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2013.02.05

315 アベノミックスを支えるリフレ派経済学者の主張

阿倍政権は,デフレ脱却,経済再生を目指して,金融政策(量的緩和),財政政策(積極財政出動),成長戦略(民間投資誘導)と言う『3本の矢(アベノミックス)』を掲げた.このアベノミックスの実施に当たって,日銀は従来の政策を転換し,インフレ目標2%とした量的緩和を政府と共有する事となったのである.

アベノミックスに加えて,日銀の政策転換表明によって,その期待効果がさらに高まり,昨日現在で,1ドル93円,日経株価11260円となり,早くも,リーマンショック前の状態に戻したのである.

さて,このアベノミックスに批判もあるが,それに対する反論も含めて,アベノミックスを支える経済学者(浜田宏一氏,岩田規久男氏,竹中平蔵氏,高橋洋一氏,他,著名経済学者)の主張を私の知る範囲で,娯認識もあるかもしれないが,まとめてみた.

尚,上記経済学者の方々はリフレーション(金融緩和)の論者である.デフレで停滞した経済を正常に戻す為には,適切なインフレ率の設定の下で,通貨量の拡大が必要だと主張しているのである.

日銀は従来より量的緩和に批判的であり,小泉政権やリーマンショック後の麻生政権の量的緩和要請にも,答えないまま,今日に到っている.しかし,デフレによる経済の深刻さと,今回のアベノミックスで日銀は政策転換をする事になったのである.そして,量的緩和の具体的な方法,額,時期,は,4月からの日銀新体制に委ねられる事になったのである.

このリフレ派経済学者は,金融緩和派だけではなく,改革派でもある.いわゆる,

『量的緩和,規制緩和,公共投資,民間投資,なくしてデフレ脱却,経済成長なし』,
『成長なくして,雇用創出,財政再建,社会福祉なし』,その為に,
『金融と財政の一体改革』,
が必要だと主張しているのである.

次に,アベノミックスを支援する上記経済学者の考えを下記にダイジェストしてみたい.

『量的緩和が必要な理由と日銀の独立性の問題』

高橋氏の試算によれば,インフレ目標を2%とすると,量的緩和が60兆から80兆が必要となる.これを日銀が決断すれば,1ドル110円から120円,株価14000円から16000円が実現すると言う.

この量的緩和の期待感から,冒頭の円安,株高が始まっている事を見ても,量的緩和がデフレ脱却の処方箋になる事は間違いなさそうである.

そもそも,デフレとは通貨の価値が上がり,物価水準が下がる事で,投資も消費も控えられ,ますます物価は下がり,経済が縮小傾向に働く現象である.

又,ドルの量的緩和で円高が起っているが,円高は安く輸入出来るが,国内産業が駆逐され,輸出産業の競争力が低下し,産業が空洞化し,国内経済が縮小していく.結果,企業や個人の収入が減り,失業も増え,一般物価水準も下降して行くのである.

この経済の縮小傾向を止める為には,貨幣価値を落とす事が必要となる.これによって物の価値が上昇傾向に向かうと,投資や消費に資金が動き,為替レートも円高から円安に向い,輸出競争力が増し,国内産業が活性化するのである.これが,量的緩和が必要になる理由である.勿論,過度なインフレを防ぐために,インフレターゲットによる緩和が必要になる事は言うまでもない.

この量的緩和に反対の論者もいる.デフレの原因は中国からの安い商品の輸入,あるいは技術革新や効率向上で価格が低下する事にある,と言うのである.従って,量的緩和をしても物価は上がらないばかりか,日銀の独立性や通貨の信用を失うと言うのである.又,安易に量的緩和を続ければ,一気にハイパ-インフレ(通貨暴落,急速な物価上昇と言うが定義は曖昧)に向かう危険性があると言うのである.

これに対し,リフレ論者は,個々の商品の相対価格が下がる事が問題ではなく,これによって,需要が増えない事,一般物価水準が下落する事を問題にしているのである.理論的には相対価格が下れば,そのインセンテブで,他の需要が増え,一般物価水準が上がり,貨幣価値が下がるはずだと言うのである.

消費者マインドも含めて,一般物価水準が下がると言うことは,前述の通り,通貨の価値が上昇する事であり,ますます,投資や消費が抑制される.それを止めるには,通貨価値を下げる量的緩和が必要だと言うのである.

又,中国からの輸入が多い国でデフレが起こっていない事から見ても,中国からの輸入説は間違いだとしているのである.

次に,量的緩和を政府の圧力で実施する事は日銀の独立性からして問題だ,との批判に対し,リフレ派は,まず,独立性を縦に,デフレを許容するかのように,デフレを放置してきた事を問題視しているのである.やる事もやらずに,独立性を確保しようとする事は間違いだと,しているのである.

その上で,リフレ派は,独立性に潜む無作為・無責任性を排除する為に,通貨量と相関するインフレ率や失業率の目標を政府と共有する事,目標を達成する為に,日銀は専門的知見で,オペレーションをする事,を主張いしているのである.これは,国際的な常識であり,この際,日銀法を改定して,日銀の役割,責任を明確にすべきだと主張する論者もいるのである.

『国債金利の上昇,財政破綻の懸念に対する高橋氏の主張』

政府の借金が1000兆と巨額だが,資産も世界最大の650兆(内,換金可能資産は320兆)持っている.従って差額の350兆が純借金である.従って,借金のGDP比はそれほど高くない.それでも,650兆の資産より大きい1000兆の借金があるのだから債務超過に見えるが,政府には徴税権,造幣権と言う打ち出の小槌を持っており,ここが民間のバランスシートとは違うとしているのである.

