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2011.07.26

250 私なりの福島原発事故対策の状況認識

事故から4ヶ月過ぎた.政府は福島第一原発事故対策のステップ1(循環冷却・冷却水の除染,等)が予定通り実現したとして,自らを評価しているようだが,多分,被災者から見て,まったく進んでいない,何も解決していない,と思っているに違いない.素人目でも,まったく同感である.

政府,特に菅総理は,震災対応が遅いとの批判に,いつも,このステップ1を持ち出して反論する.今回の循環冷却,冷却水の除染は事故対策の偉大な第一歩(入り口)として,大いに評価したいらしいが,もしそうであったとしても,これは技術者や現場作業者の評価レベルである.少なくとも総理たる者は,もっと大局的な視点での状況認識が必要だと思うのである.信じられない事だが,こんな基本的な事が分かっていないようである.

自分は原子力に詳しいと言ったり,事故翌日早朝,現地に行ったり,わけのわからない本部を乱立させたり,一連の震災への言動を見るにつけ,一般人にも劣る,『視点の狭さ』,『マネージメント能力の無さ』を感じてきたのである.

むしろ,ピュアーな被害者や素人の方が大局的で,的を得た認識・評価をすると思う.そこで,素人の一人として,素朴に私の事故対策の状況認識を述べてみたい.

認識1:福島原発は依然と,マグマが息づいている活火山状態である.

現実は原子炉の中や建屋の中がどうなっているか把握できていない.又,放出した放射能の分析によれば,核燃料が圧力容器或いは格納容器から間違いなく流出していると言う(メルトダウン,もしくはメルトスルー).

最後の砦の格納容器に穴が開いていれば循環冷却で温度の上昇を抑えていると言えども,放射能の土壌・地下水への流出,水蒸気爆発,再臨界の可能性はゼロではない筈である.又,大きな地震に対しては,このメルトダウン,メルトスルー状態(圧力容器,格納容器が弱い状態)は極めて危険な筈である.冷すことだけではなく,この対策を考えているのだろうか,打つ手がないのだろうか,思わず神頼みをする状態だと思う.

その意味で,いつマグマが流れ出るか,爆発するか,分からない,制御の効かない,活火山状態だと言えるのではないか.心配しすぎだろうか.政府としては最悪のシナリオは言いづらいだろうが,余り第一ステップを自画自賛する話しではないと思うのである.

むしろ,この最悪の事態をどう防ぐか,原子力保安委員,原子力安全委員会,東電,世界の関連技術者の英知を結集して,最悪の未然防止に取り組んで欲しいのである.

認識2:放出された大量の放射能が放置されている状態である.

水素爆発,ベント(排気)によって大量に放出された放射能に対し,的確な対策が打たれているのか,その結果,4ヶ月たった現在,放射能被害がおさまってきたのか,が評価のポイントである.そこで,放出放射能に対し次の2点で対策の評価をしてみた.

①汚染マップによる的確な対策が打たれているか.

汚染マップについては,現在,色々な機関がを作っているが,政府として,このような汚染マップによる先手先手の対策を講じているわけではない.相変わらず同心円のマップがまかり通っているのである.米軍は,水素爆発やベントで,ただちに放射能汚染マップを作って,米軍のオペレーションに使っていたと聞くが,雲泥の差である.

特に汚染マップによる住民の避難誘導をしなかった為に,避難民が被爆した可能性がある.もしそうだと判明したら,国家賠償問題になる.総理初め政府関係者は辞任では済まない事態である.

今も,汚染マップによる先手の汚染対策がない為に,農畜産物,土壌,地下水,海水,海産物,等の汚染が,モグラ叩きのように発覚する.最近の稲ワラによる全国的な牛の汚染問題もその典型である.直接的被害も甚大だが,国産牛の信用が大きく失墜したのである.この放射能汚染放置状態では第2,題3の稲ワラ事件が発生すると思う.

そこで汚染マップの整備が求められるのだが,次に述べる第二の規制値の設定と,判断基準が伴わないと,対策に繋がらない事になる.

