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2011.09.19

254 依然と続く民主党思考力の問題

三度目の民主党内閣になる野田政権が財務省の増税路線を背負って誕生した.その矢先,新任の小宮山厚生労働大臣が就任記者会見で,一箱700円のたばこ増税論を唐突に言いだした.『健康被害が減って,しかも税収は減らない』と得意満面で説明したのである.

そもそもタバコは国営の時から,景気に左右されない,安定的な財源として,又,困った時の打ち出の小槌として,増税を繰り返してきた.現在約6割の税率で,その税収は2~3兆円規模だと言う.かくて喫煙者はニコチンから離れられずに税金を払い続け,国家財政もニコチンから離れられず,依存度を高めて行ったのである.

今回の小宮山大臣の発言は,そんな歴史も無関係に,いつもの嫌煙者の発言に聞こえる.喫煙者からすれば,今までの財務省の財源確保の増税に耐えて来たのに,今度は厚労省の健康理由の増税か,いい加減にしろと,肩身の狭くなった喫煙者は怒り心頭である.

たばこ税を所管する財務省も増税路線を慎重に画策している時に,個別課税品目や税率を言う段階ではない,いくら嫌煙家大臣でも,横から勝手な事を言うな,と小宮山大臣のKYブリを厳しく批判したのである.勿論この批判は,たばこ税の所管を厚労省によこせとのシグナルを消しておきたい狙いもあるようだ.

こんな事は民主党政権では,よくある事で驚かないが,私の問題視するのは,税論議以前の小宮山大臣の政治家としての思考力の問題である.小宮山氏が推進した子供手当にも,これと同じ,思考力の問題を感じていたのである.

2年間,問題となって来た小宮山氏の子供手当とは『社会で子供を育てる,だから,全ての子供に手当を支給する』と言う政策である.

他国も同じ様な制度を実施しているし,そもそも日本は子供への税の使い方が低いとして,年間5.5兆円(防衛費以上)を給付するとしたのである.その財源は無駄な予算の組み替えや税控除の廃止(増税)で捻出すると言うものである.

これに対し,私見では,巨額の歳出の割りに,目的が全く不明で,単に税金や借金の再分配,使途不明金のばらまき,にしか見えなかったのである.何度耳をすまして聞いていても,少子化対策なのか,子育て支援なのか,経済救済なのか,景気対策なのか,さっぱりわからなかったのである.

又,財源面でも,全く,実現性が見えていないのである.『財源なき政策は政策にあらず』と田中角栄氏の口癖を引用して,この問題を当ブログで指摘していた.たとえ,財源が捻出で来たとしても,その財源が子供手当てより有効性が低いと言えるのかも疑問である.無駄な支出と認識するなら,それを歳出から削減する方が先である.無駄を財源にすると言う考え方がそもそも間違っているのである.なによりも,そんな巨額の財源が毎年使えるなら,子供手当て以上に,やるべき事は,この日本には,多くあるはずである.

つくづく,小宮山氏は『子供手当てはありがたい』と言う人と同じ程度の思考力だと感じた.しかも,票につながるとして,選挙の目玉政策に掲げた民主党も,同じ程度の思考力だと言わざるを得ないのである.

ところで,民主党の『生活第一』の中身は国民への分配を増やすと言う意味のようである.子供手当ては,その代表的な政策になったのである.だとすると,『生活第一』の考えも,『視点が偏狭で,政策が短絡的で,稚拙だ』と言う事になる.こうなったのは,余りにも選挙を優先したからかも知れない.

選挙に有効な政策を掲げる事は当然としても,『国家の難題解決にどうつながるのか』,『財源はあるのか』が充分検討されていなければならない.

これを怠った政策で選挙に勝つても,国家の難題は解決出来ないのである.それどころか,国民の支持を受けたとして無理に,この政策を実施すれば,さらに難題は悪化するのである.

そもそも,国民に示される選挙公約の大前提は,その内容以前に,実現性がある事である.その実現性を事前に検証する事は政党の義務であり責任である.それが前提になって,初めて,国民は政党,政策が選べるのである.出来ない事を公約に掲げる事は国民に対して『詐欺』『嘘つき』になる.出来ると思って,出来なかったら『無能』である.いずれの場合も,国民に対し,何らかのけじめが当然必要になる.

