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2012.08.09

292 不毛な一体改革から理性ある政治を取り戻す為に

当ブログで,再々,民主党が進めた『社会保障と税の一体改革(消費税増税法案)』の問題点を指摘してきた.与謝野大臣就任に始まって,裏付けのない社会保障の公約,マニフェストにない増税,これをカモフラージュする為の『一体改革』と言う偽装,等,発案の時から,動機不純にまみれていたのである.民主党の実力では,身の丈を超えたテーマだと,誰しもが予想できたと思うのである.

率直に『マニフェストが間違っていた』,『予算が組めないから増税させていただきたい』と言う方が,まだ論理としては筋が通ると思うが,民主党のような,『合成の誤謬』政党では全体の論理性の問題や実現性の問題が出ると思ったが,案の定,無責任さ,無能力さ,を露呈したのである.特に『自らの非を認めない幼児性』がこれを増長させたと思うのである.

さて,自民党は,不完全な,問題だらけの民主党の『一体改革』案に対し,三党合意案を作って成立させる戦略をとった.その思惑は次の通りだと推測する.

①かねてからある消費税増税案を民主党政権で可決させる
②実現性のない民主党の社会保障案を潰す
③民主党内の増税反対勢力を焙りだし,民主党を分裂させる
④総理の政治生命発言に乗じて,早期成立を実現し,早期解散を迫る

そして,思惑通り,合意案を作り,民主党の分裂騒動を誘発させ,衆院を通過させたのである.そして,参院に舞台を移すが,いよいよ参院での採決が迫ってくると,民主党は再度の離党者を出したくない,早期解散をしたくない,との理由で,参院採決の引き延ばしともとれる国会日程を示したのである.

この事態に,自民党は早期解散を確約しなければ,不信任,問責決議,を提出し,三党合意案は破棄する,と迫ったのである.そんな攻防の中で,8月8日,党首会談が行われ,『法案成立後,近いうちに解散する』との玉虫色の合意がなされ,一端,自民党は鉾をおさめ,この法案は8月10日に参院を通過し,成立する運びになったのである.

しかし,私見であるが,自民党の『三党合意作戦』は間違いだったと思う.

まず,早期解散であるが,自民党は総理が政治生命をかけると言った事に乗じて,法案の中身を先送りにしてまで,早期成立を図ったわけだが,この考えは間違いである.

政治生命をかけるとは,普通なら,法案が成立しなければ,辞任,成立すれば続投するという意味である.だから,成立させない事が辞任・解散につながるわけで,成立すれば続投になるのは当たり前なのである.

従って,参院で成立しても,解散にはならないし,ましてや,民主党代表選後になれば,ますます解散は遠のくのである.目の前の欲に目がくらんだのか,明らかに,自民党作戦は失敗である.

次に間違いだと思う事は,法案の中身が,未完成になった事である.自民党としては,民主党の実現性の無い『一体改革』案を潰した事は成功かもしれないが,国民から見れば,三党合意といいながら,なんと,いい加減な法案を作ったのかと,あきれるのである.そもそも,三党合意案で民主党案を潰さなくても,つぶれる内容だったはずである.

結局,国民は三党合意より,『真正面からの政策論争』を期待していたはずである.昨年の民主党の最低保障年金案を責める自民党の勢いは民主党政権を崖っぷちに追い込んだと思う.三党合意で,その勢いが無くなり,解散どころか,民主党の延命に手を貸しただけになり,そればかりか,不信任や問責を出しずらくしたのである.結局,民主党を延命させた事が作戦にとっても,日本にとっても,最大の失敗だったと言えるのである.自民党総裁,執行部の責任は重いと思う.

そんな策を講じなくても,民主党政権の退陣理由は捨てる程あったはずである.それを思うと,自民党の選球眼は狂っているとしか思えないのである.この作戦は『自公民連立』を念頭に置いた長老のウルトラ案と聞くが,つくづく,自民党は古臭い手法から脱皮出来ていないと感じるのである.三党合意に反対した自民党議員こそまともなのである.

さて,法案の成立に対して,8月9日の日本経済新聞は増税法案が『ちゃぶ台返し』にならなかった事に『理性が保たれた』と論評した.同時に市場関係者の安堵の声を多く記事に載せた.日経新聞は,何が何でも,『増税を決める事が日本の理性だ』と考えているようである.どこか感覚がおかしいのではないか,と思うのである.

