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2012.06.28

285 ヤマ場を迎えた民衆党内部抗争と政局②(採決)

6月26日行われた衆議院の『一体改革』関連法案の採決で,増税法案の採決結果は下記の通りであった.

院全体 賛成:363票, 反対:96票, 欠席棄権;19票
民主全体 賛成:216票, 反対;57票, 欠席棄権:15票(羽田氏病欠除く)
小沢G    賛成:000票, 反対;43票, 欠席棄権:06票

3分の2以上の賛成を得られたので,もし参院で否決されても,衆院で再議決すれば成立する.なんと,わけのわからぬまま重要法案がと通ってしまったのだろうか.

これを覆せるのは,増税反対を公約する政党が次の総選挙で過半数を得る事だが,不可能に近い.その事も含めて,増税は確定したのである.あとはその時の政権がGOすれば始まるのである.これを踏まえて,次の政局に移る事になるが各党の動きを想像してみた.

民主党主流派:

造反者の処分をどうするかが課題になっている.党の分裂や衆院の
過半数割れの回避,あるいは参院の第2回派への転落を防ぐ為に,除名処分をしない,と言う意見と,逆に除名を含めた厳しい処分をする意見とが検討されている.

現在のところ,幹事長としては除名処分にしない意向のようだが,その場合は,三党合意をした自公との信頼関係が問題になる.

政権与党としては党の分裂問題,三党合意の認識問題,に加えて,赤字特例法案,一票の格差対策,など重要法案の審議も残っている.ネジレ状態の中で,法案成立にむけて,自公との妥協を図りつつ,薄氷の国会運営になる.

民主党反主流派:

このグループには,そもそも,民主党の主流派が造反者であって,我々ではない,国民と約束していない事に,しかも,党内の意思決定が曖昧で,討議拘束など存在しない,
との意見がある.しかし,現実には,中間派も含めて,反対,欠席,棄権をした党員は次の選択になると思う.

①除名されなければ党内に留って,増税阻止を訴える.
②党に留まったまま,国会の会派を離脱し,増税阻止を訴える
③離党し,新党を立ち上げ,国民に増税反対を訴える

離党し,新党を作るにしても,政治資金の問題,人材の問題,選挙対策の問題,国民の支持の問題,などで,『残るも地獄,去るも地獄』の状態だと思うが,主流派が増税を撤回しないかぎり,小沢グループを中心に③の行動になると思う.

本日,『分裂を止めたい幹事長』と,『増税方針を止めたい小沢氏』との折衝が行われるが,増税方針が止まるわけがなく,分裂の可能性が高い.そうなると,分裂の規模がどうなるかに焦点が移る.

もし離党によって,民主党が衆院で過半数割れが起こり,参院で第2回派になれば,一気に解散となり,増税問題は国民の審判を仰ぐことになる.自公の思惑通りになるわけだが,小沢新党としては,新党を作った瞬間に民主党内部抗争が終わり,新党として,参院審議や選挙での戦いに移る事になる.

小沢グループは次の選挙で,どんな政治理念で,どんな政策を掲げるのか,よそ事ながら気になる.

自民党:

自公としては増税法案を早く参院で成立させ
,解散に追い込みたいとの戦略となる.ただし,民主党が分裂して過半数割れにでもなれば,又,増税法案成立後解散するとの密約があれば,別だが,そうでなければ,自公は総理の不退転に,民主党のマニフェスト違反に,加担しただけになる.

当然,自公執行部への批判が強くなる.自民の9月の総裁選で首になる可能性も高くなる.そこで,自民執行部は造反を許した民主党の信頼感の問題,三党合意の民主党の認識の問題,赤字国債発行特例法の問題,などを人質に解散を迫る事になる.

ちなみに自民の前幹事長の中川氏は三党合意とは言うものの,民主党との認識に差があると言う理由で採決を欠席されているが,その主張が正しかった事になる.

