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2013.11.27

340 和食の保護・継承・海外進出に思うこと

米を主食にする『和食料理』は『旬な食材(魚・野菜)を使う農耕民族の料理』だが,小麦粉を主食にする『西洋料理』は『油と肉による狩猟民族の料理』である.そして,それぞれの食文化が,和風と洋風の,それぞれの生活文化と融合して存在しているのである.

日本は明治以来の『西洋文化・文明』の流入とともに,西洋料理も国内に入ってきた.そして現在、中国、韓国、フランス、イタリア、アメリカ、等の『世界の料理』が国内に溢れ,『和食』を凌駕しているのである.日本の家庭の調理器具や器の数は世界一だと言われるゆえんである.

このように,日本は『世界の文化の漂着点』と言われるように海外の『生活文化』も『食文化』も受け入れて来たのである.小麦の持つ加工性や利便性も受け入れられた理由だと思う.

このように和食文化を古典芸能のように無形文化遺産に登録しようとする程,日常生活から後退しているのだが,反面,世界は寿司や日本食のブームである.ヘルシーさが注目されているのだと思う.

とは言っても,日本の店と料理人が出て行って,営業している事が多く,まだ,日本料理(和食)が外国人の日常の料理のひとつになっているわけではないと思うのである.更なる和食の定着には,味噌,醤油あるいは昆布だしが海外の人達の口に合うのか気になるところである.

そんな日本の『和食』に対し農林省は次の取り組みをしていると言う.

①『和食の保護、継承を図りたい』,
②『和食を世界に広めたい』,
③『日本の農業を活性化したい』,

例えば、『和食の世界無形文化遺産への登録活動』,『郷土料理百選による地域活性化』,『海外調理人による和食コンテスのト開催と和食調理人の育成』,フランス,中国等への『日本産の果物,野菜,米の輸出促進』,等である.

勉強不足であるが,少し気になる事を述べてみたい.

①『和食の保護、継承を図りたい』に関して

和食文化を世界無形文化遺産に登録する事で,和食の保護、継承を図ると言うのだが,何を登録するのだろうか.又,和食と言う極めて広い文化(稲作文化に始まって,祭事,作法,器,あるいは懐石料理,祭事の料理、家庭料理,に至るまで)の何をどうするのだろうか,さっぱり見えてこないのである.

あるいは,伝統芸能,古典芸能,郷土芸能,の無形文化財のように,特定の料理を保護、継承すると言うのだろうか.そもそも、『和食』と言う料理が対象なのか『和食文化』が対象なのかも,よくわからないのである.和食の料理本を分かりやすく集大成したり,世界に向かって,和食料理人の育成をやる程度の事なのだろうか.民と官の取組も見えないのである.

ちなみに,食の『世界無形文化遺産』はフランス美食術,地中海料理,メキシコ,トルコの伝統料理,が『社会的慣習』として登録されているのだが、それによって,何か変化が起こっているのだろうか.具体的に何をしているのだろうか.こちらの方もよくわからないのである.

今のところ,農林省としては,『和食を世界無形文化遺産』に登録し,有名にする事が第一歩と考えているようである.『世界遺産登録』で和食を有名にする事が和食の保護・継承に繋がると考えているようである.そうだとしても,コンセプトが見えない取り組みは空転すると思うのである.

②『和食を世界に広めたい』に関して

和食を世界無形遺産登録をし,知名度を上げ,それによって,和食を世界で食べてもらうようにする事が,はたして良い事か,どうか,疑問を感じるのである.勿論,和食とは何を言うのかもよくわからない事もある.

マクドナルドのように寿司や丼のファーストフード店や和食レストランが世界に多く出店できればよいとイメージしているのだろうか.和食は旬な食材の地産地消をコンセプトにしているのだが,気象条件,田畑の環境条件,農業技術などで地産地消ができない場合,日本からの輸出で稼ごうという事をイメージしているのだろうか.あるいは和食や和食文化を海外の家庭に定着させたいと言うのか,よく見えないのである.

もひとつ深刻な問題がある.端的な例で言えば,もう遅いかもしれないが,12億の中国人が『刺身』の味を知ってしまう問題である.明らかに漁業資源は枯渇する.従って,中国人に和食を広げてはダメなのである.そもそも、中国人が中華料理を食べる事は環境にあっているし,生ものの多い和食は適していないのである.中国に限らず,大陸国家においては、同じことが言えるのである.

一方,日本人も,世界の料理を貪り食っているのではなく,地産地消の和食に立ち返るべきだと思うのである.

