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2013.08.20

330 社会保障・税一体改革法案の破棄を

民主党政権下で自民,公明が合意して成立した『社会保障・税一体改革法案』の来年4月からの実施について,やるのか,やらないのか,の安倍総理の判断に注目が集まっている.

勿論,判断のポイントは増税による,経済や税収への悪影響である.増税によって,経済が腰折れすれば,全体の税収も落ち込む事になる.勿論,デフレ脱却,経済復興と言うアベノミックが失敗する事になる.これを防ぐ為には実施派は更なる財政出動をすると言う.慎重派は
そんな事をやるより,増税しない方がアンベノミックス効果で税収が増えると言うのである.

リフレ派の学者の多くは,増税は早すぎるとの意見である.アベノミックスの効果が出るには2年くらいかかると見ているからである.さて,安倍総理はどんな判断をするのだろうか.まさに,総理の判断に注目が集まっているのである.

そんな中ではあるが,私は,いったん,『社会保障・税一体改革法案の破棄』を主張したい.経済の腰折れも心配だが,そもそも,この法案には下記のような基本的な問題があるからである.

①目的である『社会保障改革』(年金,介護,医療,子供)が曖昧である,
②従って,『何の為の
増税か』が曖昧になっている,
③今後の『税制の考え方』(直間比率の考え方)も曖昧である,
④今後の社会保障改革,財政計画,増税計画,等の見通しが見えない,


こうなったのは,増税の大儀である民主党政権の『社会保障改革案』が頓挫しているにもかかわらず,そのことを棚上げにして,自民・公明が賛成し成立させたからである.その結果,『目的が宙に浮いた増税法案』になったのである.

今でも,社会保障改革は長期的問題だと,言いわけする政治家がいるが,それなら,法案の『目的と表紙と中身』を変えるべきなのである.にもかかわらず,目的が宙に浮いたまま,国民を欺いて,増税しようとしているのである.この風潮に『何かおかしい』と強く感じるは私だけだろうか. 

こんないい加減な法案で全国民に大きな負担を強いる事に政治家は躊躇しないのだろうか.国民になぜ,誠実に,率直に,目的や将来の展望を,示そうとしないのだろうか.示せないなら,せめて,『財政が苦しいから,増税させてくれ』と素直に言わないのだろうか.

この『破棄すべし』として上げた4つの理由は法案提出から成立に至る経緯に由来しており,その経緯を振り返っておきたい.(当ブログ2012年5月発信NO281『一体改革審議を止め総選挙を』等で発信している事だが)

【まず民主党政権は】

与謝野氏が民主党政権に入閣して,増税を考えた時は,『赤字国債をこれ以上,発行しなくて済むように,とりあえず,消費税率を上げよう』と言うのが与謝野氏はじめ財務省の財政再建派の本音だったと思う.

しかし,民主党は民主党独特の『根拠の無い思い』(最低年金保障などのバラマキ政策)を前面に出して,『社会保障改革の為の増税』と,耳触りがよい言葉で,オーバーコミットしてしまったのである.結局,根拠もない,出来もしない主張だった為に,民主党の社会保障改革案は頓挫し,結局,『表紙で偽装した増税法案』になってしまったのである.

当初から,当ブログでも指摘して来た事だが,率直に財政健全化の第一歩として,『歳出削減と増税で赤字国債発行額を増やさない為』と言うべきだったと思うのである.その上で,国民の信を問うべきだったのである.そうしなかった事が増税法案の嘘や民主党の崩壊につながったのである.

【一方,財務省は】

『財政健全化の為の増税』と言い,これを実現しないと,『国債金利が上昇する』と言っているのである.しかし,建前上,『社会保障費増大の為』としているので必ずしも『財政健全化の為』ではないわけで,これでは金利が上がる事になる.財務省と政治家は増税の目的が違うのだろうか.

又,財務省の言い分が正しいとすると,財政健全化が進んでいないこれまでの間で,とっくに金利が上がり,財政危機が起こっているはずである.現実はそんな事になっていないのである.私見だが,国債が国内で買われているうちは,金利は上昇しないし,財政危機にはならないと思うのである.

さらに言えば,財政健全化は増税だけで実現するわけがなく,経済成長や歳出抑制が必要なのである.これを言わない財務省の主張に我田引水を感じるのである.従って『財政再建に向けた増税をしないと,金利が上がる』と言う財務省の主張は財務省の『方便,脅迫』でしかないと感じるのである.

考えてみれば,財務省はじめ各省庁は国民の為と言いながら,『歳出拡大』をする事が仕事である.それを実現する為に,『借金拡大と増税』を画策するのである.だから,各省庁が財政健全化など言えるはずがないのである.

この『財政健全化』問題は財務省の言う『増税なくして財政健全化なし』ではなく,『経済成長なくして財政健全化なし』であり,財務省の域を超えているのである.政治思想的には『小さな政府志向』が必要なのである.ベテラン政治家の『保守やリベラルの発想』,あるいは,伝統的な『官僚政治』では,とても解決出来ない問題なのである.

