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2012.10.05

301 知らなかった下水道料金の仕組みと課題

最近,老舗有名ホテル『山の上ホテル』で『下水道料金の不正』が発覚した.記事によると,厨房などの掃除に使っていた井戸水を少なく偽って,1800万円を逃れたと言う.3600万の課料処分(倍の罰金)になったと言う.

水を多く使うホテルや温浴施設の下水道料金は,随分,重荷だと言う.スーパー銭湯の例だが,その重荷を逃れようと,計測に掛からないように,バイパスの配管で地下水を汲み上げ,5年間で1億円以上の下水道料金の支払いを逃れていたと言う.スーパー銭湯ブームで,この様な下水道料金の不正が増えていると言うのである.

このような記事に,一瞬,面食らった.そもそも,『下水道料金がどうやって決められるているのか』を知らなかったからである.いまさらながら調べてみると,自治体毎に料金は違うのだが,その仕組みは,おおよそ次のようである.

排水される汚染水は下水道を通って集められ,浄化処理され,再利用か放流される.この下水道は上水道と並んで,社会の巨大なインフラになっているのだが,上下水道料金は,この巨大な社会インフラを支えているのである.

さて,この下水道料金の仕組みであるが,その料金は排水量で決まる.その排水量は,水の使用量で決まる.その水の使用量は,水道以外に,地下水,井戸水,温泉水の使用量で決まるのである.

家庭の地下水や井戸水の使用量は見なし値で設定される.ホテルやスーパー銭湯など営業用の施設では計測値で設定される.地下水を吸い上げてペットボトルにして出荷している場合の排出量をどうやって決めているのか,又,購入した大量の水や雨水を使って,生活している場合の排出量をどうやって決めているか,は調べていない.

この排出量に排出量規模毎に決められた単価をかけて,下水道料金が決まる.(特別に汚れた汚染水を排水する場合は,追加料金が加えられる).勿論,単価テーブルは自治体によって異なっているが,上下水道事業の独立採算が取れる基準に設定されているようである.

さて,この予備知識の上で,『下水道料金の不正』を単に『コンプライアンスの欠如』として片付けられない感じがして,その背景を考えてみた.

①排水量に実感が伴わない問題

先ず,上水道料金は水道水を使ったと言う実感がある.これに比べて,排水量に応じてかかる下水道料金には,排水したという実感が伴わない.ましてや排水量を示すメーターが付いているわけではない事も原因である.

加えて,下水道料金は,水の使用量から自動計算される論理的な数値であ為に排水量に特段の注意を払う事はないのである.

そんな実感がない下水道料金ゆえに,誰でも高いと感じるの当然だと思う.特に,水道水より地下水や温泉水を多く使っている場合は,水道料金に比べて,下水道料金が高く感じる筈である.

『山の上ホテル』も厨房等の掃除用の井戸水は只くらいにしか思っていなかったと思う.掃除用の井戸水に,下水道料金がかかる事など,バカバカしく思ったに違いないのである.こんな感情がコンプライアンスの壁を低くしたと思う.

②銭湯優遇制度とスーパー銭湯の下水道料金不正問題

もう一つ,スーパー銭湯競争時代で起こる巨額の下水道料金の不正問題である.現在,お風呂ブームで,スーパー銭湯,ホテル,温泉,などが激しい競争を展開している.そんな中で,従来の銭湯(公衆浴場)とスーパー銭湯(その他の公衆浴場)の違いがよく分からないにもかかわらず,昔ながらの銭湯には,優遇制度が残っている.銭湯の場合は,上下水道料金で言えば,一般の3分の1から10分の1,くらいの上下水道料金だと言う.

昔,銭湯は公共施設の色合いが強く,料金規制,距離規制,或いは,上下水道料金や固定資産税,更に融資などに優遇制度が適用されて来たのである.銭湯は内風呂で町から消えたが,制度だけは,今も生きているのである.

そこで,お風呂ブームの中で,新設の施設が,銭湯として登録できれば,優遇制度が使え,競走上極めて有利になる.実態は知らないが,田舎の立派なスーパー銭湯などは,登録上は銭湯なのかもしれない.

