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2011.02.03

235 始まった『自爆の国会』,『政局の国会』

通常国会の論戦が始まった.今国会は,与謝野入閣問題,国債格付け低下問題,民主党マニフェスト問題,行政改革問,巨額な赤字国債と平成23年度予算問題,経済対策問題,TPP参加問題,社会保障と税の一体改革問題,小沢問題,政治と金の問題,等々,政権を揺るがす難問が山積みである.

政府は,おおよそ,下記の段取り(シナリオ)で通常国会に臨む様である.

・3月までに平成23年度予算を議決したい

・4月までに社会保障改革案を作りたい
・6月までにこれを踏まえた財政・
税制案を作りたい
・6月までにTPPへの参加を表明したい
・これらの政策を踏まえて民主党マニフェストを見直したい

この段取りは,はっきり言って,予算だけは年度内成立を図り,民主党にとって都合の悪い事は,すべて4月の統一地方戦後にする,との意図を感じる.

鳩山政権ですでに民主党の政権担当能力は限界を超えていたと思うが,更に,菅政権でのいくつかの政局につながりそうな問題点を指摘したい.

①マニフェストの問題を社会保障と税の一体改革問題にすり替えるシナリオである.

民主党はマニフェストを推進しようとすれば,財源がなく,見直しをすれば,間違いを認めた事になる,と言うジレンマに悩んでいる.

そんな中で,今国会に際しても,党内は,マニフェスト推進派(小沢派・反主流派)と,マニフェスト見直し派(反小沢派・主流派)に割れ,党としての合意が在るのか無いのかはっきりしないのである.

そんな中で,段取りから見える事は政府は平成23年度予算を通した後,統一地方選を戦い,その後,社会保障と財政・税制の一体改革案を出して,マニフェストを見直し,党としての合意を形成する,とした事である.

その意図はマニフェストの問題を一体改革問題にすり替える事によって,嘘つきと言われずに,マニフェストの呪縛と小沢路線から脱出する事にあると思う.だとすると,民主党政権はこう言いたいはずである.

『マニフェストは選挙で約束した通り実行する予定であったが,みんなで考えた社会保障と財政・税制の一体改革案を実現する為に,マニフェストを変更する事とした』と.

自分の非を率直に認めようとしない政治家によくある論理のすり替えである.このシナリオが民主党政権の浮揚シナリオになるのか,自爆シナリオになるのか,次に,このシナリオの問題点をいくつか指摘したい.

②平成23年度予算とマニフェスト見直しが矛盾する事になる.

23年度予算を通した後,マニフェストの見直しを行うというシナリオは,将来どうなるか分からない政策が23年度の予算に計上されたり,借金をしてしまう事を意味する.それこそ無駄であり,他の優先すべき政策を追いやってしまう事になる.率直に非を非と認めないと,どんどんおかしくなる.素人でも分かる理屈である.

それとも,マニフェストに従って,子供手当ても,高速無償化も,高校無償化も,農業戸別所得補償も,社会保障と財政・税制の一体改革案がどうなろうと,政権が続く限り続ける,と言うのであれば,平成23年度予算は政策としては筋が通る.

さて,どう考えているのだろうか.国会質疑で正して欲しいのである.

常識的に言えば,まず,予算を先に成立させ,その上で,将来の大問題を議論するのであれば,マニフェストの見直しが終わるまで,給付政策(子供手当ての3兆円等)を削除した予算案を政権与党は提示すべきである.

自民党は民主党の現金給付政策は,思想も,制度も,効果も,優先度も,財源も,問題であり,平成23年度予算から外すべきだ,消費税増税時も,給付政策は取らない,と主張している.これなら政策として筋は通っている.

こう考えると民主党の平成23年度予算案は理が成り立たない事は明らかである.それでも,この矛盾を推し進めれば,予算案を修正しても,しなくても,菅政権の3月危機説が現実的になる.

③一体改革案が出来るまで,政権の思考停止状態が続く事になる.

シナリオによれば,一体改革案が出るまで,政権は23年度予算案も含めて,マニフェストの非を認めない立場を堅持する事になる.従ってその立場では,天に唾する一体改革案を作るわけにはいかなくなる.そこで与謝野氏や有識者,出来たら野党も巻き込んで作らざるを得なくなるのである.

この事は政権与党がマニフェスト見直しの理由付けが出来るまで,マニフェストに縛られ,間違っているとも,修正するとも,言えず,ただマニフェストの考え方に沿って頑張る,などと,腰の入らない事を言う事になる.

