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2012.04.11

277 ネット使用履歴のビジネス利用は是か非か

ネット検索最大手のグーグルビジネスのコンセプトは顧客(グーグルサービスアカウント登録者)のサービス使用履歴を収集し,顧客の特性を分析し,その特性に合致した情報(検索結果,広告,等)を提供する事である.

現在,グーグルでは,検索,メール,地図,ナビゲーション,写真管理,動画配信,スケジュール管理,自動翻訳,書籍検索,ブログ閲覧,など60以上のサービスを提供し,既に多くの人が活用している.これらのサービスは顧客情報を多く得る為に,ほとんど無償で提供していると言えるわけだが,普及するほど,世界の個人情報がグーグルに集積される事になる.

ところで,このグーグルのコンセプトにもとづいて,3月,グーグルの統一したプライバシーポリシーが導入された.今,このポリシーに各国で波紋が広がっているのである.

その骨子(抜粋)は次の通りである.

『Google サービスは,情報の検索や共有,他のユーザーとのコミュニケーション,新しいコンテンツの作成など,さまざまな用途にご利用いただけます.グーグルアカウントの作成などにより,Google に情報を提供して戴くと,サービスをさらに改善する事ができます.

たとえば,関連性のより高い検索結果や広告を表示したり,他のユーザーとの交流を支援したり,他のユーザーとの共有をより迅速で簡単にしたりすることができます.

Google サービスのご利用にあたり,Google がユーザー情報をどのように利用し,プライバシーをどのように保護しているかをご理解ください.そこで,プライバシー ポリシーでは以下の事項について説明します.

Google が収集する情報とその理由
その情報の利用方法
提供する選択肢(情報へのアクセスや更新の方法など)

以下省略・・・・』

なぜこのポリシーが波紋を広げているのかを述べる前に,米国の個人情報に関する文化を述べておきたい.

米国では昔から,『透明性と予測可能性の高い方法で得た個人情報』はビジネスに使ってもよいとの文化がある.

この文化によって,DMで言えば,送る方は相手を絞り込めるし,受ける方は役立つ情報が得られるのである.米国人は自分に役立つ情報が集まってくるなら,個人情報(体格,趣味,ハンディキャップ等)を公開する事には抵抗感が低いのである.利便性を優先した考え方である.多民族,広い国土,気候の差,がある国の特性も影響しているかもしれない.

その結果,米国の通販は特定マーケット向けのキャンペーンDM(太った人向けのDM,ハンディキャップのある人向けのDM,釣り愛好家向けのDM,等)が多い.販売企画に応じた顧客名簿をリストブローカーが用意してくれるから,この合理的な販売方法(スペシャル・カタログによるダイレクト・マーケテング)が成り立っているのである.

日本では,リストブローカーの文化もなく,該当名簿をそろえる事に後ろめたさがある.個人も知らぬ内に自分の情報が使われる事に違和感がある.入学する子供がいる家に入学用のカタログが届くと,懐疑信を抱くのである.

従って,日本ではキャンペーンDMは少なく,ほとんどが総合カタログのDMをばら撒く事になる.勿論,通販のヒット率は低く,膨大な出版物の作成や物流にも無駄が生じるのである.かくて,ごみ収集日には,重いカタログが山積みされるのである.

又,米国のクレジット取引のオーソリゼーションはクレジット取引履歴,支払いの履歴で判断される.当然,その為に膨大な取引情報(トランザクション情報)が一箇所に蓄積され,その情報が利用される.日本ではブラックリスト(ネガテブ登録情報)で行われているが,ここにも個人情報に対する文化の差がある.

こんな米国の個人情報に関する『利便性優先の文化』の中で,グーグルビジネスのコンセプトが出来たのだと思う.

さて,各国に波紋を広げているグーグルのプライバシ-ポリシーに話を戻すと,このポリシーに対して,類推できる各国の懸念内容は次の通りである.感情的な,非論理的な懸念は除いた.

ネットサービス使用履歴と個人登録情報とが連動して,本人を丸裸にするくらいのプライバシー情報(保護対象個人情報)が半ば自動的にグーグルに収集され,保持される事,

②蓄積したプライバシー情報を使って,
個人の特性を定めたり,個人の行動を予測する事,(原情報を使って新たな個人情報を作る事)

③3月以前のネットサービス使用者のプライバシー情報の取り扱いがはっきりしていない事,

④将来に渡って,プライバシー情報の活用内容を予測も牽制も出来ない事,

⑤本人の同意をもって合法としても,将来に渡って,同意内容が守られる保障がない事,

⑥個人情報保護に違法性があっても,サーバー群が世界に点在している為,各国の法制度の実効性に限界が生じる事,

等である,さて,この問題をどう考えればよいのだろうか.ネットの世界では時として,どうしようも無い問題に遭遇する.各国も対応も定まっていないのである.

尚,日本政府で『マイナンバー制度』が検討されている.これは政府が行う健保,介護,年金,等の社会保障業務と徴税業務の効率化と未納,脱税の防止の為に,個人や企業に番号を付け,横串に情報を管理しようとする制度である.

現在は役所の中でも,横串に情報を管理したり,検索する事は禁止されている.勿論,統一番号が情報に付いていないので,横串するにしても,名寄せが必要になり,障壁になっているのである.

この『マイナンバー制度』は昔から話題になっているが実現できなかった制度である.そろそろ,この制度による利便性,合理性,正確性の確保とプライバシーリスクとのトレードオフの問題に決着を付けなければならないと思う.

同じ様な問題は,他にも,多くある.小売業が顧客情報にある買い物履歴情報で顧客の特性を見て,ダイレクトマーケテングをする事,フィットネスクラブの会員情報を利用して,ダイレクトマーケテングをする事,交通系カードの移動情報で行動を予測し,ダイレクトマーケテングをする事,など,身近に多くある.

ビジネスに限らず,社会保障,徴税,などの行政や医療分野で発生するプライバシー情報も含めて,『グーグル・コンセプトに対する懸念』はグーグルに限った事ではないのである.

ところで,グーグルのコンセプトに対し,よけいな事をするなという意見もある.欲しい情報があれば,自分で検索条件を絞り込む事で,ある程度,利便性の高い情報を得ることが出来る.更に言えば,現在の検索条件を自然語にするなど,もっと工夫すれば,検索される情報や配信される広告の利便性は,もっと向上するかも知れないのである.グーグルに,勝手に自分の特性を決めて欲しくないと言う意見である.

以上,ネットの発達で,著作権問題,複製権問題,放送とインターネットの問題,今回の個人情報保護の問題,など難問が続く.ネットの世界では時として,コントロールできない問題に遭遇するが,さて,日本で方針は出せるのだろうか.

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