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2013.01.18

313 指導者による体罰問題への本質的提言

学校スポーツにおける体罰問題がマスコミ等で大々的に取り上げられ,論議を呼んでいるが,若干,混乱した議論があると感じるので,自分なりに問題点を整理してみた.

先ず,生徒への指導が必要になるケースは,おおよそ次の四つである.

①学級崩壊につながる様な乱暴な生徒への生活指導
②虐めをする生徒への生活指導
③学力向上に関する生徒への学習指導
④競技強化に関するへ生徒へのスポーツ指導

それぞれのケースでの指導方法は,おおよそ次の五つである.

(イ) 口頭注意・説教をする
(ロ) 保護者に報告,相談する
(ハ) ペナルティを課す(罰則,宿題,特訓,しごき)

(ニ) 殴る
,蹴る等の体罰を課す
ホ) 休学,退学,転校,或いは法律で対応する

この中でいくつか課題はある.

まず,(ニ)の体罰であるが,一般社会と同じ様に,その動機,程度,結果によっては犯罪になる行為であり,又,体罰による教育効果はないと言う説も多い.従って,いくら指導の大儀があったとしても,暴力による『愛のムチ』は許されないと言うのが現在の考え方である.

これに異論は無いと思うが,問題は学校のみならず,社会においても,いまだに,精神鍛錬と称して,あるいは,実力向上と称して,軍隊まがいの『スパルタ教育』が残っている事である.又,良い体罰,悪い体罰,等と言いながら,良いとする体罰を許容する風潮もある.

次に(ハ)のペナルティであるが,スポーツで言えば,グランド何周とか,腕立て伏せ何回とか,100本ノックとか,学習で言えば,個別指導や練習問題を課す事,だが,問題になるのは『猛特訓,しごき』である.実質,『リンチ』,『体罰』と変わらない場合があるからである.

以前,相撲部屋で,これで若者が命を落とした事件があった.『特訓』に名を借りた『しごき』,『リンチ』,『体罰』であったと記憶している.この問題も,程度の問題になるかもしれないが,結果責任を考えながら,指導者の良識,指導法が問われる問題である.

次に(イ)の口頭注意,説教であるが,時として人格を無視した叱責をする場合がある.もちろん指導者の指導方法になるのだが,これで,生徒の心に大きな傷を負わせる事もある.いわゆる『言葉の暴力』,『逃げ道のいない叱責』である.その意味では,説教も,事によっては,『見えない体罰』になるのである.

今までの意見を聞いていると,どうやら,体罰も,ペナルティも,言葉の暴力も,『程度の問題』だと言う人が多い.それでは,何も解決しないと思う.本質的には『指導方法の転換』が必要だと思うのである.

ゴルフの岡本プロ,サッカーなでしこジャパンの佐々木監督,野球の桑田プロが言っている事だが,各自が目標を持って,自主的に,本気で練習をし続ける事以外にうまくなる方法はない,強制的な過酷な練習をいくらしても意味がないと.

まさに,教育の原点とは『自主性を引き出す事』にあると言っているのである.この原点に立って指導すれば,体罰など無用なのである.

そこで,伝統的な,『型にはめて,押さえつけて,能力を上げる』指導方から,『自主性を引き出して能力を上げる』指導方に転換しなければならないと思うのである.

ところで,この型にはめる指導法は日本文化と関係していると思う.日本は古来より,滅私,服従,忍耐,忠誠,礼節を重んじる『精神文化』,『修行文化』,『縦社会文化』,で社会を形成してきた.この文化の中で,『体罰文化』が許容され,『問答無用』の指導が当たり前になって来たと思う.

いわゆる『農耕民族の村社会文化』が『個の尊重』,『個の人権』,『個の自主・自立』を『社会にとっては無用』,『仏教で言うと煩悩』として,排除して来たと思うのである.

封建時代や軍国主義時代の『人権意識のない時代』ならいざ知らず,現在においても,上記の様な文化が残っているとしたら『人権の後進国』と言われても反論できないのである.

率直に言えば,『閉鎖的な分野』,『厳しい訓練が伴う分野』,『伝統を重んじる分野』に残っている感じがするのである.その顕著な例がスポーツ分野だと思うのである.

従って,『指導方法を転換』するには,まず『人権に対する意識改革』が必要になる.これなくして,『個の自主・自立』を引き出す指導は出来ないのである.

学校は言うまでもなく,『教育理論の研究と実践の場』である.事もあろうに,その学校で『生徒の人権を軽視』するような指導が行われている事は言語道断である.学校は,文明文化の変化とともに,率先して教育理論を進化させて行かねばならない所である.学校は悪しき文化の継承機関ではないのである.

