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2013.03.14

318 東日本大震災から2年,復旧に立ちふさがる問題

2011年3月11日,日本で最も恐れられていた巨大地震・巨大津波,原発破壊が東日本で発生した.2万人に及ぶ命が奪われ,街や住宅,農業,漁業,産業が破壊され,陸は荒れ野と化し,ガレキは街や田畑や海を覆った.原発周辺地域は死の街と化し,放射能汚染は広域に広がったのである.

あれから2年,報道で見る限り,街や田畑のガレキの山は少なくなり,広大な更地が広がっているが,人々の暮らしは,依然として,『避難・仮設状態』のままである.『復旧・復興』の足音は,未だに聞こえて来ないのである.

その原因は,報道でも取り上げられているが,どうやら,難しい問題が立ちふさがっている様である.2年前にも想像できた問題ばかりだが,改めてその問題を列記してみた.

1.震災,津波被害からの復旧に立ちふさがる問題

最大の問題は全滅した街の復旧計画が未だに決まらない事である.土地利用に関する法制度の問題,特例処置の問題,許認可・予算の縦割り行政の問題,被災地域の減災・避難計画の問題(高台移転,防潮堤,土地の底上げ,避難場所,等),農地・港の復旧計画の問題,街の区割りの問題,地権者との同意の問題,行政の要員不足の問題,住民の合意形成の問題,高齢化の問題,人口や産業の流出の問題,等々が相互に絡み合って,なかなか復旧計画が作れていないのである.

さらに言えば,復旧計画が決まったとしても,それを実現する,防災・減災建設,社会インフラ建設,住宅建設(集合住宅,戸建住宅),事業所・工場建設,等がすぐ出来るわけではない.当然,それが出来るるまでの仕事や住民の生活の問題が立ちはだかる.会社や個人で言えば,2重ローンや資金の問題もある.下手をすると,街を作れど,仕事も人もいない街になりかねないのである.

2.放射能汚染からの復旧に立ちふさがる問題

放射能汚染による帰還困難地域,居住制限地域,避難解除準備地域のそれぞれの今後の生活や仕事の見通しが付いていない.これからの生活,仕事,田畑,除染,汚染物資,風評,医療,介護,健康,損害賠償など深刻な問題が山積みである.

帰還困難地域は集団移転にしろ,個人の移転にしろ,移転先での新生活になる.農業,水産業含めて,移転先での生活設計が出来ているようには思えないのである.

住居制限地域は,いつまで続くのか,帰還して,生活や仕事が出来るのか,不透明である.めどが立たないのであれば,実質,帰還困難地域と同じ問題になる.又帰還が可能になっても地震や津波で破壊されていれば,上記1.の問題が立ちふさがるのである.

避難解除準備地域は希望を持たせる言葉だが,ここも,帰還して,生活や仕事ができるのか,不透明である.めどが立たないのであれば,実質,帰還困難地域と同じ問題に成りかねないのである.又,帰還できたとしても,この地が地震,津波の被災地であれば,ここも,上記1.の問題を抱えるのである.

3.福島原発に立ちふさがる問題

原子炉,使用積み核燃料及び発電所全体の被害状況の実態調査の問題,放射能飛散流出の防止問題,廃炉までの福島原発の防災対策の問題,
冷却用汚染水,高濃度汚染物資の処分の問題,核燃料(炉心分,メルトダウン分,使用積み分)の取り出し方法の問題,廃炉計画策定と実施の問題,等,何十年とかかりそうな問題が,全く不透明なのである.

4.全国に立ちふさがる問題

・電力問題で言えば,原発の再稼働に必要な新安全基準の問題,設置自治体の合意形成の問題,電力不足対策の問題,など,未だ不透明なのである.

・財政問題で言えば東北地区の復旧・復興対策,全国の減災強化,デフレ脱却,等を大義にして消化できない程の巨額の財政出動が行われる.その陰で,利権や無駄が横行する可能性がある.もちろん地方も国も財政破綻に向かって行く事になる.いよいよ日銀が国債を買って,国の債務を塩漬けにする事に向かう。

・法制度で言えば,憲法を含めて,平時の法制度では甚大な災害の発生時,避難時,復旧時,に役立たないどころか,足かせになる事が多い.個々に特例を考えて対応するのも,時間がかかる.有事と言うと,安全保障問題で取り上げられる事が多いが,自然災害,放射能災害,でも考える必要がある.