言うまでもなく,マップが示す放射能濃度,規制値に従って,エリアを封鎖したり,汚染食物・飼料を測定し,封鎖したり,広域に除染や放射能取り除き作業をしたり,等を行う事になる.はたして,実際のオペレーションが出来るだろうか.簡単ではない事は想像できる.今のところ,汚染マップの作成やその利用方法について,政府の方針は出ていない.

勿論,早く汚染マップを作って,少しでも合理的に汚染対策をやるべきであって,第2,第3の放射能大量放出にも備えておかなければならないと思う.

②放射能汚染の規制値を設定し,的確な対策が打たれているか.

放射能汚染対策のもとになる放射能の規制値(物や食料等の放射能値,人間の外部・内部被爆値)がはっきりしている事が重要だが,現実は極めて曖昧である.これでは不安や風評,あるいは無作為が横行する.

医学的,科学的に未知の領域もあり,厳しくすれば安全だが,それでは現実がついていけなくなる,とのジレンマの中で,不安だけが蔓延しているのである.又,政府の発言や施策の責任を回避するかのような,曖昧な言い方も,これを増幅させているのである.

結局,放射能汚染地域はゴーストタウンになるのだろうか,除染とガレキ処分がされて,もとの町や田畑になるのだろうか.農産物や海産物あるいは畜産物の汚染がなくなるのだろうか,今の所,全く見えていない.

以上,放射能汚染マップや放射能規制値による対策が打たれていないと認識する.従って,放置されていると言わざるを得ないのである.今後も同心円のマップとモグラたたきの様な放射能対策が続くのだろうか.

認識3;原発事故に対する政府の態度が煮え切らない状態である.

政府が原発事故対策に対し,煮え切らない態度が散見される.例えば,

・事故対策への政府批判が怖いのか
,
・被害者への厳しい対応をしたくないのか,
・政府の事故対応の失政を隠す為か,
・曖昧な賠償問題の矢面に立ちたくないのか,
・賠償費用の膨大さ,財源の当てのなさ,に慄いているのか,

とにかく,東電の責任を事さら言って,政府は逃げている感じがする.結果,
放射能汚染問題に先手を打たず,賠償範囲・金額の算定は委員会に任せ,賠償金の支払いは東京電力にさせる,等,自ら動こうとしないのである.ただ,東電への資金供給をすればよいと思っているようである.いかにも官僚が考えそうな事ばかりであるが,誰が事故対応の責任者なのだろうか.

私見によれば,福島原発対応,放射能汚染対応,損害賠償含む被害者支援制度,それぞれに,政府のしっかりした体制を作ることが必要だと思うのだが.

更に煮え切らない事に拍車をかけているのが,総理の進退問題である.『脱原発依存』を自慢げに言うが,震災対策,原発事故対策,放射能汚染対策など国民に語りかけた事などない,被災地に行っても,現地から信頼されているようには見えない.

退陣をちらつかせながら,好きな事は言う,現実の厳しい状態からは目をそらす,そんな総理は全く震災対策のガレキである.政治空白をなくす為に早く撤去する必要がある.

以上のように福島原発事故対策の中間評価としては,

福島原発が抱えるリスク対策は進んでいるか,
・放出された放射能の汚染対策は進んでいるか,
・政府の政策が被災者,国民に効果を上げているか


の3つの視点で率直に述べてきたが,結果は
,

・原子炉は依然,活火山状態であり,事故当時のリスクは減っていない,
・放出された放射能の事前の汚染対策はなく,放置されている状態に等しい,
・政府の態度は相変わらず,煮え切らず,腰が入っていない,

状態であり,総括としては,『考えられるリスクが減って来た』とは,とても言えないのである.政府・与党は復興計画を検討中との事であるが,この原発事故問題を,どう解決するつもりなのだろうか.

これが素人の感想である.ただ,現場の皆さんを非難しているわけではない事を申し添えておきたい.

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