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2012.12.17

310 民主党自爆の政権交代選挙

民主党幕府の分裂と中小豪族が群雄割拠する中で,2012年12月16日,戦国時代に決着を付ける関ケ原合戦の日を迎えた.

嵐の後の妙な静けさの中,日本国中で投票が始まった.投票率がなかなか上がらないまま,夜8時になると,堰を切ったように,自民党の当確が次々とテレビに流れた.当確がなかなか出ない激戦の戦場はわずかにあったが,あっという間に体勢が決まった.

民主党,未来の党の大惨敗,維新の会の台頭,公明党,みんなの党の増加,そして,自民党の圧勝である.自民党は3年3ケ月ぶりに政権に復帰する事になったのである.

しかし,自民党から聞こえる感想は,民主党のあまりにもひどい惨敗で,2009年の自民の惨敗を思い出したのか,手放しで喜ぶどころか,勝ちすぎた事で起こる揺り戻しへの警戒感や難問を前にした責任感で,『勝って兜の緒を締める』話しが多かったように感じた.

さて,衆議院の新勢力は,自民294,民主57,維新54,公明31,みんな18,未来9,共産8,社民2,日本新1,大地1,無所属5,となった.自公連立で325で3分の2を超える空前絶後の政権与党が誕生する事になったのである.

いくつか,今回の選挙の新記録に触れてみたい.

①総理を初め全ての閣僚,民主党議員が比例と重複立候補をした事も異例だが,それにもかかわらず,与党でありながら,230人から57人へ,173人の議席を失った事は前代未聞である.民主党を離党した未来の党(生活第一)の落選も含めれば,220名ほどの落選になる.

この大敗は,小選挙区の特性とは言え,今までの民主党とは,一体何だったのかと,言われる程の惨敗である.現職の8人の大臣を含め,多くの大臣経験者が落選した事も前代見聞である.又,約220名の落選者の,3年3ケ月間の多分600億円程になる,歳費や交付金は一体何だったのだろうか,と思わずにはいられないのである.

②民主党及び,民主党を離党した議員の惨敗を含めて,各政党を横串で見ると,総じて,リベラル・左派の惨敗である.一見,優しそうな事を言うが,その分,論理や現実が成り立たない事を国民は見抜いたのだと思う.それが,自民党,日本維新の会,みんなの党の躍進に繋がったと思う.世間では右派への傾斜と言われているが,私見によれば,政治思想以前に,左派の発想や論理が現実に通用しない事が露呈しただけに見えるのである.

③次に驚く事は,多党化を反映して,480の議席に1504人が立候補し,1024人が戦場に散った事である.これも新記録だと思う.供託金の没収額も死票も新記録かも知れない.そもそも,小選挙区比例併用制で,これほど立候補者が出る事,事態が異常なのである.

④は政党助成金の悲喜こもごもである.政党助成金は1月1日の議員数で決まるのだが,年内解散によって,民主党は230人から57人に,未来は61人から9人に助成金が激減する事になったのである.

選挙が年明けに行われていれば,大敗しても,選挙前の議員数で助成金がもらえたのだが,『近いうち解散』で,何10億と言う大金を取り損ねたのである.民主党や未来の年内解散反対論に『延命したい心理』と『助成金の事』があったと思う.

一方,優勢であった自民党や維新は年内選挙によって,自民は118人から294人,維新が11から54,の助成金を得る事になったのである.勿論,年明け解散なら,増額はない事になる.年内解散の主張は.来期の予算編成の事もあるが,この助成金の事も気にしていたと思う.

⑤は投票率が60%を下回り,白票も多かった事である.マスコミによる自民党の圧勝報道や多党化による立候補者の増加,難問の多さ,などが,投票行動を落とし,白票の多さにも,つながった感じがする.

多くの無投票を,選択を迷った結果の放権と見るか,選挙結果への白紙委任と見るか,政治への不信の意思表示と見るか,あるいは,全くの無知,無関心と見るか,あるいは,高齢化が原因と見るか,であるが,結局,無投票は選挙結果如何に関わらず,白紙委任にした事になるのである.言い換えると,白紙委任と言う意思表示になる.

