« 211 山口教授提言(民主党原点回帰)への反論 | トップページ | 213 無責任な首相・民主党 »

2010.05.17

212 鈴木教授提言(第3の道は誤り)への賛同

2010年5月17日,日本経済新聞・経済教室で学習院大学鈴木教授の提言が掲載された.教授の提言は民主党の言う『増税&社会保障で経済成長を』は誤りだ.と提言されている.

民主党の主張はいわゆる福祉経済論である.その考えは社会保障分野への莫大な公的資金(税金)の投入は福祉が手厚くなるだけではなく,新たな雇用や消費を産み,GDPを押し上げ,国民の所得も税収も増加するとの考え方の様である.

この『増税&社会保障で経済成長を』は大阪大学小野教授の主張を参考にしているようである.その考えは税負担する人と受給する人が違っても国全体では相殺される(富の移転だけ).しかも受給者の消費拡大で税負担者にもリターンがあると言う.従って,失業対策(雇用対策)が経済対策には効果的だとしている.

小野教授の増税は必ずしも消費を落とさないとの説に同調して民主党は人手不足の社会保障分野での雇用拡大を成長戦略としたのである.供給サイドから需要サイドへの公金支出を経済対策だとしたのである.

それに対し,鈴木教授は

・社会保障費拡大が民間自立の潜在成長にまで波及して行くとは考えられない
・不安解消や低所得者への再分配は経済成長に繋がるほど消費は拡大しない


であり,第三の道とか社会福祉経済は『まじない経済学』であり,単にバラマキ政策を正当化しようとしているに過ぎない,との主張である.
全く同感であるが,これに既に発信している私見を加えてみたい

小野教授の考えは『貧しい社会主義国家への道』にならないか.

政府は金を回すだけの再分配機構としても,教授の主張に従えば,限りなく(完全雇用まで)政府のパイの再分配機能を増やす事を意味している.その分自由主義経済の再配分機能が抑制され,社会主義経済に近づくのである.かくて税負担者のパイの拡大意欲が衰退し,格差や失業が産まれない貧しい社会主義経済に行きつくのである.もちろんその前に財政は破綻すると思うが.

ケインズ経済学を誤解していないか


もうひとつ疑問がある.小野教授はケインジアンと聞いているが,大失業時代のケインズ経済学を誤解して,現在の経済環境に持ち込んでいないだろうか
.

ケインズ経済学は経済波及効果が期待できる分野への財政出動で当面の雇用,景気を支えようとする考えである.波及効果と言うリターンが前提であり,財政出動は投資である.砂山を移す作業に公金を使う理論ではないのである.

小野教授はこの波及効果をどの程度予測しているのだろうか.学生時代,産業連関分析やターンパイク理論(経済波及効果の予測理論)を学んだ事を思い出すが,小野教授はどのような手法で経済波及効果の予測をしているのだろうか.

③失業率を下げる事と経済成長が連動するか

鈴木教授の指摘の通り,失業率を落とす事と経済成長する事は必ずしも連動しないと思う.現在は大失業時代の様に労働集約産業が経済を支えているわけではない,その経済成長は限界効用が逓減する中で,技術革新や生産性あるいはグローバル経済の中での優位性に依存しているのである.又,日本の経済規模は失業率低下による消費増程度では支えられないくらい大きいのである.ちなみに約500兆のGDPのうち個人消費は半分(250兆)くらいである.

④第三の道がグローバル時代の経済政策か

内需とは個人消費,設備・在庫投資等の民間需要と公共事業などの公的需要に大別される.この内需に外需(輸出入差額)を加えたものがGDPである.

さて,政府が行う経済対策とは,GDP(民需・外需)を伸ばす為に,金融政策,財政政策と並行して,産業が発展して行く為の財政支出(公的需要)や制度改革を実施する事である.あくまでも主役は産業・企業であり,政府はそれを支える立場なのである.

