« 182 旧態依然の選挙活動 | トップページ | 184 地方分権・脱官僚論議 »

2009.07.31

183 マニフェスト合戦への危惧

従来になく,マニフェストが注目され始めた.しかし,根本的な難題を多く抱えた日本において,マニフェストがはたして日本の進路を良い方向にリードしてくれるのだろうか,感じる違和感について述べたい.

まず,マニフェスト重視における問題点を,いくつか上げてみた.

①断片的なマニフェストで政党選択ができるか

ともすると,マニフェストは党内不一致の重要課題の政策を避けたり,政策が立てられなかったり,他党との選挙協力や連立同士の配慮で取り上げるのをやめたり,選挙目当ての政策であったり,する.国民の為の主張であるべきものが,党利党略の視点で書かれていると思わざるを得ないのである.

日本は現在,憲法に始まる外交・安全保障問題,少子高齢化に始まる年金・介護・医療等の問題,膨大な借金問題,等々,長期にわたる重要な課題を抱えている.こんな重要な事が,マニフェストから抜け落ちたり,掘り下げられていない.今回も生活重視と財政出動の話ばかりである.

勿論,外交・安全政策で明らかに出来ない政策もあるかもしれないが,それにしても,憲法問題,憲法解釈問題,など根本的考え方すら見えないのである.

票を取るための断片的な,人気取りのマニフェストなら国を食い物にするだけである.政党はこれらの重要問題についての認識と所見をまず表明する必要がある.施政方針なしの短期的政策を述べるマニフェストでは国民の選択と国の進路を間違う.国民はむしろ書かれていない問題に留意する必要がある.

②政党の活動評価はマニフェストの達成度で計れるか

与党の評価を党利党略で作ったマニフェストの各項目毎に実現度で測ることが意味ある事か疑問である.又,評価の物差しも簡単ではない.そのた為に評価し易い政策表現をすべきだとの意見も出る.ますます,通信簿の様なマニフェストになる.これでは国の難題解決から,ますます離れて行く.

国民から見れば,与野党問わず,政党の実績評価は,考え方,政治路線が間違っていなかったか,立法活動や法案への賛否実績はどうであったか,国会での質疑内容も評価の対象になる.

これらの政党活動の実績報告は全政党の義務であり,それを国民が評価するのであって,マニフェストに対応した達成度で与党のみ評価しても,あまり意味がないと思う.

又,議院内閣制で政府の総辞職や内閣改造があり得るが,これもマニフェスト評価の意味が薄れる.

マニフェスト重視で政治家の選択が希薄にならないか

知事や市長のマニフェストは個人に帰属し,個人を選ぶ材料になる.国政政党のマニフェストは,①②の問題も含みながら,良くも悪くも,政策・政党選択の材料になる.

従って,地盤,看板,鞄,地元への公共事業誘致,なども含めて,政治を負託する人物の選択が希薄になる.小委選挙区制も含めて,代議政治が人から政策・政党にシフトして行くのである.政党は人が欲しいのではなく,議席が欲しいのであって,人気があれば政治能力など,どうでもよくなる.

マニフェスト重視が日本の多くの難問解決に向かうどころか,ゴッタ煮の政党を選び,力量不足の政治家を選び,難問を先送りする事になりかねないのである.

ならば,間接民主主義の基本にかえって,信念を持った政治家を選ぶ方を優先すべきではないか.政治家(選挙区)と政党(比例区)を分けて考える必要があると思う.

難問と対峙出来る論客を国会に集結させる方が,今後の日本の政治にとって,きわめて大事だと思う.主義主張に応じた政界再編もし易くなる.日本の政治体制,はここからやり直すべきではないかと思うのである.その意味で,マニフェスト合戦に巻き込まれて,貴重な人材を失ってはならないと思う.

官僚主導から政治主導にするとしても,制度の問題より,政治家の力量の問題の方が深刻だと思う.実力のない政治家主導は危なくてしょうがない.官僚主導の無駄なぞ比ではない.

④調査や裏付けのない政策が国を危うくしないか

もし,政権をとった政党の政策に問題が発覚した時,政党はどうするのだろうか.政党のメンツで何が何でも公約を実行するのだろうか.マニフェスト重視の風潮が,こんな事を誘発しないだろうか,心配である.
特に野党の政策に裏付けなしの政策が多く心配である.選挙期間中,国民がこれを見抜く事は難しいだけに,競合政党の政策評価が必要である.しかし明らかに間違っていても,政策毎の賛否投票は国民には出来ないのである.

ところで,マニフェスト信奉者は直接選ぶ地方の首長選挙と代議士・政党を選ぶ国政選挙とを勘違いしていないだろうか.国政の課題は極めて広く,難題ばかりである.考え方や政策も簡単ではない.それも含めて代議士に負託する部分は大きい.むしろ,立候補者にマニフェストを求め,負託する代議士を選びたい位である.

こんな思いの中で,断片的,表面的,政策ばかりの報道を見ていると,違和感どころか危機感すら感じる.又,やたら,具体的内容を迫る報道姿勢も,ますます本質的問題から目を遠ざける様に思う.

思いつくままに書いたが,断片的なマニフェストで選挙が加熱する事に,大きな危惧を抱くのである.

.

|

« 182 旧態依然の選挙活動 | トップページ | 184 地方分権・脱官僚論議 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134518/45790424

この記事へのトラックバック一覧です: 183 マニフェスト合戦への危惧:

» 2009年 円安 [2009年 円安]
2009年 円安 [続きを読む]

受信: 2009.08.09 02:09

« 182 旧態依然の選挙活動 | トップページ | 184 地方分権・脱官僚論議 »