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2012.11.02

303 消費税の地方税化が意味するもの

治以来の中央集権による国の統治機構は,現在の巨大化した日本にとって,もはや多くの無駄と不効率を産み,国力減衰の元凶になっていると,多くの国民,政治家が感じている事だと思う.いわゆる『明治以来の中央集権統治機構の限界』である.

そこで『地方分権による新しい日本の統治機構』を作るべく,橋下大阪市長が多くの仲間,論客に支えられて,国政政党『日本維新の会』を立ち上げた.総選挙をまじかに控え,第三極の政治勢力として注目を浴びているのである.

橋下氏の主張で言えば,明治以来の『統治機構が劣化』しているのに,その上で,いくら政策を議論しても,的確な政策は出てこないし,政策があったとしても,細部に神が宿る事はない.従って『統治の仕組み』を変えなければ日本は沈没すると言うのである.まさにその通りだと思うし反論はないと思う.今後,この政治勢力の形成も含めて,どうやって実現していくかに焦点が移ると思う.

ところ,この地方分権論は言うまでもなく,『Near is Better』の理念に基づいて,『縦割り行政による無駄の撲滅』,『魑魅魍魎による公共事業の個所付けの撲滅』,『地方ニーズに基づく有効な税の活用』,地方交付税を廃止して地方の『中央依存体質からの脱却と地方の自立』,『行政意思決定のスピードアップ』を実現し『活力ある地方』,『活力ある国家』を推進する事である.

この『Near is better』の理念は,言うまでもなく,住民の近いところで金の使い方を考えた方がよい,と言う当たり前の理念である.従って,『地方の事は地方で』やればよい,これによって,中央集権の弊害,無駄を解消すると言うのである.

橋下大阪市長は多分,高橋洋一郎氏の助言もあったと思うが,この地方分権を実現するために,『消費税の地方税化』を主張している.中央の財源をごっそり地方に移すのだから,必然的に権限も人も地方に移る事になる.しかも,税収確保の責任も地方が負う事になるのである.これで一気に『地方分権と地方の活性化』が進むと考えたのである.

小泉政権で『三位一体改革』(税・権限・人の地方への移管)は道半ばで終わっている.この『消費税の地方税化』は『三位一体改革』より『強烈な政策』になるのである.

一方,先の消費税増税法案は『社会保障目的税化』を定めているが,高橋洋一氏によれば,これは財務省の財源と権限を絶対手放さない為の政策だと言う.勿論,財務省にとって,『消費税の地方税化』は,もってのほかなのである.

『消費税の社会保障目的税化』は,権限,財源が確実に財務省に残るし,社会保障と言う事で,今後の増税もやり易くなる.さらに,増税によって,社会保障に使っていた財源を他の事業に回す事が可能になり,ますます財務省及び他の官庁の権益を確実に大きく出来るのである.しかし,この財務省の思惑は限りなく中央集権の肥大化への道であり,『集中の限界』を無視した政策になるのである.

財務省のこの思惑は誰しもが間違っていると思うが,財務省自身も認識している筈である.それでも,社会保障の中身が無いままに,早々と増税,目的税化を決める事に,暗躍する財務省の『陰謀の恐ろしさ』と,それを阻止できない『政治家の無能さ』を感じるのである.

当たり前の事だが,財務省が何と言うと,今からでも,『社会保障の中身』を先に議論すべきである.その中で,地方分権に賛成なら,『社会保障と地方分権』の関係についても議論しなければならないし,『社会保障費の増大と財源問題』,今回の『消費税増税の目的』等,基本的な事を議論しなければならないのである.

もし,それより先に,緊急の財源が必要と言うなら,率直に言えば良いのである.中身がないのに『一体改革』等と言って増税する事は国民を騙す事になるのである.

一方,消費税を社会保障に使う事は『税のあり方』として間違いだと言う学説がある.『受益税である消費税』は広く国民が負担するのだから,住民サービスに使うべきであって,社会保障と言う所得再分配に使うのは,『受能税の所得税』でやるべきだと言うのである.従って,消費税を社会保障の様な所得再分配の財源にしている国はないのである.

もうひとつ地方税化は意外と地域格差が発生しないと言う側面がある.地方の行政サイズに応じて税収が上がるからである.その上で,地域特性による調整は地方同士でやれば,地方交付税より公平な制度になるとも考えられるのである.従って国で調整する必要もないし,そんな国の権限は不要なのである.そもそも,地方交付税で中央が地方を支配する時代でもないのである.

そこで,日本の財政問題,社会保障問題,増税問題,などの難問は,『中央官庁の権益死守と中央集権の肥大化』をやめなければ,解決しないと,これに正面から対峙しようとしているのが,『日本維新の会』の橋下市長なのである.

かつて,中央官庁からの請求書を『ぼったくりバーの請求書』と同じだと叫んだ気骨が今も記憶に新しい.最近で言えば,特例公債法が政局の道具になって,全国の地方財政を不安定にさせているが,これこそが中央集権の象徴的な問題だと非難しているのである.

とにかく,『おかしいものはおかしい』と追求する正義感で,巨大な税収を中央から地方に移すと言うのだから,『日本維新の会』は中央にとって天敵になるのである.財務省は総力を挙げて,『消費税の地方税化』を潰しにかかっていると思う.

一方,この地方税化は財務省の反論集にもあるようだが,いくつかの課題はある.例えば,地域間格差の調整の問題,税率設定の問題,全国企業の納税方法の問題,等,である.しかし,考え方を覆すものでもなく,中央集権でなければならない理由にもならないのである.

地方分権,地方の自立,を表向き賛成する政党が多いが,財務省を敵に回して,『消費税の地方税化』を軸に地方分権化政策を掲げた政治家は橋下市長が初めてである.実現には多くの課題が伴うと思うが,だから『維新』であり,この政策に反対する専門家は余りいないと聞く.勿論,維新の会も充分な理論武装をしていると思う.

以上の事から,『消費税の地方税化で地方分権統治機構を作る』のか『改善をしつつも中央集権統治機構を続ける』のか,を総選挙の大きな争点にすべきだと思う.日本が『茹でカエル』から飛び出すのか,飛び出さないのかの大きな分水嶺になるからである.憲法問題,安全保障問題,原発問題,防災問題,TPP問題,財政問題,など難問は多くあるが,この問題も,もう先送りはできないと思うのである.

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