こんな事から、この『和食を世界に広めたい』は間違っていると思う.無形文化遺産登録もそうだが、コンセプトがないまま,短絡的に商業主義に走り過ぎの感じがするのである.そうなればなるほど,運動はうやむやになると思うのである.

③『日本の農業を活性化したい』に関して

『無形文化遺産に登録して,知名度を上げて,世界に和食を広め,日本の農業を活性化する』との一連の農林省の筋書きは,上記のように,すでに崩れていると思う.従って,これで日本の農業が活性化するはずもないのである.

元来,農産物は上記のように旬な農作物の地産地消だと思うし,海外に輸出するものではないと思う.たとえ、おいしい米や果物が海外から求められても,日本の農業現場からすれば大きな経済規模にはならないと思うのである.日本の農業活性化は、あくまでも国内需要を高める事が主題だと思うのである.

①②③の農林省の施策に疑問を呈してきたが,農業活性化のキーは『国内での和食の需要拡大』だと思う.その為には,『和食料理の面倒くささ』を解消する事が決め手になると思う.

例えば,欧米のように『家庭料理の惣菜を買って来る文化』を真似してもよいと思う.どうも和食の文化では食材を求めて自分で作る文化が強いと思う.惣菜は売っているが,あまり人気がない.手抜きに見えるし,うまくない事もある.スーパー等での惣菜は売れ残りの食材を惣菜にしているイメージもある.

そこで,『惣菜の市民権』と言うか,商品化と言うか,惣菜市場の育成と開拓が必要だと思う.特に惣菜は規模,資本を問わず,誰でもできる商売であり,『あの店の、あの惣菜は、安くてうまい』と言う食ビジネスを想像するのである.『商店街の活性化』にもなると思う.

一方、和食の『弁当、冷食』なども,和食の基本となる『ダシ』も,多くの種類が商品化され、きわめて便利になっているが,和食そのものの拡大には貢献するのだが,ますます惣菜やダシを家庭で作らなくなる面はある.『和食の面倒くささの解消』と考えれば、和食離れを起こすよりましだと思うのである.

さらに言えば、『学校給食』での和食の採用,食材や惣菜の『産地直送のネット販売』,高齢者への『和食の宅配』,等,需要の拡大で,農業が活性化する余地はあると思うのである.これらは政治や政策と言うより、民間の発想で進めるべきだと思うし、その方が確実だと思うのである.

そんなわけで,農林省がやる事は国内の『農業政策の改革』だと思う.日本の野菜や果物が、こんなに高く海外で売れた等と言う話はビジネスに任せておけば良いのである.農林省の施策をよそに,すでに,『和食ビジネス』は拡大方向に向かっていると思うのである.

いずれにせよ、和食を『世界無形文化遺産』に登録されると思うが,『世界的知名度』を上げる事が『和食の保護・継承』,『国内外での和食の需要拡大』,『農業の活性化』になると言う農林省の発想はすこし上滑りの感じがするのである.

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2013.11.22

339 多くの『論戯テーマ』が掲載された18日の日経新聞

たまたまかも知れないが、『11月18日の日本経済新聞』は『論戯テーマ』が満載であった.順不同だが列記してみた.それぞれの記事内容に反応してみたい.

①太陽光発電の買取価格の引き下げ案が浮上
②非正規雇用の定義見直し
③NISA(少額投資非課税制度)の混乱

④グループ内取引における消費税減免要求(郵政族)
⑤規制改革の代理戦争『薬品の対面販売VSネット販売』
⑥大量退職時代の到来とシニアの起業促進
⑦EU・個人情報保護強化へ
⑧標準特許の支配的地位と独禁法
⑨衆院選1票の格差問題,20日判決
⑩私的複製に新たな補償金制度の提案(著作権保護団体)
⑪問われる『反社排除』の実効性
食品虚偽表示と法的責任

①太陽光発電の買取価格の引き下げ案が浮上

太陽光による高コストの発電が増えすぎて利用者の負担が重くなるのを抑える為に、風力、地熱に軸を移しつつ,太陽光発電の買い取り価格を下げる案が政府で浮上している.

政府の試算によると,2020年には太陽光が727万キロワットから4倍の2800万キロワッになると言う.ちなみに風力は2倍、地熱、水力は横ばいとすると,再生可能エネルギーの標準家庭の月当りの電気料金は66円から278円、国全体で年間8100億円になると言うのである.

