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2011.06.02

245 菅内閣不信任案提出劇 と,その後の政局

6月2日午後,自民党はじめ野党が共同で提出した菅内閣不信任案が大差で否決され,民主党の分裂も回避された.しかし,その夜,大騒動が持ち上がったのである.

そこで,翌日の政治家の動きを踏まえて,この騒動の中身と今後の政局について率直な感想を述べたい.まず,不信任案提出から大騒動に至る経緯であるが,おおよそ次の通りである.

野党の不信任案提出が,しばらく影をひそめていた民主党反主流派の『管降ろし』に火をつけた.不信任案をかざして『退陣しないなら賛成する』『退陣しないなら党分裂も辞さず』と主流派・総理に迫ったのである.

6月1日の情勢では,総理が不信任案が可決なら解散だと,けん制するほど,造反者が多い雲行きであった.ところが,6月2日,午前の民主党代議士会での菅総理の『退陣意向の表明』ともとれる発言と鳩山前総理の身を引く事を承知したとの報告で,あっさり造反の旗が降ろされ,本会議で,何も無かったかのように不信任案は否決されたのである.

反主流派は総理を辞めさせる事が狙いであったから,『辞めると言うなら,造反はしない』と鉾をおさめたのである.マスコミも総理の退陣表明を一斉に伝えた.

自民党としては不信任が否決され,民主党の分裂も実現しなかったが,国会議決とは裏腹に,総理の『退陣意向の表明』を引き出した事になる.

ところが,否決された夜,総理は会見で,退陣表明などしていない,と言い出したのである.総理の続投に賛同したから,不信任案は否決されたのだ,と開き直ったのである.

総理の退陣を引き出した鳩山前総理は『ペテン師だ』と激昂し,退陣するから否決した民主党の反主流派,中間派はそんな事なら『不信任案に賛成すべきであった』と言い,不信任案を否決された自民党は『政治的詐欺だ』と声を荒立てたのである.結局,総理は自身の資質まで問われる事になり,居座る事が逆に困難になったのである.

結局,不信任案に対し,シナリオが四つあったと考えられる.

①民主党主流派のシナリオは
『邪魔な造反者を離党させ,現政権を維持する』とする.可決されるほど造反者が多い場合は,『総選挙をちらつかせる』,『総理の退陣をほのめかす』事で造反者を抑える.

②民主党反主流派のシナリオは
党の代表選の後も,党の主導権を奪取したい,菅を退陣させたい,との強い思いを持つ反主流派は造反による不信任案の可決,党の分裂,を吹聴し,退陣の意向を引き出せれば,不信任案はを否決し党分裂を避ける.

③あるいは民主党反主流派のシナリオは
実は造反者は思ったほど少なく,その
造反者を離党させたくない.そこで,押し留める理由として,総理の退陣の意向を事前に聞いたと公言し,矛を収めさせる.

④提出者の自民党のシナリオは
民主党反主流派の造反者が多数出て,民主党政権が分裂する,との情報を得て,伊吹,町村,古賀,額賀の領袖が不信任案提出を進言.中堅は否定的で,否決されて菅政権が逆に元気になると予想.そんな中で不信任案を提出.分裂は出来なくとも,民主党内部の問題をあぶり出し,菅退陣まで行けばよし.

いずれにせよ結果は,不信任は否決され,従来の『ごった煮の民主党』『根本的問題を抱えた民主党』のままとなったが,党としては総理の退陣を迫る事になった.

結局,今回の不信任案は総理の続投を認めて否決されたのではなく,総理の退陣表明で,可決する必要がなくなっただけなのである.

今回の騒動について,民主党主流派,反主流派,自民党,そして国民,それぞれの視点で評価はあると思うが,『常識的視点』で,今後の政局について所見を述べてみたい.

所見その1(総理の動き)

総理,及び内閣は不信任が否決されたのだから,当然,続投の意思はあると思う.しかし,今までの総理,内閣,政権与党のマニフェストの破綻,政権担当能力の欠落,失政,などを考えれば,不信任案が提出された時点で,常識的或いは憲政の常道からすれば,解散総選挙である.加えて,国難に遭遇しているのだから,国民の信を得る事は当たり前な事なのである.

しかし被災地の状況や一票の格差問題から,選挙が出来ない状態だと言う.又,選挙などやっている場合ではないと言う.日本は,民主主義機能が停止してもかまわないと言う程度の政治レベル,政治意識,なのである.民主党,菅政権はこれに救われたのである.政治家なら謙虚に,この事を自覚すべきである.

そこで,総辞職と新内閣の発足になるわけだが,総理退陣の風評は,もう止められず,水面下で次期政権の人事が動き始める事になる.同時に総理のレームダック化は日ごとに強くなると思う.

一方総理の方は,『不信任は否決され,続投が認められた』と又,総理は開き直りたい心境かもしれない.もしかすると,苦労してのし上がった総理は絶対権力の身震いする様な快感を憶えて離れられなくなっているかもしれない.

