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2011.05.17

243 原発事故賠償スキーム政府案の本質的問題

一言で言うと,政府案は『東電がつぶれないよう資金を貸すから,すべて東電が賠償しろ』,別の言い方は,『国が賠償すると,国家財政が破たんする.あくまでも東電への貸出しにしたい』,と言う事である.

青天井になりかねない賠償金と国家財政をリンクさせたくないとの考えが,東電を矢面にさせ,それが,責任をとりたくない,難しい問題に関わりたくない,と言う官僚,内閣の性格と連動して,救済が大幅に遅れる事を心配するのである.

そこで,政府案をもう一度再考すべく,いくつかの問題を列記してみたい.

・政府監視下のもとで東電は損害賠償と電力事業を続けられるのか
・東電に
無限責任を課す事は未曽有の天災ではなかったとするのか
・天才ではないとすると,世界からの損害賠償が東電に向かう事になるが
・無限責任を背負った会社は上場廃止になるのではないか

・賠償範囲,賠償額算定基準,をどうして決めるのだろうか
・賠償範囲,賠償額の東電が負う法的根拠があるのか
・賠償が青天井になっても東電は拒否出来ないのか
・10万人を超す被害者,海外からの賠償交渉をどう進めるのか

・自治体・公的機関の損害を賠償の対象とするのか
・政治が行う被害対策と賠償の関係をどうするのか
・避難,出荷制限等の政治判断に伴う損害と東電の賠償責任の法的根拠は
失政(避難区域の設定や避難指示の間違い)による責任は国にあるのでは
・予防的政策に伴う損害と東電の賠償責任の法的根拠は

・避難,土壌除染,測定などの費用は賠償金か行政費か
・地震,津波,放射能と重なった被害から損害賠償範囲を切り出せるのか
・数十年後の放射能後遺症の扱いをどうするのか
・賠償裁判になった時,賠償内容毎に東電の賠償責任を問えるのか
・東電の無限責任と言っても政府の管理責任はあるのではないか

・政府の安全基準や許認可をした責任(国家賠償責任)があるのではないか
・原子力緊急事態宣言後の一次責任は政府にあるのではないか
・国民負担をなしとする政府案に違和感どころか不信感が漂うのではないか

いづれにせよ,救済・賠償は政策的な支援制度,国家損害賠償,東電損害賠償,によって行われるべきであって,被災者との対応は,政府機関一本で対応すべきだと思うのである.

『全て東電が賠償する』と言う東電悪人論の政府案では現実感が感じられないし,逆に政府への不信感が募るのである.

繰り返すが,放射能汚染問題や原発事故問題は企業の損害賠償問題ではなく,天下国家の政治問題なのである.

ところで,今回の原子力損害賠償政府案から垣間見える官僚・政治家の根本的問題について述べてみたい.全ての震災対応,原発事故対応に影響を与えているように思うからである.

まず,政府,官僚は民間企業の上にあって,民間企業を監視・監督する立場だと思っている事である.従って,身づから問題に入り込む様なスキームは絶対作らないのである.今回の政府案はまさに,この発想である.原発事故全般に対しても,全てこの発想である.決して政府,官僚が問題の矢面に立って活動するようなスキームは作らないのである.

この東電悪役のシナリオが露骨に出たシーンがあった.国会で政府の支援が必要だとした東電の意見に対し,東電のリストラや資産売却で賠償資金の捻出をする方が先だと,政治家が偉そうに東電を叱責したのである.いかにも権力をかさに着た政府のもの言いである.お上に物を言う前に,身の程を考えろ,とでも言いたかったのだろうか.

思わず,政府は責任もとらず,何を偉らそうな事を言っているのか,何様だと思っているのか,と思わず叫びたくなったのである.これは東電がかわいそうだと言っているのではなく,政府の軽さ,幼稚さ,不遜さ,人のせいにする性格に怒りを感じるのである.

被害者に土下座をさせられたのは東電社長であったが,土下座すべきは総理や官僚ではないのかと思うのである.

以上,国民に負担をさせない,東電が全て負担する,とする政府案の問題を上げたが,東電の後ろにいる内閣・官僚がいる『逃げ構図』では絶対解決しないと思うのである.この様な政府の姿勢こそが,全ての復旧の遅れを招き,被災者の苦労を長期に強いている元凶だと思うのである.

国際的に見ても,原発事故対応にしても,賠償問題にしても,このスキームでは国の取り組みが見えず,原子力発電に対する我が国の取り組み姿勢に不信が増すと思う.

尚,この賠償スキームに対し自民党の見解が聞こえてこない.どんな考え方をするのか興味が湧く.永年の政権を担ってきた自民党としては,政府の責任を認め,政策(公金)で放射能被害を救済する事を国民にお願いすべきだと思うが.

以上原発賠償問題を指摘したが,原発問題(事故収束,被害救済)で問われているのは,東電バッシングではなく,政府の姿勢と責任ある政策である.社会問題としての対策スキームをしっかり構築すべきだと思うのである.

最後に,総理は『東電に逃げるな』と言ったようだが,『逃げているのは総理,政府,官僚』ではないのか,と思う.これでは,未曽有の大震災,原発事故に対応出来るわけがない,と思うのである.

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