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2013.11.27

340 和食の保護・継承・海外進出に思うこと

米を主食にする『和食料理』は『旬な食材(魚・野菜)を使う農耕民族の料理』だが,小麦粉を主食にする『西洋料理』は『油と肉による狩猟民族の料理』である.そして,それぞれの食文化が,和風と洋風の,それぞれの生活文化と融合して存在しているのである.

日本は明治以来の『西洋文化・文明』の流入とともに,西洋料理も国内に入ってきた.そして現在、中国、韓国、フランス、イタリア、アメリカ、等の『世界の料理』が国内に溢れ,『和食』を凌駕しているのである.日本の家庭の調理器具や器の数は世界一だと言われるゆえんである.

このように,日本は『世界の文化の漂着点』と言われるように海外の『生活文化』も『食文化』も受け入れて来たのである.小麦の持つ加工性や利便性も受け入れられた理由だと思う.

このように和食文化を古典芸能のように無形文化遺産に登録しようとする程,日常生活から後退しているのだが,反面,世界は寿司や日本食のブームである.ヘルシーさが注目されているのだと思う.

とは言っても,日本の店と料理人が出て行って,営業している事が多く,まだ,日本料理(和食)が外国人の日常の料理のひとつになっているわけではないと思うのである.更なる和食の定着には,味噌,醤油あるいは昆布だしが海外の人達の口に合うのか気になるところである.

そんな日本の『和食』に対し農林省は次の取り組みをしていると言う.

①『和食の保護、継承を図りたい』,
②『和食を世界に広めたい』,
③『日本の農業を活性化したい』,

例えば、『和食の世界無形文化遺産への登録活動』,『郷土料理百選による地域活性化』,『海外調理人による和食コンテスのト開催と和食調理人の育成』,フランス,中国等への『日本産の果物,野菜,米の輸出促進』,等である.

勉強不足であるが,少し気になる事を述べてみたい.

①『和食の保護、継承を図りたい』に関して

和食文化を世界無形文化遺産に登録する事で,和食の保護、継承を図ると言うのだが,何を登録するのだろうか.又,和食と言う極めて広い文化(稲作文化に始まって,祭事,作法,器,あるいは懐石料理,祭事の料理、家庭料理,に至るまで)の何をどうするのだろうか,さっぱり見えてこないのである.

あるいは,伝統芸能,古典芸能,郷土芸能,の無形文化財のように,特定の料理を保護、継承すると言うのだろうか.そもそも、『和食』と言う料理が対象なのか『和食文化』が対象なのかも,よくわからないのである.和食の料理本を分かりやすく集大成したり,世界に向かって,和食料理人の育成をやる程度の事なのだろうか.民と官の取組も見えないのである.

ちなみに,食の『世界無形文化遺産』はフランス美食術,地中海料理,メキシコ,トルコの伝統料理,が『社会的慣習』として登録されているのだが、それによって,何か変化が起こっているのだろうか.具体的に何をしているのだろうか.こちらの方もよくわからないのである.

今のところ,農林省としては,『和食を世界無形文化遺産』に登録し,有名にする事が第一歩と考えているようである.『世界遺産登録』で和食を有名にする事が和食の保護・継承に繋がると考えているようである.そうだとしても,コンセプトが見えない取り組みは空転すると思うのである.

②『和食を世界に広めたい』に関して

和食を世界無形遺産登録をし,知名度を上げ,それによって,和食を世界で食べてもらうようにする事が,はたして良い事か,どうか,疑問を感じるのである.勿論,和食とは何を言うのかもよくわからない事もある.

マクドナルドのように寿司や丼のファーストフード店や和食レストランが世界に多く出店できればよいとイメージしているのだろうか.和食は旬な食材の地産地消をコンセプトにしているのだが,気象条件,田畑の環境条件,農業技術などで地産地消ができない場合,日本からの輸出で稼ごうという事をイメージしているのだろうか.あるいは和食や和食文化を海外の家庭に定着させたいと言うのか,よく見えないのである.

もひとつ深刻な問題がある.端的な例で言えば,もう遅いかもしれないが,12億の中国人が『刺身』の味を知ってしまう問題である.明らかに漁業資源は枯渇する.従って,中国人に和食を広げてはダメなのである.そもそも、中国人が中華料理を食べる事は環境にあっているし,生ものの多い和食は適していないのである.中国に限らず,大陸国家においては、同じことが言えるのである.

一方,日本人も,世界の料理を貪り食っているのではなく,地産地消の和食に立ち返るべきだと思うのである.

こんな事から、この『和食を世界に広めたい』は間違っていると思う.無形文化遺産登録もそうだが、コンセプトがないまま,短絡的に商業主義に走り過ぎの感じがするのである.そうなればなるほど,運動はうやむやになると思うのである.

③『日本の農業を活性化したい』に関して

『無形文化遺産に登録して,知名度を上げて,世界に和食を広め,日本の農業を活性化する』との一連の農林省の筋書きは,上記のように,すでに崩れていると思う.従って,これで日本の農業が活性化するはずもないのである.

元来,農産物は上記のように旬な農作物の地産地消だと思うし,海外に輸出するものではないと思う.たとえ、おいしい米や果物が海外から求められても,日本の農業現場からすれば大きな経済規模にはならないと思うのである.日本の農業活性化は、あくまでも国内需要を高める事が主題だと思うのである.

①②③の農林省の施策に疑問を呈してきたが,農業活性化のキーは『国内での和食の需要拡大』だと思う.その為には,『和食料理の面倒くささ』を解消する事が決め手になると思う.

例えば,欧米のように『家庭料理の惣菜を買って来る文化』を真似してもよいと思う.どうも和食の文化では食材を求めて自分で作る文化が強いと思う.惣菜は売っているが,あまり人気がない.手抜きに見えるし,うまくない事もある.スーパー等での惣菜は売れ残りの食材を惣菜にしているイメージもある.

そこで,『惣菜の市民権』と言うか,商品化と言うか,惣菜市場の育成と開拓が必要だと思う.特に惣菜は規模,資本を問わず,誰でもできる商売であり,『あの店の、あの惣菜は、安くてうまい』と言う食ビジネスを想像するのである.『商店街の活性化』にもなると思う.

一方、和食の『弁当、冷食』なども,和食の基本となる『ダシ』も,多くの種類が商品化され、きわめて便利になっているが,和食そのものの拡大には貢献するのだが,ますます惣菜やダシを家庭で作らなくなる面はある.『和食の面倒くささの解消』と考えれば、和食離れを起こすよりましだと思うのである.

さらに言えば、『学校給食』での和食の採用,食材や惣菜の『産地直送のネット販売』,高齢者への『和食の宅配』,等,需要の拡大で,農業が活性化する余地はあると思うのである.これらは政治や政策と言うより、民間の発想で進めるべきだと思うし、その方が確実だと思うのである.

そんなわけで,農林省がやる事は国内の『農業政策の改革』だと思う.日本の野菜や果物が、こんなに高く海外で売れた等と言う話はビジネスに任せておけば良いのである.農林省の施策をよそに,すでに,『和食ビジネス』は拡大方向に向かっていると思うのである.

いずれにせよ、和食を『世界無形文化遺産』に登録されると思うが,『世界的知名度』を上げる事が『和食の保護・継承』,『国内外での和食の需要拡大』,『農業の活性化』になると言う農林省の発想はすこし上滑りの感じがするのである.

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