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2013.03.27

320 ネット選挙解禁論議

60年前に制定された公職選挙法では選挙活動の公平性を保つ為,選挙期間中は,法定選挙ポスター・法定ビラ・法定ハガキ・新聞広告,以外の文書図画は使えないのである.従って,日頃の政治活動で使っていたインターネットによる情報発信は選挙期間中は出来ない(更新できない)のである.

そこで,遅ればせながら,普及したインターネット(HP,SNS,ツイッター,YOU TUBE,等)を選挙活動で利用可能にしようと言う動きが,ここにきて,やっと現実味を帯びてきたのである.

言うまでもなく,利用可能になれば,候補者や政党の主張や候補補者の様子(街頭演説・選挙カーでの遊説など)が,いつでも・どこでも見る事が出来るようになる.又,直接,立候補者や政党がSNSやツイッターを使って,住民とコミュニケーションする事が可能になる.

さらに,日常の政治活動で使っているインターネットを,そのまま選挙期間中にも使う事が可能になる.と言う事は,ネットの上では,政治活動と選挙活動の曖昧な線引きも,選挙期間中と言う意味不明の期間設定も,なくなる事を意味しているのである.

おおよそネット選挙解禁は以上のような内容であるが,今年の参院選から実施される予定である.そこで,いくつかの検討事項と今後の政治への影響について考えてみた.

①公選法は公平性を守る為に,政党及び立候補者を縛る法律である.ネット解禁によって,情報開示や住民とのコミュニケーションに少し縛りが緩くなる.その分,言論の自由が広がるわけだが,問題は一般住民や団体のネットを使った政治活動や選挙活動である.

こちらは公選法の守備範囲ではないし,今でも,言論の自由のもとで,情報や意見が飛び交っているのである.敢えて問題を挙げれば,一般住民や団体による,誹謗中傷や落選運動,或いは推測情報や我田引水の情報,人気度ランキング情報,等の流布で起こる選挙の不公平性の問題である.しかも,ネット選挙解禁で,拡大する可能性である.

これをを縛る方法は技術的にも,法的にもないのである.あるとしても,人格権侵害,選挙妨害に関する法律くらいである.結局は読み手の判断に委ねるにしても,選挙に与える影響は大きいと思う.公選法やマスコミ報道で公平性を守ろうとしても,ネットの力で不公平な選挙になりかねないのである.ネット利用のメリットと裏腹にあるデメリットである.

②前述の通り,ネット上では政治活動と選挙活動の区別や選挙期間と言う区別,はなくなるが,公選法上も,これらの区別をなくすのだろうか.現在,事前の選挙活動を禁止しているが,政治活動を装って,自前選挙活動をやるケースが多く,この禁止事項は空洞化している事を考えれば,ネットと同じように,政治活動と選挙活動は区別できないと思う.

そこで,ネット選挙解禁に伴う公選法改正においては,『現公選法にインターネットの利用を加える』のではなく,『現在の理にかなう公選法を作り直して,インターネットを利用する』,との考えに立って,改正すべきだと思うのである.

③なりすましや情報改ざん,或いはサイバー攻撃等への対応も問題になる.プロバイダーに発生時の処置や,犯人追及の協力をするにしてもプロバイダーやサーバーや情報が国内にある保障はない.或いはプロバイダーが特定政党,立候補者を優遇しない保証もない.いづれにしても,政党,立候補者は不正,犯罪によるネット上の不利益は覚悟しなければならないのである.

④選挙活動に関わらず,政治活動全般に,政治家の片腕として,専門の『ネットスタッフ』が必須になる.ネット利用技術,コンテンツの表現,情報の分析,情報の発信,などを担うことになる.政治家にとって新たに必要になる重要なスタッフである.

⑤最後にネット選挙解禁の影響をいくつか想像してみたい.

現在の選挙区制の下では,従来のどぶ板にネットが加わって,さらに競争が激化すると思う.一方,ネットは元来,場所を超越しているのだから,選挙区が広いほど,ネットの威力が高まる事になる.ネット上で頻繁にリモート討論会も出来る.当然,選挙費用削減目的の小選挙区制の意味が薄れる事になる.行く末は国会議員は地方選出の意味がなくなり,全て,広域もしくは全国区で選ぶようになるかも知れない.選挙区毎の一票の格差問題もなくなる.

さらに,ネットの利用拡大で,人物像が浮き彫りになり,多様で複雑な政策論争の中で,政党より人物に選択の比重が移る感じがする.政党を選んで,わけのわからない人物が政治家になる比例制はネットにそぐわなくなると思う.政党政治,比例代表選挙はネット時代にそぐわなくなる可能性がある.

デジタルデモクラシーの突破口がネット選挙解禁だが,さらに,ネット投票解禁,ネット国民投票開襟,ネット立法解禁,ネット行政解禁など,ネットによって,国民の政治参加が進み,直接政治に近づいて行く思うのである.政治家の比重は低くなるが,そんなデジタル・デモクラシーの時代が来るのかもしれない.

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