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2011.07.07

248 災害大国日本に『有事の備え』が欠落している原因

巨大な震災や放射能汚染災害で,誰しもが想像出来る問題が次から次に起こっている.『どうして,事前に手が打てないのか』と,もどかしさ,いらだちを感じるのである.当然,矛先は政治への不信,怒りに発展するのである.

誰しもが想像できる問題を整理し,それぞれの対策を制度化すべきなのである.ところが,当ブログ『239 欠落している有事の備え』でも,取り上げているが,実際は想定される問題に,あらかじめ,責任体制,制度と実施の仕組み,財源,が決められていないのである.いわゆる,『有事の備え』がないと言っても過言ではないのである.

①救難フェーズ・・・不明者捜索,避難(1次,2次),生活・介護・医療支援,等
②救済フェーズ・・・仮設住宅,ガレキ撤去,ライフライン確保,生活・雇用・事業支援,等
③復旧フェーズ・・・復興計画策定,社会インフラ建設,住宅
建設,会社・工場建設,等
④復興フェーズ・・・産業振興,都市機能増強,等

実際,4ケ月立つ現在,復旧・復興に向けた国・地方の組織をこれから決めると言うのだからあきれる.これでは被災対策が進むわけがないのである.

この『有事の備え』は自然災害だけではなく,戦争,テロ,細菌,などでも考えておく必要がある.平時の制度・仕組みでは対応出来ない事は明らかだからである.しかし,憲法からして,この有事の概念がない事が根本的問題なのかもしれない.

憲法問題以外に,『有事の備え』が出来ない根本的問題について考えてみた.

1.最悪の事態から目をそらす日本文化の問題

当ブログ 29 1頁と100頁の契約書にみる日米文化』で触れているが,日本人同志の契約書では,ほとんどの場合,想定されるトラブルやリスクに触れず,それが発生した時,『誠意を持って別途協議する』で済ますのである.

ギシギシいろんなケースをつめるとすると,きりがなくなったり,時間がかかったり,やる気を問われたり,対立が発生したり,不信感をいだかれたり,挙げくに,成約が出来なくなるのである.契約文化が徐々に浸透しているものの、この様な事から,1頁の契約書(発注書)の方がスムーズに事が運ぶ文化なのである.

多民族文化と言われ,契約文化が浸透している欧米と比較すると,契約書を仕事の前に見るのが欧米人,争いになった時見るのが日本人と言う事になる.又,契約金額も,契約内容によって変わるのが欧米だが,日本では,契約内容とは無関係に金額が決まっている.又,日本では契約以前に,義理人情浪花節,慣習,長い付き合い,と言う不文律があって,これが結構,契約書にない問題を解決してくれるのである.

日本の1頁の契約文化は,欧米では通用しないが,国内同志であれば,相互信頼に守られた合理的な,効率的な文化とも言える.しかし,この日本的文化は危機対応の思考力を停止させたり,トラブルを拡大させたり,泥縄の対応で時間がかかったり,する温床になっているとも言えるのである.

今回の大地震,大津波,原発事故でも,発生している問題の対応は『1頁の契約書』と同じである.先手先手で手が打てる問題ばかりであるにもかかわらず,法制度上は想定外の問題となり,『誠意を以て別途協議』と同じような,震災対応が行われるのである.これでは被害者の苦しさが長引くだけである.救済の費用もかさむ.

毎年のように大きな自然災害に見舞われる日本であるだけに,自然災害に関する『100頁の契約書』にあたる『災害対応マニュアル』を制定しておく必要がある.深刻な事態から目をそらす日本文化から脱却しなければならないのである.

2.法規制に平時,異常時の区別がない問題

憲法で平事と有事の概念がない事もあって,災害対応は平時の体制,法制度,仕組みで対応するのか,平時とは違う体制,法制度,仕組みが必要になるのか,つきつめた検討がされていないと思う.結果,事ある毎に,泥縄となり,膨大な時間と法律が必要になるのである.

今回も,『特区設定による有事制度』が考えられると思うが,それと並行して,平事・有事の法体系を意識し,今後も使える形で,進めて欲しいものである.毎回,一過性の時限立法ばかり作っても,毎回泥縄になるだけで,制度が継承・進化しないのである.

3.法律と予算制度で動く行政の仕組みの問題

公金はすべからく,法律と予算に裏付けられて使われるわけだが,緊急を要する被災対応で,この財源問題が立ちはだかる.現地の自治体が必要だと思うっても,財源の裏付けがなければ,手も足も出ないのである.実際には,運用で何とか出来る事はあると思うが,本質はこの予算制度にある.解決方法は,二つ.必要に応じて国による一括交付を行う方法,国の責任で事後清算を可能とする方法,である.このどちらかを事前の制度として用意しなければ,機動力ある被災対応はできないのである.

これは現実にある話であるが,被災地の役人の仕事は,目の前の救済活動ではなく,予算をとる為の被害状況の調査である.そのうえで,国との交渉が行われるのである.まさに,予算制度が末端の活動まで浸透しているのである.

4..公金を個人・私有財産に使う事に関する制度の問題

住宅や会社の財産被害(土地・住宅・設備・家畜,等)に対する支援問題,借金・ローン,・債務不履行に対する免責問題,など法制度の備えが必要である.従来の基本的な考え方は,公金を私有財産に使わない,と言う事で,せいぜい,お見舞い程度であったり,現物支給である.

時代の要請の中で,公金を私有財産に使う事に対して,しっかりしたガイドラインが必要である.保険制度の見直しも必要だと思う.又,被害対象が巨大であろうと,極小であろうと,被害者個人から見れば,支援の必要性は同じである.この問題も忘れてはならない.いづれにせよ災害発生都度,検討しているようでは,災害復旧に間に合わないのである.

5.救難・救済・復旧・復興の財源の問題

災害復旧は将来への先行投資の意味も含めて,大体,建設国債,地方債によって財源が手当てされる.しかし,災害が財政を圧迫する事は明らかであり,災害国日本の宿命である.今回の巨大な災害は,震災前の国家財政危機に大きくのしかかるのだが,はたして耐えられるのか,綱渡りが続く.従って,国家財政政策,国家予算政策なくして,『有事の備え』も『災害発生後の対応』も出来ないのである.

6.異常時における行政手続き,税,公共料金,行政サービス,の問題

この問題も泥縄対応である.全ての行政制度の有事での対応方法を決めておく必要がある.あるいは平時の手続きも見直す必要がある.これを決めておかないと,『杓子定規のお役所仕事』との批判はなくならないのである.

以上6点を上げたが,これらの事に対する考え方を持たない限り,『有事の備え』を用意する事は出来ないと思う.結局,泥縄の対応を繰り返す事になる.何としても,今回の巨大震災の経験をベースに『有事の備え』を作るべきだと思う.

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