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2013.03.23

319 グローバル化・ボーダレス化と日本の対応

昔から日本人はグローバル化やボーダレス化と言うと,『輸出や海外進出する事』をイメージするが,海外の商品や企業や人が日本に入って来る事は余りイメージしない.イメージしたとしても,国内の市場,制度,文化が乱れるし,受け入れる準備も出来ていない,として,拒否反応を示すのである.島国ならではの感情かも知れない.

しかし,今回のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の構想に日本が賛同しているのだから,『フェアー・フリー・グローバル・ボーダレス』に反するような島国感情は受け入れられないのである.

そこで,改めて『自由競争を守るグローバルな自由貿易』について,世界で議論されている協定を簡単にまとめてみた.(ウイキペデアより)

①関税および貿易に関する一般協定(GATT)

自由貿易の促進を目的とした国際協定である.現在は世界貿易機構(WTO)の一部を構成している.GATTは次の三原則により自由貿易を目指しているのである.

イ.自由(GATT11条:貿易制限措置の関税化及び関税率の削減)
ロ.
無差別(GATT1条:最恵国優遇,内国優遇)
ハ.多角
(ラウンド,交渉)

②世界貿易機構(WTO)

GATTウルガイ・ラウンドにおける合意によって,1995年,GATTを発展解消させて成立.基本原則はGATTと同じだが,物品貿易だけでなく金融,情報通信,知的財産権,サービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場である.現在159ケ国が参加.

(実際の地域間の貿易のルール作りはWTOを通した多国間交渉の形から,WTOを補う地域間の新しい国際ルールとして,次のFTAやEPAに移っている.)

③由貿易協定(FTA)

物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とするGATT第24条及びGATS(サービス貿易に関する一般協定)第5条にて定義される協定.

④経済連携協定(EPA)

FTAの要素を含みつつ,締約国間で経済取引の円滑化,経済制度の調和,協力の促進等,市場制度や経済活動の一体化のための取組も含む対象分野の幅広い協定.

⑤地域貿易協定(RTA)

FTAと関税同盟の双方を含む概念.WTO協定上は,双方とも関税及びその他の通商規則の撤廃とサービス貿易の障壁の除去を内容とする.また関税同盟は参加国間の共通通商政策を前提として,対外的には共通関税を設定することがFTAと異なる.関税同盟の方がFTAより参加国内の統合度は高い.

現在,世界では3つの巨大な通商交渉が進んでいる.

・環太平洋経済連携協定(TPP)・・・・・・・米国他,日本交渉参加表明
・米欧自由貿易協定(FTA),・・・・・・・・・・・米国・EC
・東アジア地域包括的経済連携(RCEP)・・・中国・韓国,他

アジアにはアジア太平洋経済協力会議(APEC)を発展させ,2020年に,アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を作る構想がある.

中国は米国不在のRCEPを土台に,米国,日本はTPPを土台にFTAAPを目指す.FTAAPが形成されると,世界のGDPの半分を占める巨大経済圏になる.是によって,日本のGDPが7兆円増えると言う試算もある.

この様に世界の通商交渉は,刻刻と変化しているが,日本が交渉参加を表明したTPPの概要について次に触れておきたい.

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)

環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定(EPA)である.2006年5月28日にシンガポール,ブルネイ,ニュージーランドの4か国で発効した.

2015年までに全ての貿易の関税を削減しゼロにすることが約束されており,産品の貿易,原産地規則,貿易救済措置,衛生植物検疫措置,貿易の技術的障害,サービ貿易,知的財産,政府調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入など),競争政策を含む,自由貿易協定のすべての主要な項目をカバーする包括的な協定となっている.

2010年3月から拡大交渉会合が始まり,アメリカ,オーストラリア,ベトナム,ペルーが交渉に参加し,10月にマレーシアが加わった.大西洋条約機構(NATO)の太平洋版で『中国封じ込み』の感もある.

2010年11月に開かれたAPECで,TPPは,ASEAN+3(日中韓),ASEAN+6(日中韓印豪NZ)とならび,FTAPP(アジア太平洋自由貿易圏)の構築に向けて発展させるべき枠組みと位置づけられた.

現在,ASEAN+3,ASEAN+6は政府間協議の段階にとどまっているのに対し.TPPは交渉が開始されているのである.

2011年11月12日にTPP拡大交渉は大枠合意に至り,輪郭が発表された.その中で,次の事が挙げられている.

・包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
・地域全域にまたがる協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
・分野横断的な貿易課題を取り込み,APEC等での作業を発展させる
・既
協定及び,その後の課題に対応する為,協定を適切に更新する

尚,拡大交渉中のTPPは日本を加えた10か国のGDPを比較すると域内GDPの91%を日本とアメリカの2か国が占める為,実質は『日米のFTA』だとする見方もあるが,あくまでも,原加盟国4か国間で発効している環太平洋戦略的経済連携協定の位置づけは変わっていないのである.

