« 248 災害大国日本に『有事の備え』が欠落している原因 | トップページ | 250 私なりの福島原発事故対策の状況認識 »

2011.07.15

249 今後の原発政策『論戯』

福島第一原発事故の対応のさなか,総理の浜岡原発の停止や玄海原発の再稼動問題で,にわかに原発のそもそも論議に火がついた.しかし,将来の原発政策やエネルギー政策の見直しが決まっていないだけに,電力不足への不安,原発事故への恐怖が前のめりで,社会不安を煽っている形になったのである.

先ず,そもそもの原発に対する主張は次の3つに集約される.

①今後も原発を推進する(原発推進派)
将来に向けて原子力の平和利用は不可欠であり,今後とも研究開発は必要だと主張.他国で原子力の利用や研究がある以上,日本だけ,やめるわけにはいかない,とも言う.特に,電力不足の影響を現代社会では無視できないし,原発に変わる,エネルギーは今のところ存在しない.未解決課題の研究開発,安全性の向上をしつつ,運用を継続すべきである,としている.

しかし,放射能汚染リスクや使用済み核燃料の処理などの課題に解決策が見いだせなければ,原発推進は難しくなる.

②原発は継続する,但し徐々に他のエネルギーに移す(継続・縮少派)
電力不足を起こさない為に原発は継続するが,将来のエネルギー政策としては他のエネルギーの開発,省エネ技術の開発,によって原発依存度を下げて行く,との主張.但し,将来,原発を一定依存度で残す事になるのか,原発をなくす所まで行くのかは,今のところ不明.いづれにせよ,原発の抱えるリスクがある以上,依存度を低くして行こうとする案.

継続運転に際しては福島原発事故を踏まえた更なる安全基準の改良,想定外のストレスに対する対応力の評価によって,安全性を向上して行く事になるが,問題は原発依存度の軽減の方法である.

A 安全基準,ストレステスト,で問題ありの原発を廃止して行く方法
B 原発以外の発電量の増加に応じて原発を廃止して行く方法


A の判断で廃止したいが,電力不足が起こる時、A、B 共に廃止が地域経済・雇用に大きな問題を起こす時,総論賛成各論反対の激論が起こる可能性がある.

③早期に原発を廃止する(原発廃止派)
科学的に,技術的に原子炉は完全に人間が制御できないし,高濃度放射性物資の処分の方法も確立していない.又,事故による放射能汚染,被爆の可能性は否定できず,その時の社会への影響は計り知れない.特に,もう一回,原発事故で放射能が飛び交えば,日本は破滅する,そうならない前に,即刻,廃止すべきだ,とする主張.

この原発反対を言う人は,科学技術の観点で言う人,核武装反対,軍備反対,基地反対,安保反対,と左翼運動と同心円で言う人,条件闘争で反対運動をしている人,支持率を上げるために主張している人,等が散見する.この事が,逆効果になって,原発を容認せている側面もある.

原発再稼動に関しては,高い安全基準を掲げて,実質,再開させない事を考えると思う.これをやれば来春には稼働している原子炉がなくなる.但し,その時,日本はどういう事になるのか,原発以外の発電で,どれくらい供給が出来るのか,等,言わない.原発事故の被害を考えれば,電力不足による影響など,小さな事だとしている様である.また原発を停止しても,使用済み核燃料処理に,リスク,時間,専門家,長期の人材育成,資金,が必要になる事もあまり触れる事はない.

以上の三つの主張が議論されているわけだが,そもそも原発は万が一の危険性や使用済み核燃料の処分方法等の未解決課題を持ちながら,次の目的で国家戦略として推進されて来た.

『原子力の平和利用にむけた研究開発』(世界の認知)
『核保有可能国家としての抑止力発揮』(戦勝国承認)

『経済発展に必要なエネルギーの確保』(安定電源の確保)
『エネルギー防衛の確立』(輸入エネルギー依存からの脱却)
『原発誘致による地域経済の維持発展
』(税収,交付金)
『地球温暖化対策』(近年CO2排出抑制で原発化推進)

この原発は約40年を経過し,日本の技術と経済を牽引して来た.この国家戦略を踏まえて,今後どうするのか,冷静な建設的な議論を期待したい.

