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2012.03.18

274 消費税率10%も 『広く浅い税』 か?

民主党の『社会保障・税一体改革』と称する消費税増税法案が国会提出を前に,民主党マニフェストとの関係で,民主党内部で揉めているが,増税可否の話ばかりで,『社会保障・税の一体改革』の中身がどうなっているのか,さっぱり見えて来ないのである.

そこで,改めて,国会議論で明らかにして欲しい,『社会保障・税の一体改革』と称する消費税増税案の問題点を整理しておきたい.

第一の指摘:消費税率10%は『広く,浅い税』か

財務省は消費税を3%の導入以来,『国民に広く,浅くお願いする税だ』,『景気に左右されない税だ』,『これからの税収は所得税から消費税に移すべきだ』等と説明して来た.

その後,5%に増税したが,同時に,外税表示から内税表示への変更で消費税を目立たないようにしながら,国民の意識を消費税から遠ざけるように誘導して来た.

そして,いよいよ,本格的な消費税増税の幕開きである.増税の波風を立てないように,賛同を得やすい社会保障の大義を掲げ,従来の延長線のイメージのまま,8%,次に10%と上げて行きたい,と言うのが財務省のシナリオのようである.駆け込み需要を2回起こす企みも感じるが,何か国民を手玉に取って,振り回している感じがするのである.

この財務省の思惑に『チョット待った』『そうは問屋が卸さない』と言いたいのである.

そもそも税率が5%以下の時の消費税制と,10%,あるいはそれ以上の時の消費税制は,根本的に違う,と言いたいのである.

私の感覚で言えば,10%以上の税率の消費税制度は『広く浅く』ではなく『広く,重い』課税だと思うし,『景気に左右されない』ではなく『景気を直撃する』課税に変質すると,思うのである.

だから,今回の増税案は従来の消費税の延長にある税制ではなく,『全く,新たな重税制度』と,捉えるべきだと考えるのである.

国民の感覚から見ても,消費税増税は社会保障の為ならやむを得ない,と思っても,日常の消費で年間,数十万円,優遇制度がなければ,住宅を買えば数百万円,車を買えば数十万円,と具体的に大きな税金がかかるとなると,いくら社会保障の為と言われても,『チョット待った』になると思うのである.

この様に,『広く,重い課税』であるから,購入の都度,購入ニーズ,支払い能力,景気動向,そして税の目的,を判断せざるを得なくなるのである.その結果,内需が落ちて,『景気を直撃する税制』になる可能性が高いのである.

従って,何らかの目的で,消費税率10%以上の税制を主張する時は従来の消費税の延長ではなく,新たな重税制度の導入,との認識を持って,次のような,取り組みと,きめ細かく配慮をした制度設計が必要になると思うのである.

優先度の低い歳出の削除,国家資産の売却,行政コストの削減,など,徹底した財政のをスリム化は当然として,逆進性の問題,適用除外の問題,内税外税表記の問題,インボイス方式などの納税方法の問題,脱税防止策の問題,景気への影響の問題,など,『広く,重い税制』である認識での制度設計が必要だと思うのである.

先日,テレビの増税議論で驚いた.消費税増税案を依然と『広く浅い税だ』,『これに変わる税制はない』等と国会議員が言っていたが,無意識に言ったと思うが,明らかに,頭の中は5%の消費税の感覚のままである.

その議員は,重税だとは心底思っていない感じがする.相変わらず,『財源が足りないから,広く,浅く負担をお願いしたい』と言っているように思えてならないのである.そこに,国民に重税を強いる断腸の思いなど微塵も感じられないのである.

そんな感覚だから,徹底した歳出の削減,社会保障費未収の防止,小さな政府への努力,消費税増税以外の検討,社会保障制度の展望,などのビジョンが弱い感じがするのである.税率10%と言う重税制度の制度設計も,全く見えて来ないのである.

今回の増税案を5%から8%,10%に『数字を変えるだけ』だ,としか思っていないように見えるのである.ちなみに,その議員は財務官僚あがりの内閣政務官である.極めて想像力や発想力が狭い感じがする.こんな役人あがりの『電卓政治家』が民主党政権の要職に多いように感じるのである.

又,野田総理も勘違いしている.総理は『不退転の覚悟で消費税増税法案を成立させる』と言っているが,言いかえると『不退転の覚悟で重税を国民に課す』と言っている事になる.

国民が苦しむ事を不退転でやると力まれても困るのである.正しくは『何々の理由で,何としても,大増税を国民にお願いしたい』と言うべきである.

