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2011.01.15

234 与謝野氏の入閣劇とその影響

2011年1月24日からの通常国会を前に,昨日,菅内閣の改造が発表された.大きな改造点は官房・国交・法務・国安の交代,与謝野氏の入閣である.参院の問責決議への対応,TPPへの対応,消費税増税策の推進,ねじれ国会対策,脱小沢路線,などへの思いがあったとされている.今回もそうだが,又,拉致担当とか少子化担当も変わった.何回たらい回しになったのだろうか.

はたして,この改造で,低下した内閣支持率が回復するのか,ねじれ国会を乗り切れるのか,注目される所である.直観によれば,民主党への不信感,マニフェストの信憑性悪化,円高・デフレ・不景気・増税ムード,に展望が開かれるどころか,国会の火種が,さらに増える,と感ずるのである.

この改造で前代未聞の事があった.打倒民主党を強く主張していた与謝野氏の経済財政相への就任と,元参院議長の江田氏の法相への就任である.

与謝野氏に対しては,

今までの主張や民主党攻撃は何だったのか,せめて,自民比例区で得た議席を返上(議員辞職)して入閣すべきだ.一票を争うシビアな国会で,貴重な1票が民主党に流れるのは選挙を軽視している,と批判が出ると思う.

又,同じ選挙区で激戦した者同士が,同じ内閣にいる事も極めて不自然であり,これも,選挙軽視になる.当然,与謝野氏,総理の見識が執拗に問われると思う.

江田氏に対しては,

立法府(国会)の長だった人が,行政府の大臣になる事は三権分立の精神に反するのではないか,立法府の長と言う職責に尊厳を持っていなかったのだろうか,いかにも左派出身らしい,文化度の低さ,軽さ,に違和感を感じるのである.

相変わらず,総理,閣僚は官邸や国会ひな壇が似合わない,貫禄もオーラもない,文化度もない,軽い人達ばかりだと感じるのは,見慣れていないせい,だけではなさそうである.海外からも,そう思われていたとしたら,国益を損ねかねないのである.

こんな見識を疑われる内閣改造であったと思うが,与謝野氏の入閣について所見を述べてみたい.

与謝野氏は真面目さがにじみ出た勉強家の印象がある.自身は政治思想家と言うより,政策の実務家だと言う.自民党内にあっては,特に財政の積極出動,巨額な国債残高に危機感を強め,財政規律の回復を強く主張して来た.

一方,異論を感じていても,自民党歴代政権の財政・経済閣僚を務めて来た事でも明らかな様に,いかにも,温厚で良識あるスタッフとしての信頼感がある.

そんな与謝野氏は09年の自民党の下野,,自身の落選(比例区で救済),そして,自民党の自滅に愛想が尽きたのか,自民党を離党し,最も保守色の強い'たちあがれ日本'の立党に参画(共同代表)したのである.

与謝野氏は財政再建派でもない’たち上がれ日本'に,どんな意図があって参画したのか不明だが,今となっては,入閣のチャンスを待つ為の止り木だったとしか思えないのである.

結局,自民党の比例で得た議席で'たちあがれ日本'を立党しつつも,民主党政権で活躍の場が見えると,即座に離党して無所属になり,議席付きで民主党政権に入閣したのである.

与謝野氏の心境を推し図れば,

自民党が下野し,自身も落選した事で,与謝野氏は,民主党の力不足もあって,財政再建と社会保障の問題に,危機感を強めたと思う.

その重要性,緊急性から,自身の変質を問われても,民主党政権に入って,早く,この問題に手を打ちたかった,自民党もこれに同調させたかった,のかも知れない.勿論,実務家としては,政権内に居なければ意味がないし,年齢を考えれば,最後のご奉公だ,との心境も根底にあったと思うのである.

一方,財政に危機感を感じた菅総理は

総理は,民主党の政策にはない消費税増税を参院選で持ち出した.参院選で敗戦するも,自民,公明と連携して,消費税増税を進めたいと考えたと思う.そこで,財政規律派で増税論者の与謝野氏の取り込みに動いたと思う.

勿論,内閣に厚みを出し,内閣の浮揚を図りたい,サプライズで総理のリーダーシップを鼓舞したい,との思いも,あったに違いない.何か普天間基地の県外・国外移設を言い出した鳩山元総理と似ている.

以上,与謝野氏の孤独な反乱(挑戦)と,総理の思惑が生んだ入閣劇だが,政権にとって吉と出るのか,凶と出るのか,落ち目の政権が浮揚するのか,財政規律と社会保障の政府案が出来るのか,率直な感想を述べてみたい.

①内閣不一致の追求に耐えられるか

与謝野氏の考えを進めるにしても,閣僚である以上,民主党マニフェストや来期予算案に対する所見が追求される.従来の民主党政権・政策への批判からすれば,内閣不一致になる事は自明である.