そうなると,銭湯ではない,スーパー銭湯や温泉,ホテルは不利な競争を強いられる事になる.これも,コンプライアンスに壁を低くしている要因だと思う.かろうじて残っている昔ながらの銭湯は別にして上下下水道料金の優遇制度について見直す必要がありそうだ.

③お風呂ビジネスの厳しい現実的な問題

次に,お風呂ビジネスには下水道料金とも関係して共通の苦悩がある.それは,大勢が入る湯船の浄化,殺菌問題である.勿論,かけ流しの場合は,お湯が入れ替わるので汚れはたまらない.従って浄化,殺菌,循環,設備は不要になる.しかし,莫大な下水道料金が発生するのである.

かけ流しせず,お湯を,浄化し殺菌して循環利用すれば,大きな設備投資が伴う.反面,下水道料金は安く済む.この下水道料金は自営でお湯を浄化,殺菌し,公共の下水道を使わずに放流する事で節約できるが,これもコスト比較の判断になる.

又,風呂事業にとって燃料費もバカにならない.勿論,高温の温泉が大量に出るなら,かけ流しが可能になり,設備も燃料費も,抑えられる.勿論,顧客集客上も,願ったりなのである.高温の源泉を持った温泉地は,温泉料を払っていると思うが,自然の恵みに感謝しても,しきれない御利益があるのである.

そんな事を考えながらスーパー銭湯に行くのは気が重くなるが,たまには,こんな事を考えるのも社会勉強になると思う.しかし,やっぱり,何も考えずに,『温泉かけ流し』で,思う存分『天然の恵みに浸る幸せ』を味わいたいものである.

④公共料金,税などを細分化して安く見せる問題

最後に,上水道料金と下水道料金を分けている理由である.考えようによっては,上下水道料金として,一本で徴収し,役所で分割すればよいのではないかと思うのである.しかし,夫婦2人で,上下水道料金月7000円とすると,極めて高く感じる.多分,この事もあって,料金への抵抗感を少なくする為に,上水道料金4000円,下水道料金3000円,と分けているのだと思う.しかし,夫婦で月7000円かかる事実は変わらないわけで,国民としては,これに騙されないようにする事は大事である.

この様な事は健康保険料,介護保険料,等も同じである.所得税と住民税も同じである.いづれも片方が決まると自動計算できる仕組みになっているが,わざわざ分離徴収しているのである.

とにかく日本の税制,公共料金は,細分化して,個々を小さく見せて,役所の所管毎に,広く課税の網をかけるのである.その膨大な種類の課税種目や公共料金,手数料に,優遇制度を入れるものだから,さらに,複雑で,分かりづらくなる.当然,国民が文句を言えない様になるのである.

サラリーマンに対する税や社会保険料の天引きも,徴収の合理性と引き換えに,仕組みのブラックボックス化が起こっているのである.(天引き制度は世界ではまれな制度)今や政治家も税制の全貌を知っている人はいないと思う.役人も,担当税以外は知らないと思う.まさに税制全体が『ブラックボックス』なっている感じがするのである.

こんな事から,日本は,他国に比べて,『国民負担率が低いから,消費税を増税しても,おかしくない』等と言う話がまかり通るのである.(負担率とは,税と社会保険料の所得に占める割合)

一見正しそうな話だが,国民負担率には,電気,ガス.水道などの公共料金,学校費用,自動車や住宅購入時の税金やパスポート等の手数料,あるいは物品税などは,入っていない.従って単純に負担率が低い等と言えないのである.

北欧の国民負担率は高いが,学校も医療も無料だと言う.日本の国民負担率は,北欧より低いとしても,学校や医療の費用を利用者が負担しているのである.この様に,単純に負担率で国際比較はできないのである.

以上,日本では,税金や公共料金の細分化,複雑化で,負担を低く見せる狙いがあるのかもしれないが,『制度・仕組みのブラックボックス化』が進み,国民は負担に対し,盲目的になり,不要な歳出の増大,増税,公共料金値上,の温床になっていると思うのである.

さらに,全体の統計が取れなくなったり,我田引水で断片的な数字が使われたり,不正を誘発する事にも繋がっていると思うのである.下水道料金の不正も,こんな背景の中で起こっていると思うのである.

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