【政権奪取を狙っていた自民党は】

かねてより増税を主張していた自民党は,民主党の『根拠のない社会保障改革』を国民会議に丸投げする事で机上から葬り,この法案に賛成したのである.

本来なら,民主党安の社会保障改革に問題があったのだから,この法案に反対すべきだったのだが,増税目的が曖昧になっても,この際,国民が嫌がる増税を民主党政権で決めておきたい,と考えたのだと思う.

さらに,増税を決めれば,民主党のマニュフェスト違反が確定し,民主党の分裂を誘発させ,政権奪取につながる,今後,民主党が増税に反対できなくなる,と考えたのだと思う.

まさに自民党は目的を曖昧にして増税を決めたい,『一般財源としての増税』に摩り替えたい,民主党を潰し,政権を取り戻したい,との策略で,この法案を成立させたのである.無防備な,稚拙な,民主党で起こるべくして起こった事ではあるが,自民党がすかさず,この民主党の増税法案を政局に利用したのである.

民主党も自民党も,お互いに『抱きつき作戦』を取ったのだが,結局,民主党の内部抗争や分裂で,自民党の思惑通り,増税法案が成立し,政権奪回に成功したのである.

このように,『社会保障・税一体改革法案』は民主党の『根拠のない政策』と自民党の『民主党潰しの策略』と財務省の『税収増による利権の拡大』と言う魑魅魍魎が働いて成立した法案なのである.

本来は民主党が『社会保障・税の一体改革』を争点に国民の信を問うべきだったのである.自民党も,持論をもって,これに受けて立つべきだったのである.これを思うと,こんな重大な法案が国会の魑魅魍魎で決まった事に怒りを禁じ得ないのである.

以上の経緯にあるように,

この増税法案は結局,『社会保障の為のような振り』をして,法律上は単なる『一般財源の増税法案』(使途は自由)になっているのである.

しかも,社会保障改革という目的が頓挫しているだけではなく,次の二つのどれを実現したいのかも不明なのである.これも含めて,まさに②の『何のための増税か』がきわめて曖昧なのである.

A.増税分で赤字国債発行額を減らすのか.(財政健全化の第一歩の為)
B.増税分を歳出増加の財源に充てるのか.(歳出拡大への対応の為)

多分,与党政治家は口には出さないが,本心はB.だと思う.すでに増税を当て込んで,予算獲得闘争が始まっているからである.

きっと予算編成時,『歳出要求が大きく,赤字国債発行額は減らせなかった』,『増税していなかったら,もっと赤字国債発行額が大きくなった』と言うのだと思う.

どうやら,政治家は『公金を多く使う事』が仕事だと勘違いしている.この根性を変えない限り,財政健全化など不可能である.もう手遅れかも知れないが,財政法で歳出の縛りを強くする必要がありそうである.

この政治家の習性によれば,増税を財源とした復興予算と同じように,何でもありの歳出に増税分が使わる事は確実である.社会保障の為と認識している国民からすれば,又,政治不信が募るのである.増税するとした時の平成26年度の予算編成で赤字国債発行額がどうなるのか,目が離せないのである.

【次に③の税制度の今後の在り方の問題だが】

はっきり言って,今回の法案検討の中で,税制の在り方についての言及がなかったと思う.消費税をどんどん上げて行く話しか聞こえて来ないのである.特に財界は,国際競争力強化の為に企業減税を主張し,その分,消費税増税に賛成しているのである.

又,消費税増税を言う多くの人が日本の消費税率が他国に比して低いと言う.これはまったく間違いである.広義に国民負担率を比べない以上,そんな事は言えないのである.たとえ税率が低くても,直接税を多く負担しているとか,社会保険料や公共料金を多く負担しているとか,任意加入の保険料を多く負担しているとか,がある.一つの率を取り上げて,単純に比較できないのである.

実は,消費税率の問題は『直接税(応能税)』と『間接税(応益税)』の比率に関する考え方と関係しているのである.いわゆる『直間比率』をどう考えるかである.

政府による所得再配分を行う為に税が存在するのだが,日本では,従来,『稼いで税金を納める』と言う所得や財産に応じた応能税(所得税,住民税,資産税,相続税,など)が中心であった.

一方,直接税の限界から,所得や年齢に関係なく広く,浅く,課税する応益税(特に消費税)と言う考え方がある.国民全員が負担する事から,所得の再分配と言うより,公平な住民サービスに使う財源として考えれているのである.

従って,応益税(消費税)に依存した社会は『格差が少ない,消費も控えめな,経済成長もない,社会主義的国家の税制を連想させる』のである.

又,応益税を所得配分に使う事は『富める者に課税して所得再分配をする』と言う考え方はなく,『貧富にかかわらず全員が負担し所得再分配をする』と言う考え方になるのである.はたして,この考え方で良いのか,確認が必要である.

さらに言えば,消費税は輸出に対しては還付されたり,個人輸入に対しては消費税がかからない,と言う問題も起こるのである.

応益税,応能税,どちらの考え方に立っても,課税問題は国際競争力とも関係している.税金の低い所に人,物,金が集まるからである.重税でもメリットがはっきりしていないと,国力は衰退して行くのである.

