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2012.05.07

279 関越道高速バス事故が大惨事になった原因

4月29日の群馬県の関越道で起きた高速バスの大事故に関して,高速バスツアー業界の無法ぶりや,高速バス会社のずさんな管理,中国人から帰化した運転手の問題,あるいは規制緩和と過当競争の問題などが盛んに報道されているのである.

この様な報道は事故発生の遠因の掘り下げになるかも知れないが,にわかに再発防止につながらない報道ばかりである.いつもの興味本位のバッシング報道に終始しているように感じられる.

こんな報道姿勢に対抗するわけではないが,『大惨事になった原因と再発防止』に焦点を当てて私の感想を述べてみたい.

断片的に聞こえてくる話を要約すると,事故の全容はこうだ.

『バスの運転手の居眠りでバスが90キロ以上のスピードでガードレールに激突した.その激突した場所がガードレールの途切れている直前であった為に,ガードレールとバスは左に押出された状態になり,ガードレールの終端と数10センチ離れて設置されていた防音壁にバスが激突してしまったのである.

そして防音壁は10メートル程バスを串刺しするようにめり込み,バスは大破したのである.この事故によって,45名の乗客が全員,重軽傷を負い,そのうち,左側の乗客を中心に7名が死亡したのである.』

この事故は運転手の居眠り運転が原因て発生しているが,大惨事になった原因はガードレールと防音壁が離れていた為であり,この事によって,ガードレールが助走路になってバスを防音壁に激突させてしまったのである.防音壁がガードレールと繋がっていれば,ガードレールの役割通り,バスは壁をこすりながら減速して行ったと思うのである.

この様に明らかにガードレールの欠陥が大惨事の原因である.しかも,その欠陥は確実に大事故を起こす大欠陥なのである.これではガードレールと言うより,大惨事を招くノーガードレールと言わざるを得ないのである.

バスの乗客からすればまさに『2重遭難』である.『ガードレールへの激突』で終わっていたかもしれない事故が,ガードレールの欠陥によって,『防音壁への激突』と言う最悪の事態に巻き込まれてしまったのである.

事故後,ここに焦点を当てた報道は余り聞こえてこないが,きっと事故調査結果でも,裁判でも,この『確実に大惨事を引き起こすガードレールの欠陥を放置した責任』が問題になると思う.

国交省はガードレールと他の建造物との間の隙間は危険だと認識していた節がある.98年以降,隙間のない作りにしているからである.ただし事故現場になった場所のように80年代に作られた隙間は放置されたままだと言う.その全国的実態も不明だと言う.

『これは,自動列車停止装置(ATS)の設置が後回しになった為に大惨事となった福知山線の脱線事故と同じである.』

車が暴走してガードレールに激突する事やガードレールに車をこすりながら止める事はある.その為に頑丈なガードレールがあって,被害の拡大を防止しているのである.ガードレールが途中で切れていれば,当然,ガードの力が弱くなって,その先に防音壁の様な構造物があれば,確実にその真正面に激突する.こんな危険性を認知していながら,放置してきた国交省の責任は極めて重いと思う.

国交省が高速バスツアー業界やツアーバス会社の実態調査や規制強化に血眼なのは,この事に触れられたくないからだろうか.交通事故防止策は制度等の『ソフト対策』以上に,車,道路,ガードレール,防音壁,或いは他の建造物,等への『ハード対策』が極めて重要なのである.どうも国交省は『ハード対策』を逃げている感じがする.

常識的には,高速道や幹線道で同じ様なガードレールがないか,遅まきながら大至急調べ,手を打つ筈である.又,生活道路や登下校道路で,通行人を守るガードレールがない為に大事故が起こる危険性に対しても,至急,手を打つべきである.

ついでに,頭にきたガードレールの思い出話をしたい.

細い道の左折道路側で信号待ちをしている車を見ながら左折した時,車の左側のボディをガードレールにこすってしまった.頭にきて,そのガードレールを見ると,黒いこすり傷がたくさん付いていた.しかも,随分前の古傷もある.どうやら『必然的にこする場所』のようである.どれほど,このガードレールが板金屋やボディ取り換えの需要を作り出した事か.

この交差点は大型車の左折は禁止しているが,調べてみると,信号待ちの車があると,ほぼ確実に,左折車はガードレールをこすってしまう.明らかにガードレールの位置に欠陥がある.これは損害賠償に値する欠陥である.

役所に怒鳴り込もうと思ったが,その怒りが覚めやらないうちに,そのガードレールの位置が修正された.きっと,怒鳴り込んだ人がいたはずである.しかし,傷の多さから察するに,長い期間,放置されていたに違いないのである.せめて役所は要注意の看板くらい,すぐ出すべきだと思ったのである.そして,全国的にガードレールに傷のある所は手を打つべきなのである.

ところで,交通事故は被害者も,加害者も,不幸の極みになる.なんと,運が悪い,と偶然を嘆いてしまうのである.しかし,事故に潜む,『必然的に起こる要因』を認識し,一つ一つこれを消していく事(ハード対策)が事故の再発防止に繋がるのである.行政,警察,道路業界,輸送業界,メーカーだけではなく,保険会社もリスクを消す取り組みが求められる.

事故後,いつも『再発防止に努めたい』と所轄の行政は言うが,やるにしても制度や啓発,等の『ソフト対策』が多い.『ハード対策』に向かわないのは財政上の問題があるからだろうか.意外と役所の過去の責任を問われたくないから,かも知れない.果たして今度はどんな再発防止策が出てくるのだろうか.

追記(5月24日記)

5月24日の日経新聞に『ガードレールの欠陥を修理する』との小さな記事があった.これによると,国交省はガードレールと防音壁の隙間が今回の被害を大きくしたとの指摘を受けて,調査で判明した全国5100ケ所に対し,隙間をなくす工事を行うよう東日本,中日本,西日本の各高速道路会社に指示したと言う.工事費17億,優先度の高い場所は2年程度で完了するとの事.

素人でもわかる危険なガードレールを5100ケ所も作った事,危険を認知していながら,それを放置していた事,に改めて驚く.その責任は重い.どうしてそうなったのか,これまで被害がなかったのか,を知りたいものである.政治家やマスコミの追求がない事も不可解である.高速バス業界の問題より深刻だと思う.

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