与謝野氏は民主党政策を撤回させられるのだろうか.それとも,民主党政策を丸のみするのだろうか.まず,内閣不一致の問題で追求される.こんな基本的な事に総理はどう考えて,与謝野氏を取り込んだのだろうか,不明である.

どうやら,与謝野氏及び総理は野党に攻撃材料を与え,政権運営がますます怪しくなり,問責になったり,政局に発展する可能性があると思うのである.

②ごった煮の民主党で政策をまとめられるか

次に,消費税増税に消極的な民主党が,はたして増税論をまとめられるのか,特に,増税なき,ばら撒きの民主党マニフェストをどうするのか,と言う大問題がある.

いくら良識派の実力者といっても,党員でもない(入党するかもしれないが),連立でもない与謝野氏を中心に,民主党の総意を得た形で財政再建(増税)と社会保障の政府案(民主党案)を作る事が出来るのか,大変疑問なのである.

むしろ与謝野氏が前面に出るほど,民主党の内部抗争やマニフェストの問題に油を注ぐ事になりかねないし,マニフェストの大変更となれば,政権交代時のマニフェストだけに,一気に政局(総選挙)になりかねないのである.

③そもそも,財政規律と社会保障の難問を解けるのか

①②のハードルも高いが,難問だけに,そもそも,素案が作れるのかと言う根本的問題がある.医療・介護・年金の負担(税・保険料)と給付のあり方は,1000兆円に近づく借金問題,消費税を含む全体の税制問題,社会保障以外の政策全体のあり方,にまで関わって来る問題である.とても合成の誤謬の民主党では,そこまで,まとめ上げる事は無理だと,率直に思うのである.

特に,財政規律と社会保障の給付水準,少子高齢化を見越して,理論的に案が出来ても,とんでもない高い負担(例えば消費税20%超え)が必要になるはずであり,自民党政権でも赤字国債に頼るしかなかった問題なのである.

どう考えても,日本には,金融緩和によるデフレ脱却,行政改革等による劇的な歳出削減,給付水準の大幅引下げ,資産売却による歳入増加,と言う厳しい選択肢しか残っていないと思うし,加えて,数%の恒常的経済成長が絶対条件になると思うのである.

この様に,厳しい選択肢の実行なくして,光は見えて来ないのであって,ましてや,税や保険料の負担増で済む問題ではないのである.

しかるに,大きな政府,合成の誤謬の民主党がどんな答えを出すのか想像もつかないが,民主党の性格からすれば,パイは増えず,増税が続き,国家の生産性が低下し,自由経済の活力は下降し,挙句に,社会保障も出来なくなる,まさに,『貧しい社会主義国家』,『ゆで蛙国家』,が連想される.

今や,友愛とか,社会の絆とか,最小不幸社会とか,第三の道とか,言っている場合ではない.『持続可能な社会保障』どころか,『持続可能な国家財政』いや『破綻させない財政政策』が問われているのである.

勿論,巨額の借金を積み上げた自民党の責任は極めて重い.未だ,この問題の総括が聞こえて来ない.総括なくして,次の政策の信頼も生まれない.もし,天に唾を恐れて,総括をしないなら,政党として存続する意味がない.

この様に,残念な事は,必要な政策と政党の性格・政策が一致していない事である.これでは,政策も出来なければ,実行も出来ない事になる.

唯一,難題に対峙できそうな政権は,新保守・小さな政府論の勢力である.ならば,これに向けた政界再編を急ぐべきである.『中堅を軸にした新保守政権誕生』なら,それだけで日本が元気になりそうな気がする.さらに,財政問題,経済政策問題,社会保障問題,憲法問題,安全保障問題などに,光がさす予感もする.10年位かけて,この政権で日本を牽引して欲しい気もする.

④与謝野氏の入閣が政局に発展するか

①②③の予想は誰もが感じる事だと思う.与謝野氏が,その事を見越して,内部から民主党を崩すと,密かに思って入閣したのなら,相当の気骨者だと言う事になる.民主党を攻撃していた立場も筋が通る事になる.

与謝野氏は,そんな政局を動かすタイプではないと思うが,国の為に良かれと思った事が,逆に,この様な事態になれば,結果として,民主党政権をつぶす為に入閣した事になる.この可能性が高いと感じるのである.

以上,与謝野氏の入閣は議論は活発化すると思うが,残念ながら,財政と社会保障の道筋に展望が開けるとは思えないのである.

結局,民主党政権が浮揚するどころか,むしろ,民主党公約がますます宙に浮き,政界再編あるいは,総選挙が早まって行くと思うのである.政界再編を望む観点からすれば,『吉』と言う事になる.

それとも,文化度の低い民主党は,よれよれになっても,政権にしがみ付くのだろうか.そんな中で,1月24日からの通常国会は大変な国会になる.注目して行きたい.

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