言うまでもなく,投票権は勝敗以前に,自分の参政権の行使であって,その集計で,代議士や政党の勢力図が決まる.従って,勝敗予想がどうあろうと,選択にどんなに迷うと,この権利を行使する事が民主主義の原点になるのである.

米国などのように国民が自分で投票権を取ってから,投票する制度と違って,日本では投票権が年齢や権利付与要件を役所がチェックし,ご丁寧に投票案内の葉書が個人に来るのである.役所としては,選挙人名簿を作る事が住民情報システムの大きな仕事になっているのである.

まさに,国民は,何もしなくても,選挙権が降ってくる感じになっているのである.参政権取得の血の歴史など知らないまま,国民の権利,義務が軽くなっている感じがするのである.

投票権は与えられる権利ではなく,奪う権利だと言う事を認識する為にも,権利のない事の重大性を認識する為にも,米国の様な制度にするのも,必要かも知れないのである.

以上①~⑤の驚きを上げたが,今回の一連の政変劇は自民党のシナリオ通りに進んだと思う.自民党は民主党提案の『社会保障と税の一体改革』に合意し,見返りに,近いうち解散の確約を取り,対立している社会保障の中身は国民会議に先送りし,当法案を成立させたのである.その後,自民党は,執拗に近いうち解散を迫り,そして念願の解散総選挙になったのである.そして,国民が民主党政権にレッドカードを出し,自民党に政権が返って来たのである.

当ブログで,三党合意などせず,堂々と議論で戦うべしと,正攻法を主張した.いくらでも民主党を追い込める材料があったからである.しかし総理が解散と言わない限り,この正攻法に限界があるとして,上記のようなシナリオを書いたのだと思う.民主党の抱きつき作戦を逆手に取った谷垣総裁の勝ちである.

この様に,自民党の『解散に向けた戦略』と国民の『民主党政権への反感』が合致した形で,圧倒的決着による政変劇が起こったのである.かくて,田総理は『消費税増税法案』と『民主党の崩壊』を成し遂げた『歴史上の人物』になったのである.

そこで,国民がレッドカードを出した民主党の問題点を簡単に列記して置きたい.

政権発足当初より露呈したマニフェスト違反の問題,民主党議員の資質・スキル・経験の問題,ごった煮政党の問題,トロイカ体制の問題,党内不一致・内部抗争の問題,政治主導の政権運営の問題,内閣人事の問題,パイの分配重視で合成の誤謬政策になった問題,沖縄基地移転問題,社会保障と税の一体改革の問題,景気対策の問題,中国・韓国・ロシアの領土侵犯の問題,東日本大震災の問題,福島原発事の問題,TPPの問題,等々,多くの問題が発生したのである.

当ブログでも,186自民党崩壊と政治路線の行方(2009・08・31)に始まって,民主党の問題点を繰り返し指摘し,提言して来た.今,それらを読み返して見ても,間違った指摘どころか,懸念した通りになったと,逆に驚いているのである.

経済面においては,民主党発足時90円であった為替レートが75円まで円高が進み,輸出も苦しくなり,製造の海外移転も進んだ,株安も続き,経済は下落の一途をたどった.税収も年金等社会保障の資産も,国民・企業の金融資産も,大きく目減りした,国際的にも日本の影響力は急速に減衰して行ったのである.

こんなに問題が多いにもかかわらず,野田総理の『近いうち解散』に反対し,任期いっぱい続けるべきだと主張した民主党議員は,そもそも国政を預かる資格も,力量もない,人達に見えたのである.

野田総理は,こんな民主党議員や離党した議員を政治の場から退場させた功績者なのかもしれない.言い方を変えれば,党で出来なかった民主党の浄化を国民にしてもらった感じである.

この民主党政権が残した物は,『政治の混迷』,『災害復興の遅れ』,『経済の疲弊』,『日米関係の歪』,そして,党員の『元職の肩書』である.

この『元職の肩書』は総理が適材適所と言って付けた人事の記録である.実態は全員が初めての経験であり適材適所等と言えないのだが,もっと重大な問題は,党内融和の手段として,能力と関係なく,役職をばら撒いた事である.

人事が発表される都度,適材適所と平気で嘘を言う総理に,国家の事など考えていない事への批判を通り越して,『一抹の物悲しさ』を感じた事を覚えている.

