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2009.12.19

193 巨額借金より優先する無責任政治・政策

我が国は財政法の定めがあるにも関わらず,既に世界に類を見ない超借金大国である.借金に追われて借金をし続ける借金地獄国家になってしまった.それでも大丈夫だと言う論拠もだんだん危うくなっている.

そもそも,財政法第1章財政総則第四条によれば

『国の歳出は公債又は借入金以外の歳入を以て,その財源としなければならない.但し,公共事業,出資金,及び貸付金の財源については,国会の議決を経た金額の範囲内で,公債を発行し又は借入金をなす事が出来る.(建設国債)
公債を発行し,又は借入金をなす場合においては,その償還の計画を国会に提出しなければならない.』

とある.財政法の精神は借金で国を運営しない事にある.ただし建設国債はやむを得ないとしても,借金は未来の国民に負担を強い,未来の国民の予算編成権を狭め,主権在民権を奪う事になるからである.借金は民主主義の持つ矛盾,弱点なのである.

そこで,財政法で許されていない赤字国債(税収以上の歳出)はその都度,特例法を作って国債を発行している.今年だけ特別に発行したい,という趣旨だが,毎年,特例法を予算とともに成立させているのである.

借金はいけない,と頭では分かってはいるが,どこまで真剣に,それに則した行動をしているのか,日本の国民性,日本の政治風土,財政積極出動派に危惧を抱くのである.右肩上がりの経済情勢の中で’増税より借金を’の文化が定着した感じである.

それにしても’財源は国債発行で’と軽々しく言う政治家が多い.とんでもない間違いである.正しくは財源は将来の税収で,あるいは将来の増税で,さらに資産の売却で,などと言うべきなのである.これも財政法の精神である償還計画に無頓着な表れである.

更に言えば,赤字国債発行の額が何十兆と言う単位である.残高も800兆を超えている.償還も毎年,何十兆になる.政治家はこの数字に麻痺している,のか,将来の事まで考えていない,のか,ひょっとすると,手に負えない数字になっている,のか.全政治家に借金に対する所見を聞いてみたい.

近年の予算編成は財源なき政策が多く,赤字国債発行が当たり前になっている.中には政権維持に使われたり,利権確保に使われたり,行政の無駄に使われたり,した事もあったと思う.

特に,公共事業は,真に経済波及効果が期待できる公共事業以外に,地域の経済・雇用対策で工事が欲し公共事業,選挙目当ての公共事業,官僚の省益を守る公共事業,業界の利権を守る公共事業など魑魅魍魎が渦巻いていたはずである.

真水を流すと言う意味で,すべてが悪いとは言わないが,その結果が世界一の借金大国を作り出したのである.この借金の破綻リスクやその対処法の諸説が飛び交っているが,政治家の発信は今だない.

経済成長期,遅くとも,バブル崩壊後に,小さな政府,構造改革,規制緩和,で日本を筋肉質に戻していれば,未来の展望も開けたし,社会情勢に応じて,もっと効果的な予算が組めたはずなのである.

かつて田中角栄は’財源のない政策はダメだ’を徹底した.’財源をもって来い’が口癖だったと記憶している.自らの政策にも,これを守った.たとえば道路や住宅の建設を加速する為に財源を用意し,公団を作って実行した.この財源ありきによって,人間ブルドーザーと言われる程,説得力,行動力を発揮した.これが日本の経済成長を大きく牽引したのである.

これは,財源と政策が,いかに政治に重要であるかを示している.赤字国債に支えられた政策はモラルも効果も未来の展望も損なう事を知らなければならない.

そんな信念もなく,90年代のバブル崩壊以来,財政法の精神に反して赤字国債発行を特例法(抜け道)で処置して来た.国家を挙げて,財政法を無視い続けてきたのである.

結果的に,抜け道で巨額な借金を積み上げた事は

法治国家と言うより,放置国家だから,
・国家の事より選挙に勝つ事を優先する政治だから,
・国民の政治意識が極めて低いから
,

と,言われても,返す言葉がない.
法律という建前が間違っているのか,抜け道による実態が間違っているのか,精査する必要がある.このような類が憲法問題,安全保障問題,等,多すぎる感じがする.理のない国家は閉塞感を増し,活力を失い,漂流国家になるだけである.

現在,GDPの1.8倍の830兆の借金残高を持ち,来年度は国家予算が92兆,赤字国債44兆,税収36兆だと言う.さらに,借款債,財投債を含めると160兆の国債発行になると言う.まさに日本は既に巨大な社会主義国家なのである.

大きな政府どころではない.この勢いだと,1000兆の借金残高になるのも,時間の問題である.かくして,社会主義国家の末路を歩み始めているのかもしれない.

いまさら財政法の精神を持ち出しても,どうにもならない状態だが,これが日本の政治の特徴であり,結果なのである.

巨額な借金が経済大国になった代償であっても,日本の民主主義の代償であっても,国民性の代償であっても,今後は財政破綻の可能性を徹底的に消して行かねばならない.又,未来の国民に説明ができる借金にしておく必要もある.

従って,今や,財政破綻させない事が政治の最大の使命だと思う.いかなる政策も,この使命の下にあるべきである.’仕方なく戦争した’と同じように'仕方なく借金した'で国を滅ぼしてはならないのである.’仕方ない’と言う日本の風土を繰り返してはならない.先手先手の厳しい対策が求められるのである.

そこで,度々当ブログでも言っているが,今後の予算編成について,次の四点を提言したい.