・放射能の海洋汚染の影響がどの程度あるのか不明である.回遊する魚類の検査をやるなら,世界中の陸揚げ港でやる必要がある.もし汚染が発見されれば,風評被害を含めて,損害賠償の問題も出てくる.考え過ぎだろうか.

・150万トンと言われるガレキが太平洋に漂流し,一部,アメリカ海岸に到達しているが,問題は,太平洋に滞留したプラスチック製品が劣化し,粉状になって,魚類,鳥類に害を与えている事である.さらに,問題は,食物連鎖で,広く生態系に害を及ぼす可能性がある事である.粉状になる前に,プラスチック製品をどう回収するか,きわめて難しい問題がある.帯状に浮遊する漂流物を燃やす方法などないのだろうか.

以上の様に,予想された難問が,きっちり具現化しているのである.

5.私なりの提言

『地震,津波の被災地』の復旧問題について,いくつか提言したい.

復旧の仕方は多分,次の4っに集約されると思う.勿論,同一地域で,この組み合わせもあると思う.このように柔軟な発想で復旧計画を住民と共に作るべきだと思うのである.

①もとの場所で復旧を図る.減災,避難対策も進める.
②被災地で区画整理をし,新しい街づくりを図る.減災,避難対策も進める.
③近隣の安全な場所(高台等)を確保し,集団移転する.
④個人の判断で,危険地帯から離れる.

①②は巨大災害リスクを覚悟して,現状復帰を目指す考え方である.もし,①②が行政で認可されない時は③になる.

しかし,③は,将来を見据えた案としても,それが簡単に出来る保障も無い.長期間かかれば,その間の仕事や生活の問題もある.さらに言えば,出来上がった時,産業や住民がいなくなっている可能性もある.

③はまさに,絵に描いた餅になりかねないのである.復興構想会議の答申をブログで批難した通りの問題が発生するのである.

そこで,現実的には,①②を進めるべきだと思う.勿論,減災,避難対策も進める.この選択は住民の希望に近いと思う.

しかし,最近分かったことだが,この考えに余計な問題が付きまとっている.この①②をやる為には東日本太平洋側に万里の長城のような防潮堤を作ることが条件だと言うのである.何百キロ,何兆円,かかるか知らないが,それを受け入れないと,元の土地での復旧は許可されないと言うのである.

しかも,防潮堤は今回,役に立たなかった釜石の世界一の防潮堤ほど大きいものではなく,少し小さめだと言う.それなら条件にするのもおかしいし,その程度なら,いらないと言う意見も当然ある.

釜石の避難が遅れ,多くの犠牲者が出たのは,世界一の防潮堤があったからだとも言われている.その教訓も忘れてはならないのである.

事前に防潮堤計画の説明が住民になされていなかった事も含めて,『防潮堤工事ありき』の政策に見えて来るのである.今後,大いにもめそうである.これで又,復旧計画が遅れそうである.

是非,これらの難問を乗り越えるべく,まず,復興庁をトップとする縦割り行政の廃止,現地主導の復旧計画の立案と復興庁による支援強化を行うべきだと思う.

次に,日本全体の災害への対応だが,それぞれの地域や住民や仕事の事情に応じて,次の選択肢を組み合わせて,『減災,避難対策』を進めるべきだと思う.

①現状に減災,避難対策を加える.
②近隣に安全な場所を確保し,徐々に集団移転をする.
③個人の判断で,危険地帯から離れる.

次に,自然災害,放射能災害に対する有事法制の問題である.今回の巨大災害の対応における問題を踏まえて,万が一の甚大な災害が発生する前に,有事法制と救済,避難,仮設,復旧,復興のオペレーションをあらかじめ用意すべきだ思う.

災害が発生する都度,関東大震災はどうした,阪神淡路大震災はどうした,新潟大震災はどうした,と過去の例を引っ張り出したり,行政の動きが悪い,平時の法制度では対応できない,避災状況が分からない,緊急物資が届けられない,医療,介護の手当てができない,仮設住宅の用意が遅い,復旧計画が立てられない,等と言っている様では,災害多発国としては,余りにもプアだと思うのである.

防災ハードは限界があるが,このソフト対策には限界がない.有事のノーハウを有事法制やオペレーションに反映しながら,改善して行けるのである.

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