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2010.04.14

206 黒船来襲・携帯革命

90年代後半,パソコン,インターネットの黒船が来襲して以来,世の中は情報化社会に移って行った.そして2010年,世界に普及し始めた携帯端末が日本に上陸し,新しい情報化社会を作り始めた.

この携帯端末はスマートフォーン系(アップルのiphone等,高機能携帯電話)とタブレットパソコン系(アップルのipad等,多機能端末)がある.

この2系統の携帯端末はブロードバンド無線網とつながり,電話,メール,インターネット,EC,メデアプレー,カメラ,ゲーム,テレビ,GPS,地図,
電子書籍等,あるいはクラウドコンピューテングの端末として使われる.従来のパソコンに取って代る勢いである.特にタッチスクリーンによるキーボードレス,マウスレスが端末の革命を起こしつつあるのである.

この携帯革命の裏で,次の様な激しい,つばぜり合いが展開されているのである.

①携帯端末のOS戦争

携帯端末アプリケーションソフトの巨大化と互換性,ハードの技術革新の加速で最も重要になるのはOS(基本ソフト)の選択である.パソコンの歴史と同じ様に,いづれ世界のデファクト(実質標準)OSにハード・ソフトが集約されて行く事となる.そのデファクト競争がいま展開されている.これがOS戦争である.

現在アップルのiOS4,グーグルのandroid,マイクロソフトのwindowsphone,ノキアのシンビアン,等が競い合っているのである.現在のところ,
アップルのipod(デジタルオーデオプレーヤー),iphone(ipod+電話機能),ipad(ipod+9.7インチ画面・B5サイズ,タブレットパソコン)のiOS4が先行している状況である.

日本におけスマートフォーンのOS対応は次の状況である.

・ドコモ(android)・・・ソニー・エクソン製造
・KDDIau(iSO1,2,android,MS,windowsphone)・・・シャープ,東芝製造
・ソフトバンク(iOS4,android)・・・アップル,HTC製造


このOS戦争はパソコンと同じようにアプリケーションソフトの豊富さ,人気ソフトの存在,アプリ開発スキル人口数などで,普及の勝敗が決まる事になる.又,垂直統合型のアップルiOSかオープン型のグーグルandroidかの競争も見ものである.

OS戦争に,もう一つ,ウイルスの発生と対策の問題がある.ウイルスに感染しやすく,ワクチンや予防法が弱ければ,たちどころに,そのOSの利用者は激減する.スマートフォーンやタブレットコンピューターの新たな大問題である.今のところ,その対策は聞こえていない.

②キャリアと端末の分離

日本ではキャリア(ドコモ,KDDIau,ソフトバンクの携帯電話網)と携帯電話は一対の縦構造である.世界的に例を見ない形態である.この事によって端末開発業者の投資を促し,携帯端末の購入価格をひき下げ,急速な普及を実現してきたのである.

一方,世界では端末とキャリアは分離された形で発展してきた.当然,端末ではソフトの互換を実現する為の上記OS戦争が起こり,キャリアでは端末接続競争が起こる.

結局,日本でも,キャリア側は各社のスマートフォン,タブレットコンピュータとの接続を競い,利用者側は任意の携帯端末,電話網をそれぞれ選ぶ事になる.

かくて携帯電話の為のキャリア別縦割り構造は崩れて行く.特に
タブレットコンピューターの急速な普及を考えれば,無線網と端末の分離は必然になるのである..

そうなると,従来のように,端末価格を通信費で賄う事が出来なくなる.その分,通信費は下がる.或いは,キャリアと長期契約すれば端末価格は安くなるなら,通信料は余り下らないかもしれない.又,現在の会社別の無線電話網の重複投資が回避されるもしれない.いづれにせよ,日本の携帯電話事情は一変する事になる.

まさにパソコンと同じように,世界規模で部品,端末,ソフト,ネット,プロバイダーが分離され,産業が横構造に急速に変化して行くのである.頭から先まで全て自前でやる日本的縦構造は崩れるのである.

この横構造は責任の所在が曖昧になる欠点があるが,だからと言って縦構造に固執していては生き残れないのである.これはIT業界だけではなく,多くの産業で有り得る変化である.

③携帯端末向けのアプリケーションソフト競走

OS覇権戦争の中で,端末向け人気アプリケーションソフトの品揃え,開発スキル人口の拡大の競走が激しくなっている.各OSメーカーはアプリ開発キットを提供しながら,これに取り組んでいるが,既にアップルが10数万本と断トツにリードしている様である.

又,アプリケーション開発者にとっては,世界規模でソフトを売るチャンスでもある.専門家だけではなく,一般人の参入も多くなる.アイデア勝負の世界が繰り広げられる.