とは言うものの,原発が持つ,万が一の危険性と原発で得られる効用のトレードオフと言うジレンマがあるだけに悩みは大きい.

ジレンマが伴う科学技術に対し,人類は科学技術を封印する事はなかった.その結果,科学技術の進化を遂げて行くわけだが,万が一のリスクは残る.国際的には原発も例外ではなく,研究途上の分野である.

世界の趨勢としては,少なくとも,原爆保有国は原発廃止の方向は出さないと思う.原発も核兵器も一体的に捉えているからである.安全技術や放射能対策,あるいは廃棄対策などの技術や課題が多くの点で共通しているからである.

BRICS諸国も莫大なエネルギーを確保する為に,原発開発途上であり,原発は拡大方向である.原発の普及に際し,国際的な安全基準や相互監視体制が叫ばれている.

ドイツ,イタリアは原発廃止の方向を打ち出した.これに日本が加われば,戦前の日独伊三国同盟,ファシズム国家,敗戦国,原爆非保国と言う事になる.『原爆非保有=原発非保有』と言う構図になる.だとしたら,『原子力の平和利用』『いつでも核武装できる日本』の旗を降ろしても良いのかと言う議論も出てくる.

そんな中で自分の意見が定まらない.あえて言えば,実際,原発が存在し,即やめられない以上,②が現実的対応と言う事になる.

とは言うものの,巨大地震,巨大津波,福島第一原発事故を踏まえた安全性評価は定かではない.

・福島第一の潮防堤の低さ以外,安全性は確保できている,と見るのか
・各原発に尚,対処すべきリスクが内在していると見るのか
・原子力行政や事故発生事の対応に問題があるのか
.

又,縮小して行くとしても,

・原発リスクになる要因は?
(設置台数,稼働台数,場所,原子炉の改良・廃止,他)
・原発リスク軽減の具体的方法は?(技術革新,工夫,稼働台数減,他)
・廃止から廃炉までのプロセス,リスク対策は?
・使用済み核燃料の処分方法は?
・今後の廃止,廃炉に向けた人材・資金の確は?

など具体的方法とか実施時期も不明な事が多い.

以上,①②③のどれを選択するにしても,原発問題は,まだまだ言葉だけが先行している問題の様に思う.

それにつけても,方向性の問題も結構だが,現存する原発に対し,取り組むテーマが二つある.もしこのテーマが実現できれば原発はすばらしいエネルギーになる.禅問答もなくなる.

第一は,事故発生時,放射能の飛散を完璧に防ぐ方法はないのか.

自動車のエアバックなど衝突と同時に開くが,なんともアナログな発想である.空中に噴出した放射能をバルーンで受けるとか,いろんな工夫があっても良い,とにかく,『放射能を絶対飛散させない』事が出来ればよい.

原発と言うと原子力の学者ばかりがイメージされるが,飛散防止の問題等は専門分野が特定されない分野だと思うし,世間には多くのアイデアがあるように思う.廃止を議論するより,原発が現存する以上,この対策の方が大事な気がする.

第二は,飛散した放射能の可視化,吸着化,無害化が出来ないのか.

放射能による医学的影響もまだはっきりしていないが,それより早く,これが可能なら放射能の恐怖から一気に解放される.この研究開発は放射能を生んだ人類の責務だと思う.原子炉の研究だけではなく,放射能対策に力を入れて欲しいのである.それとも,絶対不可能な事なのだろうか.

特殊なメガネで放射能が光って見えるとか,航空写真を撮るように,広域に放射能分布・濃度が分かるとか,何かの物質に磁石のように放射能が吸着するとか,粉末を水や海水に撒くと放射能を吸着して沈着するとか,地上のどこでも,薬品を放射能に散布すると短期間で無害になるとか,薬を呑むと人間でも動物でも内部被爆が無害になるとか,とにかく,識者の皆さん,人類の為に,お願いします.

追記(7月13日記

玄海原発の再稼動に対し,許可を与えた経産省と,新たなストレステスト後,判断するとした総理で対立.結果,ストレステスト後,再稼動の可否を判断する事としたが肝心のストレステストの内容,実施方法,評価方法は,これからつめる事となった.