さて,TPPによる『自由貿易圏の形成』に日本はどう臨むのだだろうか.TPPの理念や輪郭が決まっているだけに,後参加の日本の要求がどこまで受け入れられるのか,大変注目されるところなのである.

筋論で言えば,TPP構想に賛同しているのだから,『経済圏全体から,ボーダーを取り除く交渉』になり,極めて建設的な交渉になるはずである.

しかし,実際は,『他国にはボーダーレスを要求し,自国にはボーダーを設ける』交渉,『総論賛成だが各論は反対』の交渉になり,『筋の通らない交渉』になりそうである.

もし本当に,そんな交渉をするなら,『理不尽な日本』,『プリンシプルが見えない日本』と言う烙印を押され,『日本の信頼感も失われ』,挙げくに,『TPPへの加盟も出来なくなる』,のではないかと大変危惧するのである.

そんなわけで,『国益と言う我利我利』の主張する交渉ではなく,国が違う事によるボーダーを相互に認めつつ,各国がTPP構想の実現に向けて『ボーダーレス可能分野』の拡大を協議する場にして欲しいのである.

そして,決められた『各国共通のボーダレス可能分野』の実施に際しては,経過措置も含めて,各国の事情が加味される事も許容すべきだと思うのである.無限にあるボーダーを上げ連ねて交渉しても,TPP構想に反対の論理にしかならないのである.

この姿勢にもとづいて,『関税障壁』の問題と『非関税障壁』の問題を分けて議論しておきたい.

先ず関税障壁の問題だが,1988年の関税貿易一般協定・多角的貿易交渉(ガット・ウルガイ・ラウンド)の事に触れておきたい.

この交渉では,米に778%の輸入関税をかける事は許容されたが,毎年,一定量のコメを無税で輸入(ミニマム・アクセス)する事を義務付けられたのである

その結果,初年度40万トン,2008年度77万トン,が輸入されたが国内で売れず,赤字を税金で穴埋めする事になったのである.2011年度は362億の穴埋めだったと言う.

一方,農業対策費は8年間で6兆円を投入したが,土地改良等の農業整備事業のみならず,温泉施設などにも使われ,結局,民主党政権時の戸別保障制度も含めて,競争力強化に繋がらないまま,予算が投入され,今日に至っているのである.

そして今度のTPP交渉である.又,農業団体や族議員はこれに大反対である.落としどころはTPP加盟は認める代わりに,巨額の支援金を確保する事のように感じる.そんな事を繰り返せば,瀕死の農業に安楽死のお金を出すような物である.

本当にグローバル化に対応した農業の産業化を考えるなら,『こんな事をやって行くのでTPP加盟は賛成』と言うべきである.そんな建設的な発想なくして,農業はTPP以前に消滅するのである.

次に『非関税障壁』の問題であるが,

国内制度,例えば,資格,免許,国の許認可,手続き,規格,安全基準,環境基準,労働基準,特許・著作権などの知的財産権,プライバシー,性能,品質,税制上の優遇措置,等,相手から見ると合理性が乏しければ,参入障壁に見えのである.

そもそも,この『非関税障壁』は『海外参入の障壁』の為ではなく,『国内制度』として作られている.そして常に『規制緩和』を主張する『改革派』と,規制を守ろうとする『守旧派』が対立している問題でもある.TPPにおける非関税障壁撤廃問題も,是と同じ対立構造になる.そしてTPP加盟と言う外圧で,この攻防が一層激しくなるのである.

関税障壁は特例を除いて,既に低くなっている事から,TPPの主戦場は,この『非関税障壁の撤廃』,『制度の共通化』になると予想されるのである.

日本としては,安全,効率,フェアーを軸に国内の制度を見直し,自らを変える中で,『多国間の制度の共通化』をリードすべきである.ここでも日本の事情,国益を声高に言えば,総論反対の理屈にしかならないのである.

政府は100人のTPP体制を組むと言う.『グローバル化の理念と展望』をもって,世界平和のインフラとして,その実現に積極的に取り組んで欲しいのである.

最後に,島国日本の文化の特徴の中に,『内と外を分ける文化』があるが,このボーダーを,いかに低く出来るか,言い換えると,ドメステックな企業が国内も海外も一つの市場に見えるかどうかである.結局,日本のグローバル化,ボーダレス化は日本国民のグローバル化,ボーダーレス化の意識にかかっていると思うのである.まずプロ野球の閉鎖性から変えたらどうだろうか.

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