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2008.02.28

130 偉大なるインターネットを語る

1995年のWINDOWS-95以来,たかが十数年で世界を覆ったインターネットの偉大さ,人類の英知,について,改めて,後世への記録として,自分なりに要約した.

日本経済の絶調期の80年代,絶不調期の米国でパソコン,インターネットが芽を出し始めた.IBMアーキテクチャーが世界のメインフレームを中心とした情報システムを凌駕していた時代の中で,この芽は多くの専門家の中でも,亜流と捉えられ,誰も今日の隆盛を創造し得なかったのである.

この隆盛は半導体技術の驚異的な進歩によるところ大であると思うが,それと呼応したいくつかの英知を上げてみた.

第一の英知は情報処理方式である.伝統的なメインフレーム(主機構)&スレーブ(奴隷)の考え方(集中処理方式)に対し,サーバー(召使)&クライアント(主人)の考え方(分散処理方式)を唱えた点である.言葉に主客転倒の考え方が現われている.

情報処理方式は国や企業の組織のあり方と類似している.この観点でいえば,日本のバブル崩壊以後,中央集権的社会の仕組みから分権的社会への転換,個の自立といった価値観の変化と併走するような変化でもあったのである.

第二の英知は従来のメーンフレームメーカーの排他的戦略(ハード・基本ソフト・業務ソフトとも)に対し,オープンアーキテクチャーの考え方,分業開発の考え方,を取り入れた事である.これでハード,ソフトの分離開発を可能とし,世界のスキル・パワーを巻き込んで行ったのである.世界的な規模でハード,ソフトそれぞれに専門企業が出現し,この考え方がデジタル革命をも牽引して行ったのである.

マイクロソフトの基本ソフトについて言えば,その戦略はプログラムの動作環境を提供する事にあった.これによって,データベースソフト,言語,メールソフト,汎用ソフトなどのミドルソフトや業務用パッケージソフトが世界規模で,一気に,このOS上で開発されて行ったのである.従来の排他的な,何でも自前主義で作るやりカを取っていれば,今日の隆盛はあり得なかったのである.

の二つの英知は,当時のメインフレームが主流の中で,高額なメインフレームへの挑戦から着想されたものか,あるいは,素朴に個人の利便性を追求した結果出て来たものか定かではない.いづれにせよ,その発想の意味するところは組織,大規模計算の為のコンピュータシステムから個人利用のコンピュータに視点を移した事にある.この発想がワープロ,表計算,DTPにとどまらない可能性を秘めていたのである.これを契機にデジタル技術開発の方向が個人に向う潮流(技術の大衆化)を作ったのである.

第三の英知は,ソフト・コンテンツの巨大化とハード・ネットの高速化・大容量化が相互に刺激しあって,進展した事である.市場性の大きさから,必然的な現象であったかもしれないが,人類にとって,きわめて幸運な事のように感じる.

例えば,,数メガの基本ソフトの開発段階では,それをインストールする為の媒体がなかった.(フロッピイはあったが,数十枚になり,実質,利用できなかった)しかし,その心配をよそに,CDが登場してくれたのである.現在でも,ハードデスク,フラッシュメモリ,DVDの技術革新がパソコン,テレビ,家電,産業機器などと一体となって進められ,新たなアプリケーションを生んでいるのである.

第四の英知はソフトがハードのデファクトスタンダード化を加速させた事である.マイコンが出始めたころ,CPUのアーキテクチャー論争に決着をつけたのは,基本ソフトであった.コンテンツがVHSやブルーレイを決めた様な事が既に始まっていたのである.

重要な事はシステム製品はデファクトの中で育つ事である.競合,乱立のフェーズをできるだけ短期間にし,アーキテクチャーのデファクト化を図る事が開発者にとっても,利用者にとっても必要なのである.特に日本は島国的,箱庭的,ものつくりに走りやすく,アーキテクチャーのデファクト化の視点を持つ事がきわめて重要になっているのである.

第五の英知はインターネットである.最初は大学という閉じた世界で考えられた機能であるが,上記の四つの英知と相まって世界的に発展し,情報化社会を作りだしたのである.特にインターネットの世界は政治的に統治者が作ったものではない事,事業者が事業として作ったものではない事である.逆に,そうでなかったから実現した事である.ここに過去にはない重要な発想が感じられるのである.

その中で爆発的に普及をさせた機能は①TCP/IP(通信プロトコール),②ブラウザー(表示インターフェース),③検索エンジン の3点だと思う.これなくして,人間の欲望(いつでも,どこでも,言いたい,見たい)を満たせなかったと思うのである.

①通信制御手順を階層化(電気的レベルからアプリケーションレベルまで)している中で,TCP/IPはその中間層(3層,4層)に位置し,宛先(アドレス)によるルーチング機能(アドレスにたどり着く機能)を言う.通信網との接点であるルーターに,その機能を持ち.世界のルータ-群があたかも世界の通信の交換機の役割を担っているのである.統治者のいない世界の通信網たるゆえんである.

このTCO/IP,アドレス表現(トリー構造)は,世界標準であり,そこに使われる世界のアドレス帳(ドメイン名とIPアドレスの対応表)は世界中に13個に自立分散され,信頼性,安全性,拡張性が確保されているのである.

利用者はこれによって,ネットワークから解放され,いつでも,どこでも接続が可能となったのである.メインフレームメーカーの排他的発想では考えにくいアーキテクチャーなのである.電子メールの送受信やホームページアクセスが世界規模で可能となり,その素晴らしさ,偉大さを改めて実感するのである.