一方,民主の分裂に乗じて,執行部は民主党と大連立を組む作戦に方向転換するかも知れない.実質予算編成に主導権を取って,次の選挙を優位に進める作戦である.もしそうなれば,民主党内にも抵抗があると思うし,選挙の前に,政界再編の動きが出始めると思う.

いづれにせよ,近々,主戦場が参院に移る.衆院の優位性はあるが,参院では,三党合意に遠慮せず,三党合意の内容の解明・確認,法案の中身,増税実施前にやるべき事の明確化等,徹底した議論をし,否決も辞さずの参院の存在感を示して欲しいと思う.

次に,私見であるが,気になっている事を述べておきたい.

一つは,採決後のマスコミの論調である.

採決前は,ほぼ全マスコミは三党協議に賛同し,その合意によって,増税を決めるべきだ,との論調であった.

採決後の論調は違う.増税によって国民の負担はこんなに大きくなる,だとか,実施されるまで,先送りした社会保障問題,デフレ脱却問題,行政改革問題,消費税制度設計問題,などを解決しなければならない課題が山ほどある,だとか,あたかも問題だらけの法案だといい始めたのである.

散々増税を煽っておきながら,採決されると,何で,問題が多いと言い始めるのだろうか.何か採決までは財務省の情報統制が働いていたように感じる.想像だが,これらの事を採決前に,ほじくり始めると,増税案が吹っ飛んでしまう事を財務省が恐れたのかもしれない.

当ブログでは目的も内容も,はっきりしない,いわゆる完成度の低い法案に疑問を呈してきた.マスコミより真面目である.

二つ目は総理,自公への怒りである.

法案採決後の野田総理は,社会保障の為,将来の財政の為,に今回の増税が必要だと,改めて記者会見で力説していたが,あい変わらず,裏づけのない話に酔っていると感じた.

裏づけのない話しを『思い』と言い,裏づけのある話しを『政策』と言うなら,総理は『政策』ではなく,『思い』を話しているのである.そんな総理は3人目だが,もう沢山である.

自民党総裁も,増税法案だけでも先に決定しておけ,と言う財務省のシナリオに加担したた感じである.財務省派の両代表とも,法案内容を『真面目に考えろ』と言いたくなる.

三つ目は増税前にやるべき事がある,と考える勢力の受け皿の問題である.

前ブログでも指摘しているが,増税前にやるべき改革がある,と考える国民は多いと思うが,その意思の受け皿がない.小沢新党が出来ても,破綻している民主党のマニフェストに固執しているようでは,受け皿にならない.しかし,参院の議員がこの新党に何人か参加し,参院審議に加われれば,どんな暴露攻撃をするのか聞いてみたい気もする.

いづれにせよ,民自公の増税派に対抗する勢力は今のところ小さい事が大問題だと思うわけだが,解散がないなら,いくら衆院優位と言っても,参院審議では鋭い論戦を戦わせ,国民の判断材料を洗い出して欲しいのである.参院の論戦を選挙戦として見たいと思う.

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2012.06.23

284 ヤマ場を迎えた民主党内部抗争と政局①(対立)

民主党の『社会保障と税の一体改革』法案は実質自民党案に焼き直す事で,自公民が合意し,6月26日,衆院採決の運びとなった.

民主党マニフェストに端を発している実現不可能な諸政策が三党合意の形で実質撤回された事になったのである.ネジレ国会になってから,マニフェストを見直す約束で予算を通して来たが,結局,民主党内部で見直す事もできず,内部対立を引きずったまま,三党協議と言う他力で見直しが行われた形になったのである.

しかし,民主党主流派はあくまでも,民主党のマニフェストは間違っていないが,ネジレ国会対策で,マニフェストを実質引っ込めざるを得なくなったと,言うのだと思う.プライドにこだわる人の言い草である.

内心では,民主党主流派は間違いを認める屈辱から逃れられた上に,マニフェストの呪縛から解放されるとの思惑があったと思う.三党合意は民主党主流派にとって,渡りに船だったのではないか,と思うのである.