又,本日,菅総理は『従来のエネルギー政策の白紙撤回』と『原発依存の段階的下げと将来の脱原発』を記者会見で発表した.『あんたに言われたくない』との感想が世論に多いと思うが,それ以前に,ストレステストもそうであったが,相変わらず中身のない発表であった.政府,民主党の統一見解でも,議論した様子も,なかったようである.総理の記者会見と言いながら,私的な『思い』を言っただけのようである.

ひょっとすると,段階的と言ったが,総理は『被害の大きさを考えれば,即廃止すべきだ』と原発廃止論者であり,一気に廃止に舵を切って,国民の絶賛を浴びたいと思ったのかもしれない.総理ではなく,市民運動家に戻った瞬間である.

鳩山総理の『最低でも県外』もそうだったが,菅総理も,世間が喜びそうな事を根拠無く発言する事は同じ癖である.裏づけは無いが,世間が喜びそうな事を言って選挙に勝った『民主党マニフェスト』と同じDNAである.どうも根っからの野党精神,無責任精神,良く言えば『バカ真面目な観念主義,原理主義』がそうさせているのかも知れない.

更に,この人達の大問題は,ウソつき,詐欺,と言われない様に,間違った事が明らかになっても,責任もとらず,も修正しようとしない,むしろ無理に実現しようとする事である.

間違いを認めようとしない精神はウソを自覚している程,強くなる.罪の大きさを知っているからである.ウソではないと本当に思っているなら,堂々と理由を挙げて,間違いを修正できるはずである.

『民主党マニフェスト』や,いろいろな『思い』に,根拠がなくとも,実効性がなくとも,『方向性は間違っていない』と釈明すれば,嘘にならない,政治的詐欺にならない,と思っているのかもしれない.世間では通用しない,こんな釈明が通るなら,『政治には嘘が存在しない』事になる.『政治家は嘘をつかない』事が真実味を帯びてくる.

話しを戻すと,エネルギー問題は思いだけで決まる物ではない.電力需要予測にもとづいて,時間軸の上に,エネルギーの供給計画を示す必要がある.その為の施策も必要である.勿論,脱原発と言っても,使用済み核燃料の問題や廃炉に至るプロセスは無視できない.エネルギー防衛問題も見通しがいる.

『原発に依存しない社会を作りたい』『原爆や核兵器のない社会を作りたい』『戦争のない社会を作りたい』・・・・など言えば切がないが,そんな事は子供でも言う.歌ってこれに酔っている純真な大人もいるが,残念ながら,その先がない.

鳩山総理は’思い’を言って退陣させられたが,退陣に条件を付けて続投している菅総理はルンルン気分で,気軽に好きなことを言っている.

しかし,中途半端な総理の職責が続く限り,政治は停滞し,復旧・復興のみならず,経済や外交も含めて,日本の多くの難題が深刻さを増して行く.この罪の重さを感じないのだろうか.東日本巨大震災の復興も進まず『最大不幸社会を作った総理』として,歴史に名が残るかも知れない.

そんな菅総理に言いたい,将来の事を言うより,『現在のガレキ問題,仮設住宅問題,放射能汚染問題に全力を発揮する事が,あんたの仕事だ』 と.

特に放射能汚染被害はスピーディを使わなかった住民の退避誘導,スピーディを使わなかったベントに原因があり,国家賠償責任に値する失政である.情報の隠蔽も本部長としての責任は重大である.

住民訴訟が起これば,確実に有罪であり,国家賠償になる.これを恐れて,東電に責任を押し付けている感じがする.損害賠償スキームが国会で議論されているが,訴訟を待たずに,国会で本部長の責任をはっきりさせておく必要がある.

総理としては,この放射能汚染と震災復旧の遅れを詫びて,公債特例法と2次補正を国会に身を伏してお願いする事が最低の仕事だが,どうも,他の論争を仕掛けて,国民の目をそらし,得点を挙げようとしている様に見えるのである.

ところで,今後の原発に対する主張だが,本心は③がよいと思っているが,表面的には②を言う,『隠れ原発廃止論者』はいないだろうか.

