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2010.05.14

211 山口教授提言(民主党原点回帰)への反論

2010年5月14日,日本経済新聞・経済教室での北大山口教授の提言に対し,率直な感想を述べたい.

記事によれば,教授は民主党を軸とする政権交代の必要性を説いていた.しかし民主党政権は政権交代が自己目的化し,後の展望がなく,期待はずれであった.しかし,政権を投げ出す事なく,原点に立ち返って,政策,人事,政権運営を見直せ,との提言である.

この原点とは自民党政権からの政策転換であり,

①裁量的配分から制度的再配分へ
②米国追随からアジアへのシフトへ
③成長の限界を踏まえてポスト物質主義,ポスト権威主義へ
④選挙至上主義からの脱却
⑤政治と金の疑惑解明
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だと言う.これに立ち返るべきだとした.いくつか感想を述べたい.

①民主党政権は’期待はずれ’との指摘について,

私見によれば’期待外れ’ではなく,’予想通リ’の感が強い.何よりも,当ブログで懸念した事ばかりが起こっている.偶然ではなく,必然的に起こっている事ばかりである.’期待はずれ’と言う教授は,必然性を見抜けなかったのだろうか.

②民主党の本来の政治理念に立ち返って,政策転換をせよ,との提言について

政策転換の軸である制度的分配論であるが,国民に公平に政策的恩恵を配分し,生活不安を解消するとともに,内需主導の経済を作り出す,いわゆる’公明正大な再配分’’生活第一路線’を貫けとの提言されている.

私の理解不足かも知れないが,富の産出も分配も社会主義に移行しよう,あるいは,パイの拡大は資本主義で,パイの分配は社会主義で,と言うのだろうか.分配論だけではリアリティがない.

私見によれば,厳しい財政事情の中でこそ,優先度や重点施策による分配しか考えられない.もちろん,教授が指摘するこの裁量的分配の問題点は厳しく排除しなければならない事は当然である.

率直に言って,教授の提言する政策転換を貫けば,財政危機,デフレ経済,が加速し,日本は貧しい社会主義国家になる.教授の提言に近い民主党目玉政策も,現実の政治の中で,迷走を繰り返し,いかに裏付けのない政策であったかを証明した.

実現性のない思いや使命感は野党に許されても,与党には許されない.与党が公約を実行できなければ,責任を取らねば,詐欺になる.

従って,政治理念に立ち返って政策転換に徹せよ,ではなく,責任を取って解散し,裏付けのある理念,政策を,しっかり作り直せと,提言すべきである.

③民主党が続投せよ,との提言について

上記の様に既に露呈した政策の問題は必然的結末であり,いまさらそこに回帰して,続投せよ,は有り得ないと思う.これ以上の続投は日本にとって極めて危険だと思う.

当ブログで度々触れているが,合成の誤謬につながる’選挙優先','優しさ'は無責任と表裏一体であり,こんな政党に厳しい日本の経営を任せられないと思うのである.

又,そもそも,民主党は反自民で集まった,ごった煮の政党であり,批判勢力として存在していた.従って,理念の浸透や政権運営など,もともと無理なのである.

従って,原点回帰し続投せよ,ではなく,『ごった煮政党』,『合成の誤謬政党』,から脱却する為に,政治理念,政策による分離再編をせよ,と提言すべきだと思う.

急がばまわれになるが,それが政界再編につながれば,日本の政治にとって,より建設的だと思う.

④米国追随からアジア重視へ,との提言について

経済は既にボーダレスで動いている.又歴史的に経済支援もやってきた.環境問題もアジア規模での取り組みは当然である.問題は安全保障であり,中国・北朝鮮対策である.これをどうすべきと提言しているのか見えない.紙面の関係だと思うが,是非御提言を知りたい物である.

⑤ポスト物質主義,ポスト権威主義について

これも良く分からない.紙面の都合で言い足りないのだと思うが,’消費は美徳’’伝統的家父長’文化からの脱却を言っているのだろうか.いかにも文化論的で禅問答を繰り返すだけで政治課題になじまない感じがする.

