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2011.10.21

259 増税路線か成長路線か

バブル崩壊以来20年,財政赤字に対して,『増税路線か成長路線か』,の議論は尽きない.10年前の小泉政権で『小さな政府論』による改革,成長路線が取り組まれたが,その後,政権が不安定になり,この論争は影をひそめ,赤字は拡大して行った.

2年前,政権に就いた民主党政権は,リーマンショックが続く中で,税収の大幅下落にもかかわらず,財源の当てのない,マニフェストのばらまき政策にこだわって,予算規模,国債発行,国債残高,ともに,過去最大を記録した.その後,消費税増税が政権で議論されるようになり,野田政権で,財務省主導の増税路線(復興増税,社会保障向け消費税増税)に舵を切ったのである.

増税政策が現実味を帯びてくると,いつも,経済成長が先だ,との反論が起こる.今回も,にわかに,『増税路線VS成長路線』の議論が湧き起こっている.そこで,増税路線,成長路線,のそれぞれの問題を整理してみた.

まず増税路線だが,財務省の考えが政治を動かしているようだが,私の感じだが,当然,増税で財政問題や社会保障問題が解決するとは思っていないと思う.狙いは,いつ起こるかわからない『日本国債の信用力低下』『日本国債の格付け低下』の芽を摘んでおこうとする事だと思う.しかし,成長路線に比して小手先の感じがする.

この『増税路線の問題』について,分かりやすく指摘している記事を紹介したい.10月20日の夕刊フジの田村秀男産経記者のコラムでの指摘である.

『増税は消費を減らし,デフレをさらに進行させ,物に対するお金の価値を上げる.だから円相場が上がる.増税で財政健全化を図るのだから,日本国債が買われる.従って,超円高は止まらない.財務省は,超円高を活用して,海外投資を増すチャンスにしたいと,政治家,財界にキャンペーンを張っていると言う.

一方,欧米も増税を歓迎している.欧米の危惧は日本が持つ対外債権の売却で歳入を増やす事である.増税路線はこれを回避出来るだけではなく,円高による海外投資,日本の競争力減衰,は歓迎なのである.

これで日本は豊かになるのだろうか.実はもっと深刻な事がある.日本の対外純資産は260兆円で05年末に比べて1.4倍になったが,ドル建てでみると,3.2倍である.ドル安,円高で120兆の差損を被っているのである.増税で円高が進むと,日本国民は富をさらに失う事になるのである.』

この主張は,円高・デフレ下で増税を行えば,円がさらに上がり,デフレが進行し,成長が停滞し,失業率が上がり,株価が下がり,対外資産も目減りす事になる.との指摘である.結局,増税しても,税収が落ちる事態になりかねないのである.

この主張の通り,自国通貨の問題は放置出来ないのである.かつて日本の高度成長も,現在の中国,韓国の成長も,自国通貨が安い事で実現している.逆に,自国通貨が高くなれば,当然,景気にブレーキがかかり,デフレ経済に陥るのである.まさに現在の日本の姿である.

今回の円高は,各国の恣意的な自国通貨量の緩和によって起こっているだけに,それを横目で見ながら,何もしない日銀の責任は大きい.即刻,円安誘導(金融緩和)で経済を立て直すべきなのである.

この円高対策藻含めて,『増税の前に,金融緩和による円安誘導,歳出改革,埋蔵金活用,国家資産売却,経済成長政策,が不可欠だ』,と主張する『成長路線の論客』は多い.さらに,『復興財源については,建設国債として60年償還とするか,金融緩和策として,日銀が国債を買い取ればよい』との主張もある.

この成長路線は極めて大事な主張なのだが,いくつかの問題がある.増税は必要ないと主張している高橋洋一氏が同じ日の夕刊フジで『経済成長が政策課題にならない不幸』を述べている.この不幸(問題)を解決しない限り,成長路線は,はっきりしない事になる.そこで,氏の発言に加えて,この不幸の原因について列記してみた.

①成長戦略は食い逃げ(景気・雇用対策)となり,借金だけ残る(自民党政権)
②投資より,ばらまき(給付)が優先される(民主党政権)
③投資の限界効用の逓減と成果の不確実性が付きまとう
④グローバル戦略の立案力の欠如(将来像の欠如)
成長に伴う競争,格差,発生への抵抗感の存在
⑥成長に必要な改革への抵抗感の存在
⑦経済成長によるインフレ化,バブル化の嫌気
⑧成長政策は中・長期,政権は短期で政策の持続困難
⑨改革・成長の政治勢力の分散

残念ながら,以上の事で日本の成長戦略は定かではない.せいぜい,東日本大震災の復興需要を当てにする程度である.エネルギー産業やエコ産業などがよく言われるが,政策課題になっているようには見えない.大統領制でもなければ,『戦略的な成長戦略』など,所詮無理なのだろうか.

しかし,政治で大事な事は,成長産業をあげたり,予算をつけたりする事だけではない.もっと大事なことは『成長を促す仕組み』を作る事である.成長しなければ,国家は衰退し,国家が運営出来なくなる事を思えば,政治課題に出来ない理由はないのである.

是非,小泉改革ではないが,円安誘導,規制緩和,行政改革,歳出削減,官から民,資産売却,減税,国際化など思い切った成長環境を打ち出すべきである.『肥大化した借金による大きな政府』から『小さい政府』へ,舵を切らざるを得ないのである.

『肥満を解消しない限り,健康にはならない』事と同じである.肥満を残す増税路線では展望が開けないのである.むしろ,いざと言う時の増税の余地を残しておく事の方が信用があり,リスク対策になるのである.

民主党は東日本の復旧復興に全力を尽くしている間,せめて自民党は遅ればせながら,今後の日本の為に,長期政権の功罪を明らかにし,『成長なくして社会保障なし』の考えで,『日本の成長ビジョン』を立案すべきだと思うのである.

これで政界再編を促し,世代交代と政治体制の刷新をすべきだと思う.次への充電をする事は,二大政党の野党の大事な仕事なのである.

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