②ブラウザーはコンテンツ(テキスト,画像,映像,音声,イメージ,デザイン,他の情報とのリンクなど)を再生・表示するアプリケーションソフトである.この表示ソフトの文法(HTML)に従ってコンテンツを作成すること(自動変換ツールもある)になるが,この文法が世界的にデファクトスタンダードになったことが,コンテンツ作成,閲覧を一気に広めたのである.これも又,メインフレームメーカーの排他的発想では考えにくいアーキテクチャーであった.

③検索エンジンは見たい,見せたいを繋ぐ機能であり,世界規模の膨大な情報(ホームページ)の中から,目的に合いそうな情報を引き出すアプリケーションソフトである.もちろんその方法に王道はなく,いかにインデックスを作り,該当のホームページをピックアップするかである.

ちなみに,検索サービスには次の機能がある.
第一に情報収集機能である.世界のホームページをなめまわし,カテゴリーや単語別にホームページアドレスを付記していくのである.(自動的に,人為的に).検索対象から外す,あるいは削除するケースもあるが,現在約100億ページがインデックス化されていると言う(専門分野毎の検索サービスは他に多数あり).
第二は検索結果の表示順番付け機能である.検索サービス各社はそのアルゴリズムを進化させている.
第三は検索内容に関連する広告の表示機能である.リステング広告やアドセン広告である.無料の検索サービスは,この広告収入で賄われている.

検索サービス事業者は,いかに利用者の目的に合致したホームページを表示すかが使命であり.インデックスの量,鮮度,表示順番,的確な広告が重要な競争ファクターなのである.

一方,多く閲覧されたいホームページ掲載者は,上記のインデックス付けや検索結果表示順番付けアルゴリズムに呼応して,上位表示されるべく,工夫(SEO対策)をしているのである.

このような検索機能がインターネットの利便性を飛躍的に高めたと思う.日頃調べものをする時,まさに辞書代り,本代り,マスコミ紙代りに,インターネットを使う.レスポンのスピードも含めて,その利便性に驚嘆している.

ついでながら,この検索データベースは米国著作権法(検索目的のCOPYは可)によって米国に集結している.これを政治的に扱ったらインターネットはたちどころに死んでしまう危険性がある.又,この検索サービスが広告収入で支えられている脆弱性もある.広告収入が減る可能性が高いからである.

今やインターネットは有線・無線網のブロードバンド化とともに,パソコンのみならず,携帯電話などの移動端末,家電は言うに及ばず,自動車,産業機器,自動販売機,センサー機器,動物,などにもつながり,世界の隅々まで張り巡めぐされている.映像コンテンツもネットを走り回る.

しかし,インターネットの世界を統治する者も国境もない.人類の有史以来,考えも着かない情報ネットワークが出来上がったのである.多分,数億人がインターネットを利用し,すでに社会のインフラになっているのである.

情報は人間や社会に大きな影響をあたえる.印刷機,ラジオ,テレビ,ビデオなど情報を運ぶメデアの出現がマスメデアとして大きな影響を与えてきた.しかし,このマスメデアは送り手と受け手が一方向のメデアである.

一方,インターネットはリアルタイムで双方向のマスメデアであり,かつ,個人が発信者・受信者になるパーソナルメデアでもある.この意味で,インターネットは,有史以来,印刷機,ラジオ・テレビ,に次ぐ第三の情報革命だと思う.これによって,明らかに,個の時代,多様化の時代を加速させ,個人・社会・政治・行政・産業・医療・何よりも,考え方,知識,価値観に大きな影響をあたえる事は明らかである.

このインターネットにネット犯罪,コンテンツの信頼性,著作権,プライバシーなどの課題がある.しかし,インターネットには無償の互助精神が根底にある.子供のころから,文明の利器であるこのインターネットの精神を教育し,悪貨が良貨を駆逐する事だけは避けなければならない.いまやインターネットは人類共通の財産になっているからである.

ところで,個人的には,足腰が立たなくなっても,インターネットは生活のインフラになっていると思う.好きな音楽ライフやテレビの特集番組,社会の動き等を見たり,ネットショッピング,メール,ガス抜きのブログ等,インターネットライフを満喫していると思う.

高齢化社会のライフワークとして,インターネットの果たす役割は大きいと思う.パソコン,インターネットになじんでいる団塊の世代以降の高齢者のライフスタイルは,それ以前の高齢者とは大きく変わってくると思うのである.

以上,昭和40年代からコンピューターの歴史を体験して来た者の一人として,激変の一端を自分なりに整理してみたのである.一貫して感じる事は,独自性,排他的優位性の発揮が中長期に利用者の支持を得られるかと言うことである.激戦に勝ち残ったものがデファクトスタンダードに君臨する進化の形は,必死の研究開発を促すが,高いリスク,長い期間,利用者の混乱,独占の弊害が伴う事が多い.

その意味で,世界規模で考え方,方式,インターフェースのいわゆるア-キテクチャーのデファクト化(国際標準化)を先行させ,その上でテクノロジーや物作りの競争が繰り広げられる形がむしろ進化を加速させると思う.

特に高度化され,ソフトの比重が高まるデジタル製品には不可欠なテーマだと思う.すでに,アーキテクチャー重視の時代に突入しているのである.

話が変わるが,日本の電子行政システムは日本全体のアーキテクチャー(処理方式,セキュリティ,各データフォーマット,文書仕様など)を誰も決めない為,自治体ごとに検討される.これではパッケージ開発競争も価格低下も起こらない.導入スピードも落ちる.まさにアーキテクチャー不在が巨額のロスを生んでいるのである.

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