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2008.12.30

160 危機・混乱の2008年

2007年に引き続き,2008年も日本の未来に向けた羅針盤を描くことも出来ないまま,世界規模の金融・経済危機に巻き込まれ,さらに深刻さ,閉塞感,が増幅した年であった.

国民レベルで言えば,失業や収入減が起こり,ローンなど組めるどころか,医療・介護・年金も含めて,先行き不安な時代,に突入したのである.

振り返れば,小泉政権後の2007年は日本の進路を占う分水嶺と思ったが,悪い方向に傾きかけている.2007年の年金問題の勃発,政治家の事務所費問題等で,参院の与野党が逆転,安倍政権が倒れた.

衆参ネジレの中で,2008年の福田政権も,総選挙対策の為に,総裁選を行い麻生政権に引き継いだ.しかし,経済危機と支持率低下で総選挙が2009年持ち起こされた.

与党は小泉政権後の2年間,3人の政権を立てたが,シナリオが狂いっぱなしである,日本の進路も描き切れていない.

さて,金融・経済危機は,昨年夏の米国サブプライムローン問題に端を発して以来,対岸の火にとどまらず,08年9月のリーマンブラザースの破綻を引き金に,大津波が世界の経済を飲み込んだのである.

この経済危機は経済の指標ではっきり表れている.歴史的2008年になった.

日経平均株価は昨年末比で▲42.1%,時価総額▲200兆円,GDP伸び率▲0.8%,上場企業経常利益▲32%,完全失業率3.9%,対ドル為替レート25%アップ,であり,いずれも1990年の日本のバブル崩壊時を大きく上回る逆風が吹き荒れているのである.

主要国の株価も昨年末比,ロシア▲71.9%,中国▲65.2%,フランス▲44.2%,ドイツ▲41.7%,米国▲36.0%,英国▲33.1%であり,世界の時価総額も2600兆円消失し,2800兆円に半減したと言う.余りにも金融資産が大きくなっていただけに,この下落額は巨大である.どの程度,含み損,損切りが発生したのか不明であるが.

クールに言えば,需要(消費)を支えている信用(債権債務,株価,金融商品)が危険水域を超え,リスクが増大した事に対し,健全な信用規模に戻そうとする経済メカニズムが作動したと言える.

その結果,世界の経済は急激な信用収縮が起こり,債権の不良化,消費の激減,貿易の減少,企業の倒産,失業の増加,不動産・商品の価格下落,公私の金融資産の暴落,と景気悪循環,負の連鎖,に陥ってしまったのである.輸出で支えてきた日本経済も一気に沈んだのである.

さらに政治においては,税収減問題,社会保障財源問題,巨額な財政赤字の中での積極財政出動問題,など,暈にかかって難問が覆いかぶさって来たのである.

不況は持てる者の金融資産を半減させる以上に,持てない者の生活や国家の活力を奪うのである.

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
唯春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ
ひとえに風の前の塵に同じ

平家物語の冒頭部分である,まさに2008年も,世の中の栄枯盛衰,もろさ,はかなさ,人間の愚かさ,を感じる年であったと思う.(dust in the wind と言う歌もある)

経済の拡大は喜ばしい事ではあるが,経済危機のダメージも巨大化する.栄枯盛衰は,いつの世でも偶然ではなく必然的に起こる宿命とするならば,人間の英知に進歩がない気もする.

経済,科学技術,制度,仕組み,の発達で豊かさは高まるが,同時にリスクも増大する.リスク対策なしに先行きは描けない.又一つ,大きな宿題を抱えた.

今年も108つの煩悩を静める除夜の鐘で年が明ける.

人間の煩悩を抑える仏教の教えは滅私,自虐,謙虚,等の日本独特の文化を作ってきた,必ずしも現在通用する教えとは思わないが,国際化時代,競争化時代に,時々,おごれる人の煩悩が行き過ぎていないかと,これに耳を傾けるべきかもしれない.

さてこれからであるが,この経済危機への対策,経済発展への政策,持続可能な社会保障への政策,巨額な財政赤字への政策,行政効率化への政策,など真剣な取り組みが求められる.総選挙も迫っている.政治家や役人の魑魅魍魎など吹き飛ばし,底からの脱出の2009年であって欲しいと願うのである.