以上,民主党だけではないが,政治家全般に『広く重い税』だという認識が希薄な感じがするのである.

第二の指摘:消費税増税の目的を誤魔化していないか

消費税増税だけで財政健全化は不可能だが,せめて,国債金利が上がる恐怖を回避したい,財政難を少しでも解消したい,その為に,増税分を社会保障費の増加に当てたい,新たな国債発行を減らしたい,と言うのが増税の本音だと思う.昨年,原案を作った,財政再建派の与謝野氏も,財務省も同じ考えのはずである.

しかし,この理由は,マニフェストの手間,言えないとして,増税の目的を国民が心配している社会保障改革の為と偽装したに違いないのである.

その証拠に,社会保障改革の中身があって増税案が出来ていないのである.明らかに,増税案があって,後付けで社会保障改革の冠をつけたとしか見えないのである.裏付けのない事を平気で言う習性が又出た感じである.

結果,社会保障の為としたものの,増税をしても,行政サービスが落ちるのか,同じなのか,或いは,上がるのか,さらに言えば,国債発行が減るのか,さらに増えるのか,等,さっぱりわからないのである.

だとすると,.国民をだまして増税する事になる.マニフェストの嘘を認めない事が次の嘘を生んでいるのである.大増税と言う大きな政策が,民主党の保身の為に偽装される事は許せない大罪である.

又,増税の前提になる,景気対策,歳出削減なども進んでいない.こんな状態で,国会に法案が提出されても,国会議員の良識があれば,成立するはずがないと思うのである.

第三の指摘:御旗にした社会保障改革の中身が生煮えではないか

上記の通り,増税の目的を偽装している為に,当ブログ№269,『どこに社会保障・税の一体改革があるのか』でも指摘しているが,社会保障改革の中身が見えていないのである.それにしても,マニフェストでも,今回の増税案でも,社会保障改革の立論が出来ていない事に,改めて驚くのである.いくつか根本的な事を指摘したい.

民主党マニフェストの目玉である最低保障年金7万円の支給は40年先の話だと言うし,一方では,現行制度は破綻すると言う.ならば,今後40年間,どんな対策を取るのだろうか.破綻すると言いながら増税では論理が成り立たないのである.

又,無年金高齢者対策も言及されていない.国民年金は現在40%未加入だと言うが,その人たち約800万人は40年以内に,無年金高齢者になる.この人たちに,何らかの支給が必要になるとすると,公平性の問題,生活保護との関係の問題,何よりも,毎年,何十兆円の新たな財源の問題が発生するのである.この対応も,どうするのだろうか.

更に,厚生年金加入要件の緩和策によって,国民年金無加入者,未払い者を減らして,少しでも無年金者を減らせるのだろうか.そもそも,緩和策が成立するのだろうか,不明である.さらに,歳入庁構想,厚生・共済年金の統合,等の公約も進んでいないのである.

以上のように,マニフェスト違反をカモフラージュする為に,立論が出来ていない社会保障改革を消費税増税の目的とした為に,増税案の目的,中身の曖昧さが露呈してしまったのである.こんな状態の法案が国会で耐えられるわけがないのである.

第四の指摘:国難に対峙するには,国民の信が必要ではないか

民主党政権は09年の民主党マニフェストを嘘と知りつつ,嘘つきとの烙印を恐れて,撤回しない為,現実とのギャップや新たな政策との不整合がいつも発生する.

結果,マニフェストが崩壊しているにもかかわらず,マニフェスト派と否マニフェスト派の抗争が繰り返されるのである.今回の消費税増税案件も,この轍を踏んでいるのである.民主党はとっくに政権についている根拠を失っていると思う.日本は,そんな民主党政権につきあっている場合ではないのである.

日本にとって重要な事は各政党が,『直面している重要問題への政策』を掲げ,その上で,消費税10%と言う『新たな重税制度の導入』が必要なら,その政策も策定して,一日でも早く,国民に信を問う事だと思うのである.

ちなみに,直面している重要課題は,改めて言うまでもなく,復興問題,経済問題,財政問題,行政問題,エネルギー問題,社会保障問題,安全保障問題,外交問題,等である.

この建設的,仕切り直しがなくて,政治の閉塞感は打破できないと思う.政局の駆け引きからは,日本の難題に対する一貫性のある,強い政策も,政治体制も,生まれてこないと思うのである.

そして,『ごった煮政権』,『合成の誤謬政権』,『メルトダウン政権』,『無責任政権』,『嘘のマニフェストで生まれた政権』『ブーメラン政権』は終わりにしなければならないのである.

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