このシナリオは結局,通常国会期間中,政権が思考停止状態になる事を意味しているのである.多分,『将来も給付政策を続けるのか』と質問しても,『一体改革案後考えたい』と言うと思う..これでは熟議の国会になるわけがない.23年度予算も審議ができない事になる.国会軽視のシナリオだとも言えるのである.

④一体改革案で民主党の無策ぶりが露呈し,政策論争で分裂騒動になる.

一体改革を検討するほど,民主党マニフェストが将来の事など考えていなかった事が明らかになる.それどころか選挙目当ての嘘っぱちであった事がより鮮明になる.事実,党として将来の事を検討して来た形跡もないわけだから言い訳も出来ない.

目先の選挙公約はあっても,もともとの党の結党理念や基本政策がない事を,遅まきながら,この一体改革議論があぶり出す事になる.

加えて,一体改革案の検討は民主党としては初めて,本格的な議論になるわけだから,生まれ育ちの本性をむき出しにした激しい党内議論が予想される.

この論争は,ごった煮政党だけに,党の分裂に発展する可能性もある.とても,マニフェストの呪縛や小沢路線からの脱却とか,民主党政権の延命とかの話しではなくなるのである.

⑤そもそも一体改革案,TPP対策案など出来るのか,との疑念もある.

上記④のように,シナリオ通り一体改革案が出来たとしても,民主党の合意ができず,分裂する可能性が高いわけだが,それ以前に,一体改革案がまとまるのかと言う疑念もある.

たき台も,腹案も,ない状態で,しかも,『NO234 与謝野氏入閣とその影響』でも述べているが,これから短期間で,案を作る事など極めて難しい課題である.出来たとしても,与謝野案は自民党時代から検討してきた案であり,消費税一つとっても,民主党が合意できるとは思えないのである.

財源の裏付けのないマニフェスト,移転先の当てがない基地移設,とまったく同じ轍を踏みそうである.問題意識や思いや使命感だけでは大きな政策を作れない事を学んだはずだが,口の軽さは直っていない.実力もないトップがリーダーシップがあるとばかりに,強がりで,口走った感じも同じである.この心理状態は政治家として極めて危険である.

又,TPPの問題も極めて難しいと思う.TPP加入は円高を解消しない限り輸入だけを加速させ,デフレ経済を後押しする事になりかねない.ドル安・円高は日本のGDP規模を考えれば,その大きな市場への参入が狙いなのである.TPP加盟国で米国と日本が断トツにGDPが大きい事でも明らかである.

そもそも,自由貿易圏の形成は,関税撤廃だけではなく,集団安全保障,為替レート,国内制度,文化,教育,にまで,影響が出てくる.世界の趨勢だとしても,島国日本には高い壁が現存し,方針を出す事も,その実現も,簡単ではないと感じるのである.

何よりも,TPP問題は,日本にとって,バスに乗り遅れる問題なのか,日本のペースでバスを待たせておける問題なのか,もはっきりしていない問題なのである.

民主党も自民党も現在のところ,統一地方選の前でもあり,はっきりした意見を表明していない.今後も,近づく総選挙がらみで,態度をハッキリしない可能性もある.

今のところ,一体改革案も,TPPも,何をどこまで決めるのかはっきりしていないが,まとめあげる事が出来ずに,玉虫色の改革案で終わるかも知れない.

民主政権としては,玉虫色であっても,マニフェストの呪縛と小沢路線からの脱却,政権の延命が出来れば,良いのかも知れないが,国民から見れば,嘘を隠すために嘘をついた事になり,民主党の存在そのものが問われる事になる.

以上,①②③④⑤によって,政府の描く『マニフェスト問題のすり替え国会』,『熟議の国会』,『民主党政権浮揚の国会』のシナリオが『自爆の国会』『政局の国会』のシナリオになりそうである.政権与党にとっては土壇場,修羅場を迎える事になる.

国難に向かうのは歴史的使命だ,政局より政策だ,と総理は力むが,国民に言うのではなく,民主党内部に言って欲しいものである.政権与党の体をなしていない事が政局になる原因であって,決してネジレ国会や野党の戦術が原因ではないのである.次の全てが民主党マターなのである.

・平成23年度予算,関連法案に理があるのか
・民主党として社会保障改革案がまとまるのか
・民主党として消費税増税初め税制改革案がまとまるのか
・民主党として財政健全化のシナリオが出来るのか
・民主党としてTPPへの方向性と施策が出せるのか

・民主党マニフェストの見直しをどう国民に説明するのか

結局,今回のシナリオは民主党を救うどころか,どう転んでも,破綻のシナリオになりそうである.

