長期間(5か月)かけて全米で行われるが,国民の意識,候補者の考え,候補者の淘汰などを促しながら,勢力の支流を大河のうねりに変えて行く,候補者の風格をつけて行く期間であると言える.

又,全州同時に選挙が行なわれるわけではないので,後半行われる州は,態勢に影響がなくなったり,逆にキャッシングボードを握ることもある.有権者も,これまでの選挙結果の影響を受ける.従って候補者の選挙戦略は極めて大事になる.全州の選挙スケジュールは歴史的に決定しており,最後まで盛り上がるように設定している(大票田の州をちりばめている)感じである.

選挙後,7月,8月に開催される各政党の党大会で統一候補者が決定され(候補者指名),11月の本選挙に向けて,政党間の選挙戦が展開されるのである.

ところで,米国の有権者とは18歳以上で自己登録した人である(条件はあるが).又,事前に支持政党を登録する事(党員登録)もできる(しなければ無党派).20歳で自動的に有権者になる日本とはまったく違う.

自己登録された有権者の情報は州の選挙管理部門で管理されているが,あくまでも申請主義である.日本は自治体の住民情報から選挙のつど,選挙権保有者を抜き出し(大変な仕事であるが),有権者に投票案内が送付される.

各党の予備選挙の参加者を自党員に限定するか,他党員や無党派も許すかは州によって違う.もちろん,有権者の投票は一回だけである.予備選の投票率は20%程度(算出方法は未調査,全有権者の各政党への投票者数の比率か,党員数と投票者数の比率か)と言われているが,党内の選挙であり,本選挙と比べれば窮めて少ないのは当然である.ちなみに,2004年の本選挙の方は有権者約2億人,投票率51%であった.

本選挙(一般選挙)も形の上では選挙人(ELECTORS)を選ぶ間接選挙である.各政党は州ごとに設定された選挙人分(上下院議員数)の選挙人名簿を作る.各州の有権者は立候補者,政党ではなく名簿を選ぶ形をとる.選挙は全州同時(11月第一月曜日の翌日)に行われる.州ごとに選挙日が設定されている予備選とは違う.

そして,名簿が選ばれる事によって,勝者は州の選挙人をすべて獲得することになる(総取り方式).選挙区ごとに選ぶ州もあるが,州の独立性の観点から,州の意見を一本化する総取り方式が一般的である.法的には代議員が支持候補者を拘束されているわけではないので,12月,選挙人による大統領選出が行われる.しかし翻意する選挙人は過去にはなく,本選挙の結果で大統領が事実上決定し,1月20日就任することになる.

このように,予備選挙でもそうであったが,本選挙は州の独立性,連邦国家の精神から,州の頭越しで国民が直接大統領を選ぶ形はとらず,勝利した州の選挙人の数を合計して,競うのである.当然,選挙人数の設定が大きい州の勝利は優勢になり,選挙戦略の腕が問われるのである.

ちなみに,本選挙の選挙人は現在,538人を51州に割り当てられている.大きい順はカリフォルニア55人,テキサス34人,ニューヨーク31人,フロリダ27人,イリノイ21人,オハイオ20人,など,最小は3人で7州ある.2大政党なので,270人選挙人を確保すれば大統領になれることになる.

そもそも連邦国家である米国の各州の政治は,住民に判断を仰ぐ事が多いと言う.大統領選挙もこれと同じ様に,州としての大統領を誰にするかを住民に仰ぐ形をとるのである.

多分,大統領制をとる国の制度の中で,最も複雑な仕組みかもしれない.しかし,選挙の意識は高い国である.党員も広く国民に広がっている.選挙資金も個人献金で賄われる.この中に大統領選挙制度があるように思う.

以上が米国大統領選挙制度のあらましであるが,法制度と党の制度の範囲,代議員・選挙人メンバーの選び方,予備選挙時の拘束代議員の役割,得票数が同じときの処置,投票率や得票率が低いときの処置,選挙運動のルール,選挙資金や献金のルール,選挙違反の実態,など詳細は調べていない.ただインターネットやテレビ,マスメデア,出版物の使い方は日本では大きな課題であり,先行する米国のやり方を知る必要があるように思う.将来のデジタルデモクラシー(ITを屈指した政治・行政・投票等の仕組み)の姿を描く為にも.

ところで,現時点で民主党の予備選挙が接戦で,マスコミをにぎわしているが,静かに見える共和党との論戦(本選挙)が真の戦いである.政策色が際立ってくると思う.これに注力して行きたい.

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コメント

予備選の代議員と本選挙の選挙人を混同して記述されているようですが
ご指摘ありがとうございます.訂正いたしました.

投稿: jmicheal | 2008.11.03 10:44

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