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2011.08.25

252 行列のできる法律相談所 『島田紳助芸能界引退』

今回,仮想の『行列のできる法律相談所』を開いて,『島田紳助芸能界引退』を取り上げてみた.まず,引退に至る経緯は,本人の弁(8月23日夜の会見)によれば次の通りである.

①十数年前,自分で解決できない問題が発生し,友人Aに悩みを打ち明けた.
②友人Aから問題を聞いたヤクザ幹部Bがこの問題を解決した.
③自分を救ってくれたA,Bに強い恩義を感じ,今もその感情は変わっていない.
④相手がヤクザであっても,恩義に対する礼は必要だと思っている.
⑤但し,直接接触は良くないと理解しており,Aを介して,お礼の気持ちを伝えた.
⑥お礼の印で金品が必要かと迷ったが,不用と言われ,何もしていない.
⑦Bと会ったのは,偶然も含めて,これまで4,5回だと記憶している.

⑧Bと最後に会ったのは4年半前だ.
⑨週刊誌に黒い交際の暴露記事があるが事実無根である.
⑩Bに恩義を感じているが,日頃,親密な交際をしている関係ではない.

⑪自分ではセーフと思っていたが,アウトと言われ,ケジメとして,芸能界を引退する.

と説明.最後に,『自分の認識の甘さで,大変な迷惑をかけた.これまでの感謝と引退する事のお詫びを申し上げたい』と会見を結んだ.

この会見内容をもとに,早速,『行列のできる仮想法律相談所』を開き,どう考えるべきか議論を交わす事にした.

行列のできる仮想法律相談所での議論

①クールな弁護士の意見(徹底排除は当然だ)

芸能界に関わらず,あらゆる分野で,反社会的勢力の排除は積極的に進められている.例えば経団連の決別宣言,都道府県の排除条例,警察の密接交際者の監視,等である.この会社も芸能界の大手だけに,大きな課題として取り組んでいるところである.

そんな中で,会社の重鎮で影響力の強い,超有名人の紳助さんが,永年,ヤクザと交際していていた事は許される事ではない.会社は,即刻,首にすべきであった.感情に流されていたら反社会的勢力を排除できない.

そもそも,ヤクザが有名人に恩を売る事は常套手段であり,いつか,恩を返すハメになる.依頼したわけでもないのに,問題が解決したとしても,単純に恩義を感じいてはならないし.ましてや,個人で対応してはならない.もし,解決方法に違法性があれば,首謀者あるいは共犯者になる危険性もある.いかなる場合も友人ではなく,会社,弁護士を介して処置すべきである.

②人情派の弁護士の意見(法制化の前に文化論の議論が必要だ)

クールな弁護士が言う,『どんな理由にしろ,接触,交際,取引はダメだ』と,問答無用の行動規範に疑問がある.そもそも,個人的な心情や行為(義理,人情,浪花節,しきたり,礼儀,冠婚葬祭,催事,慶事祝い,等)に対して規制する事に無理がある.

行為の定義は極めて曖昧であり,ガス,電気,水道,あるいは治療行為は助長活動にならないのか,取引きを排除する事で危険にさらされる事はないのか,等の問題も多い.学者によっては,法の下の平等に抵触するとも言う.

その事を棚に上げて,民間で包囲網を作れとの政策は,従来の『警察対暴力団の関係』を『市民対暴力団の関係』に変える事を意味し,事件が増加する可能性もある.排除によって組織に属さない粗暴な若者が増える可能性もある.

そんな暴力団排除条例に課題は多いが,彼の会見は法律以前に多くの課題を投げかけていたと思う.彼の心情,問いかけを列記してみた.

『相手がヤクザであっても,一般の人の場合と同じように,恩義を感じる』
『この信念を曲げてまで,芸能人を続けるつもりはない』

『身を引いて恩義を守った』

恩義を大事にして引退と言う大きな決断をしたわけだが,一方では,世間に,次の事を問うていると思う.