・民主党は嘘を言って政権をとった,と歴史に刻まれる,
・平成23年度予算案は修正せざるを得なくなる,
・改革案が
出来たとしても民主党は分裂する,
・改革案が出来なければ民主党は壊滅する,

と予想するのである.小手先のシナリオなどで論理をすり替えよう等とセコイ発想をするようでは政治家の資質が疑われるのである.そんな事で政治は出来ない.

これでは,いかに文化度や羞恥心が低い政権であっても,さすがに政権の座には座っていられない事になる.日本としては,速やかに新たな政権を立てないと,最も怖い国債が一気に暴落する危険性がある.一刻も早く民主党が退場する事が最大の景気対策になるはずである.

以上懸念を述べたが,それが現実になりそうだと思うのは,当ブログで度々指摘しているが,民主党には次の様な根本的な問題があり,既に限界を超えていると思うからである.それだけにドクターストップをかけるべきだと思うのである.

改めて民主党政権の根本問題を列記しておきたい.

根本的問題その1 (選挙用マニフェスト,政権担当能力欠如)

民主党は政権を奪取して1年半,混迷し続ける原因は前述の通り,選挙用のマニフェスト』と『政権担当能力の欠落』である.『思いや使命感だけでは政治は出来ない』事を鳩山政権時に既に首脳部は感じている筈である.

民主党が強く主張していた『マニフェスト選挙』の考えに従うなら,選挙のやり直しが必要になる.このままなら,高邁な主張も嘘になり,国民をだまして政権を取ったと歴史に刻まれる事になる.きっと悪しきケーススタディとしてテキストに載り,後世に伝えられると思う.

民主党の一連の主張に詐欺罪を求めたいところであるが,せめて次の選挙で,嘘を言った政党,立候補者を排除する事で,民主主義を機能させたものである.

根本的問題その2 (合成の誤謬政党)

又,根拠のない約束手形を乱発するのも,『真面目さと無知が同居している危うさ』を感じる.入閣した与謝野氏も『無知』と一言で,指摘した.私は政権交代時より,度々『合成の誤謬政党』と称していたが,残念ながら,この認識は間違っていなかっと思う.

真面目さから問題点を挙げ連ねても,解決方法を示さなければまったく意味がない,それどころか,策が無いのにやると言えば,無責任になる.そこで,あれこれやろうとすれば,今度は全体の優先度や整合性或いは財源などが中途半端で無秩序となり,なにもできなくなる,と言う悲劇に見舞われるのである.

この事態を私見では『合成の誤謬』と称してきたが,『真面目さと無知』,『視点の違い』が引起す症状なのである.この症状の怖さは何もしない病より被害は大きくなる事である.

社会福祉が大事だとの主張は,やればやるほど,国力が衰退し,社会福祉そのものが出来なくなってしまう,如くに,命取りになるかもしれないのである.それだけに,そんな症状を持った政権に国を預けてはならないのである.

この例で言えば,社会福祉は,残念ながら限界がある.何とか自分で頑張って欲しい,と言う政治ほど実は親切で,社会福祉が持続し,さらに向上する可能性が高いかも知れないのである.

『視点の違い』で言えば,『賃上げを主張する視点』と『会社が持つかと言う視点』の違いである.民主党政権は前者の視点が身にこびり付いている感じがする.なんといっても大臣には見えないのである.これでは日本の経営は出来ない.

政治には演繹法,帰納法をわきまえた眼力と,大局観を持った次の一手が必要だと思うのだが,国民の選球眼がそこまで精巧ではないし,それを補う政治家もいなければ無理な願望かもしれない.

根本的問題その3 (ごった煮政党)

総選挙以前から,寄せ集めで,党の理念もない民主党であったが,政権与党になった今でもその性格は変わっていない.まさに,『政治思想の百貨店党』のままである.私見では『ごった煮政党』と呼んでいた.これでは,政権与党として,政策立案や行政が出来るわけがない.ましてや政治主導など,とても言える根拠も実力もない.

このごった煮政党』は政権を取るまでは党の形を作れても,政権を取った後では政治能力も政策準備もない,単なる烏合の衆だったとなる.こんな政党に,国の経営を任せたら,政治が混乱するのは当たり前なのである.国民は1年半、これに付くあわされているのである.

以上,民主党政権の問題から,今国会が政局になる事を述べた.しかし日本政治の成長にとって,必要な過程だと考えたい.そして,何とか,政界再編に向かって欲しいのである.

しがらみで成り立っている政党ではなく,素直に,『性格と政策』で政党を作って欲しいのである.そこで初めて,国民に選択肢が示せるのである.これを用意する事が政治家の仕事だと思うのである..

ところで,この国難の中で,党の指示で1票を投じるだけの国会議員に腹が立つ.

