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2011.06.23

246 再生可能エネルギー法案と今後の電力事業の展望

東電福島第一原子力発電所の大惨事以来,国内外で,福島原発事故の問題,地域や海の放射能汚染の問題,高レベル放射能物資の処分の問題,原発の安全性向上の問題,検査中の原発の再稼働問題,当面の電力不足問題,脱原発と将来のエネルギー政策の問題,地域独占の電力会社の問題など直近の問題から将来の問題まで,議論が飛び交っている.書店も原発本や新エネルギー本で一杯である.

巨大なエネルギー需要を原発で乗り切ってきた近代社会であるが,ここに来て,大きな課題を人類は抱え込む事になった.一昨年来の地球規模の温暖化問題が吹っ飛び,完全に原発の問題に議論が移った感じである.政権与党の民主党も温暖化対策も原発計画もやり直し必至であるが,勿論,そこまで手が回っていない.

こんな中で,退任を迫られている菅総理が今延長国会で『再生可能エネルギー促進法案』を成立させたいと,唐突に言い出したのである.

ちなみに,この法案は地球温暖化対策として,原発の拡充方針に加えて,自然エネルギー開発も促進する法案として既に震災前に,民主党から国会に提出されているのである.内容は自然エネルギー電力の送電と買い取りを電力会社に義務付ける法案である.

しかし,自然エネルギーの比率の問題,電力料金が高くなる問題,自然エネルギー発電者と非発電者との間の不公平の問題,固定価格での買い取りの問題,に,まだ検討すべき事があるし,しかも,今回の震災で,検討の緊急度が低くなった事で,棚上げになっている法案なのである.たとえエネルギー問題をやるにしても,福島原発事故の賠償方法を検討する方が先だと言う意見がある.それだけに,総理の発言は唐突に映るのである.

この総理の言動に対し,民主党内部からも厳しい避難が上がっている.延長国会に当たって総理が言うのは国債特例法,あるいは,緊急を要する補正予算のお願いだろう,何を言っているのだ,との声である.当たり前の事だと思うが,この発言はすごく立派に見えるほど,総理がおかしいのである.

ところで,総理が再生可能エネルギー促進法案を唐突に持ち出した理由に何があるのか,暇にまかせて考えてみた.

①四面楚歌になると,わざと唐突な幼児的な言動や自虐的な行動が出ると言うが,そんな心理状態から起こっているからだろうか.もしそうなら,即刻,総理は退陣しないと,国は危ない事になる.

②復興計画の中に,東北地方の沿岸部の津波に洗われた田畑や放置されて休耕田や,放射能に汚染された田畑に,太陽光パネルを敷き詰めて,農作物ではなく電気を栽培する構想があり,その費用を電力料から捻出する事を早く決めておきたいからだろうか.

③あるいは,福島原発事故を契機に太陽光発電の事業化に手を上げた孫氏に強く影響され,その支援を約束したからだろうか.

5月25日のフランスのG8サミットで,総理は2020年に自然エネルギーを20%にする,1000万戸の屋根に太陽光パネルを設置する,と党内の議論もなしに,突然言いだしたが,孫氏のプレゼンを流用した感じがする.

さらに6月12日再生可能エネルギーに関する総理・有識者懇談会,6月16日の再生可能エネルギー促進法案成立緊急集会,を通じて,これもまた党内の議論もなしに,孫氏に法案成立を約束したようである.孫・菅の蜜月ぶりを見るにつけ,孫氏からの働きかけがあったとしても,不思議ではない.太陽光発電事業に手を上げている孫氏にとっては,それほど格好な法案なのである.

総理は,突然ではなく,昔からの自論だと言っているようだが,地球温暖化の話も,原発も含めた将来のエネルギー政策の話も,固まっていない上に,退陣問題が出たあと急に言い出した事で,昔からの自論だと,言い訳するほど,孫氏と約束したからだと見えるのである.

④そもそも,表面的な事を唐突に言うのは菅総理の癖から来ているからだろうか.消費税やTPPもそうだが,今始まった事ではないだけに,癖の可能性がある.鳩山前総理の『最低でも県外』発言も同じ癖である.だとすると,どうやら,民主党議員には,野党精神で培った『思いつき症候群』が直っていないのかもしれない.

⑤そんな事より,退陣を伸ばせる格好の法案だと思ったからだろうか.強い反論が出来ない法案だという事で抵抗無く,総理の任期を先に伸ばせるし,自然エネルギーの促進に名を残せる,と考えたからだろうか.

