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2011.05.11

242 震災後2ケ月 『日本の現状認識と今後の舵取り』

本日で震災発生後2か月が経つ.一次補正予算4兆円が決まったものの,依然として1万人近くの不明者がおり,10万人を超える被災者が避難生活を強いられている.ガレキ処理も,仮設住宅建設も,そして原発事故,放射能汚染,避難,損害賠償も,解を見い出せる所まで進捗していない.ましてや被災地の復旧,復興の計画も遅れる一方である.

ただ,すべてを失った被災者が,身の振り方も決められないまま,故郷の仮設住宅への入居を願いつつも,将来の不安を抱きながら,避難生活に絶えているのである.

更に,国民や世界からの熱き義援金も,その1割程度しか被災者に渡っていないと言う.日銭に事欠く,つらさ,惨めさ,を思うと,'すぐ10万でも20万でも現金を配れ'と叫びたくなる.希望の光はいつ見えてくるのだろうか.激励や頑張りにも,力強さが失われていく感じである.

現実は,こんな悲惨な状況であるが,一方で,『今後の日本をどうするのか』,の本格論戦も必要である.難問ばかりであるが,いくつか所見を述べて見たい.

①日本の現状認識

本格論戦の前に日本の現状認識が先ず不可欠である.この認識なくして今後の日本を議論できないからである.

<認識その1
近年日本は円高,デフレ,失業,就職,社会保障,財政,借金残高,税制,等,難題山積であったが,勿論,震災で課題が消えたわけではない.これらの深刻な問題に,今回の国難に値する巨大な災害が発生し,数十兆円の復旧・復興資金がさらに覆いかぶさった.

<認識その2

日本は,税収を超える借金をして年間予算を組んだり,GDPの2倍,1000兆を超える借金残高はもうすぐ到達する.数字の上では間違いなく,『社会主義借金経済国家』である.巨額の借金と言う公的資金で経済を支え,政治をして来たからである.同時に,『借金大国』は未来に対して『無責任国家』だとも言える.世界では有り得ない国なのである.

更に,借金の理由が,いつも経済の波及効果を上げている事からすれば,今も『発展途上国家』であるが,実際は波及効果が逓減したり,投資と言うより単なる費用であったりしている事からすれば『凋落途上国家』である.

最後に,借金可能高をいざと言う時の一つの国力とすれば,もう日本にはその力は無い.この意味では,借金がパンパンに入っていて,これ以上借金を入れたらパンクする風船のような『破裂寸前国家』でもある.

これらを合わせると,『凋落途上・破裂寸前・社会主義・借金経済国家』となる.自虐的悲観が過ぎる言い方だろうか.あながちこれを否定する事は出来ないと思う.だから大事な事は,これに拍車をかけるような政策を絶対とらない事である.

<認識その3
日本の現状認識としては,『パイの拡大なしに新たな分配は出来ない』状態であり,この認識を持たず,なんでも有りの,青天井の,財政出動は極めて危険なのである.

東日本大震災で日本は滅びた』との歴史は絶対残せないのである.政治家,特に政治の厳しさに欠ける現政権のポピュリズムが極めて心配である.悲惨な災害への対応,産業界のパイの拡大,冷静な財政運営,と言う厳しい舵取りが今後続くのである.

②被災地の復旧・復興計画

いまだ内容が不透明であるが,上記日本の現状認識の通り,震災対応の『大盤振る舞いの機運』は極めて危険だと感じる.

特に,震災特需を期待する向きもあるが,一時的である.巨額の財政出動も,土地改良・造成,社会インフラ,病院,介護,学校,農業,漁業,等となれば,復旧に繋がっても,復興と言う波及効果は限定的だと思う.ましてや被災地が広域なだけに,復旧復興の長期化は産業を空洞化させる.その意味で『長期の復興』より『早い復旧』を目指すべきだと思うのである.

その上で,特に被災地の区画整理計画を早期に作る必要がある.極めて難題で意見や利害が対立するテーマであるだけに,時間がかかる事も予想される.しかし,この方針が出なければ何の計画も作れないし,民力の発揮にもブレーキが掛かる.なんとか,この難問を乗り越えながら,出来る事から復旧計画を策定して欲しいと思う.

勿論,県,中央官庁はこれを実現する為に全力で法制面,財政面でバックアップすべきである.復興構想会議とか復興対策本部など邪魔なくらいの気迫とスピード感がいると思う.

そんなわけで,『復旧の進め方』を早急に見直し,官も民も一斉に動くように政治は動くべきである.今回の震災対応全てにおいて,この『進め方』がいつも曖昧で,苛立ちを感じるのである.

③原発問題対応

原発事故を巡る問題は事故対応,住民避難,汚染(土地・地下水・河川・海・農水畜産物など),損害賠償,等深刻な問題が収束どころか拡大の雲行きである.

