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2012.04.06

276 大論争『財政は破綻寸前か否か』

いな素人が判断できるテーマではないが,日本の財政問題について,両極の専門家の見解を並べてみた.財政危機,増税不可欠の世論操作が進む中で,距離を置いて考えてみたい.

・『日本の財政は破綻寸前だ』,ヘッジファンド創業者カイル・バス氏の弁.

過去20年間,日本のGDPは減少し,株価はピークの8割下げた.国債は長期低金利を続けてきた.この国債の残高は1000兆,GDP比229%,税収41兆(2011年)に対し,利払い11兆,金利1%の上昇で10兆利払いが増加,2%上昇すれば財政は破綻する,と言う最悪の状態である.

また41兆の税収にもかかわらず90兆を超える予算を組む事(毎年50兆の借金をする事)が異常であり,破綻に向けて,まっしぐらである.

加えて数年後には,貿易赤字,経常収支でも赤字に転落し,GDPは更に減少する.一方で,東日本震災や原発問題で更に借金は増え,国債残高のGDP比は10%以上あがる.更に300万人の人口減少,少子高齢化も深刻になり,社会保障公費も増大する.苦し紛れの大増税も経済を劣化させ,税収も伸び悩む.

日本には1400兆の個人金融資産があると言うが,当てにならない.日本国民が国債を買い支える保証はどこにも無いし,国債購入も限界に近付いている.

と言うのがカイル・バス氏の弁だが,学者,マスコミ,政治家,に,この認識を示す人は多い.確かに,これだけ悪材料をならべると,誰しもが,財政破綻寸前の気分になる.そして,この認識者から増税論が聞こえてくるが,財政危機の解消策は聞こえてこない.

・『財政破綻寸前ではない』,元財務省高官,経済学博士,高橋洋一氏の弁.

日本政府は世界最大の借金を日本国民から借りている(GDP比229%).言い方を変えれば,日本国民は世界最大の債権を持っているとも言えるのである.

実は,その政府が,資産も世界最大の650兆(内,換金可能資産は320兆)持っている.従って差額の350兆が純借金である.従って,借金のGDP比はそれほど高くない.それでも,650兆の資産より大きい1000兆の借金があるのだから債務超過に見えるが,政府には徴税権,造幣権と言う打ち出の小槌を持っており,ここが民間のバランスシートとは違うのである.

この実態から,国債がデフォルト(国が利払いや償還資金が用意出来なくなる事,財政破綻)になる気配はない.1995年武村大蔵大臣は450兆円の借金残高で財政危機宣言をしたが,それ以来15年,借金を重ねても,金利も上がらず,財政破綻の気配さえないのである.

日本国債の信用はCDS(クレジット・デフォルト・スワップ,債務不履行のリスクをカバーする金融派生商品)を見ればわかる.これによると日本国債は1.4%程度で低水準である.言いかえると,日本国債のデフォルトは70年(100÷1.4≒70)に一度あるかどうかの確率と見られている事になる.この値はフランス(2.2%)より低く,ドイツ(1%)と似たり寄ったりである.ちなみにギリシャは90%である.

もし,数年で破綻すると考える人は,日本国債のCDSを買えば良い.例えば3年で4.2%(1.4×3年)払うだけで,破綻によって債権100%がもらえる事になる.こんなに儲かるのに,破綻論者に,このCDSを買う人はいない.

又,日本国債が暴落すると言う論調もある.ただし暴落とはどの程度の数値を言うのか不明である.言える事は,現在は超低金利であるから,経済が活性化すれば長期金利は上がる.長期金利が上がると,既発行の低金利債券は新債券に買い替えるる為に売られ,当然,価格が下がる.今後,国債価格が10%位下がることはあり得る.

このように日本の財政を認識できるのは,なんと言っても借金の95%を国内で,しかも円建てで持っている事である.場合によっては,急速なインフレを注意しながら,金融緩和で借金を返済する事も,国債を買う事も,可能なのである.

もう一つ言える事は日本全体としては『日本政府の借金=日本国民の債権』であって,外国の為替変動と連動して,価値が変動しない事である.この点が外貨建ての借金がある国とは決定的に違うのである.

