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2010.07.30

221 円高・デフレ・対策考

昨年当ブログ『NO191 円高,株安,デフレ,対策』でこの問題を取り上げているが依然事態は深刻である.そんな中で,GDPの2倍に近い900兆の借金を背景に,単年度の財政赤字対策として消費税増税論が活発である.これで,はたして,税収は増えても,円高,デフレ,株安,景気低迷はどうなるのだろうか.極めて不安である.

特に①経済悪化(デフレ)②財政逼迫③国債発行④財政危機⑤増税①経済悪化(デフレ)へ,と言う連鎖をどう断ち切るか,と言う処方箋が全く見えていないのである.どうも資金の流れの日本的構造を変えなければ,この悪の連鎖から脱出できないのではないか,と感じている.そこで金の流れに注目して考えてみた.

1.日本の資金の流れの特徴

明らかなように,日本の国債は郵貯,簡保,大手銀行,大手生保,社会保険,年金,等,国民から集めた巨額な資金で支えられている事が最大の特徴である.その為,国際的なマーケットの見えざる手,市場原理が働く事もなく,歯止めされる事もなく,政治の名のもとで肥大化して来た.その大きさからすれば,まさに日本は社会主義だと揶揄されるゆえんである.

この国債は,かつて,経済復興,高度成長の為の社会投資で効果を上げてきたと思うが,高度成長後もバブル崩壊後も経済カンフル剤として,利権や選挙対策として,さらには社会保障や巨大化した行政コストの財源として発行し続けてきた.安易な借金が効果のない公共事業を生んできた側面もある.勿論,増税より借金(自分の負担より未来の負担)を許容する政治家や国民性も背景にあったと思う.

元来,日本の資金の流れは投資より融資(借金)が中心である.企業は自己資本より他人資本で,政府も自己資金に当たる税収より,他人資本である借金で運営されてきたのである.かくて金融機関を中心に日本の経済は回って来たのである.しかし,バブル崩壊で莫大の不良債権を抱える事になる.

一時,自己資本強化の動きがあったが,他人資本中心の運営は,現在も余り変わっていない.金融機関も企業も個人も,投資より貯蓄,株式発行より借金を選ぶ文化が国債を支えて来たのである.

振り返れば,明治の中央集権国家建設以来,現在まで,日本の資金の流れは政府(税金,社会保険,国債)・金融機関(預金)で金を集め,公共事業や企業融資で金を流す.その金を集めて又流す,と言う政官財による資金の流れを作り上げ,日本を引っ張ってきたと言えるのである.

2.国債の発行が慢性化した理由

日本国土の特徴から来る建設国債の必要性や歳出の増大(赤字国債)が慢性化の理由であるが,もうひとつ,これを安易に可能とした日本的特質がある.

経済成長とインフレ(物価上昇・貨幣価値下落)が予測されれば,借金する側(債務者)は積極的になる.現に昭和45年(1970年)のGDPは75兆円に対し,平成21年(2009年)は482兆円で,40年間で6.5倍になっている.多分,給与も,物価も,それ位の上昇があったと思う.これを期待して借金をしながら,経済成長を進めて来たのである.

一方,融資する側(債権者)からすれば,インフレ傾向に対し,新たな国債を買わなくなるはずである.これで債務者と債権者の拮抗が起こるのである.

しかし,現実がそうならなかった.郵貯・簡保・社会保険などの政府系資金が国債を買い続けたからである.経済原理に反して,政府系資金は効率の悪い資金運用をし続けた事になる.まさに政府系資金は政官財の財布(打ちでの小槌)になっていたのである.これがいわゆる財政投融資問題である.この効率の悪い資金運用は必ず日本経済を停滞,衰退させる因子になって行くと思う.

一方,GDPのピークは平成9年(1997年)の514兆円を最後に,それ以来,現在まで,右肩上がりの基調を失っている.しかも,現在は円高,デフレ経済である.今度は,経済原理に従って,国債の保有や新たな引き受け手も多くなる.国債を買う資金があるまで,国債は買われ続ける事になる.このようにインフレ時もデフレ時も国債発行は慢性化しているのである.

3.デフレと連動した財政危機

3年前のサブプライム問題,2年前のリーマン破綻を引き金に世界は金融危機に陥った.日本経済は輸出の激減,株価暴落など経済の縮少が起こった.同時に,中国等の台頭で輸入品の価格下落,工場の海外移転が起こり,国内経済の縮少や価格下落が加速したのである.国民生活も収入や消費の減,失業者の増加をこうむっているのである.

一方,このデフレは税収を落とし,赤字財政を拡大する.そこで国債発行か,増税が必要になる.国債発行に頼れば,残高がさらに膨らみ危険水域に入ってくる.増税すればデフレをさらに加速しかねないのである.従って,このデフレを退治する事が最優先になるのである.

4.デフレの原因と円高の理由

この.デフレになる要因は多くあると思うが,直接的には円高が大きく影響していると思う.円高によって,国内企業は安い輸入品に駆逐され,輸出企業は海外にシフトする.結果,国内経済は需要低迷,産業空洞化,失業に陥っているのである.

