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2011.09.28

257 原発事故損害賠償制度の抜本的見直しを

原発事故対応の問題は私見によれば,大きく分けて次の11項目である.その中で,①の損害賠償について243原発事故賠償スキーム政府案の本質的問題を5月17日に,役人や小粒な政治家が作った感じのスキームでは,うまくいかないと批判した.この問題について,4ヶ月経った現在,再度,全面見直しを提案したい.

見直し提案の理由は『理にかなっていない制度は必ず行き詰る』からである.混乱を避ける為にも,被災者の為にも,見直すのは今がラストチャンスだと思うのである.

・被災者への対応の問題
①被害者への損害賠償の問題
②放射能汚染地域の除染の問題
③放射能汚染物資及び汚染ガレキの問題

④将来の放射能人体被害の問題

・福島原発の問題
⑤福島第一発電所の危険防止,安定停止,廃炉の問題
⑥東電の存続問題


・日本の問題
⑦既原発の安全性確保,体制の問題
⑧今後の電力(エネルギー)政策の問題
⑨使用済み核燃料処理の問題
⑩原子力研究開発及び人材育成の問題
⑪今後の
原子力産業の問題

本題の賠償問題だが,現在やっと被災者の賠償請求が始まった.申請書類が極めて煩雑だ,自主避難の賠償をせよ,仮払いを早く出せ,子供の内部被爆情報を出せ,事業者からは逸失利益の賠償に不満がある,等々,懸念していた不満と混乱が,やっぱり出始めたのである.

又,東電に公金を入れる事を理由に,人員の削減,資産の売却,給与・年金の削減,あるいは,金融機関の債権の放棄など政治家の東電バッシンクも又,始まった.

東電の債務超過が見え見えの中で,東電悪玉論をぶって見ても,被害者は救われないと思うのだが.政治家は気づかない振りをして,被害者にいい顔をしている様に見えるのである.

5月17日にも指摘したが,そもそも,国難レベルの問題を,一民間企業に対応させている現スキームに問題がある.加えて,誰しもが困っている問題に対応できていない不完全な制度なのである.このままでは,賠償制度が混乱し,泥沼の状態になる.復旧どころではなくなるのである.

そこで,遅ればせながら,損害賠償の仕組みを,下記のような,手順で再整理すべきである.これによって,内容が網羅され,混乱が少なくなると思う.それでも,損害賠償だから裁判になることも想定されるが,出来るだけ,そのケースを回避出来る賠償制度にして行くべきだと思うのである.

野田新総理が『福島の復興なくして日本の復興なし』と大見栄をきった以上,問題の多い損害賠償スキームを,新政権で,今すぐ,見直すべきだと思うのである.

手順① 損害賠償をする対象者を明確にする

被害者は内外含めて,住民,個人事業者,法人,学校,諸団体,自治体,等である.この中で,行政等公的機関も賠償を受ける対象になるのか,納税者の立場に立てば,気がかりである.

又,賠償を受けられる地域に制限を付けるのか,放射能汚染エリアが定かでないだけに,この問題も難しい.海洋汚染による海外からの賠償請求に,どう答えるのか,も気がかりである.

手順② 損害賠償の対象になる被害を明確にする


上記賠償対象者に対し,どんな被害を賠償対象にするのか,特に,自主避難の費用,給与や事業の収入の補償,家畜・家屋・土地・田畑,の放射能汚染被害の補償,個人が行う除染費用,或いは,行政が行う被災対応事業費用(特に除染や医療),等,出来るだけ,きめ細かくリストアップし,混乱の縮小と賠償制度への信頼度の向上を図るべきである.賠償を避ける気持ちが現れると,泥沼の戦いになる.復旧どころではなくなるのである.

手順③ 賠償被害内容毎に賠償額算定基準を明確にする

上記で決めた賠償対象被害毎に,賠償額算定基準を設ける事になるが,基準への被災者の同意の問題など難問はある.極力,個別対応,訴訟を少なくする基準作りが必要である.

特に次の問題が気にかかる.今回の被害者には

①地震,津波,放射能の被害を受けている人
②放射能の被害だけ受けている人
③地震,津波の被害を受けている人


があり,①②の賠償金額をどうするのか,③との関係に問題が起こらないか,等,悩ましい算定となる.又,
海外に対する損害賠償額の算定も気にかかる.

手順④ 賠償被害毎の責任と賠償者を明確にする


賠償の中身を決めたうえで,ここで初めて責任と賠償者の問題を決める事になる.
まず,『責任があるところが賠償する』との原則に立つ.現制度が,その責任を吟味する事なく,
東電に無限責任を課した事で,スキームを曖昧にし,問題を先送りした感じがする.

そもそも,東電に過失があると法的に決まらない限り,東電に『賠償責任』は発生しない.この法的根拠をはっきりしない現状で,政府は『賠償』と言い,東電は『補償』と言っているのである.