自民党は民主党のマニフェスト問題や一体改革案の問題を徹底的に追求し,ネジレを効かせて,解散を迫る戦法も取れたと思う.しかし,自公と妥協しても,増税法案を成立させたいと言う,総理の足元を見て,自民の増税案を丸のみさせた方が得策だと考えて合意協議に入ったのである.

この戦法は自公が民主党のマニフェスト違反に加担する事になるが,自公案が成立出来る,合意形成で民主党の内部対立が激しくなり,分裂が現実的になる,解散が早められる,と読んだのだと思う.

こんな思惑が飛び交う中で,自民党の思惑通りに,民主党反主流派が三党合意に異を唱えたのである.

①増税は選挙でも,マニフェストでも,主張していない
②増税の前にやる事をやっていない
③社会保障改革を先送りし,増税を先行させている
④三党合意は国民と約束した民主党マニフェストを反故にしている
⑤民主党で三党合意が議決されていない

が反対の理由である.マニフェストで当選してきた事を考えれば,主流派の政策も,三党合意も,『国民への背信』だと言うのである.

そして,三党合意内容の撤回,国会採決の先送りを主張したのである.もし採決になっても賛成しない,と筋が通った主張である.しかし,増税を言い始めた前総理の時,党内で決着しておくべき問題なのである.

この民主党反主流派の主張で,増税法案が否決される事はないが,その勢力いかんで,民主党分裂,衆院単独過半数割れ,と言う大きな政局に発展する可能性が出てきたのである.

6月26日の衆院採決を先延ばしにして,内部抗争を沈静化する動きもあるが,総理の裁決指示や自公との約束で,先延ばしは困難な状勢である.そこで,採決に向けた双方の説得工作が激しくなると思う.くつかの政局を考えてみた.

其の一:
主流派の説得工作,反対投票者の処罰の軽減,反主流派の先行き不安,解散の回避,等から離党者は限定的になり,新党が出来ても少数政党に留まるかも知れない.いつもの内部抗争と同じ結末になる.主流派の望むところかも知れない.

この場合は,法案成立後,解散との自公との密約がなければ,ネジレ国会のまま国会は推移する.しかし,自公は赤字国債法案などを人質に,解散を迫る事になると思う.反主流派の新党は粛々と選挙対策に専念する事になる.

其の二:
主流派の説得工作にもかかわらず,反主流派が多数離党して新党を立ち上げ,民主党が単独過半数割れになるかも知れない.そうなると民主党は少数与党に転落し,実質,死に体になる.

この場合,総理は増税法案が通った事と,分裂の責任をとって,解散に打って出るかもしれない.早期解散を目指す,自公にとっては思惑通りになる.しかし,新党は,新党を作ったものの,すぐ解散では政策も,選挙の準備も,出来ないまま,落選に向かって選挙に突入する事になる.

反主流派にとって,反対とか新党の動きは主流派を揺さぶる事が目的であって,民主党を分裂させたり,解散する事ではないとすれば,全く,不本意な結末になる.何の為の反乱かと言う事になる.

一方,新党が積極的に,民主党政権を潰し,解散に追い込み,選挙に打って出るとの考えなら,不信任案を提出するはずである.この不信任案に自公が賛成すれば,総辞職ではなく,間違いなく解散になる.これも自公の思惑通りになる.ただし,自公は賛成する理由に苦慮する事になると思う.新党と同調する事の問題もある.

自公からも,新党からも,不信任が出なければ,死に体の少数与党と自公との連立政権に近いような国会運営が行われ,不安定な国会になる.やはり,民主党が過半数を割れば,国民に信を問うのが常道だと思うのである.

其の三
もう一つ追加しておきたい.自公民の増税に対し,増税の前にやるべき事があると増税に反対する国民は多いと思うが,其の意思の受け皿がない.民主党反主流派は民主党マニフェストに固執しているから受け皿にはならないと思う.