この実態から,国債がデフォルト(国が利払いや償還資金が用意出来なくなる事,財政破綻)になる気配はない.1995年武村大蔵大臣は450兆円の借金残高で財政危機宣言をしたが,それ以来15年,借金を重ねても,金利も上がらず,財政破綻の気配さえないのである.

日本国債の信用はCDS(クレジット・デフォルト・スワップ,債務不履行のリスクをカバーする金融派生商品)を見ればわかる.これによると日本国債は1.4%程度で低水準である.言いかえると,日本国債のデフォルトは70年(100÷1.4≒70)に一度あるかどうかの確率と見られている事になる.この値はフランス(2.2%)より低く,ドイツ(1%)と似たり寄ったりである.ちなみにギリシャは90%である.

もし,数年で破綻すると考える人は,日本国債のCDSを買えば良い.例えば3年で4.2%(1.4×3年)払うだけで,破綻によって債権100%がもらえる事になる.こんなに儲かるのに,破綻論者に,このCDSを買う人はいない.

又,日本国債が暴落すると言う論調もある.ただし暴落とはどの程度の数値を言うのか不明である.言える事は,現在は超低金利であるから,経済が活性化すれば長期金利は上がる.長期金利が上がると,既発行の低金利債券は新債券に買い替えるる為に売られ,当然,価格が下がる.今後,国債価格が10%位下がることはあり得る.

又,借金の95%を国内で,しかも円建てで持っている事が危機にならない大きな理由である.場合によっては,急速なインフレを注意しながら,『金融緩和で借金を返済する事も,国債を買う事も』,可能なのである.

もう一つ言える事は日本全体としては『日本政府の借金=日本国民の債権』であって,外国の為替変動と連動して,価値が変動しない事である.この点が外貨建ての借金がある国とは決定的に違うのである.

この認識の上で,金融緩和,再生に繋げる財政政策や成長政策で,GDPが増え,雇用も税収も増え,財政再建も不可能ではないと,考えているのである.

従って,財政健全化のための緊縮財政は良い結果をもたらさないとしているのである.それより,『小さな政府』(資産売却,官から民,行政改革,規制緩和,社会保障費の合理化と抑制,等)への取り組みによって,政府予算規模を縮小して行く方が大事だとしているのである.

『景気対策は川上からか川下からか』

良くある議論に,景気回復の為の政府予算は,『川上から流すべきだ』いや『川下に流すべきだ』との主張がある.

前者は産業・企業に公共需要を起こし,又,重点分野へ民間投資を誘発させて,経済を上昇させようとする考え方である..
後者は人や家庭,あるいは弱者救済に,何らかの手当てを出す事で,消費需要を増やし,景気を回復させようとする説である.

経済の波及効果,そのスピード,未来産業の形成,を考えれば,多くの経済学者は当然,前者の説になる.後者は,恒常的な支出が伴い,経済への波及効果も乏しく,将来に向けた産業育成も難しくなる,と考えているのである.

又,賃金アップを景気回復の後でやるのか,先にやるのか,との議論もある.賃金は企業レベルの問題であるが,もし,景気対策として,企業の内部留保を賃上げに使うのか,設備投資に使うのか,となれば,設備投資に回ると考えるのが通常である.賃金に回れば,競争力が低下するからである.したがって,賃上げは景気回復なくしてあり得ない事になる.又,政治的には,景気回復による賃上げより,失業率の低下に視点を置く事になる.

『日銀が国債を買う事の是非論』

日銀が造幣資金で国債を買い上げるべきだと言う論者がいる.借金返済を棚上げに出来るからである.日銀に溜まった債権は適正なインフレ率が長期間経緯すれば,自然と目減りして行く事になる.ただ,紙幣を刷って国家予算を賄う事を続けると,日銀券発行残高が上昇し,ハイパーインフレになる危険性がある.従って,日銀による国債購入に限界を設ける事になる.との説である.

円発行のモラルが破壊され,禁じ手だと言う識者もいる.ただ現実に日銀が国債を買っている事実もある.はたして,どう考えて行くべきか,今のところ,金融政策では議論されていない.

『日本の経済再生に向けた高橋氏の主張』

日本の財政は破たん寸前ではないとしつつ,中期的には財政再建論者である高橋氏は昨年の消費税増税国会の参考人陳述で,増税以前にやるべき事を具体的に述べている.その骨子は次の通りである.

第1に,『経済対策』として,
①デフレ,欧州危機の中で増税は不適

②現在,財政再建の必要性なし,緊縮財政も不適
③金融政策(量的緩和)でデフレ解消が先
④量的緩和条件で投資効果重視の積極的公共投資(成長政策)
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第2に,『税理論』として

⑤不公平の是正が先(徴収漏れ防止)
⑥歳入庁の創設が先
⑦消費税(応益税)の社会保障目的税化は誤り(社会保障は応能税で)
⑧交付税を廃止し消費税を地方税に(中央の行革と地方の裁量拡大).

第3に,『行政改革・民力活用』として
⑨行政改革,規制改革,で行政コスト削減,省益削減
⑩公共資産売却,埋蔵金の適正化.

論客の高橋氏らしく明確で論理的に政策を掲げたのである.多くは,日本維新の会,みんなの党の政策に採用されているのだが,アベノミックスにも,この考えが一部,取り入れられているのだが,もっと取り入れるべきだと思う.

これらの改革政策が前面に出ないと,アベノミックスは『金融緩和』と『公共事業のばら撒き』に成りかねないのである.

以上,アベノミックスによる経済再生について,その論理的根拠を著名経済学者の主張をもとに,まとめたが,さて,今後,日本の経済がどう推移して行くのか,政策の結果がどうなったのか,注力していきたいと思う.

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