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2008.10.30

155 麻生戦略と民主党

麻生政権は,にわかに起こった金融・経済危機に乗じて,解散を延期し第2次補正予算,インド洋給油継続,税制改正,来年度本予算まで,行く所まで行く気配である.

いまだ自民党の選挙公約は発表されていない.年金・医療・介護などの社会保障問題,行政改革問題は今のところ,そっちのけである

しかし,この経済危機のおかげで,国民の目が自民党への批判から景気問題に釘付けになば,国民の苦しさに反して,自民党にとっては神風になる.

さらに’政局より政策’が大事と,景気対策と称して財政出動,バラマキを行い,それが景気回復,支持率向上につながれば,自民にとって一挙両得になる.自民にとっては,すでに選挙運動をしている様なものである.

しかし,自民党の支持率が上がったとしても,景気が回復しなかったら,公金が人気取りに使われただけ,財政危機に拍車をかけただけ,増税の必要性を強めただけ,社会保障がさらに厳しくなっただけ,になり,国民は手放しで巨額の財政出動を喜んでいられないのである.社会保障の為の増税論議が’金を使ったから増税する’にすり替わる可能性もある.

バブル崩壊後の保守的な古典的な財政出動を繰り返してはならないと思う.日本の経済はもうそんな経済規模で回っていないのである.’改革なくして成長なし’が懐かしいと思うし,経済危機であればこそ企業と同じ様に思いきった行政改革,行政コストの削減を急ぐべきだと思う.肥大化した官僚国家のまま,未曽有の経済危機は乗り越えられないと思うのである.

一方,問題は民主党にもある.解散に向けて既に選挙公約を掲げ,戦闘モードに入ったが,いっこうに戦争が始まらない.戦争を早くやる為に妥協を続けたが,解散延期なら民主党の勢いも戦費も息切れする可能性がある.

それどころか,選挙公約実現の為の’埋蔵金’を,第2次補正などで使われたり,民主党と同じような政策を実行されると,発表済みの民主党の選挙公約も空洞化する恐れがある.そして,いよいよ解散となれば,もう一度,財源探しと,公約の練り直しに追い込まれる.こうなる事が麻生政権の裏の狙いかも知れない.当ブログでも指摘したが,政局だけの事を考えれば,麻生政権は最善手を選んだ事になる.

民主党としては解散と関係なく,’改革対保守’の構図を作り,麻生延命政権と戦い続けるべきであった.経済危機対策でも,保守的手法,積極財政出動に変わる将来を見据えた政策を打ち出すべきである.’政局より政策’は民主党が言う言葉である.

’勝なければ何も始まらない’と選挙しか頭にない民主党党首の政治姿勢が宙に浮いてしまった感じである.以前から指摘されていた事ではあるが.この際,若手の党首に交代することも有効な感じがする.

論戦を通じて,国民は来る選挙で,政党・政策を選ぶはずである.古い手法の’どぶ板選挙’も国民から見放されて行くはずである.自分の選挙の事しか頭にない政治家は,すでに思考停止状態となり,どぶ板行脚しか出来ないのかもしれないが.

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2008.10.20

154 金融・経済危機の教訓

昨年夏,米国の不動産価格の下落,大量の住宅ローンの不良化で懸念された景気が最近の米投資銀行の破綻を契機に,一気に信用の収縮,株・ドルの暴落,需要の停滞が起こり,不況風が世界の経済を覆った.

日本ではドル,ユーロの下落による急速な円高で輸出企業を中心に更なる株の暴落が始まった.海外投資機関の資金確保の為の日本株の売りも,暴落に拍車をかけているようだ.今後,年金資産や個人資産の大幅な目減り,資金運用益のマイナス,金融機関や企業の含み損の発生,不況による倒産・失業者の増大,賃金・ボーナスの下落など深刻な状況になる恐れが出てきた.

ところで,日本の不動産バブル崩壊は金融機関で87兆円相当の不良債権を発生せしめ,金融業界の再編にまで及んだ.同時に経済成長を支えた産業構造の脆弱性がグローバル化の中で露呈することとなった.縦構造から横構造への変化である.

この日本の資産バブルの崩壊は加熱した土地投資への金融引き締めに端を発して,高騰し続けた土地が売りに転じ,急速な下落が始まった.その結果,含み損,担保割れが発生し,相対取引の債権が不良化,一気にバブリーな国民経済も,さめていったのである.