このような事を考えて,直間比率や課税額の事を国民は知る必要があると思うのである.残念ながら,税制度の検討の中に,これらの根本的問題が欠落しているように思うのである.国民は羅針盤のない船に乗せられているのである.

しかしながら,課税問題で,ひとつだけはっきりしている事がある.『課税に限界がある』事である.従って,課税問題は,次のような『総合対策と連動』して考える必要があると思うのである.

【この総合対策(④)の問題であるが】

安部総理は改めて,自民党政権として,経済成長,社会保障改革,行財政改革,財政健全化計画を踏まえた歳出計画,歳入計画,を策定し,その上で,増税を含む税制改革を国民に示すべきだと思うのである

残念ながら,これらの見通しについて,政府はじめ,各党の主張や議論がなされた経緯がないのである.現在の政治家には,これを論じる能力と意志がないのかもしれない.ただひたすら,『曖昧なまま増税したい』と思っているように見えるのである.

以上,①②③④で大きな問題点を指摘したのだが,『民主党政権の出鱈目』,『財務省の増税願望』,『自民党の政権奪取策略』で生まれた,いうなれば,手垢で汚れたこの法案は即刻,破棄すべきだと思うのである.

こんな国民不在の法案で,消費税が8%,10%になる事を国民は許してはならないと思う.是非とも,安倍政権では,『現法案を破棄』し,『骨太の政策の策定』に着手し,その間に,『経済を成長基調』に乗せて欲しいのである.

財務省の世論操作が行き届いているのか,最近のアンケートでは増税を許容している人が増えていると言う.法案の中身や将来の事など,どこまで,知った上で,許容しているのか,わからないが,どう考えても,増税は避けられないと,日本人特有の『やむを得ずの心境』になっているのかも知れない.

又,民主党政権の法案提出以来,この法案に,多大なコストと期間をかけて議論をして来た.今更,延期も,ましてや,破棄などは出来ない,その手続きも,間に合わない,また,決められない政治だと言われる,などと言って,実施すべきだと言う政治家が多い.

私見だが,増税の目的も内容も曖昧だから問題なのであって,そんな出来の悪い法案を時間をかけて作った事の方が問題であり,これ詫び,その間違いを正すべきだと思うのである.

それでも,物事が解決するなら,『やむを得ず』の判断でも良いのかも知れないが,この『やむを得ず』の判断が,先の戦争を初め,多くの問題を引き起こして来た事を忘れてはならないのである.今回の増税に,そんな『感情優先のリスク』を感じるのである.

そんなわけで,秋の国会において,安倍総理には『アベノミックスの成長戦略』に加えて,思い切って,『一体改革法案の破棄』と,『国家運営の骨太政策の策定』を宣言して欲しいのである.少なくとも,意味ある『増税の延期』を宣言して欲しいのである.

特に,2013年度年税収も,2014年度税収も,現在の景気動向からすると,税収は大きく改善されると言う.増税による税収増加を超えると言う見込みもある.こうなると,経済にマイナスになる増税をやる必要性が,しばらく,遠の区のである.この事も,判断材料にすべきだと思う.

秋の国会は,この増税問題に加えて,TPP対策,エネルギー対策,福島原発対策,震災復興対策,防災対策,歴史認識と中・韓・北鮮の外交対策,沖縄基地対策,領土・領海対策,安全保障対策,等で,夏の猛暑に引き続いて,国会も暑くなりそうである.

容赦なく重要案件が日本にのしかかっているが,『哲学と覚悟』(理と気)なくして,これを乗り越えられないと思う.是非,安倍流の哲学をしっかり腹に持って,この難局を乗り切って欲しいと思うのである.

追記(2013年9月1日)

政府が行った消費税増税問題に関するヒアリングが31日終わった.60人の有識者の大半が『増税やむなし』であったと言う.有識者の人選からみてこの結果は当然であり,増税のアリバイ作りだとの批判も上がっている.

私見によれば,ヒアリングは『賛否の数』を得るのではなく,賛成派と反対派,同じ人数で,それぞれの意見を聞く事にすべきだったと思う.そうすれば,勿論,アリバイ作り等と言う批判は上がらないし,何よりも,より良い判断材料になると思うからである.

ところで,論点は『経済への影響』ばかりで,ここで指摘したような根本的問題が生煮えである事を指摘した有識者はいなかったようである.

今更,そんな基本的な事は言えない,との空気があったのだろうか.しかし,本文でも指摘したが,『増税やむなし』と言う刹那的な意見に,どうしても納得がいかないのである.『いろいろ問題があるが』と言う認識がそこにあるからである.『条件付き賛成』も結局は条件が無視されて賛成に見られるのである.『条件が成立しなければ反対』にはならないのである

以上,重要な法案だけに,『やむを得ず』とか『条件付きで』などと言って,『賛成』してはならないのである.一つ一つの問題点が国民の生活を直撃するからである.増税の軌道修正をするなら,『今だ』と思うのである.安倍総理にはこの決断を期待したい.

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