是非,自民党,みんなの党の賛同者を結集して受け皿を作るべきだと思う.そして,高橋洋一氏の主張を前ブログで紹介しているが,増税より先に,氏の言う事をまず取り組んで欲しいのである.今のところ,この動きが見えてこないが,あえて政局の一つに加えておいた.これに気付く人が増えればと期待しているのである.

以上,三つの動きを想定したが,振り返ってみれば,民主党政権は,いつもマニフェストを国会で追及され,民主党内部の抗争もマニフェストが震源地になって来たのである.国民から見ると『うんざり』である.

その原因は,

『内心,間違いだと思っても,口をぬぐっている主流派』と
『間違っていないと,マニフェストに固執する反主流派』が

対立している事にある.しかし,所詮,両派とも,

『間違いを言って選挙に勝った集団』であるが故に,
『間違いを認めたくない集団』なのである.

こんな『偽装をし続ける政権』は,日本の政治を混迷させ,その損失は計り知れないのである.意味のない内部抗争など止めて,身づから間違いを認め,大政奉還する事が民主党に残された唯一の責任だと思うのである.

そんな政権に対して,当ブログでは,発足当初から批判し,早期の解散総選挙による政界リセットを主張してきた.

最近では,東日本大震災対策でも,消費税大増税でも,社会保障改革でも,まず国民に信を問うてから進めるべきだと主張してきた.国民に信を得た政権でなければ,日本の国難と対峙できないからである.今日においても,その考えは変わっていない.

このまま消費増税が実施されたら,穴のあいたバケツに国民の血税を流し込む事になる.予算規模も赤字国債発行も減る事はない.増税路線は国が滅びるまで続きかねないのである.とても筋肉質な国家になりそうもないし,政府とその政治家・官僚を『ゆでカエル』にするだけなのである.

ところで,自民党の長期政権の失政で日本が変になり,民主党の無責任なマニフェストと政権与党の資質の無さで,又,日本がさらに変になった.既成政党はどう政治を挽回するつもりなのだろうか.次の総選挙で,どんな顔で,どんな政策で,選挙をするのだろうか,その所信も聞いてみたいのである.

選挙をやるのは国民の為ではあるが,政党や政治家の反省と新たな決意の為なのである.今回の政局は建設的な意味あるものにして欲しいのである.

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2012.06.15

283 元財務官僚 『榊原英資氏』VS『高橋洋一氏』

同じ元財務官僚の榊原英資氏と高橋洋一氏の主張を紹介し,官僚の考えを考察したい.

元財務官榊原英資氏には,深刻な話でも笑い顔で話したり,自分の主張をハッキリ言わない人だとの印象が強い.その原因は『ミスター円』と言われる事を嫌い,官僚は『黒衣に徹するべきだ』とした美学のせいなのだろうか.あるいは,単に,ハッキリ言わない,言えない性格が原因なのだろうか.

その氏が5月に著書『財務省』を発刊した.定年まで財務省を勤め上げた親財務省の立場で,官僚の活躍ぶりや,官僚の大切さを紹介した本のようである.先輩として,脱藩官僚の問題点も述べている.官僚バッシングが吹き荒れる中で,現役のエリート官僚にエールを送りたかったのかもしれない.

氏はこの本の中で,自分の考えとして,このような事を述べている.

日本は今後,ヨーロッパ型の『大きな政府』(高福祉高負担)を目指し,消費税20%くらいはやむをえないと考える.日本は現在,国民負担率は低く,ヨーロッパ諸国に比べれば,『小さな政府』だ.

今後,日本は,米国型の『小さな政府』ではなく,増税によって『大きな政府』に向かうべきだ.ただし,増税の実施は今のような景気情勢や震災復興期にすべきではない.むしろ減税が望ましい位である.国の財政は当分大丈夫だ.

この論に国家財政の認識は同意するが,国民負担率が低いかどうかと言う問題と,増税による『高福祉高負担』が可能か,と言う問題が気になる.

氏の言う国民負担率は財務省が出している狭義の国民負担率である.平成24年度予算ベースで言うと,租税負担率22%,社会保障負担率17%で合計負担率は39%になると言う.これが先進国と比して低いと言う事で,増税派が良く使う数値である.

