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2009.12.28

194 釣りバカ日誌の感想

探偵もの,刑事もの,水戸黄門,男はつらいよ,初め,多くのシリース作品は,全体に流れるモチーフ,登場人物が設定され,そこに,いろいろな出来事が繰り広げられる.一つの物語とは違って,シリーズ作品にはシリーズ化に耐えられるモチーフと登場人物の設定が必要である.同時に,物語を作りやすい仕事の設定も必要となる.

『男はつらいよ』で言えば,下町の姉と一風変わった弟との兄弟愛をモチーフに,葛飾柴又の団子屋と全国に放浪するテキ屋の寅さんを設定し,寅さんを動かしながら,物語が作られる.又,それぞれの物語にアクセントをつけるためにマドンナが登場する.

このシリーズ物の中で,大好きな『釣りバカ日誌』が20作で終了すると言う.22年間続いたわけだが,是非,感想を言いたい.

『釣りバカ』は管理社会が進む企業の中で,こんな社長や社員がいても良いのではないかとの思いをモチーフに,社長,重役,釣り馬鹿の社員を設定し,マドンナのストーリーを縦糸に,会社のシーン,家庭のシーン,釣りのシーン,宴会のシーン,地方のシーンが展開される.

そこに展開される浜ちゃん,奥さんのみち子さん,釣り船屋のハチさん,社長のスーさん,社長の奥さん,運転手の前原さん,役員と社員,それぞれ,憎めない,漫画的で個性的な,しかも若干社会風刺的なキャラクターが絶妙である.

特に,出世や仕事に無頓着で役員や人事からダメ人間と烙印を押されているが,世話役,まとめ役が似合う,三枚目で’釣りバカ’の浜ちゃん,そんな社員も必要だと思いながら,公言が出来ない創業社長のスーさん.社員が自分の子供を入社させたいと思うような会社にしたい,と現実の企業経営者にチクリと示唆を与えるような事も言うスーさん.

そのスーさんが社員とは知らずに浜ちゃんと知り合い,釣りが大好きになる.会社の外では釣りの師匠の浜ちゃんとの家族付き合いが始まる.会社に隠した平社員と社長の関係が会社では見られない人間味を浮き彫りにする.

又,喧嘩早いが人の良い江戸っ子気質の釣り舟屋のハッちゃん,そのハッちゃんと浜ちゃんの絡みが下町の風情を映し出す.ハッツちゃんの差し入れや釣った魚がいつも食卓に上がるのも羨ましい.この下町の夫婦ラブラブの家庭でハマちゃん,奥さん,スーさん,ハッちゃんのドタバタがコミカルに繰り広げられる.

このような人物設定を長期間,見事に演じた俳優も素晴らしいが,特に主役の西田敏行自身の持つエンターティメント性(宴会芸や歌唱力)が一つの見せ場として,いかんなく発揮されていたと思う.

作品に一貫している事は現代社会を写像しつつ,厳しい世の中に,風刺味も入れて,一服の安らぎ,暖かさを与える事である.登場人物のキャラクター,人間関係,ハッピーエンドのマドンナがこれをかもし出しているのである.又,作品ごとに美しい各地域が紹介される事も楽しみであった.

しかし,結構,憧れを抱きながら真面目に見ていた分,娯楽映画に徹しようと,リアリティを超えた演出には抵抗感もあった.

例えば佐世保から米国の潜水艦でハワイに言ってしまう話(16作)など,折角のマドンナストーリー(伊藤美咲,尾崎紀世彦,浜ちゃんを含めたライブハウスシーン)が良かっただけに,余計だったと,残念であった.浜ちゃんのキャラクターはリアリティの中で際立ってくるのである.

この16作で歌われた’MAKING PLANS’,’MY LOVELY TOWN’(佐世保の歌)は印象深く,今でも映画のシーンを思い出す.今の社会情勢にも必要な感じがする.

又,要望を言えば,もっと,釣りに関する話(釣り方とか魚の生態とか,等)を混ぜた方が良かったと思う.

とにかく,『釣りバカ日誌』は明るい娯楽映画だが,会社の風刺映画でもある,下町の文化映画でもある,地域の自然映画でもある.マドンナの人情映画でもある.勿論,釣り好きには欠かせない釣り映画でもある.何よりも見て楽しい,色々な切り口を持った映画なのである.’男はつらいよ’には無い楽しさの広がりがある.

このような,映画の新シリーズがこれから出てくるだろうか.映画がテレビやDVDに移るにしても,大人向きの作品シリーズが欲しいと思うのだが.

問題は,’釣りバカ’に代わる’00バカ’が見当たらない事である.’釣り’は愛好者が多く,身近な趣味である.どの地方にも釣り場があって,自然賛美のご当地映画も作りやすい.何よりも釣り好きな人に悪者はいないし,ロマンチストなのである.シリーズ物には最適な設定だと改めて感じる.

寅さんの露天商で風来坊で人間味があって好かれるが,ほのかに抱く恋心が実らない設定も,ご当地映画やマドンナストーリーを作りやすいキャラクターだと思うが,少し昔の設定になり,人情話の時代劇をみる感覚になる.

比較するわけではないが,’釣りバカ’の方がストーリー展開が多彩になり,マンネリに陥らないと思う.現代感覚で見れるのもありがたい.

海外で見られるとの観点で言えば,寅さんは日本文化を伝える側面を持つが,少し誤解を生み安い所がある.釣りバカは,モチーフ,登場人物,物語は,どの国でも通用する普遍性があるように思う.

さて,今後,どんな癒し系の,身近な人物がシリーズ作品に登場して来るのだろうか.

いっその事,配役を若返りさせても,今の人物設定をそのままに,『釣りバカ日誌』新シリーズを出したらどうだろうか.

世界の釣り場にストーリーを展開してもよい.自然保護や地域おこしのストーリーも良い.あるいは建設業の新たな展開を示唆するストーリーでも良い.いくらでも,『釣りバカ日誌』は膨らむ感じがするのである.

但し,三国連太郎,西田敏行の名優に代わるキャストができるか,が難題である.’釣り’好きの俳優の中から選べないだろうか.

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