このままでは,賠償なのか,補償なのか,支援なのか,制度なのか,お見舞いなのか,或いは,主旨が未定の仮払い,代行払いなのか,意味不明である.現在の制度は全く,この仕訳が出来ていない極めて曖昧な制度なのである.

こんな逃げ腰だから,現制度に網羅性も整合性も欠如するのであって,今後,被害者は苦労するし,復旧は混乱すると思うのである.それとも,政治家,役人は,問題に蓋をして,口を拭って逃げ切れる,と考えているだろうか.関係者,有識者に気骨のある人はいないのだろうか.

東電に対する政府の厳しいリストラ要求や資産売却要求も,法的根拠が曖昧である.賠償金支払いの為の公的資金投入の条件のようだが,もし,株主や社員,或いは東電が,東電の無限責任と賠償金支払いに異議を唱え,国を訴えたら,政府は反論出来ないと思うのだが.

又,今,調査中の原発事故の原因が明らかになり,東電に無限責任が無かったとすると,このスキームはやり直しになるのだろうか.

そもそも,損害賠償は責任を解明してから,行われるわけだが,今回の場合は,そのフェーズがないままに,次のような順番で,東電の無限責任は決まった感じがするのである.

①政府は損害賠償をしない(政府は責任論に巻き込まれたくない)
②しかし,政府は賠償資金を東電に融資する(東電をつぶさない)
③その為に,東電に過失があった事にする(無限責任と賠償責任を課す根拠)


しかし,一度このスキームが決まると,結局,次の様になる.

①原発事故,放射能汚染は東電が起こした事故だ(東電の過失)
②東電がつぶれないように賠償させる(政府の融資,電力料金値上)
③政府は民間が起こした事故に賠償などしない.

東電としては,東電は発電と送電をしているだけだ,原発プラントは国策で作った.その安全性については,政府に大きな責任がある.東電が国に賠償を請求したいくらいだ,と言いたいところだが,政府の支援を受けるた為に,これが言えない様に見えるのである.

東電社長は被害者に土下座をしていたが,心の内は,東電の社長だけが土下座する話ではないと思っていたかもしれない.しかし,政治家,役人は国民や被害者に,土下座もなければ,謝罪もないのである.現在の賠償スキームでは土下座をする理由がないのである.

私見によれば,原発は国策で進めてきた経緯があり,政府は責任を逃れられないのだが,具体的には,次の問題に責任があると思う.又,政府の対応如何で,被害額,賠償額が大きく変わる分けで,政府は損害賠償に無関係ではないのである.

・原子力発電の管理監督責任
・ベント,水素爆発による放射能放出責任
・避難対策や食物汚染対策に汚染マップを利用しなかった責任

・除染計画策定やその実施の遅れによる避難長期化の責任
・人体被害に対する医療ケアの責任

たとえ,これらの根本的責任が全て東電にあるとしても,政府の無作為,失政による被害の拡大まで東電が賠償する法的根拠はないはずである.

政府は率直に責任を認め,被害者の賠償,救済に,当事者として取り組むべきである.勿論,国家賠償する事で国民の税負担が多くなるかもしれないが,他の巨額の国家賠償と同じく,しっかり,国にとして受け止めるべきである.政治家も,官僚も,専門家も,口を脱ぐっているだけ,なのだろうか.

勿論,東電は有限責任の中で,企業努力で賠償に応じるべきである.倒産の危機を迎えれば,政府資金を投入するのか,再生機構に入るのか,決められたスキームに従うだけである.

どうも,,政治家は『東電はけしからん』と言いながら,国の責任をカムフラージュしているように見える.又,政治家,役人の保身が見え隠れする.政治家は国の責任で対処するとも言うが,腰が入っていないし,中身も伴っていないと思うのである.

『どんな被害に,誰が,損害賠償をするか』は,今後,大問題になると思う.現在のスキームでは解決出来ない事は明らかである.被害者も早く,声を上げるべきだと思う.

手順⑤ 損害賠償請求手続きを簡素化する

賠償要求受付,相談,支払い(仮払い含む),は一本化し,独立した行政組織で行うべきである.又,行政事業への反映も,この部門でやればよい.賠償金の東電,政府の分担は責任に応じて内部でやれば良い.現行の東電と住民が直接対峙する構図は,微妙な賠償問題が多いだけに,必ず問題が頻発する.

以上,現在の賠償制度,具体的な請求,賠償手続き,或いは,もめごとの対処方,について,詳しく調べたわけではないが,根本的なところで,間違っているように思うのである.

そこで,新内閣を機に,損害賠償制度をしっかり作り直すべきだと思う.そうしなければ,ここで指摘した問題が,いつか火を噴く事になる.

適正な賠償なしに,復興はムリであり,『福島の復興なしに,日本の復興なし』の総理の大見栄も,『沖縄基地移転の二の舞い』,になりかねないのである.

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