文化論で言うなら日本文化と米国・中国・ヨ-ロッパとの比較分化論や政治で言えば憲法問題,集団的自衛問題,財政赤字問題,教育問題の論議を,経済で言えばパイの拡大策など,やるべきことはたくさんある.政権与党として処方箋が既にあるなら,民主党に示せと言うべきである.

⑥選挙至上主義の脱却,政治と金の疑惑解明への提言は当然である.

政治資金問題初め,数々の言動に責任を取らない現政権は野党時代,事あるごとに責任を追及していた事と180度違う.又,裏付けのない政策を平気で吹聴する.そんな自分に恥ずかしくないのだろうか.自尊心・プライドより,自分の保身を優先する政治家,言動に責任を取らない政治家は信用されない,どころか失格である.

立場が変わると,考えも,言動も,変わるのは人の世の常であるが,政治家は変わるなら責任をとって辞任しなければならない.それほど権力を与えられる政治家の言動は重いのである.

⑦第3の道への提言について

教授は政治・経済理念として第3の道を提言されている.勉強不足であるが,第1の道は戦後の公共事業による経済振興,第2の道は新自由主義による経済振興,そして第3の道を環境・福祉による経済振興,と言うようである.

供給サイドへの公金の支出から需要サイドへの支出,パイの拡大よりパイの分配と言う社会主義への道,と言った方が分かりやすい感じがする.

この第3の道の中身が分からないが,人手不足の福祉,介護分野に公費を入れて雇用を増やし,失業率を改善し,内需を増す,と言っているようである.これを経済対策と言うのであれば,財源や経済の波及効果の疑問がある.

そもそも経済対策や雇用対策で福祉や介護を論じる事に違和感がある.介護を充実させる為に,人材・技術・施設・民間活力をどう高めていくか,の発想が必要なのである.

時々,聞く福祉経済論も同じである.牽引するエンジンが税金である内は経済対策にはなりえない.ただ,福祉分野の公共事業経済を拡大するだけである.まさに第一の道と同じであり,混合経済をさらに進めて,まさに,社会主義経済に行き着く道である.

公金投入が続く内は良いが,結局,貧しい社会主義国になって行く.パイの拡大を経済政策とするなら,間逆の道と言うしかない.

子供手当て,農家の戸別保障,などの個人財産への給付政策も第3の道なのだろうか.所得再分配を繰り返しているうちに,財源が無くなるか,借金が増えるだけである.

支給の規模にもよるが,内需拡大効果も限定的である.そもそも,個人救済目的ではなく,個人への資産を増やす為に税金を使う事は日本の税制ではなかったのである.

要するに公金の使い方は経費と投資を仕分けすべきである.経費は公平に,投資は戦略的に,は当然である.その中に,公金の使い先があるのであって,使い道が先にあるわけがない.

果たして民主党は,この第3の道を社会主義的政治思想から考えたのか,選挙屋が選挙に勝つ為のポピュリズムから発想したのか,定かではないが,財源などの裏づけが乏しい事を考えれば,無責任な道だと言うしかないのである.

第3の道と言うと,何か救世主が現れたように,大衆の気を引くが,中身は文学の域を出ない感じがするのである.

私見によれば,日本の凋落を救うには,歳出削減(小さな政府・国の固定費縮少・規制緩和),円安誘導,輸出及び技術革新による民業の活性化,しかない.稼がねば何も始まらないのである.

決して公共事業経済の拡大,格差是正,公平な分配,増税と言った大きな政府志向ではないと思う.そんな余裕や冗長は,もう日本に残っていないのである.

以上,浅学の感想で教授には失礼であるが,率直な感想を述べさせてもらった.

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コメント

山口教授の’世界’3月号の論文は、醜い言い訳の羅列であった。学者としてペンを折るべきと感じた。

投稿: yoshida | 2011.02.13 10:49

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