さらに,もう一つ,対応すべき大きな課題がある.

学校に不祥事が起これば,事実の調査に基づいて,関係者の人事的処分,法的処分,被害者への賠償,クラブ活動停止,廃部,さらに,全教師の異動や入学停止,休校,廃校,等が必要になるし,再発防止も必要になるのである.それほど,教育委員会や学校には,緊張感が必要なのである.

そこで,大きな問題は,教育機関が政治や司法から隔離され,治外法権的に運営されている事から,不祥事を隠ぺいしたり,責任逃れの保身に走ったり,あるいは,子供のいじめ問題のように,見て見ぬふりをする傾向があると言う事である.またしても,『事もあろうに,教育機関が』である.

とりわけスポーツ分野は,学生競技連盟,社会人競技連盟,プロ競技連盟等が組織化され,そこに,指導者,スポーツに進路を決た生徒や父兄,が集まって,大きな閉鎖社会,利権社会が形成されている.従って,不祥事等で秩序が乱れたり,利権が奪われる事を嫌う,まさに,隠蔽体質に陥り易いのである.

この様に考えてくると,『人権意識』や『指導方法』の問題だけではなく,『教育機関の閉鎖性』の問題も議論すべきだと思う.

たまたま,民間のゴルフクラブでの子供の育成をテレビで観た.それによると,小学生から,マナー,スピーチ,英語,を身に付けさせながら,自主的な目標設定と練習,記録,海外での試合,それを通した,コーチによる科学的な問題解決の支援をしていると言うのである.

勿論,プロゴルファーにならなくても,社会人としての人間形成に役立てようとしているのである.この様な民間のクラブが多くあると思うし,これを含めて,『学校や学校スポーツの在り方』の問題も議論が必要なのである.

この様に,広範囲に及ぶ,教育問題は,文化にも関わる,正解も一つではない,大きな問題だけに,『帰納法的発想』での継続的改善が必要だと思うのである.

『演繹法的発想』で,理想的な,あるべき姿を追っても,描ききれないし,描けたとしても,現実と遊離した,『絵に描いた餅』になりかねないからである.

今回の体罰問題でも,学校,塾,クラブ,家庭,のそれぞれの現場で,『帰納法的』に考えて,改善して行く事が大事だと思う.それに取り組んでいるのが,橋下大阪市長だと思う.

教師の体罰による生徒の自殺事件に対し,橋下大阪市長は事の重大性を強く認識し,行政の長としてその責任を深く詫び,同時に,教育委員会や学校に休部,入学試験停止,大幅な人事異動,を要請しているのである.

『帰納法的』な,この突っ込みがなかったら,過去と同じように体罰問題や虐め問題が,闇に消えて行ったと思うのである.

又,『演繹的発想』で『そもそも論』を持ち出して,橋下市長の臨場感と責任感に基づく主張を批判するだけの,『マスコミ,有識者,官僚,政治家』がいるが,その人たちの言動は,問題を先送りするだけで,何の役にもたたないのである.

今後,橋下市長の問題提起を引き金に,多くの体罰事案が明るみに出て来ると思う.これを契機に,『人権意識の問題』,『指導方法の問題』,『教育機関の閉鎖性の問題』,『教育委員会,学校,教師,の在り方の問題』等の議論を進めて欲しいと思うのである.

又,橋下市長は,かねてから,教育委員会,学校に,成績公表問題,勤務評価問題,国歌・国旗問題,や,隠蔽・無責任体質問題,政教分離問題,等を厳しく指摘してきた.これらの問題も含めて,『教育行政の改革』も加速して欲しいと思うのである.

以上,事もあろうに,指導育成を本業とする教育現場で,こんな事が起こるとは,情けない限りだが,教育界は社会と『哲学と価値観』を共有し,徹底した意識改革をして欲しいと思うのである.

そして,教育機関が率先して,『人権の後進国』のレッテルを,一枚一枚剥がすべく,取り組んで欲しいのである.

ところで,2007年10月発覚した相撲部屋のリンチ・殺人事件に対し,当ブログNo117相撲リンチ事件の本質的問題で,日本文化に潜む深刻な問題に触れた.
あれから5年,


・相撲業界に,どんな進化があったのだろうか,
・スポーツ業界に,どんな進化があったのだろうか,
・学校教育は何か変わったのだろうか,

・相撲,スポーツ,学校,も所管する文部省は何をして来たのだろうか.

今度こそ,『人権意識の徹底』,『自主・自立を育てる指導方への転換』,『教育機関の閉鎖性見直し』などに,取り組んで欲しいと思う.

いつの日か,又,うやむやのまま,何も変わらない,日本社会を見る事になるのだろうか.不安が頭をよぎる.

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