従って,グローバル経済においては,内需拡大と言っても,円高であれば輸入に繋がり易い.従って,内需も外需もなく,国内産業を強くし,国内外に売る事に繋がらなければGDPは伸長しないのである.その意味でサプライサイド(産業)の強化・活力が絶対不可欠だと思うのである.

福祉経済政策に波及効果があったとしても,この様な本来の経済政策とは程遠いと思う.財源は常に公金が伴ういわゆる公共事業経済であり,その支出を超えて税収があるわけではないし,輸出が増えるわけでもない,従って確実に財政を圧迫し続ける事になるのである.まさに鈴木教授の言う民間自立の成長とは程遠いのである.

この第三の道論は①でも触れたが,混合経済から社会主義経済への道である.貧しい社会主義国家への道を良しとするなら別だが,パイの拡大を目指す経済対策ではないと思う.

⑤公金の使い方を投資と経費に分離して考える必要があるのではないか.

雇用・年金・医療・介護・教育あるいは災害対策,国防,等は社会的費用と考えて,経済政策とは分離して議論すべきだと思う.

昔,田中角栄は新潟の豪雪地帯の道路・トンネル,土地改良を福祉事業だと言った.経済効果ではなく,命にかかわる事業だと主張したのである.議論を呼ぶ所ではあるが,少なくとも,経済効果がある等と嘘は言わなかったのである.一方,列島改造論では経済成長に向けた先行投資論を展開したのである.

社会的費用支出も経済対策だとする考えは経済成長はおろか公共事業経済を拡大するだけである.何よりも財政の破綻への道になる.

又,現政権は公的資金の使い方を'コンクリートから人へ’と言うが,これを経済政策と位置付けている向きもある.この考えで支出を続けると,経済も財政も悪化のスパイラルに陥る可能性がある.成長戦略がないとの批判は当然である.

私見であるが,田中角栄ではないが,公金の使い方を投資と経費に分離して考えるべきである.経済政策は投資である.リターン(波及効果)を求める事から戦略性が大事になる.社会保障は経費である.経費は波及効果で分配先を決めるのではなく,平等性や人道性が大事になる.もちろん経費は稼ぎの中からしか捻出できないのである.

投資と経費がまぜこぜの議論は財政を拡大させるだけである.又,戦略性のない経済政策は無駄と機会ロスを産むだけである.従って,財政支出は,この二つの概念で考えるべきだと思うのである.この事こそが,選挙目当てや当面の景気対策で行われた従来の公共事業の教訓だと思う.

以上,鈴木教授の主張に加えて,私見を述べた.

現状認識としては,不況から新しい技術や産業が起った歴史を信じたい気分である.内向きなパイの分配論に終始している場合ではないと思う.グローバル時代に日本の凋落(技術や職人,ものつくりの流出)を防ぎ,いかにクールジャパンを世界に売るかが緊急の課題だと思う.

政府の役割はこれを仕切るのではなく,民間活力の足を引っ張らない事である.技術や産業振興なしに社会保障の議論もないのである.

しかし,民主党は行政の脆弱性を撲滅する改革をやりながら,その削減財源の使い道は第三の道の社会主義的な大きな政府志向である.これでは財政問題も経済成長も展望が開けないのである.

真の経済対策とは借金900兆に代表される日本的公共事業経済,日本的社会主義経済,茹で蛙経済から脱却する事である.苦しい事ではあるが,これしか選択肢が残っていないと思う.

経済政策や政治は,時代背景,問題に応じて論じ,実行すべきである.時代背景と無関係な理屈の話や,合成の誤謬になるような選挙公約を掲げたり,その公約に固執する政党,政治家に国を任せられないのである.

.

|

« 211 山口教授提言(民主党原点回帰)への反論 | トップページ | 213 無責任な首相・民主党 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134518/48381183

この記事へのトラックバック一覧です: 212 鈴木教授提言(第3の道は誤り)への賛同:

« 211 山口教授提言(民主党原点回帰)への反論 | トップページ | 213 無責任な首相・民主党 »