企業活動も,’不景気は景気への踏み台’,’CHENGE=CHANCE’ととらえ,難問に挑みたいものである.

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2008.12.02

159 経済危機対策への懸念

経済危機対策総論に入る前に,国民にお金を配ったらどうか(給付金)と言う案が与党,政府から出ている.この案に対し,まず所見を述べたい,現段階で多くの疑問がある.列記したい.

・目的が景気対策なのか,生活支援なのか
・効果はあるのか
・財源をどうするのか
・2兆円と言う根拠はなにか
・もっとやるべき事があるのでは
・所得制限をどうするのか
・支給にかかる費用はどれくらいか
・結局,選挙目当てのばらまきではないのか,

等々,疑問視する声が大きい.緊急対策とは言うものの,あまりにも,稚説な感じである.選挙目当てどころか逆効果になる可能性もある.政党支持率がどうなろうと,賢い使い方をして欲しいのである.

ところで,給付金について,あまり議論されていない本質的な事を提示したい.

①元来,使用目的が不明な事に公金を使う事はあり得ない.個人財産に公金を使うことになるからである.個人にお金を渡す場合は,厳密なルールのもと.社会保障や年金を給付する場合や,最近では,やっと自然災害や事件に巻き込まれた人たちへの給付ができるようになった程度である.

②税金,あるいは借金を直接国民に再配分すのだから,最悪,無駄使いにはならないが,課税の意味,目的が変わる.①も含めて法律に触れないのだろうか.もしこれが許されたら,皮肉っぽく言えば,毎年30兆程,再配分するれば,政治家も役人も利権も無駄も半減できる.

③給付金が公的事業への寄付に回ったとしたら,国民の手で公金の使い道を決める事を意味する事になる.この考え方を拡大すれば,新しい民主主義の形になる.寄付をもらった公共事業は国民の監視のもとで金を使う事になる.国民に不要と思われている事業には金が集まらない事になる.これも②と同じ意味を持つ.

④給付金が政治家や政治団体,あるいは宗教団体等への個人献金,寄付に回ったとしたら,経済対策ではなくなる.政治家や諸団体に資金を供給する為に給付をする事になる.お金に印がないから現実にあるかどうか分からないが,その事が問題ではなく,そのことが可能になる給付制度はダメである.公共事業の発注で政治献金と票を得ている政治家は,さして問題と思わないのかもしれないが.

要するに使い道を定めない給付制度は,どんな大義を掲げようと,使われ方は様々であり,論理的に問題が多いのである.

さて本論だが,政治が行う経済危機対策は大きく分けて,救済対策(パイの分配),景気対策(パイの拡大),行政コストの削減(無駄の削減)の三つである.経済安定期以上の対策が求められるのである.

救済対策は資金貸付,債権買取,雇用支援,減税,費用免除,救済公共事業,などによる弱者支援である.景気対策は,経済波及効果をねらった財政出動(先行投資)や規制緩和,減税,利下げ,資金供給,等である.デフレスパイラル,信用収縮,を断ち切る為に需要を起こす政策である.

この景気対策としての財政出動は直接の需要創出と長期の波及効果を狙うわけだが,経済発展途上段階では効果が出やすいが(ニューデール政策,列島改造計画など),経済大国では,投資の限界効用逓減の法則が働いたり,輸入が増え,国内への波及効果が少なくなる傾向がある.

従って,景気対策と言っても,金をばらまいただけの救済対策になりかねない.挙句,箱と借金が残る可能性もある.とりわけ,本心は工事が欲しい救済対策なのに,景気対策と称して,予算を取るケース等は投資波及効果が出るはずが無い.救済対策か景気対策か,目的をはっきりしないと,無責任,無駄,を冗長させる事になる.無責任,無駄も景気対策のうち,と考えている人がいれば,財政出動は青天井になる.

特に,予算さえ通れば,投資効果の評価も,責任も問われた事がないだけに,財政出動には慎重さが必要である.又,今,苦しいから,背に腹は変えられない,と言って使う金を安易に未来の国民の負担にしてはならない.