一人1億かかると言う歳費は,景気対策の為,議員の生活支援の為,議員の少子高齢化の為,議員の持続可能な身分補償の為,に出す『国会議員手当て』あるいは『議員戸別補償制度』とでも言うのだろうか.

こんな議員には『国会議員手当て』は不要である.議決の時だけ国会に行けば良い.反論があるなら,自分の主張や行動を公開すべきである.これも自己判断出来なければ,得意の『事業仕分け』チームの出番である.

以上,愚痴も入ったが,はたして3月までに平成23年度予算案がどうなるのか,4月,6月7月の約束手形がどうなるのか,いづれも政局に直結した,統一地方選にも直結した,いや,日本の運命にも直結した,一触即発の国会になる事は確実である.日本の未来に意味のある通常国会を是非,期待したい.

追記

今年も確定申告が始まる.1年間は年を追って早くなる.1年の感覚は,年齢の逆数だけ短くなると言う.1才児の1年を1年間とすると,60才の大人は60倍短くなる.言い換えると,1才児の1年間で起こる変化に比べて,60才の大人には,その60分の1しか変化しない,と言う意味である.年をとっても,子供に負けない,意味のある人生を送りたいものである.

ところで,確定申告で,大した所得でも無いのに,毎年,所得税,医療・介護・年金などの社会保険料,住民税,等,結構な額を納付している事が分かる.これを国民負担率と言っているようだが,平均35%程度だと言う.ヨーロッパは50%~60%だと言う.

これに消費税,たばこ税,色々な物品税,等の間接税,ささやかな資産税,あるいは,電気・ガス・水道・NHK,などの,公共料金を加えると,公的費用への支出は多分60~70%になるのではないだろうか.ヨーロッパはどんな値なのだろうか.

もともと,日本の公的費用の徴収の特徴は,負担を低く見せながら,全体の税収を高める事である.直接税や間接税を細分化したり,受益者負担と称して,保険料,手数料,使用料を取ったりする点である.本当は,これらを区分する事は難しく,重なっているのだが制度をシンプルにすると,その高さが目につく割に,税収は増えないのである.

この細分化によってト-タルの歳入を確保する一方,もうひとつの特徴は税制の複雑化によって,国民を盲目的にする事である.大口の納税者や企業には税理士が,一般大衆には天引き(源泉徴収)制度が適用される.徴税コストを納税者側に負担させている事も,世界に類を見ない見事さ,なのである(注・皮肉です).

かくて,世界に冠たる日本の税制度の前で,日本国民は,『生きるだけで随分高い個定費』がかかる物だと嘆く事はあっても,制度に反論する知識もなく,諦めるだけになるのである.

これでは税金はとられるものではなく,収める物だと言っても,実感が伴わない.日本の税制度に古代の律令国家,封建制度の名残を感じるのである.

多分,現在は有史以来,最高の国民負担だと思うが,国会議員も国民も,『むしろ一揆』を起こす程の税への意識はない.ますます律令国家に舞い戻る感じである.税制を知っている者は少数の国会議員・役人・有識者に限られいる事が何よりの証拠である.

そんな税制度ではあるが,最近,金をもっと配りたい(再分配,歳出増),その金を金持ちからもっと召し上げたい(増税)と言う,『盗人の謀議の様な話』が多く聞こえて来る.その割に,肝心の,デフレ対策,経済対策,歳出削減対策,などの話はあまり聞こえて来ない.

そして,増税の話は,もっぱら消費税増税の話である.先進国の中で,日本の消費税率が低いからである.決して,税収が景気に左右されやすい直接税から,比較的左右されにくい間接税にシフトする話ではない.歳入(税収)を上積みする話である.

しかし,単純に消費税率が低いからと言って,率の増を判断すべきではない.前述の通り,全体の公的費用の負担率で判断すべきである.調べたわけではないが,日本国民の負担は,直接税,社会保険料,間接税,公共料金,等を含めれば,既にかなり高い負担をしていると実感している.消費税率は低くても,他の公的費用を多く負担していると思うからである.

公的費用の負担が,これ以上無理だとすると,増税や分配の話しではなく,パイの拡大や歳出削減,の話しが必要になる.こうなると,ねずみ小僧や石川五右衛門もどきの再配分論者には不得手の話しとなる.

今,日本に求められている話しは,再分配の話しでも,与謝野さんには申し訳ないが,『財源が足りないから増税だ』と言う子供の様な話しではない.日本に必要な話しは日本の経営戦略・経済戦略なのである.

ガスが充満しているせいか,思わず,追記が多くなってしまった.おかげで少しガス抜きが出来たが,通常国会で又,満タンになりそうだ.

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