どうもリベラルっぽい人に,こんな人が多いように思う.政治理念も政策もハッキリ言わない人が多いからである.左翼,右翼,保守,新保守を標榜している人はハッキリ本心を言うが,リベラルっぽい人は,いつも主張の所在が不明である.自分の言論に責任を取りたくない人なのである.

菅総理は原発の再稼動はありえると言うが,本心は,いろいろ条件をつけて再稼働させない,いわゆる『隠れ原発廃止論者』かもしれない.資本主義を許容していると言いながら,社会主義的政策を推し進める,『隠れ社会主義者』と同じ手法である.

だとしたら,社会不安は常に付きまとうし,政治に信頼は生まれない.政治家を見る時,いつもこの事が気になる.民主党が与党になってから,選挙対策や大衆迎合で本心を言わない『隠れ何々』の政治家が増えた感じがする.

その結果,本心を隠して,ひな壇に座っている人がいたとしたら,議院内閣制はウソの組織になる.本人はどんな心境なのだろうか.国民をだましている罪悪感はないのだろうか.それとも,権力の魅力に身震いして,これまでの政治活動や本心など,どうでもよくなっているのだろうか.

現行制度に反対していた人がそれを隠して,現行制度の責任者になれば,その人の話しは聞きたくないどころか,任せられないと思うのが普通である.それでも内閣を続けていれば,内閣への信頼感など得られるはずがないのである.

例を挙げればきりがないが,前述の『隠れ原発廃止論者』もそうであるが,別のたとえで言えば,パイの分配の事しか言ってこなかった人が,経済や財政の建て直しに取り組むと言っても、結局,分配を重視するのである.信用できるわけがないのである.

自民党内閣でも『隠れ郵政民営化反対』の大臣がいた.それを本人が吐露した瞬間,信用が失墜した事があった.それほど,『隠れ何々』は国民から見れば軽蔑されるのである.一度,国会質問で,大臣一人ひとり,『隠れ何々』ではないのか,問うて欲しいのである.本来なら政権交代直後にやる事であるが.

ついでながら本心を焙り出すシナリオを書いてみた.『隠れ何々』とおぼしき大臣に是非聞いてみたい.

『以前,こんな事を言っていたが,今でも,その考えは変わらないか
と聞く.

それは個人的な理想,考えだ,その思いは今も変わっていない
と答える.すかさず,
それでは,この政策はあなたの考えに反するが,本心は反対なのか
と詰め寄る.反対だとは言えず,
現実の策としてやむをえないと考えている
と言うはずである.そこで,
思いより現実を優先すると言う事か
と確認する.その上で,
あなたは,都合によって,思いと現実を使い分けているのか』
と畳み掛ける.すると,多分こう言うと思う.
『理想と現実を持つ事は間違っていないし,矛盾はしていない』
ならば,こう切り返す.
『本心は違うが,現実的に,やむを得ない案だ,と公言すべきだ』
『ようするに,本心を隠して,権力の座にいる事が大問題なのだ』

迫る.そして,決め言葉は
『言行不一致では大臣の資質がない.本心を隠してまで,権力に付きたいのか』
となる.

このパターンで,いろんな政治課題について,民主党政権に改めて聞いてみたい.近々,総選挙ではなく,内閣総辞職が行われる.民主党の3回目の政権が誕生する事になるが,『隠れ何々』の大臣は不用である.

それにしても,又,役人上がり,弁護士,松下政経塾,労働組合,左翼運動家,などが中心の政府を作るのだろうか.民主党はまとまらないし,発想力,経験,思考力,行動力,求心力,共に力不足になる.

なによりも,民主党が政権与党の体をなしていない事が最大の問題である.方や内政,外交,震災,原発,と問題山積みである.次の民主党内閣で期待が持てるわけがない.自論であるが,国民に信を問い,新しい体制を作るべきだと思うのである.

.

|

« 248 災害大国日本に『有事の備え』が欠落している原因 | トップページ | 250 私なりの福島原発事故対策の状況認識 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134518/52212077

この記事へのトラックバック一覧です: 249 今後の原発政策『論戯』:

« 248 災害大国日本に『有事の備え』が欠落している原因 | トップページ | 250 私なりの福島原発事故対策の状況認識 »