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2013.09.18

334 いつもの『水害シーン』 を見て思う事

祝祭日の9月15日(日)から16日(月)にかけて,雨台風18号が,ゆっくり日本を縦断し,次々と各地に水害や土砂崩れを引き起こした.

テレビは,いつもそうだが,大雨が水害の原因だと言わんばかりに,降雨量や,気象状況を繰り返し報道していた.そんな報道に対し,水害の原因は必ずしも『大雨のせいだけではない』と思って見ていた.そこで,大雨以外に考えられる原因をいくつか挙げてみた.

・夏の大雨で満タンのダムが決壊する事を恐れて放流した
・町全体の遊水対策(田畑,山間部,の貯水など)がなかった.
・地下街,地下鉄,地下駐車場などに,遊水設備がなかった.
・水害や土砂崩れのリスクが高い場所の防災対策が不十分であった.

・支流や大きな河川の合流地点の水害防止対策が不十分であった.
・大雨予想に対する水害軽減対応が出来ていなかった.
・長い間に,山,ダム,川などの
治水力が弱くなっていた.

これらの事が放置されると何回でも水害が起こるのである.今回の全国の水害も,これに当てはまる事があったのではないかと思う.いくつか気になる事をコメントしたい.

『遊水対策』をもっと考えるべきである.

『遊水』とは,洪水時に,河川から水を流入させて一時的に貯留し,流量の調節を行う事を言う.その為に,遊水地として池・湖沼.あるいは,同様の目的で使う空き地・原野等が事前に設定されている.

この遊水地を設けて,洪水を防止している事は多いと思う.又,結果的に遊水地が出来て大きな洪水を防いだケースもある.たとえば,
堤防が決壊したが,それで,反対側の街が救われたケース,広大な河川敷や田畑が自然に遊水機能を発揮して,洪水を防いだケース、緊急の策として,遊水地を決め,洪水を防いだケース,等である.

そこで,改めて,『遊水地を設ける事』と『緊急時の策として遊水地を決められる制度』の検討が必要だと思う.特に後者は犠牲が伴うわけだが,多くの命や財産を救う為に,議論しておくべきテーマだと思う.

水害の原因になるダムの放流』に対策が必要である.

夏場のダムは渇水対策で水を満タンにしている.そこに大雨が降ると,ダムが決壊する恐れが発生する.そこで,放流せざるを得なくなる.この放流と大雨が重なって,洪水を起こすのである.水系にいくつかのダムがあれば,被害は大きくなる.夏場に水害が多いのは、これが関係していると思うのである.ただ,これが明るみに出る事は少ない.

ダムの放流と水害の因果関係の検証が難しい事もあるが,責任問題や賠償問題が発生するからである.今回もダムの放流があったと思うが,過去の全国の水害も含めて,因果関係について徹底解明と対処が必要だと思う.そうしないと,何回でも繰り返すことになるのである.

水系全体の治水力が弱くなっている事もあり,総点検が必要である.

長い間に,山林の荒廃,丘陵地帯の大開発,ダムや川の土砂の蓄積,コンクリートによる護岸化,など,激流が発生し安くなったり,水系全体で貯水能力が落ちている事はないか,本流から支流に逆流する事はないか,合流地点の水位が高くなって,氾濫することはないか、など気になる.専門家が常に留意している事だと思うが,長期にわたる変化であり,見逃される事が心配である.

自然景観か防災か』の議論は,もっと水系全体で考えるべきである.

京都嵐山は自然景観が素晴らしい名勝地である.水害の映像を見る限り,渡月橋は華奢な感じで,今にも崩壊する感じであったが,意外と頑丈に作られていた橋だったのである.

一方,桂川沿岸の旅館やレストランや,みやげ物店には濁流が流れ込んだ.景観重視の結果である.秋の観光シーズンの直前で大打撃である.ただ,渡月橋が倒壊しなかった事が嵐山地域にとっては,せめてもの救いであったと思う.

この『景観か防災か』の問題であるが、それを両立させる方法は、京都で言えば,桂川,鴨川,瀬田川,宇治川,木津川の上流から下流に至る,『淀川水系全体』で,冒頭の様な問題がないか見直し,対策を講じる事だと思う.それによって、自然景勝地が守れると思うのである.嵐山地域だけで『景観か防災か』の議論は『両立できない議論』をするだけである.

こんな,ささやかな取り組み例もある.

ある地域で,各家庭に1トンの雨水を溜める水槽があると言う.1000軒で1000トンの水が溜まる.言うなれば,地域で1000トンの治水・利水ダム,あるいは遊水場所を持っているようなものである.小さな事かもしれないが,これで,街の水路が溢れる事を防いだり,たまった水は防火や用水に使われるのだと言う.治水,利水の原点を見る思いである.

水害は地震等と決定的に違う災害だという事を再認識すべきである.

水害は『発生場所と発生条件』がはっきりしている災害である.その意味で,水害は『防げる,あるいは軽減できる』災害である.極端な言い方をすれば『水害リスクの高い所から移転する事も含めて,論理的には防ぐ事のできる』災害であり,その意味で,『水害は人災』なのである.

この事は,『発生した原因』の面でも、『防災』の面でも、『ハザードマップによる警報や避難』の面でも、『責任と賠償』の面,でも,『防災の見直しや改善』の面でも,地震・津波や竜巻等と全く違うのである.

日本は世界に冠たる『治水・利水国家』である.

日本国土は,背骨のように横たわる山,山の水を海まで運ぶ多くの河,その河が作るわずかな平野で出来ている.毎年,台風に見舞われる国土ではあるが,四季と言う自然の営みによる豊かで,美しい,国土でもある.

そんな自然の中で,日本は,『治水・利水事業』『土地改良事業』,あるいは,海岸部の『埋め立て事業』によって,穀倉地帯,工業地帯,を作り,道路・鉄道・新幹線・高速道路によって都市を形成してきた.

日本の国土は欧米に比べて10倍の工事費用がかかると言われている厳しい地形ばかりではあるが,日本は世界に誇れる『治水・利水・土地開拓・国家』なのである.

それでも,充分な安全が確保できているわけではないが,確実に水害を減らして来たのである.今後も,治水・利水国家としては,『予想を超える大雨が降ったから』と,済ますわけには行かないのである.

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