この原発問題を通じて感じる事は政府も官僚も学者も東電を指導する側に立ち続けている事である.東電の社長は避難民に土下座させられているが,原子力委員会,安全院,担当大臣,総理は国民や被災者にお詫びをしたのだろうか.

事故対応も,東電をいつも矢面に立てているが,原子力委員会や原子力安全院は何をしているのだろうか.官房長官の記者会見も政治家ではなく法律家の言葉を言い続けている.あい変わらず記者会見に信頼感がなく,むなしさを感じる.

政府や官僚のこの姿勢は大問題が発生した時現れる『典型的な保身行動』そのものである.この構図,意識を変えない限り,絶対この原発問題は解決しない.思い切って事故対応組織を刷新すべきである.

・原発事故対応の問題

何も原発事故の実態がつかめていない段階にも関わらず,総理の指示で無理に作られたロードマップの信頼性が早くも崩れ始め,原発事故対応の信憑性が又失墜し始めた.時間の経過とともに,ロードマップの信憑性が薄れて行く感じである.又,中身のない政府の対応である.

現在,高濃度の放射能が大気や海に放出し続けているのか.水素爆発や水蒸気爆発,あるいは再臨界が起こらないのか,良く分からない.結果,放射能汚染問題や避難問題も先行きがまったく見えていないのである.事故発生時点の状態が何も改善されていない感じである.むしろ時間が経過した分,危険性や被害が大きくなっているのである.

当初からの懸念であるが,事故対応組織を全面的に立て直さない限り,今後も危険が続くと思う.2ケ月の経緯がそれを証明している.

・警戒区域の避難生活問題

放射能警告区域の住民は避難生活を強いられているが,この避難者の中に,地震,津波の被害者もいる.家族の死亡者,行方不明者もいる.たとえ住宅が残っていても,避難生活は地震・津波の被災者と同じように,生活も仕事も奪われた状態が続いているのである.

川内村から一次帰宅が始まったが,人も,持ち帰った物も,有害になるような汚染は無かったという.改めて警告区域の設定の問題が上がっている.同心円での避難地区設定は非科学的であり,住民にとんでもない苦悩を強いている.

それだけではなく,汚染されていない警戒地域で,人がいなくなったり,家畜やペットが死んだり,防御服を着て一次帰宅したりする映像は世界に風評被害をばら撒いているようなものである.

・浜岡原発操業中止問題

東海地震の発生の心配から静岡県の浜岡原発が防潮堤が出来るまで運休となった.これは総理の要請を受けての決定である.理屈を言えば,冷温停止状態にしても,想定外の大地震や津波が起こり,冷却が不能になれば,福島原発と同じ事が起こる.操業中に大災害が起こるよりましだと思ったのかもしれない.

総理は浜岡は特別で,他の原発は予定通り操業を続けながら,エネルギー政策,原子力政策を見直して行くと,したわけだが,既に多くの波紋が広がっている.

本来なら,今回の原因究明,改善策,全国原発の評価と改善,将来のエネルギー・原発政策等の中で,現行の原発をどうして行くか決めないと日本が大混乱に陥ってしまう問題なのである.従って,原発事故対策と並行して,早期に,この問題に取り組まねばならないのである.

しかし,浜岡を中止してしまった事で,この夏の電力のやりくりも問題になるが,全国の停止中の原発が地元の反対で再操業が出来なくなる可能性も出てきた.

ちなみに,日本には54基の原発のうち,現在21基が稼働中,33基が停止中(東日本地震で14基,検査で19基)だと言う.

もし停止中の原子炉の再操業が出来ないと,定期検査で停止する原子炉が増えるだけになり,1年程度で稼働中の原子炉がなくなる事になる.産業,生活,勿論,財政は破綻し,社会保障どころの話しではなくなるのである.

それでも,原発事故がいやだ,止めるべきだ,とするなら,それも選択肢であるが,日本は福島原発事故,浜岡原発中止で重大な,まったなしの岐路に立ったのである.

浜岡は特別だという総理の発想そのものに説得力や展望がないから,まさにパンドラの箱を開け事になったのである.結局 『再操業反対』に火を付けただけになった.自ら蒔いた火だねを消して,どうやって原発の再操業をして行くのだろうか.

唐突,行き当たりばったり,ポピュリズム,パフォーマンスと言われる由縁であるが,それにしても,前総理と同じ轍を踏んでしまったのである.

両総理とも,『辺野古への移転反対』,『原発は危ない,再操業反対』に火をつけ,現実の米軍基地移転,原発の再操業を実施出来ない状況を作り出したのである.総理の自業自得,天に唾,無責任発言,思いつき,では済まないのである.

もうひとつ,浜岡原発中止の影響は海外に『日本リスク』(日本は地震・津波が頻発し,原発も危ない)を吹聴した事だと言う.