しかし,行政コストの負担率を正しく出すには公共料金,高速道路料金,交通料金,パスポート料金,教育費用,医療費,介護費,さらには借金の該当年度の潜在的負担,なども加えて算出する必要がある.(広義の国民負担率).しかし,この数値は不明であり,本当のところ,負担率が高いかどうか,分からないのである.私見によれば,高いと思うのだが.

次に高福祉高負担が可能かと言う問題である.狭義にしろ広義にしろ,行政コストは社会福祉コストだけではないので,当然ながら,負担率は社会福祉に対する負担率ではない.従って,この数値だけで『高福祉高負担』とか『低福祉低負担』とかを論じる事は出来ないのである.

国土や自然環境から日本は高コスト国家だと思う.従って,GDPを高め,税収が増加しても,負担率を高めても,借金返済も含めて,金は湯水の如く消えて行く社会である.予算配分の優先度をいくら高めても,高福祉高負担など,不可能ではないかと思うのである.あえて言えば『中負担で高福祉』への工夫と挑戦だと思う.

次に『小さな政府』か『大きな政府』かの認識の問題である.氏は負担率が低いから『小さな政府』だと言うが,それは借金がない時,成り立つかもしれない.1000兆も借金があると,大きい,小さいの物指しは,国民負担率ではなく,GDPに占める政府支出・政府負債の割合だと思う.

日本政府は1000兆(GHDPの2倍)の借金残高と毎年90兆に及ぶ政府予算を組んでいる.勿論,それと比例して,資産,債権も多い.日本政府の資産はGDP比で言えば,『世界一の大きな政府』だと思う.日本的社会主義と揶揄され由縁である.

以上,『広義の国民負担率の高さ』や『世界一の政府支出』を考えれば,既に日本は『大きな政府』に肥大していると思う.とても『小さな政府』などと実感できないのである.従って,そう言いたいなら,『福祉だけ小さな政府』だ,と言い換えるべきである.

以上のように,榊原氏の主張に異論を感じるわけだが,私見によれば,日本のこれからは,『小さな政府に向けた改革』(歳出の縮小と経済成長の両立)しか選択肢は残っていないと思う.榊原氏の言う『増税による大きな政府志向』はあり得ないと思うのである.その前に経済が破綻するからである.

ところで,現役官僚は榊原氏と同じ感覚なのだろうか.今回の『社会保障と税の一体改革』はさっぱり先が見えないので,方向性もわからないのである.

さて一方の高橋洋一氏に話を移したい.氏は財務省の脱藩官僚論客として多くの著作やネットで積極的に主張を発信している.そんな中の6月13日,衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会の公聴会で,公述人として,消費税増税反対の意見陳述を行った.

日本の財政は破たん寸前ではないとしつつ,中期的には財政再建論者である高橋氏は増税以外にやるべき事を具体的に述べている.その骨子は次の通りである.

第1に,『経済対策』として,
①デフレの解消が先②財政再建の必要性が乏しい③欧州危機で増税は不適
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第2に,『税理論』として
④不公平の是正が先(徴収漏れ防止)⑤歳入庁の創設が先⑥消費税の社会保障目的税化は誤り⑦消費税は地方税とすべきだ.

第3に,『政治姿勢』として
⑧無駄の削減・行革が先⑨資産売却・埋蔵金が先⑩マニフェスト違反である.

以上10の理由を上げて,今回の増税を否定したのである.詳細はサイトを見ていただくとして,さすが論客の高橋氏らしく明確で論理的だと思う.何が何でも消費税増税すべきだとの政治家の意見と比べれば,視点も,政策の厚みも,政策の順番も,全く違う感じがするのである.

尚,高橋氏はインフレターゲット論者として,金融緩和で借金を軽減させ,同時に円高,株安を解消し,経済をデフレから脱却させ,経済を活性化させ,所得と税収を上げ,社会保障費用を軽減させて行く,いわゆる,『経済成長なくして財政再建も社会福祉もなし』,『経済と財政の一体改革』の論客なのである.又,現在は国家財政の危機ではないとの主張を繰り返している理論家である.この点は榊原氏と同じ認識のようである.