そこで,太陽光の電力会社が買い取る価をは2013年度38円、14年度34円、15年度30円と、2割引き下げるという案が出ているのである.もしそうなれば,太陽光発電参入予定者が大幅に減る事が予想される.

一方,自民党では,今後の『エネルギー政策』について,まだ策定されていない.技術開発の見通しなど不透な事が多く,決められないのが現状のようである.

特に原発問題については、すでに多くの原発が停止中であるが,それに伴う油・ガスの輸入が年間4兆円になると言う,かと言って,再生可能エネルギーではカバーできないし、もしカバーできても、電力料金は国民、産業に、重くのしかかって来るのである.

又、原発の再稼働と停止の対立が激しさを増しているが、どちらにしても、使用済み核燃料の処分の問題、廃炉の問題が技術的問題だけではなく、莫大な費用の問題も含めて、その方策がないのである.したがって,原発を停止しても、リスクはなくならないのである.勿論、どちらになっても、現有する原発の安全対策は必須であり,停止したからと言って,安全対策費用が減るわけではないのである.

これらを,どう描き切るか,政治家も技術者も,至難の道が続く.『脱原発』と叫んでいても、何も解決しない事だけは確かなのである.

従って、最近の小泉元首相の『脱原発』、『即原発ゼロ』の発言は,それを批判される事で、世間の『原発ゼロ』の運動を封印しようとする高等戦術のような気がするのである.

②非正規雇用の定義見直し

よく話題になる『非正規雇用』の捉え方(定義や範囲)がバラバラで関連統計も各省庁合わせると40程あると言う.遅ればせながら、政府は正確な実態の把握の為に,横断的に統計を見直すと言う.

例えば総務省の調査では非正規雇用は1908万人,一方,経済センサスでは2040万人だと言う.毎月の労働統計では正規と非正規の賃金が別々に把握できていないのだと言う.これではアベノミックスの賃金上昇の目標も,実績も、信憑性が疑われるのである.又,不本意非正規と本意非正規の区別がないので、実態把握が間違う可能性もあると言うのである.さらに言えば、そもそも各省庁が統計を取っている事は海外ではあまり見られないと言うのである.

そんなわけで、遅ればせながら、雇用に中身を,雇用契約期間、労働時間、直接・間接雇用に大別し、さらにその内容別に分類すると言う.一方,雇用の分類体系が出来ても,そのデータをどうやって収集するのかと言う、新たな問題も出そうである.

ところで,賃金,失業率,求人数,求職人数,アルバイト,パート、派遣社員,契約社員,等々,労働関係の言葉の定義やそのデータの収集方法を,政治家でも,正確に言える人は余りいないと思う.定義が間違っていると言う人もいない.ただ、出てきた数値を我田引水的に使っているだけのように感じるのである.

③NISA(少額投資非課税制度)の混乱

少額投資非課税制度(NISA)は証券優遇税制の打ち切りに伴う新たな制度であり,年100万を上限に5年間非課税にする制度.政府は20年までに残高25兆円に増やす目標を掲げている.

この制度は10月1日から口座開設をはじめたが,すでに,358万件の申し込みがあると言う.ただし,『一人一口座』のルールを無視して,数十万件の重複申請があると言う.その為に,国税庁や金融機関は『名寄せ作業』と本院への確認で忙殺していると言う.特に,別々の金融機関で申請されている場合が多く,重複の洗い出しに苦労しているようである.制度開始まで2ケ月足らず,開設できない口座が多く出るかも知れないのである.それにしても,世の中に金持ちが多くいるものだと驚くのである.

この口座は4年間変更が出来ない事になっているが,毎年,投信などの魅力に応じて口座を変更できる制度が検討されている.そうなると,投資家の利便性が向上するが金融機関の口座獲得競争が激化する事になる.又,重複口座問題が再発するのである.

マイナンバー制度の利用による重複・脱税の防止が不可欠だと思う.人力による名寄せを前提にしてはダメである.

ところで,免許証,パスポート,健康保険,年金保険,税制度,等,名寄せが必ず伴うが,マイナンバー制度を前提とした行政システムの大改革が不可欠だと思うのである.日本は国民背番号制を毛嫌いして来たが,『不便な事は安全だ』,『便利な事は危険だ』という感覚はもはや卒業すべきだと思うのである.現実は感覚の逆になっていると思う.行政サービスや的確な政策を考えれば,どちらが安全かは,おのずとわかるのである.

