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2010.07.17

219 コラム・小説のタイトル,書き出しへの興味(祇園祭,他)

毎年行われる祇園祭の記事をいつも興味深く見ている.新聞記事と言うより,毎年の催事を伝えるコラムであるが,この長い歴史を引き継いだ壮大な祇園祭に対して,何を取り上げるのか,どんなタイトルにするのか,書き出しをどうするのか,著者の感性や教養,コラムニストの力量が現れるだけに,興味が湧くのである.そして,自分だったらどう書くか,とか,やっぱり記事はすごい,とかを思うのである.

そこで,勝負がかかる『タイトル』と『書き出し』をいくつか列記してみた.

本日の記事(日経新聞夕刊)

『さあ夏本番,山鉾巡行16万人,近畿で梅雨開け』
京都の夏を代表する祇園祭りは17日,ハイライトの山鉾巡行を迎え,豪華絢爛な山と鉾,計32基の祭列が都大路を優雅に進んだ.・・・・・・・

過去の例

『豪華絵巻の山鉾巡行』
日本の三大祭りのひとつ,京都祇園祭りは17日,ハイライトの山鉾巡行が行われた.阪神大震災からちょうど半年,町衆たちは被災地復興への祈りも込めて,高らかに祇園囃子を奏でた.・・・・・

『都大路,ひしめく熱気,祇園祭,宵山に56万人』
古都の夏を彩る京都・祇園祭は16日の夜,宵山を迎えた.コンチキチンの祇園囃子が聞こえるなか,歩行者天国に変わった四条通り周辺は,うちわを帯にした浴衣姿の若い女性など,人の波で埋め尽くされ,宵宵山(15日)の45万人を上回る56万人の人出を記録した.・・・・・・・

『56万人,最高潮、祇園祭・宵山』
16日宵山を迎えた京都・祇園祭は56万人(午後11時現在,京都府警調べ)が繰り出し,最高潮を迎えた.市内のこの日の最高気温は29.1度,古都の夏はまっ盛り.
「安産のお守りは常に出ません,今晩限り.信心のおん方様は受けてお帰りなされましょう」と,ちまきや厄除けのお守りを売る,はっぴ姿の子供の掛け声,祇園囃子の鐘の音.山鉾を飾る南蛮舶来の懸想品が提灯の明かりに浮かび,祭り気分を盛り上げた.・・・・・・・・・

『傘も彩り山鉾巡行,雨にも負けず11万人』
祇園囃子もにぎやかに,世界からの宝物で飾られた山鉾が都大路をゆっくりと進む.京都・祇園祭は17日,山鉾巡行が行われた.梅雨前線の影響で雨が降りしきる中,約3キロの沿道は傘をさした11万人(正午現在京都府警調べ)の観客で埋まった.変わろうとしている古都の街並みの中をコンチキチンの囃子が響き,祭りは最高潮に達した.・・・・・・・

こんな感じである.若干,新聞記事らしく,天候や観客数に触れる事は例年同じだが,タイトルや書き出しには毎年苦労しているに違いない.いやプロの書き手は,人波と熱気の現場に行けば,たちどころに文章が湧いてくるのかも知れない.あるいは,毎年の事だから書き出しの常套句がたくさん蓄積されていて,その中から選んでいるだけかも知れない.本当のところはわからない.

何10年間の祇園祭の記事(コラム)を新聞社毎に,年順に並べたら,どんな事が見えてくるだろうか.一度やってみたい気もする.意地悪だろうか.新聞社毎の傾向とか,視点の置き方,或いは,力作が出た翌年のコラムには興味が湧く.

祇園祭ではないが,私なりに,感心した書き出しの例を次に紹介したい.

『9人と40万人』
鷲羽の山は全山紅葉,児島湾に燃えるような朱を落とす.倉敷市の最南端,備讃瀬戸に突き出た久須美鼻から南を望む島々もまた初冬の日を受けて一段と鮮やかな色合いを増している.その鷲羽のふところを,縫って下津井電鉄が走っている.延長6.5キロのミニ電鉄で1日19往復,利用者は日に千人ばかり.この会社の従業員は管理職を含めて9人にすぎない.・・・・・・

『洞爺湖サミット』
森の青葉を揺らし,紺碧の湖面を渡る風が,22カ国の首脳が集う山上のホテルを吹く抜ける.洞爺湖サミットは初夏の北海道の透明な光と,火山が生んだ絶景が主な舞台装置だ.それがあいにくの雨と霧.光も絶景もなく視界不良のまま幕を開けた.・・・・・

まさに映画のトップシーンである.さてこれからどんなドラマが始まるのか,読み手を惹きつける.静寂な大自然を写しながらゆっくりと幕が開き,遠くに牧場が見える,その牧場にズームインしながら,井戸水をくみ上げている娘に焦点が当たる.質素な服装ながら気丈な感じのする美人だ.そんな西部劇のトップシーンを彷彿させる.こんな入り方には思わず唸ってしまうのである.

小説でも,論文でも,コラムでも,あるいは,映画でも,プレゼンテーションでも,タイトルと書き出しでほぼ掴みが決まる.本文を推敲するうちに,言いたい事が変化し,それにふさわしいタイトルと書き出しが最後に決まる事もあると思う.それ程,大切なのである.

話が変わるが,最初に描写力,文章力のすごさを感じたのは笹沢佐保の小説であった.そのすごさに魅了されて,200冊ほど片っぱしから乱読した.彼の単行本はどれをとっても,最後まで引きずり込まれ,一気に読まずには,いられなくなる.深夜の帰宅にもかかわらず,人影もまばらな下車駅のベンチで,街灯を頼りに,最後まで読みふけった事を思い出す.

笹沢佐保の小説の書き出し例

『大江戸無頼,反抗の日々』
その日,江戸は霞ヶ関にある松平肥後守の上屋敷を,ひとりの男が訪れた.年は二十七,八で,顔色は青白いが背が高くて,堂々たる体格をしている.木綿布子を着て,町人風の外見である.武家奉公をして歩く中間なのに違いない.だが気品があって眼光鋭く,なかなかの面構えであった.男は取次ぎの者に,何度も頭を下げた.組頭に,会いたいというのである.特技は槍持ちで,どのような槍でも自由に扱えると男は豪語した.・・・・・・・

大作家に不遜だが,私の感想で言えば,彼の小説には全く冗長度がない.途中で横道にそれたり,説明や講釈にページを裂く事はない.松本清張とは全く違う.この書き出し例もそうだが,一字一句の描写が,その後の物語の展開に効いてくる.それだけに,最後まで読み手を掴んで離さないのである.

そのせいか,小説全体に凄味や臨場感,があふれている.ストーリー展開も息も抜けないスピード感がある.彼の小説は,きっと,構成力や文章力だけではなく,笹沢佐保自身の人生観や価値観が大きく影響していると思う.

そんなわけで,祇園祭を記事のように,書き手の苦労に思いをはせながらも,惹き込まれる文章,言い得て妙な表現や言葉に出会うと,大変,徳した気分になる.そんな文章や言葉に,これからも出会いたいものである.

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