④コンテンツ及びコンテンツ配信の競走

いつでも,どこでも,で操作性に優れた携帯端末(ipadに代表されるタブレットコンピュータ)の普及を想定して,新たなコンテンツの配信サービス競走が始まっている.音楽,映画,ゲーム,電子出版,学校教材,新聞,テレビ,カタログ,広告宣伝,などのネット配信が急速に拡大し,しかも,世界規模で行われる事になる.

特に電子出版は本では出来ない表現が可能になるし,価格は格段に安くなるし.著者の印税が高くなる.出版から販売に関わるプロセスが不要になるし,在庫も不要になる.出版物の廃棄コストも不要になるし,省エネ・省資源効果は極めて大きい.又,何よりも,ロングテール現象(従来,採算が取れなかったコンテンツも販売可能になる)が起こる.これはもはや出版革命と言えるかもしれない.

世界に漫画を売ったり,マニアックな電子本を売りだしたり,素人が電子出版したり,端末向けアプリケーションソフトと同様に,電子出版で億万長者が出る時代かもしれない.

一方,従来の出版物は所有の価値で存在するとは思うが,端末の普及とともに,ますます出版の採算が悪化し,出版物が激減する可能性がある.

⑤パソコンVS携帯端末の競争

ビジネスシーンにおいても,携帯端末が無線網の発達によって,プライベートクラウド(グループウエアー,業務用システムなど)に活用され,オフィスの中も外も,この携帯端末がビジネスの必須アイテムになるる可能性が高い.まさにモバイル時代の到来である.

キーボード,マウスがタッチスクリーンに抵抗なく変わる事が出来れば,従来のパソコンに取って代るかもしれない.ウインテルの終焉になるかもしれないのである.

以上,激しい競争を続けながら,次世代の情報化社会が形作られると思う.この様な携帯端末の旋風に対し,結局,箱庭的思考,縦文化・自前主義,から脱しられなかった日本はレガシーコンピュータ,パソコン,そして今度は携帯端末と同じ轍を踏む事になったのである.残念ながら,つくづく世界のデファクトを日本が取る事など所詮無理だと思わざるを得ないのである.

自動車,産業機器,ロボット,家電等の組み込みソフトも同じ轍を踏む事になるのだろうか.製品のソフト化への戦略は極めて重要なのである.

ところで,米国のファイトにはつくづく頭が下がる.永いIBMの世界制覇に対し,マイクロソフト,アップル,グーグル,アマゾン等,次から次と世界的挑戦者が出て来る.日本的発想の'そんな事は無理だ'と思う事を,いつも誰かが挑戦しているのである.

例えば,グーグルは’地図,書籍,映像,等,あらゆる情報を電子化し,ネット上の情報も含めて,いつでも、どこでも,利用出来るようにしよう’と,これに挑戦したのである.携帯端末もこの延長線にある.

この挑戦がクラウドコンピュータの概念を生み,マイクロソフトのビジネスモデルを揺るがすだけでなく,今度は携帯端末ソフトの世界制覇にまでが話しが広がるのである.

日本ではグーグルの様な発想は出来ても,徹底的に実行し続けた者はいない.地図情報にしろ書籍の電子化にしろ,途中で何回も挫折して来た.

標準化をどうする,世界標準にならないリスクもある,技術革新で陳腐化するリスクもある,誰が入力する,費用はどうする,著作権はどうする,採算はどうする,等々で挫折するのである.

アップル社の執念もすごい.マイクロソフト,インテルを向こうに回してマッキントッシュの独自性で頑張って来た.その文化・技術の延長線でipot,iphone,ipadなど携帯端末に挑戦して来た.勿論,無線網のブロードバント化,タッチスクリーン技術革新,が連動しているが,ユビキタスならモバイルが主流になるとの確信と打倒マイクロソフトの執念があったのだと思う.

ビルゲーツの出現以来,どうやら既存企業の挑戦ではなく,個人が挑戦する文化が,これからも世界を切り開いていく感じがする.

そんなわけで,残念ながら現状では,大きな戦略,オピニオンメーキング,ハード,ソフトのアークテクチヤーはアメリカ,日本はハードのテクノロジーと製造技術で生きて行く事になりそうである.幕末以来,攘夷を叫んでも戦いにならない歴史が続く.

追伸

当記事発信の後,国産携帯端末メーカーが共同でOSを開発するとの報道があった.余りにも遅い感じがする以上に,いつものドメステックな発想が気がかりである.過去に共同で成功したためしがない.

世界の既アプリケーションソフトとの互換性を取る事になると思うが,後追いの感が否めない.世界的視野で新しい発想を入れた戦略が描けないものだろうか.共同開発するにしても世界各国との連携が必要である.

一方,端末OS戦争以外にも,端末ハード開発,通信網技術,端末アプリケーション開発,コンテンツ配信サービス,コンテンツ開発,クラウドコンピューテング,などビジネス領域は一気に広がっている.世界規模でこれらのビジネスをどう展開するかも重要な視点だと思う.

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