本来なら,世界的な金融危機,輸出の下落,新興国の台頭で円安,株安に動く筈である.しかし,円の価値だけは,史上空前の高さで続伸中である.

なぜこんな情勢で円高が起こるのだろうか.ドル安だけが原因だろうか.ならば他国の通貨も上がるはずである.円だけが高くなるのは日本独特の理由があるからに違いない.

考えられる事は,海外から見れば,日本は無借金で債権国に見えているに違いない.膨大な借金も日本人が負担するだけだ.と見えるのである.そこで,世界の行き場のない資金が安全な寄港先として,円に集まっているのである.又,低金利と言っても,日本はデフレであり,物価下落を加味すれば高金利国なのである.これも円買いを加速させている.

この様に,日本はGDPの2倍の借金があるにも関わらず,財政破綻を起こさず,かつデフレで経済不況であるにもかかわらず,円買いが起こっている不思議な国なのである.

5.円高対策

しかし,不思議な国は長続きしない.円高が続けば,いづれ経済不況から国債は暴落し,日本的特質が今度は一気に日本経済に牙をむく事になる.これに乗じて,日本の競争力低下を狙って,円を買い続る国もありそうである.褒め殺し作戦と言う,形を変えた戦争を仕掛けられている事になる.

円高を阻止しない限り,日本は,大噴火が予知されるガラバゴス島になる.NO220第5期グローバル時代と同じ課題を抱えている事になる.

このように,日本の内向きな資金の流れ(日本の特質)が円高の原因になっているわけだが,この特質を変えない限り,国家財政はもちろん経済にも,国民生活にも,光が見えて来ないと思うのである.

一般的に円高・デフレ対策はインフレターゲットによる紙幣の増発(量的緩和)と財政出動による需要拡大と言われている.私見によれば,これでは資金の流れるルートを旧態のままにして,流量を増やすだけである.

欧米各国では財政赤字対策,景気対策,為替対策として,量的緩和,財政縮少,規制緩,を共有化していると言う.これは民間主体の資金の流れを作りながら,財政・経済の問題を同時に解決しようとするものであり,極めて論理的な政策だと思う.

日本も資金の流れを変える事が重要であり,大いに参考にすべきだと思う.又,1500兆(国の借金900兆も含めて)と言われる日本の金融資産をいかに活発に動かすか,と言う次の様な視点も必要だと思う.

・眠っている国内資金を海外に向かわせる方策はないか(円売り・円高対策)
・眠っている国内資金を投資や消費に向かわせる方策はないか(デフレ対策)


小泉改革の郵政民営化等で,資金の流れを変える政策も,この一環だと思うが,最近の政治は逆に内向きで財政肥大化の方向である.もう一度,資金の流れを変える政策の検討が必要だと思う.

素人の分析で,間違いがあると思うが,是非,専門家の所見を聞きたいと思う.そんな矢先,本日,報道番組のスーパーモーニングでエコノミストが面白い提案をしていた.’貯蓄税の新設’である.

例えば名寄せをした上で,貯蓄の元本2000万を超える部分(休眠資金)に数%の課税をせよ,との提案である.毎年,課税分が貯蓄を目減りさせる事になるから,休眠資金を投資や消費に誘導出来ると言う.

この貯蓄税は消費税のようにデフレや負担の逆進性は起こらないだけでなく,消費税増税並みの税収を得られると言う.たとえ貯蓄税を回避する行動があっても,休眠資金が消費,株,不動産,海外投資に向う事になり,,生きた金に変わると言う.その結果,円安,株高,景気上昇,税収増に繋がると言うのである.

これで莫大な資金が動く可能性があり,試算が必要であるが,円高,株安,デフレ,財政赤字の解消に効果が出る感じがする.

民間の休眠資金を生き金にする発想は,なる程と思った.儲ける事より,損しない事を好む国民性や,それで集めた貯蓄を国債に回すと言う日本的構造からの脱却にも繋がる.確かに,儲ける事,楽しむ事の価値観がなければ,経済は回らないのは当然である.

この’貯蓄税’のさらなる検証や制度設計が必要だと思うが,是非検討すべき政策だと思う.又,資金の流れを変える政策は他にもあると思うが,経済のメカニズムに逆らうのではなく,そのメカニズムを利用した政策でなければならないと思う.

6.現状の政策論議

昨今の政策論議では,相互にリンクした円高,デフレ,財政赤字,の問題に対し,今のところ,的確な対策が打ち出されていないと思う.昨今の史上空前の円高に際しても,政府も日銀も,’様子を見る’と言うが,傍観しているだけなのである.世界中が為替戦争の真っただ中だと言うのに.

この傍観に加えて,政策論議においては,歳出が膨らむから増税だ,財政危機が来るから消費税増税だ,借金してでも,財政出動で経済を立て直す事が先だ,郵政民営化に反対だ,増税しても需要は落ちない第3の道がある,などと言う政治家がいる.何かピンボケに感じる.

発想がいづれも従来の内向きな資金の流れの上塗りから脱していない.結局,日本的特質を肥大化させるだけで,円高,デフレ,財政破綻のリスクは軽減どころか増幅する危険性を感じるのである.資金の流れを変える発想が不可欠だと思う.

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