『やくざに対して,礼儀や恩義を感じる事は悪い事なのか』
『この自分の心情は引退するほど,悪い事か』

従って,大事な事は,引退する,しない,ではなく,『彼の信条や行為と規範との関係』を皆で考える事である.その結果,『個人の自由と規範との関係』,『伝統的文化と規範とのギャップ』,『一般社会の文化と反社会的勢力との関係』,等が問題になって,意見が分かれるはずである.それだけに皆で考える良い機会だと思うのである.

さて,世間は彼の問いかけに,どう答えればよいのだろうか.今のところ,有能な芸能人を失う嘆きは聞こえて来るが,彼の信条・行為に対するアウト・セーフ論は聞こえて来ない.

ところで,伝統文化と規範,法律の関係は相撲社会など伝統を重んじる社会で,度々問題になって来た.役所,企業でも,接待,冠婚葬祭,慶事祝い,などが問題になった事がある.

問題の発生を防止する為に,未然防止運動のアリバイ作りの為に,行動規範が作られてきた側面もある.そんな事もあって,『文化,信条と規範との間に,まだギャップがある』のが実態だと思う.しかし現代社会では『昔のしきたり』が少なくなっている事も事実である.

人情家としては,規範の杓子定規な適用で,伝統的日本文化が壊れて行く事は見逃せない事である.文化の崩壊は人間形成にも悪影響がでる.そもそも,あまり行動規範が前に出る事に違和感を感じるのである.

今回の事で言えば,『反社会的勢力に対する,礼儀や恩義を悪』とすれば,結局,礼節の伝統文化は危ない物になってしまう.『他人に親切』がいつのまにか,『他人に無関心』になってしまう.こんな事で良いのだろうか,と紳助さんは問いかけているが,私としては,こんな事にならない事を望むのである.

もっと言えば『新たな行動規範など,ない方が良い』,と思う事もある.人間の行動規範に当たる物は,そもそも,伝統文化,道徳,習慣,しきたり,宗教,等であったはずである.これに新たな規範がいろいろ出てくると,ますます混乱してしまうのである.人情家として意見は間違いだろうか.

③バンカラな弁護士の意見(中途半端な規範や法律をつくるな)

心情にまで立ち行って,過剰反応すべきではない.社会も曖昧な規範・法律を振り回すのは問題だ.紳助さんも,売り言葉に,買い言葉のように,引退を決断した事は早急すぎる.

このような過剰反応が多くなると,世の中が混乱するだけだ.アウト・セーフの判断基準もますます分からなくなる.ごちゃごちゃした事を余り言うな.

もし本当に暴力団を排除したいなら,その存在を法律で禁止すればよい.これが法律として難しいと言う事で,市民生活の中で排除を求めてもダメだ.

行列ができる仮想法律相談所の結論

以上の3人の弁護士の見解を述べた.この意見を踏まえて,当相談所の結論としては,③が70%くらい妥当している,とした.但し,②の指摘の通り,『日本人の心情,価値観,文化と反社会的勢力に対する行動規範との関係』は,紳助さんの心情,行為を例にして,議論を深めるべきだとした.

単に『反社会的勢力の排除』と叫んでいるだけでは魂が入らない.皆で文化論,規範論,法律論,を議論する機会にすべきだ,と言うのが,当相談所の結論である.

番組への提案

ところで,もし,『行列のできる法律相談所』の番組が継続されるなら,相談者を紳助さんにして『島田紳助芸能界引退』の原因になった,『紳助の心情・行為はアウトかセーフか』を取り上げて欲しいものである.勿論,出席者は弁護士,警察,会社,芸能人,反社会的組織の人,である.

このテーマを取り上げずして,番組のコンセプトは成り立たないと思うのである.

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コメント

三方のご意見は、なるほどとは思いますが、
現時点、公表されていること以外に、
何かがあると、思えてなりません。

投稿: 元FJ/SA | 2011.09.02 14:39

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