米国の場合は証券化された住宅ローン(債権)の不良化である.特にこの債権が他の金融商品と抱き合わせで証券化され,格付けも高い商品として世界市場で取引きされていた為に,その影響や対策が掴みづらい事態になったのである.日本の場合とは違う事態と言える.

この大衆向けローンなどの証券化は近年の新しいスキームである.これによって,資金とリスクが広く分散され,さらにローンと需要を拡大させる.不動産価格も右肩上がりが当たり前になって行ったと思う.

この需要にむけ,各国の輸出が増加し,世界経済をうるおして来たのも事実である.マクロでいえば世界の国々は米国に金を貸して,米国の需要を支えなが輸出して来たと言える.こうして米国の物質文明が世界の経済を牽引して来たのである.米国の需要が低迷すれば世界の経済は大きなダメージを受ける構造になっているのである.この構造から脱出する事が米国離れが必要だとする理由である.

ところで,現在どの国も企業も個人も,借金をして物を買う時代である.その結果,収入の何十倍もの需要と債権債務が生みだされる.実態経済はこの信用(国債も含めた借金)と言う上げ底の上で,運営されている事になる.

それだけに,債務の不良化が一斉に起これば,一気に実態経済を奈落に落とす事になるが,良くも悪くも,債務・信用力・右肩上がりへの期待,によって実体経済が支えられているのである.実態経済と金融経済は表裏一体なのである.

一方,資本主義経済は常に景気や資産価値が変化する.今回の金融危機も,経済の見えざる手(ビルトインスタビライザー)が働いた結果と見れば,経済のメカニズムは正しく作動したとも言えるが,あまりにも大きい資産の暴落は,信用経済を委縮させ,企業も個人も死活問題に陥るのである.自由主義経済,いや人間の欲望の戒めである.

そこで,この信用収縮,資産価値暴落に対し,短期金融市場への資金投入,不良資産の買取,資産劣化の金融機関への資本投入,預貯金の保護,景気対策など国は金融対策,財政対策を打つ事になる.それに何十兆円かの公金を使う事になるが,それでも回復のリスク,国家財政のリスクはともなうのである.

二度と,このような経済危機を起こさない為に,事前に資産価値の暴騰・暴落を抑制する方法はないものだろうか.

日本の場合も米国の場合もそうだが,土地や原油などの拡大再生産できない物に資金が過剰に供給され,右肩上がりが継続すると,さらに資金が集中する.そのうち,実態とかけ離れた価格にまで上昇し,挙句に,一挙に破綻するのである.

従って①資金の集中を抑制する方法・政策が考えられないだろうか.

次に債権の証券化の問題である.株でも社債でも国債でも資金調達者は見えるが,ローンや一般の債権をまとめて証券化すると,まったく債権者が見えない状態で市場取引きが行われる事になる.

ましてや不良な債権を証券化しても市場では見抜けないのである.その為に,金融商品の格付けやリスク保険があるにせよ,もともと,そんな商品は市場に出してはいけない,市場取引きの原則に反すると思うのである.

そこで②顔の見えない債権の証券化を禁止する方法は無いだろうか.

次に思う事は,日本の低金利政策で個人の資金は投資に誘導された.金融市場の活性化に大いに貢献したと思うが,今回の暴落で資産が大きく目減りし,将来不安を抱えながら塩漬けにしている状態となった.特に個人投資は機関投資家と同じ市場で取引される割に情報も専門性も資金も損失保険もないのである.

そこで③元本保証の株式投資商品(個人向け損失保険)を普及させるのはどうだろうか..

例えば5年満期,途中解約自由,満期時含み損があれば元本保証,解約あるいは満期で利益があれば一定割合を販売元に支払う.こんな仕組みで貯金並に投信する仕組みである.

類似商品はあると思うが,投資の大衆化にともなうセーフティネットになるし,これによって,個人の不安解消,個人消費の維持が出来る.しかも普及によって株価の安定化,投資資金の拡大が図られると思う.

今思いつく事は素人ながら上記三つであるが,何よりも資産価格が実態とかけ離れて上昇し始めたら’売り’,実態より下がり始めたら’買い’くらいの判断が一番の抑制策かもしれない.