このように景気対策としての財政出動は経済原理,市場原理にかなう政策でなくてはならない.経済は民主主義,多数決で動くのではなく,世界経済,市場経済で動いているからである.

例えば,地域活性化と称して,経済立地条件等が不利な地域に高速道路や工業団地を作る事は,分配の公平性にかなっても,景気対策にならない事が多い.これは一時的な需要・雇用救済策,と,とらえるべきである.

従って,首都圏や新技術,住宅等の経済波及効果の大きい分野,世界的大企業,等へは景気対策,地方経済や中小企業,経済弱者の死活問題へは救済対策と言った,切り分けが必要なのである.勿論,厳密な優先度の判断がともなうが.

このように,景気対策と救済対策は目的,原理が違うのである,無責任,無駄,を排除し,対策の効果を上げる為にも,対策は分けて論じる必要があると思う.

尚,学校の耐震化,下水道整備,など社会資本整備で,いずれやらねばならない事業の前倒し論がある.これは,経済波及効果が目的ではなく,雇用や直接需要を起こす,救済対策と捉えるべきである.将来の国民も,その効用を受けるわけだから,借金でやれる事業であるが,国・地方の全体の予算,将来の負担の中で,優先度の判断をし実施すれば良いと思う.

一方,景気対策と称して,(何でもいいから)思い切った財政出動(金のばらまき)をすべき,と,以前聞いた様な風潮が日増しに大きくなっている.選挙直前の力学も,これを加速させているようだ.

この風潮は,90年代に作った,600兆の借金が,今も重くのしかかり(年20兆の償還),国の瞬発力を奪っている事実をどう考えているのだろうか.当時の政治家が,責任も取らず,今も暗躍している事が不安である.せめて,当時の総括と今後の返済計画を述べた上で,積極的財政出動を言うべきだと思う.

さて,根強い道路建設要求は地元経済の救済対策か景気対策か.それとも両方だと言うのだろうか.道路予算で,他の予算が削減される事を気にしないのだろうか.不況だからこそ,道路はしばらく凍結して,もっと大事な事(パイの分配にしろ,拡大にしろ)に使うべきとする道路族の良識はないのだろうか.

’道路特定財源の一般財源化’との大方針も,結局,道路目的税のままで,一般財源化とは地方への道路ひも付き交付金(譲渡)の意味らしい.国交省は何としても道路財源は離さないのである.大方針は何だったのだろうか.それでも,一般財源化をした,方針はブレていない,と言うのだろうか.

定額給付は救済対策なのか,景気対策なのか,よく分からない.多分これも両方と言うだろうが,2兆円使うわりに,効果はなさそうである.どちらかに徹すれば,やれる事は多いはずである.

最後に政治・行政の構造改革だが,財政の逼迫なればこそ,不効率・無駄を徹底排除しなければならない.人件費はもちろん筋肉質の構造にする事は,待ったなしである.国民のインフラである年金・介護・医療,等の社会保障問題も,国の活力を支える制度として,経済危機対策と並行して,取り組むべき事は当然である.

いずれにせよ,すべての対策の財布は一つしかない.あれも,これもと景気対策の名の下で,予算をとり合う姿は無責任に見える,無駄な支出の温床になりかねない.真の経済危機対策は,まず,予算を返上する姿勢,中断する決断が必要だと思う.企業なら当然である.

次に,大きな予算を取る事,私的利権を守る事,大衆迎合で選挙に勝つ事,しか頭に無い政治家では危機から脱しられないと思う.これでは、どんな救済策も息切れになる.

以上,今回の経済危機に際し,救済対策,景気対策,政治・行政改革,の3点セットをバシットと出す必要がある.この視点で,政府・与党の緊急対策,09年度予算に注力したい.

今のところ,道路財源の一般財源化,給付金,行政改革,で政府・与党は命取りになる可能性がある.政党や政治家がどうなっても良いが,失政の付けの方が国民にとって大問題なのである.

’米百俵’の精神,聖域なき構造改革,改革なくして成長なし,小さな政府,官から民へ,規制緩和,を旗印に,’失われた10年’’日本的構造の脆弱性’と対峙した小泉リーダーシップが懐かしい.

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