④グループ内取引における消費税減免要求(新郵政族)

自民党の『郵政局の新たな利活用を推進する議員連盟(新郵政族)』が日本郵政の子会社間の業務委託手数料(ゆうちょ銀,かんぽ生命の日本郵便窓口業務委託の手数料など)に消費税の減免処置を求めている(現在5%負担).民間企業のグループ内取引に減免措置はなく,『特別扱いできない』と財務省は難色を示していると言う.

株式を上場して,たっぷり税金を負担してもらう事が民営化の一つの狙いなのだが,新郵政族はどうやら株式公開に反対しているようである.いつかのように,郵政を牛耳って,巨額のゆちょ銀,かんぽ生命の資金を自由に使いたいのだろうか.

⑤規制改革の代理戦争『薬品の対面販売VSネット販売』

薬のインターネット販売が規制される事になった.規制に反対してきた三木谷楽天社長は産業競争力会議の民間議員辞職を表明した.再び訴訟に持ち込む覚悟をしているからである.

まさに,三木谷社長は,改革の推進者として,政府と対決する事になる.規制改革会議も薬のネット販売の全面的解禁を発信している.安倍政権は6月,全面解禁を言っていた事もあって,『規制改革に及び腰』との印象を海外や市場に与えかねないのである.

安倍政権は参院選に勝った事から,『改革を求める勢力』と『既得権を守ろうとする勢力』を天秤にかけ,『改革に軸足を移すのはまだ早い』としたのかもしれない.

今後,改革の問題は薬のみに止まらない.このまま,改革に弱腰な態度を見せれば,産業界のみならず内外で高まっていた改革への期待が落胆にかわる.と報じている.

政治家はじめ一般大衆は『改革には抵抗を示す』ものである.『便利なものは不平等で危険だ』,『不便なものは公平で安全だ』と言う暗黙値があるからである.しかし,歴史が示すように,この暗黙値は徐々にきえていくのである.薬の販売も同じである.

私見で言えば,ネットであろうと,対面であろうと,購買者が選べば良いのである.販売する方も,自分の考えで,対面かネットか,あるいは両方かを選べばよいのである.

しかし,ネット反対派は『ネット販売は危険だ』と言う.しかし,その理由は成り立たない.ネットの方が安全な場合もある.同時にネット反対派は『対面は安全だ』と言うが,その理由もない.

この薬の問題は次に,処方薬の議論に移る.改革派はこんなシステムを描いているようである.

医者の支持で処方薬が患者の望む薬局にメールされる.患者は薬局で薬を受け取る事になるが,自宅に直送も可能になる.又,医者の指示で,次の来院ナシで,同じ薬の送付が可能になる.これによって,患者の利便性が高まり,来院患者数も医療費も少なくなる.
さて,どうするのだろうか.改革派と保守派の第2ラウンドが始まる.

これらの薬の問題の根底に,安全性以外に,利権と薬価の問題がある.保守派にとっては,ネット販売は薬局の存続にかかわる問題になり,薬価は市販薬の価格破壊を招く事になるのである.しかし,保守派は本音で思っていても,この理由でネット販売に反対できない苦しさがある.改革に伴う影の部分である.

⑥大量退職時代の到来とシニアの起業促進

団塊の世代の大量退職などを受けてシニア層による起業が今後増えそうだ.安倍政権は開業率を現在の倍の10%と欧米並みに引き上げる目標を掲げる.

総務省の推計によれば日本の人口の4割弱が4900万人であり,55歳以上だと言う.日本政策金融公庫の開業白書によれば,開業時,55歳以上の割合は2012年度で12%だと言う.90年代は5%前後だと言うのだから,起業を目指す人が年金問題もあって,さらに増えて行く可能性があると言える.

この傾向の中で,起業支援サービス,共同利用がtらオフィス,起業家交流会,などが増えていると言う.

私見で言えば,起業は個人の環境によって違うと思うが,共通する事は,現役時代のノーハウや人脈を利用する事,大きな仕入れや投資が伴わない事,を条件にすべきだと思う.出来たらボライティアの心意気が必要だと思うのである.又,いきなり会社を興す事は避けた方が良いと思う.会社登録は売上が増えてからでも,遅くはないのである.

⑦EU・個人情報保護強化へ

欧州連合(EC)は個人情報保護を強化する姿勢を一段と強めている.主な強化内容は次のようである.