しかし,現在の日本の緊急案件より,総理自身の延命,功名心を優先したと避難される事を気にしないのだろうか.そんな人に総理の権限を与えてはならないのは当然である.退陣は総理の専権事項だと自分の意見を言わない政治家もいる.権力のチェックが出来ない政治家だと自認しているようなものである.

以上,総理の唐突の裏側を類推したが,いづれにしてもセコイ話しである.政界や政治家がドンドン小さくなっている様で,果たして,日本は大丈夫なのだろうか.

ところで,電力事業の最大の課題である,電力事業の自由化について,浅学ではあるが整理してみた.

電力の自由化は昔の通信事業の自由化とよく似たところがある.通信の自由化と戦って来た孫正義氏からすれば,電力事業の自由化を次のターゲットにしても不思議ではない.元来,この電力事業の自由化は発電や発電方法の自由化,電力網の自由化によって,発電,送電の分離,地域独占の廃止を目的としている.

ところで,この電力事業の自由化は通信事業の自由化と類似している.通信事業も,もとはと言えば,電電公社であり,独占であった.それが民営化と共に,端末,通信網が自由化され,近年,インターネット網の高速化,無線化で通信とテレビが融合する時代になったのである.電力事業もこれと同じ歩みをする事が予想されるのである.

①まず,『発電と電力網の分離』である.一対で地域独占している現在の電力会社形態から多種な再生可能エネルギー(自然エネルギー)の発電を自由化するものである.

これを加速する為に再生可能エネルギー促進法案が考えられた.この法案によって,投資をし易くし,自然エネルギー発電事業者を増やし,自然エネルギー電力の普及を目指すのである.携帯電話と無線網の自由化時,新規参入者に既設幹線網の利用を可能にさせて,参入者を増やした政策と似ている.

②もうひとつの電力事業の自由化は電力網の自由化である.通信網の自由化と同じである.これは,自然エネルギーの分散型発電と繋がった送電網の設置や技術革新による新しい電力ネットワーク(スマートグリッド)を作る事への対応である.

このスマートグリッドとは自立分散的な制御方式による電力網内の需給バランスの最適化調整,負荷分散,障害の局所化,を可能にする電力網である.通信事業でいうデジタル通信のインターネトの様な電力ネットワーク網だと言えるのである.

勿論,その効果の対価として電力ネットワークの使用料が電力料の中から切り出せれば,有線のストックビジネスとしては最大の規模になる.もちろん,通信網と電力網が共有される事も想像できるのである.

現在,家庭に光通信網が接続され,電話,データ,テレヒが共有され,随分有線網がシンプルになったが,未だその普及は限定的である.これに電線が共有されれば,一気に高速度通信網が家庭に接続される事になる.そんな広がりを期待するのが電力網の自由化である.

③この①②の発電と電力網の自由化によって,実質,地域独占が崩れる事になる.同じ地域に,多くの発電者とキャリア(電力ネットワーク事業者)が存在する事になるからである.

このような電力の自由化には勿論課題はある.しかし,この課題を乗り越えて,原発の比率を下げるる程に発電量が高まり,発電コストも大きく下がれば,『再生可能エレルギーによる分散発電とスマートグリッドによる電力網』は新しい電力事業になると思う.

孫氏がそこまで考えているかは別として,段取りとして,まず太陽光パネルを普及させる(発電機器事業),そして自然エネルギーの発電と送電網を拡大する(発電事業,送電事業),将来的にはインターネット網とよく似た,電力ネットワーク事業(スマートグリッド)を展開する.又,自然エネルギー事業は,産業振興策であり,政治との連携もして行く.勿論,地産地消ではないが,地域ぐるみでの展開になる,こんなシナリオが描けるのである.

電力事業の夢は,この様な話になるわけだが,直面している震災対応,原発事故対応,電力不足を,まずなんとかしなければならないし,この当面の問題と,再生可能エネルギーの構想は,技術革新と共に,別のスパンで進める必要があると思うのである.

自然エネルギーの促進法案はヨーロッパなどでも採用されている有力な案だというが,一事業家の孫氏と菅総理が法案の成立に執着するほど,国民は何故急ぐのか,と冷めてしまう感じがするのである.

唐突ではなく,もっと,国民も巻き込んだ,技術的考察も加えて,原発事故対策,原発事故賠償対策,電力不足対策,節電対策,原発再稼動対策,電力料金対策,GDP対策,自然エネルギー対策,など客観的な論議を期待したい.

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