損害賠償スキーム(政府案)の問題

政府は『損害賠償をしっかりやる』,『東電をつぶさない(株,社債の維持)』,『国民に負担を求めない』,との前提で次のスキームを発表した.

ー東電に賠償の無限責任を負わせる.
ー東電の賠償資金の補充は新設する機構の貸出金を当てる
ー東電は機構に借り入れ金を長期間に渡って返済する
ー機構は東電の債務超過防止の為に出資する
ー機構の資金は政府及び原発各社が出資する

直感で思った事は,東電を前面に出して,損害賠償に当たらせる案である.政府や官僚は,ややこしい事に巻き込まれたくないと言う,いかにも官僚の考えるスキームである.官僚としては常に東電を上から見ていたいと言う一歩引いた構図は自己保身の構図そのものである.はたしてこれで問題が解決するのだろうか.

もう一つ,国際的に見ると,日本は国家として責任を負わないのか,原発事故の責任を一企業に負わせるのか,と思われると思う.原発問題は国家レベルの問題であり,政府案は日本への不信感をつのる結果になると思う.

是非,救済・賠償問題に対し,是非活発な国会議論を期待したいところである.この問題は事故を起こした企業の賠償問題ではなく,我が国初の放射能汚染問題と言う政治問題だからである.私見を是非,次号で述べたい.

・福島原発対策・原発政策・原発行政の体制立て直し

福島原発事故対応組織,水素爆発,放射能汚染,計画停電,危険レベルの認識,情報開示,避難区域設定,汚染食品,風評,ロードマップ,浜岡原発中止,損害賠償スキーム,など2ケ月間の政府の対応に,国内外からの評価は低い.事故解決に向けて進まない事が最大の問題だが,原発の国際的立場の失墜も大きな損失である.現政権の外交力の弱さに自ら拍車をかける事になった.

どうやら技術的な問題より,自己保身色の強い人と組織の問題が大きいように思う.早急に福島原発対策,原発政策,原発行政,全体に渡って体制の立て直しが必要だと思う.

④増税問題

増税はパイの拡大にとって,マイナス要因であるが,増税余地は国債の信用を保つ上で必要である.日本の累積債務が低金利なのは消費税などの増税余地があり,その分安全だと見られているから,かも知れない.

そこで,増税するほど,経済は疲弊し,次の増税余地がなくなって,国家の借金力,信用力は減って行く,そして,金利だけが上がって行く,はずである.ならば,増税は少ない方が良い.むしろ,増税より,GDPの名目成長を上げた方が増収になる,と思われる.この事は実績で証明されている.かつての財政健全派(増税派)と上げ潮派(増税反対派)の対立で議論された事である.

さて,従来の累積債務の問題,社会保障財源の問題,に復旧・復興の財源問題が覆いかぶさって,近々,大議論になることは明らかである.

社会保障財源問題は今後の年金制度が大きいと思う.いっそのこと,国家による年金制度を廃止し,生活保障制度一本にする発想が必要ではないかと思う.年金制度は民間保険制度や企業年金にシフトしたらどうだろうか.この考えで国の財源がどうなるか不明であるが,何としても増税は避けたいのである.

もともと現年金制度は資金の収集とその活用にしか興味がなかった制度であったと思う.郵貯の資金と同じ様に,見事にその資金は借金大国を後押ししたのである.消えた年金問題や年金資金の無駄使い等はすべてこの集金目的の中で発生しているのである.

制度として,年金制度が給付財源の問題に行きつく事は自明であったはずである.本当に少子高齢化で安心出来る年金制度をやるなら多分国家は持たなくなると思う.

復旧復興財源は建設国債と同じ様に,復旧復興国債の発行で良いと思う.将来の国民にも負担してもらうことに反対はないと思う.未来の借金返済の事を思うなら不良債務(借金返済に見合う効果のない借金)を早く返済する事である.景気上昇で税収を増やし,この返済資金に充てる事である.

今,社会保障に加えて,復旧復興と言う大義が加わって,消費税増税機運を高めようとする動きがあるが,日本の現状認識を踏まえれば増税は『修羅場の策』になり,復活どころか持続可能性も遠のくのである.

⑤円高,デフレ問題

依然として円高,デフレが続いている.パイの拡大には輸出の拡大は必須である.今のままでは円高と震災で産業の空洞化が加速する.震災特需も輸入拡大につながっていく.円安誘導を国際的にも認められている割に,円高どまりである.円安は借金を目減りさせるうえでも必要であるが,

日銀は独立性を盾にして,何もしない姿勢が気になる.復旧・復興をバネに円高,デフレから脱却できないのだろうか.

今後の日本の舵取りに大きな影響を与える問題について,触れてみたが,これらがどうなっていくのか、今後も注力して行きたい.

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