しかし,総理は,今回の騒動も含めて,政権奪取以来の政治の混迷は,反自民で集まった,ごった煮政党の民主党に原因があり,国政など無理だったと深く反省すべきである.ましてや国難を乗り越えられるはずがないと謙虚に思うべきである.

そこで,日本の窮地を救うために,政権を今,返上する事が最も重要な総理の決断だと思う.民主党は解党し,政策中心の政党に分離すべきである.そして,当面,自民党を中心とした連立政権で国難に対峙し,その後,解散総選挙で新しい政権を作るべきだと思うのである.

所見その2(民主党の動き)

民主党としては,三人目の総理を選び,後2年の任期いっぱいまで,民主党政権を延命させたいと思うはずである.その延命策の中に,参院のネジレ対策として,連立案があるのだと思う.

しかし,民主党は総理の動きでも述べた通り,政権の延命を考える以前に,政権与党としての根本的な問題の解決が先だと思うのである.今回の騒動で分裂すれば,少しはすっきりするところだったが,その機会も逃してしまった.

根本的問題とは,主流派・反主流派の対立,民主党マニフェスト問題,社会保障問題,税財政問題,円高株安デフレ問題,景気対策,雇用問題,等である.それに加えて,震災対応問題,原発事故対応問題等が負いかぶさり,山ほど根本問題が積み上がっているのである..

政権当初より懸念された事であるだけに,仮免許どころか資格もないまま,政権与党を続け,未だ一歩も解決の兆しが見えていないどころか,悪化しているのである.民主党の責任は極めて重大だと思う.事の重大性を民主党議員は自覚しているのだろうか.

そもそも,民主党は,『反自民で集まった,ごった煮の政党』で,『党の綱領もないまま,国家の政策もなく』『国を動かすスベも知らない』,政権与党である.この政権に,今度は巨大な震災,巨大な津波,原発事故の対応が加わったのである.日本の『最悪な状態に最悪な政府と言う最悪の政治体制』になってしまったのである.

こう考えると,民主党は,まず党としての体を整える事が先であって,延命策を議論している場合ではない.反省を込めて,一度解党し,政党を再編した方が正しい行動だと思う.その上で政権に参加出来るのか,どうかの議論をすべきだと思う.

これなくして,次の内閣を作っても,政治の混迷を繰り返すだけだと思う.遅ればせながら,民主党内部から,この本来の動きが起こる事を期待したい.巨大災害の真っただ中ではあるが,政権を返上し,民主党を立て直す事が民主党の最大の責任だと思う.

所見その3(自民党の動き)

自民党としては,長期政権の反省と国難に向けての政策を掲げて,党の信頼と支持率を上げて行く必要がある.特に民主党政権の不備無策を指摘しながら,政策を良い方向に牽引して行く取り組みが必要である.特に議員立法を積極的に進める必要がある.保守思考が高まる中で,自民党も正念場なのである.

そんな中で,自民党の攻勢は,いい加減な民主党マニフェストの問題指摘と撤回,国民をだまして政権をとった事のアピール,民主党政権発足以来続く政権のゴタゴタや国益の損失,外交の地盤沈下,震災・原発事故への菅政権の不手際,等を徹底して追求し,先ず菅政権の退陣を迫ると思う.

以上,今回の『不信任案提出劇』と,その影響について所見を述べたが,具体的に今後の政局がどうなるのか,今のところ見えていない.ただ今回の劇で国民に見えた事は相変わらずの『でたらめな政権与党の体たらく』である.安物の劇を観せられた感じである.

追記(6月8日)

騒動から一週間が経つが,政局は,ますます混迷度を深めている.
菅総理は震災・原発のめどが付くまで続投したいと言うし,一方では,民主党内部から早期退陣の声が上がるし,水面下で次期総理の思惑が動いている.野党からは,退陣しなければ国会審議は進めない,政治空白をなくす為に早期退陣を,と圧力をかけている.そんなわけで,本人の意向とは別に,
レームダック化は確実に進んでいるのである.

どうやら総理は初秋頃,退任し,後任者が,あと2年,満期まで,政権を持ち続け,衆参ダブル選挙に持ち込みたい,との『民主党延命シナリオ』を描いているようである.

一方,総理自身は54番札所から,お遍路を再開するのだと言う.54番札所は『延命寺』だそうだから,『自身の延命の仕上げ』を秋の四国路でやる,とでも言うのだろうか.総理は自身の『自己中の幼児性』或いは『幼児的な正義感』に気づく事なく,相変わらず,それを繰り返しているのである.

勿論,民主党には,既に指摘しているが,政権の延命シナリオを夢見る程,余裕はないのである.まず,代表選を通して,人物選びも去る事ながら,党としてのマニフェストの問題や重要政策の見解をまとめる必要がある.その上で,日本にとって遜色の無い組閣をする必要がある.その体制で,平成23年度赤字国債法案,復旧・復興に向けた2次補正予算案,原発事故賠償法案,等を成立させ,かつ,巨大災害や原発事故に精力的に取り組まねばならない.また,社会保障問題,税財政問題,円高・デフレ問題も待ったなしである.