民主党マニフェストで言えば,当初から,あれだけ多くの批判を受けていたわけだが,結局,批判された通りの事態になった.従って,野田総理としては,増税論を言う前に,『マニフェスト実現は困難である.撤回する』,『早急に民主党として修正政策を出したい』と言うのが最小限のけじめである.

しかし,民主党は,『財源は甘かったが,マニフェストの理念は正しい』として,撤回を拒否している,正しいとする理念とは何か,全く不明だが,『生活第一,国民への分配を増やす』と言う理念なら,財源問題でそれは崩壊している筈である.

それでも,理念は正しいと言い張るのは,マニフェストの撤回を避け,嘘つきの烙印を避け,解散総選挙を避け,民主党内部の対立を避け,たい,との保身の理屈である.全く,国民を無視した理屈である.

こんなへ理屈を言えば言うほど,『嘘をついて政権を取った』事になるのだが,内向きな民主党には理解できない様だ.

結局,民主党は『マニフェストの理念は撤回しないが,野党の指摘で政策は見直す』としたのだが,本来なら,政権与党の責任として,自から,反省と謝罪の上で,政策の見直しを行うべきである.それが出来ないと言う事は政権与党の資格と責任を,自ら放棄した事になる.

それとも,この日本の苦境に乗じて,分配重視の社会主義理念を推し進めるべきだ,と考えているなら,堂々と,その中身を明らかにして,正しいと言えば良いのだが,それもない.正しいとした理念は何なんだろうか.

ここに至って,民主党は,少なくとも財源で破綻している分配理念(自民党は,子供手当・高速道路無料化・高校無償化・個別農家補償をバラマキ4Kと呼んでいる)を速やかに撤回して,震災対策,原発事故対策,デフレ対策,エネルギー対策,等に政策を切り替えるべきだと思う.日本は,民主党のわけのわからぬ理屈に付き合っている暇はないのである.

以上,民主党のマニフェスト問題は政権発足時より2年間,震災対応までも悪影響を与え続けている.三党合意による見直し決定後も,その内容は宙に浮いたままである.これを棚上げするかのように,復興対策に全力を傾けると民主党は言うが,切り離された問題ではない.財布は一つなのである.

この調子では,又,来期予算編が暗礁に乗り上げる可能性がある.急がれる,第3次補正予算もスムーズに国会を通る保障もない.全く政権与党として無責任なのである.民主党のメンツで国がおかしくなる事は,もういい加減やめなければならない.

2年前にも指摘したが,民主党は銭計算が弱く,理念とか,思いで,政治が出来ると思っている様だ.これは,思想家,教条主義者,あるいは偏狭な正義感の持ち主に多い特徴である.この感覚が,どれほど失政や政治の混乱を招いた事か.たかが2年間の民主党政権で,いやと言う程,この失態を見せつけられたのである.

ところで,前に引用した田中角栄氏の言葉,『財源なき政策は政策にあらず』,『政策をやるなら財源をもって来い』は,『財源を度外視して,あれも,これも言う政治家が多い』事から,これをけん制する為に出た言葉である.そして,『政策と財源を一対』にし,『一対でなければ政策にならない』としたのである.勿論,この言葉で政策の覚悟,信頼性,優先順位,実現性,を確かめていたのは当然である.

田中角栄氏を師,親父,と仰ぐ民主党実力者はこの戒めを知っていると思うが,何を学んだのだろうか.選挙に勝つ事しか眼中になかったのだろうか.本人は今でもマニフェストの財源はあると言っているようだから,戒めを守っている気分かもしれない.

さて今回の小宮山大臣の700円のたばこ税増税発言も,またしても,タバコを『発禁にすべきだ』,『1000円にしてもよい』,と言う人と同じ程度の思考力の発揮である.数の多い嫌煙者の票狙いもあるのかも知れない.依然として,子供手当と同じような『視点の偏狭さと政策の短絡さ,稚拙さ』を感じるのである,

とりわけ,税制度は大所高所からの検討が必要である.特に日本の社会コストの負担制度は,税だけではなく,社会保険料,公共料金,手数料等,極めて広く,細分化されている.従って,徴収も公共サービスも,全体の中での検討が必要になるのである.