運用利回りは経済成長程度とみるべきだと思う.もっと上がると欲張ると痛い目にあう.欲張ると’バブルとは崩壊した後でわかる事’と言う事になる.それではまずいのである.事前に判断できない経済専門家,機関投資家の予見能力を疑うが,猛省を促したい.

故人曰く' 山高かければ谷深し’’急に上がれば急に落ちる’’膨らんだ風船は簡単に破裂する’である.これを踏まえて,健全な価値判断を持ちたいものである.個別物件の乱高下はあっても,経済全体が引きづられない政策・仕組み・価値観を人間の英知として確立したいものである.

資本主義,市場主義,自由主義を担保する為にも,暴走を制御する知恵が必要だと思う.

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2008.10.03

153 解散のきっかけ争い

自民総裁選を盛り上げて,新総裁のもとで,一気に総選挙に突入すると言う福田総理の最後の賭けも失敗に終わった.

総裁選が盛り上がらず,新内閣も保守色が強く,新鮮味に欠ける事から,思ったほどの人気も上らず,総選挙に,直ちに突入する分けには行かなくなったのである.

福田総理としては自分の辞任は何だったのかと思っているに違いない.政権を投げ出した汚点だけが残った感じである.

解散が遠のいた状況で,選挙公約も先送りされているが,新自民党政権の特徴は次の三つである.

①伝統的保守勢力が主流となった事
②改革より経済対策優先(財政出動論者)になった事
③総選挙に有利になる新たな解散の切っ掛け作りが必要になった事

である.この事が選挙に勝てると考えたのか,自民党内権力闘争の結果でこうなったのか不明だが,これが自民党の現況である.

これに対し,民主党は日本の統治機構の改革(行財政改革)による課題解決を訴えている.まさに’自民の保守対民主の改革’の,わかりやすい構図になってきた感じがする.

構図としては民主党がデベートに勝てる構図である.攻めの小泉戦略風になれば,自民党は守勢になる.自民党はこの構図を避ける為に,自民党政策の一つの柱に改革を入れるべきだと当ブログで発信してきたが,今のままでは,天に唾する事を避けた,責任回避とも映る.

残る自民党の戦術としては民主内で意見統一されていない議案(テロ特等)を提出し,民主党を混乱させ,政権担当能力に問題あり、との印象を国民に示す事である.これが解散の有利なきっかけになる.

民主党は,そうはさせじと,自民党の失政を徹底的に追求するために,議案に賛成し続ける可能性もある.こうなると,自民の議案は通り,民主の責任追及は続く,という奇妙な持久戦になる.

しかし,保守的な国民性からすれば,失政をいくら追及しても,自民党に依然有利である.民主党としては,政権担当能力と政策の実現性は勿論だが,それと同時に,不人気の現代表に変わる改革論者を立てる事,自民党内閣を凌駕する内閣の陣容を示す事,が必要だと思う.民間人の登用も有効である.これによって,政権交代の安心感が高まり,国民の保守的ハードルが低くなると思う.

自民党はまだ選挙公約を発表していないが,両党ともに,細かな駆け引きより,もっと本質的な日本の課題を中心に,政権交代可否にふさわしい論争を期待したい.同時に,当選する事,政権を取る事と日本の為になる事が一致した政策を期待したい.

特に自民党は行財政改革(公務員・縦割行政・特会の改革),社会保障改革(年金・介護・医療)をどうするのか,難問の当事者だけに避けてはいけない.これを争点にするくらいの公約を立てる義務がある.経済不況が深まる傾向の中で,行政コストの削減,社会福祉の堅持,は政治の責務であり,政権担当能力そのものだと思うからである.

解散が延びている間,十分な政策の充電をし,選挙に臨んで欲しいと思う.それとも選挙事務所の確保や組織固めに忙しいのだろうか.そんな事に執着していると,持久戦による兵糧攻めに逢う議員が出るかもしれない.

一方,世界情勢の変化,未曾有の経済不況を目前に,自民党の3分の2の空前の議席を任期いっぱいまで活用したいとの誘惑が総理の頭の中で膨らむかも知れない.こうなると,自民党批判も下火になる可能性もある.自民党にとって最善手かも知れない.

保身や権力欲の魑魅魍魎がうごめく政局であるが,日本の難題に向かう考え方,政治姿勢に注力したい.

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