私に言わせれば,前述の通り,政争の具で成立するような法案は,所詮,『不完全な法案』で,理性などあるわけがないし,事実そうなのである.日経の『何が何でも増税が理性だ』,言い換えると,『法案の中身など,どうでもよく,増税さえ決まれば良い』とする意味なら『理性』という言葉は全く不適切だと思うのである.

改めて日経新聞に問いたい.下記のような不完全な法案の,どこに理性があると言えるのか,と.

そもそも,この法案に,『一体改革』の全貌もないし,目的も曖昧である.社会保障の制度改革や消費税の逆進性対策や耐久消費財の優遇措置を含む消費税制度設計等,肝心なところが先送りされている.さらに言えば,税制の全体構想も無ければ,三党合意内容にも,相違点が多く,論争の火種は多く残っているのである.結果として,増税による税収増も,何に使うかも,この法案からは見えて来ないのである.もっと根本的な事を言えば『経済と財政の一体改革』を論じなければ,財政再建も,社会保障も論じられないのである.

さてこの中身のない法案の今後であるが,是非,今度の総選挙で,各政党の『社会保障・税の一体改革法案』,或いは,『経済と財政の一体改革法案』を出し,争点にすべきだと思う.そして,信を得た次の政権が法案の見直しや改良をすれば良いと思う.これが正常な進め方なのである.

それにしても,つくづく,これまで,政権や国会は,何をやっていたのか,と言いたくなる.景気問題,大震災問題,原発事故問題,財政問題,社会保障問題,など手が打てているとは思えないのである.民主党及びその政権は発足以来,無能さと内部のゴタゴタを世にさらし続け,自民党は政権奪回しか眼中に無い,と言った印象なのである.

以上,日本の政治が混迷したり,不安定になるのは,しっかりした政治理念と体制が根付いていないからだとつくづく思うのである.小選挙区制による政権交代など程遠い政治体制と言わざるを得ないのである.

民主党は選挙に勝ったとは言え,よくも実力も無いくせに,政権に就いたものだと,しかも,3年間も続けている事に,その無責任さに愕然とするのである.

しかし,何としても,政治理念に基づいた政権交替可能な政治体制の形成が日本には必要である.残念ながら,その芽はまだ見えていない.

私見で言えば,自由主義国家を共有した上で,『大きな政府思考』と『小さな政府思考』の二つの対立軸で政治体制が形成される事を切望したいのである.既に,米国では,古くから,『大きな政府』思考の民主党(リベラル派)と『小さな政府』思考の共和党(保守派)が2大政党となって,政策のバランスを取って来ているのである.

日本の情勢を勘案して言えば,既に当ブログで発信しているが,次の三つの政治体制が必要だと思う.手っ取り早く,現在の政治家が,これまでのしがらみを捨てて,総選挙前に,このどちらかの勢力に移ってもらえないだろうか.

・『大きな政府を思考する伝統的な保守勢力』(演歌派)
・『大きな政府を思考するリベラル勢力』(フォーク派)
・『小さな政府を思考する新保守・改革勢力』(ジャズ派)

この観点で言えば,今の日本に必要な政党は,『小さな政府を思考する新保守・改革勢力』である.そして,『歳出削減策』,『景気回復策』,『税収増加策』,を主張して欲しいのである.1000兆円の借金を抱える政府は,すでに『巨大な政府』であって,これ以上の拡大は『貧しい社会主義』への道だと思う.日本にはもはや,『小さな政府』と言う厳しい道しか残っていないと思うのである.

しかし,現実は,自民党の保守勢力,民主党のリベラル勢力,の『大きな政府』思考の政治勢力だけである.この勢力が,一世を風靡した小泉改革路線を潰し,今日の日本の衰退を招いたと思うのである.この勢力では今後の日本が更に衰退を続ける事になると思うのである.

そんなわけで,次の総選挙は,社会保障問題,行政問題,増税問題,財政問題,景気問題,原発問題,TPP問題,など難題が多いが,政策の根底になる『日本の再興の考え方』を改めて論じて欲しいのである.この論議の中から,『改革勢力』が誕生する事を願っているのである.

最後に,『大きな政府』と言う『日本的社会主義』の居心地の良さや日本的文化に,どっぷりつかったまま,日本をずるずると,『方針転換出来ない』,『茹でカエル』にしているのではないか,と心配するのである.敗戦を決断できなかった,いつか来た道を思い出すのである.こうならない事が『政治の理性』だと思うのである.

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