二人の主張を紹介したが,主張の違いは『政治とは距離を置いて,円満退職した財務官僚の榊原氏』と『理論家,実務家として小泉改革を支え,その後の財務省改革(予算編成関連)で対立し,退職した財務官僚の高橋氏』との差に見えるし,『体制派vs改革派』の問題意識,改革意識,生き方,の違いにも見えるのである.

現役のエリート財務官僚は当然,体制派で増税論者である.榊原氏も今現役なら,増税を主張するだろうと言っている.個々人の考えがあっても,どうやら体制の流れに飲み込まれるようである.ましてや組織の中で,反論とか改革はとんでもない事になる.従って,当然,主張のある官僚は脱藩官僚になり,論客の道を歩むのである.

体制派の危険なところは,天下国家を預かっているとの大義,自負から『負担率が低いから,もっと召し上げろ』,『5%から10%にするだけだ』と代官になったような錯覚に陥る事である.その結果,『体制派官僚は悪代官に』,『脱藩官僚は論客に』なって行くのだと思う.

ところで,政治家と官僚の関係で思い出すのは吉田学校である.党人派ではない外交官出身の吉田茂は戦後の復興を目指して,官僚を積極的に政治の要職に登用した.ワンマンと揶揄されるほどの強力な『考えとリーダーシップ』があっての『官僚登用』である.これで,戦勝者の米国と渡りあい,戦後の経済復興体制を作ったのである.

もし日本が上述のように『小さな政府に向けた改革』しか選択肢が残っていないとすると,体制派の官僚ではなく,脱藩官僚を含めた『改革の志のある官僚』を結集して,政治勢力を形成して行く必要があると,お二人の元官僚を見て,強く思うのである.

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2012.06.09

282 問われる日本の『立論力,決断力,実行力』

『裏付けや実現性がはっきりしない主張』は民主党のマニフェストに限った事ではない.難問が多い昨今,よく言えば『理想』,『思い』,悪く言えば『空論』の主張が多くなって来たと感じる.どちらも,次の一歩に繋がらない,言うだけの話になる.たとえ,それに気付かず賛成しても,次の段階で挫折するのである.

当然,裏付けや実現性がない主張や政策は,無責任になったり,実現不可能に気づいたり,大きな問題を起こしたり,悪手になりやすいのである.

かつて田中角栄総理は『財源のない政策は政策にあらず』と,政策を仕切った.その考えが『財源確保の天才』,『税と公団の神様』,『コンピュータ付きブルドーザー』を生んだのである.

財源のはハッキリしない政策(裏付けのない政策)は責任が曖昧になり,食べた後は残飯と借金の山になる事を,金にうるさい田中角栄はよく知っていたのである.

昨今の様子を見ると,原発の中長期政策においても,短期の再稼働問題においても,あるいは電力会社の地域独占問題においても,再生可能エネルギーの拡大問題においても,未だ裏付けや実現性の説明がない状態が続いている.これではどの案も選択肢と言えず,単なる『理想』,『思い』,『空論』なのである.

原発反対論で言えば,原爆反対,軍備反対,戦争反対,基地反対等と同じ思考レベルにとどまっている感じがする.減原発論も代替エネルギー,節電,料金,を踏まえた先行きの計画を示しているわけではない.原発推進論も使用積み核燃料の処分方法など未解決な問題を抱えている.

再稼働問題も再稼働しなければ安全だとする認識が前提だが,本当は稼働しなくても原発リスクがあるとなれば,選択肢は再稼働に賛成・反対ではなく,廃炉に賛成か反対かになるはずである.勿論,廃炉の方法,費用,期間,廃炉までのリスク等の裏付けが必要になる.

そんな心配からNO278 科学性・実現性ある選択肢で原発議論を(4月27日),を発信したが,依然として選択肢の品質・精度は向上していない,禅問答状態である.