ある領域を切り出して,国民負担率や課税率を言及しても,あるいは,国際比較をしても.あまり意味がない.勿論,消費税率やタバコ税率を切り出して他国と比較しても余り意味をなさないのである.

ところで,タバコ税に関して,大臣なら,せめて,次の様な事を考えての話だと思うが,是非聞いてみたい.この程度の事は,予告なく,予算委員会で小宮山大臣に聞くのも良い.

・喫煙者の減少と医療費の関係分析
・喫煙者の減少と寿命の関係分析
・使用,消費の抑制目的の重税の考え方の是非
・タバコ増税による消費量の減少と税収の関係分析
・消費量減少による,たばこ関連事業者の問題と
対策
・喫煙者の所得分布,年齢分布の分析
ニコチン中毒患者,低所得者へ重税を強いる事の問題
・喫煙者の意見,負担の実情
・健康被害を言いながら,発禁にせずに高価格にする理由
・闇タバコ増加への懸念と対策
・喫煙者,国家財政の,ニコチン依存症からの脱却策
・タバコ税の喫煙者(高額納税者)への還元策
・タバコ税の目的税化(健康被害対策,喫煙者対策)

・ニコチン含有量別税率や低価格タバコの検討
・価格以外の喫煙抑制策の検討
・大臣発言による株価への影響

どう答えるか,思考をどの程度しているか,興味あるところである.しかし,その回答如何以上に問題にしたい事がある.増税をいとも簡単に,嬉しそうに言う小宮山大臣の態度である.大臣どころか政治家として資質を疑うのである.

課税は言うまでもなく,国家権力で強制的に,私有財産を奪う事である.脱税は極めて重罪である.当然,課税制度の検討には,十分な配慮と,理由と,リターンと何よりも国民の理解が必要である.

勿論,血税を使う政策はいい加減であってはならないのは当然である.健康被害抑制と言いつつ,増税された財源が,小宮山氏の大好きな分配論の後押しに使われたら,喫煙者(高額納税者)としたら,たまったものではないのである.

以上,今回の小宮山大臣のタバコ増税発言に,子供手当と同じ思考レベルを感じたのだが,それが民主党全体にも存在する思考レベルにも感じたのである.

小宮山氏は厚生労働大臣になって,ますます短絡的な,文化度もない,おかしな事を言うかもしれない.論客は,厚生労働行政について,この人と議論しても意味がないと思うかも知れないが,大臣である以上無視できない.国会の論戦が見ものである.

最後に,民主党議員にあえて言いた言葉がある.

『素人ほど,断言する』と言う言葉である.こんな人は時々,無知丸出しに見える.一方,『玄人は,はにかむ』もある.素人,玄人の違いを知る一つの手がかりである.

政治家なら,短絡的に断言するのも,色々言うが,結論が出ない,いわゆる,はにかむのも問題である.真の政治家なら,大所高所の検討を踏まえて,『責任を持って決断する玄人』でなければならない,のは当然である.

残念ながら,政治家には『素人』,『玄人』,そして,『責任を持って決断する玄人』,の3タイプが存在する.全く分かっていない人もいるが,これは『論外』である.

私見によれば,歴史的にも『責任をもって決断する玄人』は極めて少ないと思う.独断で言えば,民主党は『論外』の人を除いて,『政治は素人』ばかりの感じがする.野党精神のままの思考力では断言するが,これで政治が出来る分けがない.

民主党は『役人上がり』が多く,一見,『玄人』に見えるが,意外と役人は『玄人』でもないし,ましてや『責任を持って決断する玄人』とは程遠いのである.

そう言う私は,はにかむ程の知識はない.まだ断言したい方である.だから,無知丸出しかも知れない.しかし,くれぐれも,民主党政権においては,素人の断言は,もう二人の総理でたくさんにして欲しいのである.

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