この『肩書き』は,結局,『無能の烙印』となり,選挙で『落とされる目印』になったと思うのである.本人はどう感じているのだろうか.能力もないのに大臣や要職を引き受けた人達だから,落選後も『元職の肩書』を誇らしく,家宝にでもするのだろうか.

そんなわけで,惨敗の民主党や落選の議員が,『国民への説明が足りなかった』などと,自分達の正当性に,まだ固執するような弁明をするなら,この烙印は消えないと思う.誤りを認め,党の基本理念から考えなければ民主党の再生はないと思うのである.

そもそも,民主党に責任感があるなら,国民の審判を受けるまでもなく,早い段階で,政権担当能力のない事を率直に認め,国民に謝罪し,政権を返上し,民主党を解党し,立て直す位の決断が必要だったと思う.せめて,今からでも,来夏の参院選までに,新生民主党を作り直す必要があると思う.

しかし,民主党の再生と言っても『簡単ではない』.党の政治理念は結党以来,はっきりしていない問題であり,はたして,作れるのか疑問である.又,主流派が責任を取って謹慎すれば,再生を進める人材も見えないのである.元反主流派が党を仕切り事になれば,離党組が復党する事も考えられ,参院選の前に解党もしくは分裂もあり得る位に再生は難しくなると思うのである.

思い返せば,参院選で大勝した民主党小沢氏は福田政権に対し,ネジレ解消に向けて連立を仕掛けた事があった.この時,小沢氏はその理由の一つに,民主党には,政権担当能力がなく,経験をさせたい事を上げていた.

この連立の話は,民主党内で否定され消えた.その後,民主党は2009年の総選挙で大勝し,政権に就いたが,小沢氏の懸念通り,政権担当能力の無さを露呈し,上記のような多くの問題を起こし,今回の大敗につながったのである.

一方,自民党の圧勝と今後の政界についても触れておきたい.

自民党の圧勝は,民主党への失望,反感と自民党の人材及び景気対策への期待が大きかったからだと思う.11月16日の解散宣言で総選挙モードに入ると,自民党の金融政策,財政政策,成長戦略の表明で,早くも,84円まで円安が進んだ.これに呼応して,日経平均株価も約1000円高騰し,9800円台に入った.1万円の大台に乗る勢いである.自民党への期待が,早くも,経済を動かし始めたのである.

そんなわけで,率直に言って,民主党政権への3年3ケ月に及ぶ苛立ちから,やっと解放された思いがする.これからは,前向きな視点で政治が見られる感じがするのである.

ただ,自民党が一方的に勝った事で,『保守・新保守・リベラルに別れた政界再編の芽』がなくなれば,『日本の政治・政党の不安定さ』が先送りされた事になり,心配である.

なんとか『保守』,『新保守』,『リベラル』の恒常的政治体制を形成し,この中で政策が議論され,時代に応じて,政権交代が起こる,そんな政治体制が日本に必要だと思うのである.

そこで,『来夏の参院選』を新しい政治体制作りのチャンスになれば良いと思う.例えば,参院選を前にして,こんどこそ,『維新』と『みんなの党』が合体し,参院の勢力が拡大すれば,衆参合わせて,改革勢力としての『新保守体制』が形成される事になるのである.

そうなれば,自民の『保守』と維新の『新保守』と,民主の『リベラル』の政治体制が一機に出現するのである.あるいは将来の『保守』と『新保守』の2大政党に進化する芽が出来るかもしれないのである.そう考えると,来夏の参院選は『関ヶ原の仕上げ』として,『大阪夏の陣』になる.勿論,維新が大きく勝利する『大阪夏の陣』である.

そんな次の政界を期待しながら,当面,自民党には強靭な内閣を作って,精力的に災害復興,経済復興,外交復興を進めて欲しいものである.

そして,原発問題,社会保障問題,増税問題,憲法問題など,大きな国内問題は参院選の結果を踏まえて,安定的な政治体制や政権の中で.政局より政策で審議して欲しいと思うのである.特に増税問題は,経済状況を見ながら,慎重に進めるべきだと思うのである.

そんなわけで,希望を持って,明るく,新年を迎えたいものである.

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