又,『電力会社の地域独占はけしからん』との風潮が強まっているが,『じゃどうするのか』の見通しが見えているわけではない.競争原理の導入を理念として言っているのなら,ガス,水道,道路などの独占体制,公共料金制度への所見も合わせて論じる必要がある.

昨今のマスコミも感情的,表面的な報道ばかりが目に付く,視聴率優先なのか,付和雷同なのか,空気に流されているのか,実力がないのか,本質を突いた話は少ない.

ところで,難問に対す解決の選択肢を示すのは世の専門家,政治家の仕事である.その為に存在していると言ってもよい.国民がその選択肢の中から選ぶのだから,選択肢の品質,精度が極めて重要になるのである.

その割に,不遜ながら,専門家,政治家の立論力が弱い感じがするのである.『しがらみ』や『日本的文化』が立論力を阻害しているのだろうか.

どうやら国民性の中に,

・付和雷同しがちである,

・理屈を『屁理屈』,『理屈っぽい』と言って嫌う,
・『理屈』より『空気』を大事にする,
・『理』(論理)より『気』(感情)をまず意識する,
・農耕民族の村社会文化の方が楽だと思っている,
・裏付け,実現性は,後の話だと思っている,
・知識があっても主張に繋げる切り口が分からない
・本当は未知の事が多すぎて,主張までほど遠い,


等があるのかもしれない.もしそうなら,難問解決の選択肢も出せなければ,大きな政策の決定も出来ない事になる.

当然であるが,民主主義のもとで難問に向かっていく為には,国の存亡をかけて,しっかりした立論,それによる選択肢の作成,覚悟を決めた究極の決断,が求められる.これをリードする専門家,政治家,マスコミ,の責任は重大だと思う.

従って,直面する具体的な問題から,これを実践して行く事が,まず必要だと思うのである.残念ながら,現状では,政治の混迷で,立論力も選択肢も弱い感じがしているのである.ささやかながら,当ブログでの『論戯』も,立論力の一助になればと,『屁理屈』を言っているのである.

追記(6月9日)

本日夕方,大飯原発を再稼働したい,と総理が国民に発表した.理由は

・原発はエネルギー源として,エネルギー安全保障として,不可欠である事,
・福島の地震・津波程度の災害には安全は確保出来ていると判断した事,
・夏季限定稼働では生活を守れないと判断した事,

だと言う.

総理が原発推進論者の様な事を言ったのは初めてであるが,大飯原発再開の話しなのか,日本全体の話しなのか不明である.発言の裏づけになる日本全体の今後の原発政策や福島原発事故を踏まえた安全対策,有事対策,50基の原発の扱い等の考えや計画が明らかにされていないからである.その意味で立論としては欠陥だらけである.

又,政権与党の民主党や前総理の脱原発論との整合性や,現閣僚との整合性も,福島の原発被害者への説得も,気になるのである.

この発言が現実的な案だとしても,もし,裏付けのない話なら,今の段階では『思い』の『独り言』になる.『独り言』を言う事がリーダーシップでもなければ,決断でもないのである.立論力で言えば『民主党政策は増税なしで実現できる』,『最低でも県外』などと同じレベルなのである.総理には,早急に,今後の我が国の原発政策を説明する責任がある.

この発表で,又,大もめになりそうである.この発表も含めて,現政府の立論力は極めて弱いと思う.いつも土壇場で苦渋の選択ばかりで,前後左右がバラバラになる.マニフェスト問題でも,震災復興問題でも,原発事故対策問題でも,社会保障と税の一体改革の問題でも,共通している事は,立論に前後左右の整合性や政策の実現性が検証されていないのである.まだ発表していない原子力政策でも同じ事が起こりかねないのである.

かねてから民主党を『合成の誤謬政党』,『ごった煮政党』と言って来たが,これが現実の問題になって,今日の政治の混迷を引起しているのである.国会は解散に向けて一気に動きそうである.

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