この様に,次期政権は日本にとって,極めてハードルが高く,戦後最大の重責になる.それでも政権をとりたいと言う人達は,よほど無知・無責任な人か,有能・責任を取る人達である.民主党続投論者はどちらだろうか.能力や政策を持っているのだろうか.

そんな心配をよそに,民主党から,政権の延命やポスト菅体制の話ししか聞こえて来ない.肝心の光が見えてくるような,『政権与党としての政策の話』は全く聞こえて来ないのである.きっと,そんなものが無いに違いないのである.

私見によれば,民主党は『政権の延命』どころか,『党の存続の崖っぷち』にいると思う.そんな政党に国難の舵取りを任せられないと思う.今まで,散々,『ごった煮政党』,『合成の誤謬政党』の正体を見せつけられて来たからである.

前回のブログで『メルトダウン政権が液状化した』と揶揄したが,実は震災後数時間で,既に,『メルトスルー政権』になっていたのかもしれない.

この際,やっぱり,民主党は解党するか,解散して,国民に信を問うべきではないか,と思う.これが,政治の混迷から脱出できる唯一の方法であり,しかも,国難を乗り越えて行く政治体制を早く作る為にも,そう思うのである.国民は民主党より国が大事なのである.

追記(6月19日)

依然として総理の退陣問題で中途半端な状態が続いている.上述のように,民主党政権は既に政権を担当している資格も実力も政策もないのだが,

・総理は相変わらず続投意欲を示し,
・民主党執行部は新内閣でネジレ解消を図り,政権延命を狙い,
・自民党は打倒民主党で公約の撤回,失政の追求,復旧復興の加速をせまる.

と言う6月2日と同じ状況が続いている.6月2日の否決は続投を認めるから否決されたわけではなく,退陣すると意向を受けて,党を割ってまで可決する必要がなくなったから否決したのである.

当時の反主流派の言動からすれば,総理の続投に激怒し,再度,退陣を迫るか,即刻自ら離党するはずである.しかし,その気配も無いと言う事は最初から離党など考えておらず,単にコップの中の権力闘争でしなかった事になる.相変わらず,民主党のごった煮状態でよしとしているのである.政党政治とは程遠い政権与党なのである.

一方,震災・原発事故の対応は問題に手を打たれる事も無く,次から次へと山済みされている状況である.事前に想像できる問題ばかりで,もどかしさが倍増するのである.

震災復旧で言えば,地上や海のガレキ撤去の問題,被災地の土地再利用の問題,防潮堤・道路・学校・病院・等の社会資本の復旧の問題,社会インフラの復旧の問題,田畑の塩害除去の問題,それを踏まえた街の復旧計画の問題,事業復旧の問題,等

放射能汚染で言えば,立ち入り禁止区域や計画避難区域の汚染ガレキの処分の問題,農作物・家畜の問題,土地や田畑の除染の問題,海洋汚染の問題,全域にわたる,放射能測定,人体検査の問題,等

共通して,避難所生活や仮設住宅の問題,医療・介護・仕事の問題,仮説住宅生活以後の問題,支援金・義援金の問題,等

等々,先行きがまったく見えない中で,問題が次から次へと被災者を襲っているのである.『政策と予算と有事の法制度と行動』がとても間に合っていないのである.

これは完全に,内閣,政権与党の問題であり,責任なのである.その事の反省もないままに,『震災後100日間もほったらかしといて,続投したいだと,今さらなんだ』と言う感じである.

『TOO LATE』は,それで国が滅ぶほど重大な事だが,そんな実行力のない,時間感覚のない人達に権力を与えてはならないのである.震災発生以来,当ブログで多くの問題や提案や感想を述べてきたが,その中で,空襲で焼け野原になった街で,避難,救済,復旧の采配を振るえそうな大臣は一人もいないと印象を述べた事がある.

国難ならばこそ,それにふさわしい人材を選ぶべきだと言う意味であったが,残念ながら,今もその顔ぶれは変わっていない.その結果,今の今まで,その印象が変わる事はなかったし,今だに,国民に施政方針を力強く,心を込めて,語りかける人は表れていないのである.

復興基本法案がやっと野党案を丸呑みする形で,今週,成立すると思うが,これを契機にせめて内閣が総辞職をし,新しい内閣の下で,政策・予算・有事の法制度・実行体制を作り,復旧・復興に向かうべきだと思うのだが.

ところで,『国難には救世主が現れる』と言う歴史を信じたい.その救世主は被災地から出てくる予感がする.現地で,巨大災害の苦悩と戦っている多くの人たちの姿を見るにつけ,これを確信するのである.その為にも,早く民主党政権は席をあけて欲しいのである.

体をなしていない民主党政権が,いつまで続くのかわからない中で,独断と偏見で新内閣を組閣してみたくなった.そうでもしなければ,このもやもや感はとても,晴れないのである.

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