①総額の赤字国債発行は廃止できないか

歳出の帳尻あわせで,総額で赤字国債を発行する制度は廃止できないだろうか.何の為に借金したのか,どの政策で借金したのか見えないからである.未来の国民も,借金の内訳を知る事が出来ないのである.

税収は目的税以外,一般財源でよいと思うが,借金も一般財源のように使われて良いのだろうか.ドンブリ勘定の赤字国債は廃止すべきだと思う.内訳が見えるように,公共事業は案件毎に,すべて建設国債とし,せめてドンブリの赤字国債発行部分を減らす事が必要だと思う.専門家の知恵を得たいところである.

②公約に予算概要,国債に関する記述を義務付けできないか

政党の公約に予算編成方針,概略の予算規模と内容,国債償還計画,国債発行計画を義務づける必要がある.公約が予算で裏付けられ,選挙目当ての政策が排除できる.巨額の借金をした後,国民に信を問うても遅すぎる,からである.

何よりも財政問題に関する国民の参否を問えるからである.財源の裏づけのない政策は政策にならない事を国民,政治家は強く自覚すべきなのである.

③毎年度予算案に財政健全化計画とその状況を義務付けできないか

政権政党は,毎年度,財政破綻の不安を払拭する為にも,財政健全化計画とその状況,税制対策,予算案をセットで示す必要がある.

④赤字国債発行条件を厳しくできないか

冒頭で引用した財政法の改正が必要だと思う.建前と実態が180度違う政治は法治国家ではないからである.赤字.国債発行の上限値を簡単に変えられない法律で規制する事が必要かも知れない.

政治家の背に腹は変えられない感情と選挙への保身が赤字国債の発行を促す.国民としては,その都度,国民に賛否を問われる事が無いだけに,法的にハドメをかけないと不安なのである.借金してからでは,遅いのである.

特に,選挙を気にせず,財政健全化を断行できる政治家が見当たらない.そんな政治家のいない政治主導も,金庫番の財務省も期待できないのである.金はこれしかないと言った方が,選挙の為の財源の無い政策は抑制できるし,むしろ,本質的な政策論議や工夫や知恵が出る可能性がある.

以上,今,薄氷の上にいる日本であるが,そんな中で,民主党政権のマニフェストは’思い’だけで,裏付けがなかった事が露呈した.

当初から予想された事ではあったが,案の定,財政のリアリティにぶち当たって,結局,赤字国債増発になりそうな気配である.選挙目当ての政策が赤字国債増発に繋がったとしたら,大問題である.

遅まきながら,赤字国債増発が判明したなら,マニフェストに自縛される必要がない.財政の現実を見て,選挙公約の全面見直しが必要である.民主党のマニフェストより,国の財政問題の方が圧倒的に大事だからである.

国民も騙されたと思う以上に,国家財政が心配であり,見直しには反対しないと思う.当たり前であるが,民主党より国家の方が大事だからである.

民主党の動きを見ていると,NO186自民崩壊と政治路線で述べたリベラル派の性格の通りである.そのブログで,リベラル派は思いを歌う事に酔いしれているフォーク派と言ったが,まさに,民主党政権はそんな感じなのである.

民主党がゴタゴタして見えるのは,経過を透明化しているからだと,言うが,もともと選挙公約に裏づけが無かった事が原因なのである.

又,この事態に対し,総理の考え方も何度かぶれた.その都度’最後は私が決める’とリーダー健在ぶりを装ったが,リーダーシップが無いと言われても,仕方がない.最後に決める事がリーダーシップではないからである.

繰り返すが,民主党が必要な事は,選挙公約を歌う事ではなく,財政のリアリティを踏まえて,子供手当て,ガソリンの暫定税率廃止,農家の所得保障,高校の無料化,高速道路の無料化など,もう一度,徹底した吟味をする事である.

どれも恒常的に巨額な予算が必要になるからである.年金・介護・医療などとの優先度の問題もある.一方でNO192円高,株安,デフレ対策で述べたように短期,中期の経済対策も大事なのである.

何よりも,民主党は財政破綻の可能性を徹底的に排除する義務がある.その為に,まず筋肉質の国家にする事を優先すべきである.それが自民党を引き継いだ最大の仕事だと思う.その上で,許される範囲で政策を選択すべきなのである.

是非,年明けの通常国会で財政は大丈夫か,徹底した議論をし,限られた財源,国債発行の中で,有効な予算を作って欲しいのである.責任の一端がある自民党も,国を誤った方向に行かせないように,真剣な提言を願いたいのである.

日本は今,剣が峰にいる.真剣な議論に注力して行きたい.

追記(12月26日) 

12月25日閣議決定された来期予算案(92兆)を受けて財務省が発表した来期の借金状況を記す.

・国債発行額・・・30兆増の162兆(赤字国債44兆,借款債102兆,財投債15兆)
・長期債務残高・37兆増の862兆(国663兆,地方199兆)

尚,政府は国債増発に対し,財政健全化について触れていない.家計支援など巨額な予算が毎年発生する政策についても,その持続が可能かどうか説明がない.デフレ脱却や経済成長政策についても,言及がない.

私の感想で言えば借金が増える割に展望や希望が見えてこないどころか,不安が増す感じである.こうなる事を先の総選挙で国民は選択したとは思えないのである.自民党を賞味期限切れにしただけだと思う.

年明けの通常国会前に,マスコミは是非,借金増大でも民主党の家計支援政策を支持するのか否かを有識者と一般国民にアンケート調査をして欲しいのである.是非その答えを知りたい.

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