この認識の上で,経済政策を考えると,デフレ・円高から脱却し景気を回復させる為に金融緩和で円安にすればよい.円安になればGDPが増え,株価が上がり,税収も増える.財政再建も不可能ではない.例えば,60兆の緩和(紙幣印刷)で株価は13000円を超える.

勿論,財政健全化に向けて,『経済活性化の環境作り』や『小さな政府』(資産売却,官から民,行政改革,規制緩和,社会保障費の合理化と抑制,等)への取り組みも必要である.

この様に,財政を健全化する為には,増税で解決できるはずもなく,経済・財政の一体改革が必要だと高橋氏は説いているのである.

以上がおおよその高橋氏の弁である.私見で言えば,日本の財政は鎖国で作られたガラバゴス生物で,世界の動きや論理から隔離されていと感じるのである.だから,ハードルが低いまま,借金を積み上げられたのだと思う.

高橋氏の主張はいつも広い視点を持って,実態と理論から出てくる主張が多く,説得力がある.しかも,現状の肯定・否定,楽観・悲観,それぞれに偏る事なく,客観的に,論理に応じて,経済も財政も改革が必要だと説いているように感じるのである.それだけに,主張に信頼が持てるのである.

従って,賢明な高橋氏が『破綻寸前だ』と言ったら終わりである.その前に改革を実行すべきだと思うのである.ちなみに,『増税は現状肯定の思考』であり,それでは解決しないのは自明である.

この『国家財政に対する評価と対策』が政治家から余り聞こえて来ないのは何故だろうか.経済・財政問題は市場に影響を与えるから口に出しずらいからだろうか,借金をこれだけ作った手前,何も言えないのだろうか.それとも,よくわからないからだろうか,何か役人だけが裏でごそごそしている感じである.

政治家はもっと,『経済と財政』という大きな視野で国家財政を論じるべきである.増税法案を通すための説明は不要である.特に,財政の現実を明らかにし,何故こうなったのか,今後,政策や財源をどうすべきなのか,をきっちり言わない限り,増税論は成り立たないと思うのである.『足らないから増税』では全く意味がないのである.

特にドンブリ(トータル)で赤字国債を発行する事を廃止すべきである.予算ごとに財源(税収,借金,国債など)を明示すべきである.もちろん,過去の建設国債事業の評価と借金残を明らかにすべきである.国民からすれば食い逃げの国債(効果はなく借金返済のみ続いている国債残)を監視したいのである.

何と言っても,国債(国債費,赤字国債含む)を毎年50兆程度発行している現実を変えない限り,どんな増税策をとっても,景気対策を打っても,金融緩和策をとっても,財政危機は高まって行くと思う.この基本的議論が全く聞こえて来ないのが不思議である.

民主党の消費税増税案にしても,国債発行が『減るのか』,『変わらないのか』,『増えるのか』,よく見えないのである.又,言葉遊びのように,『増加分を減らした』,等と言うのかもしれない.更に言えば一体改革とした社会保障の程度も『良くなる』のか『悪くなる』のかも見えないのである.

民主党のマニフェストからの流れで言えば,消費税10%分の財源は歳出削減で捻出するとして増税案は出てこないのだが,増税案提出に当たって,何の釈明もない.民主党の政策は一体どうなっているのだろうか.野田総理は自民党と危機感は共有していると言うが,足元の政権与党内で共有できていない事が大問題なのである.

政治家の皆さん,勿論,総理も『日本の財政状況の認識』,『日本の経済,財政,社会保障の今後』をどう考えているのか,一人一人に真剣に聞いてみたい.国民は知りたいのである.同時に政治家の力量も知りたいのである.

政治家に,この見識が無ければ,政策論議も増税議論も,もっと言えば政治家の存在そのものも,意味がないのである.従って,見識がない議員は即刻,辞職すべきである.そんな人が国政に携わってはいけないのである.日本は例え『財政危機の寸前にない』としても,難しい局面にある事には違いないからである.

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