・罰則の強化
(100万ユーロ,又は全売上の2%,から1億ユーロ,又は全売上の5%へ)
・データの域外移転制限
(EUの水準にない第三国へは制限,から域内の保護機関の認証を受けた企業へは移転を認める)
・忘れられる権利
(削減の要求が通るか不透明,から消去の権利を明記
・個人を特定できないデータの利用
(匿名化情報の中身の定義が必要だが,利用が簡素化される方向)

成立の行方は不透明な点が多いが,2015年目度に実施する事で合意されていると言う.

⑧標準特許の支配的地位と独禁法

中国の通信機器大手(華為技術・ファーウエー)が米国の無線技術開発会社(インターデジタル)を支配的地位の乱用(他社より高額な特許使用料の請求)による独禁法違反を訴えた.中国高裁はそれを認め,3億円の賠償をインターデジタルに命じた.と報じている.

特許を持つ方,利用する方,それぞれに,感想を持つだろうが,そもそも,『特許権』と『独禁法』の相反するコンセプトをどう考えるのか,『支配的地位の乱用』とはどの程度の事を指して言うのか,『国家間の判断の差異』をどう考えるのか,等,整理が付かないのである.

⑨衆院選1票の格差問題,20日判決

議員一人当たりの有権者数が選挙区によって異なる事で発生する有権者の一票の重みの不平等が,投票価値平等に反するとして,永年,裁判が行われて来た.

裁判所は投票価値に著しい不平等があれば,区割りを『違憲状態』とし,合理的な是正期間を過ぎていると認められる場合は『選挙は違憲(無効))』と判断してきた.

しかし,それらの基準が示されているわけではない.過去に衆院2倍以内,参院は5倍以内が目安とされた時期もあった.

小選挙区比例代表並立制になった1996年以降の衆院選で最高裁は最大2.3倍の2009年衆院選を『違憲状態』と判断した.

2.43倍だった12年12月の衆院選に対し16件の訴訟が起こっていたるが,11月20日,最高裁は『区割りは違憲状態』,ただし,『0増5減』の改定があり,一定の前進として『選挙無効請求は退けた』のである.

一方,定数が少なく,半数解散の制約などから,一票の格差の是正が難しい参院は5.0倍の12010年の参院選を『違憲状態』としているが,4,77倍だった2013年の参院選に対しては,来夏,最高裁判決がでる.

当ブログで各国の制度を紹介しているが,ちなみに,米国の下院は完全に投票価値の平等を堅持しているが,上院は有権者数に無関係に各州3議席の割り当てをしている事から,最大66倍の格差を容認していると言う.

日本の場合,本質的には,投票価値均等の区割りにするか(選挙区を行政単位の枠を超えて設定するか,あるいは,最小有権者選挙区に合わせて各地の議席数を設定するか,あるいは全国区だけにするか),それとも,人口とは無関係に地域代表者を国会議員にする制度を作るか,に集約されると思う.いづれにせよ,司法の大きな裁量にゆだねられた民主主義制度は好ましくないと思う.

当ブログでたびたび発信しているが,日本はいまだに、憲法条文の単純なミス(ほとんどが英語原文のミス)さえも直す方法がなく、当然、現憲法の改定の経験もなく、民主主義の土台になる選挙制度も,司法の裁量しだいになっている、のだから、どう見ても民主主義国家とは言えないのである.何か日本に『プリンシプル』が欠けている感じがしてならないのである.

⑩私的複製に新たな補償金制度の提案(著作権保護団体)

著作権保護運動を推進する85団体は私的録音録画補償金制度の刷新を提言した.政令で指定された機器に1%の補償金を課すというものだが,近年機能不全に陥っていると言う.その理由は最高裁判決でコピー回数を制限(ダビング10)すれば課金の対象にならないとしたからである.結果,課金は23億円からゼロになったのである.

そこで,政令を廃止し,全ての複製可能機器やサービスの提供者に支払いを要求すると提案したのである.最高裁の判断を避ける方法のようである.近く,文化庁で議論が始まると言うのである.

しかし,私的複製権は認められているのに,どうして提供者に補償金を要求できる事になるのかも不明.やるとしてもその実効性も見えないのある.

⑪問われる『反社排除』の実効性

金融システム安定化第一弾として金融庁は反社会的勢力との取引などに焦点を絞ると言う.同時テロ発生以来,反社会的勢力への対応強化を進めている米国からの要請もあると言う.

現在,日本では暴力団との契約排除を義務付けているのは都道府県条例であるが,金融機関ではデーター整備や取引解消努力が不十分だとされている.メガバンクの『みずほ銀行』も,この問題が発覚し,大きな問題になっている.との記事である.しかしこの記事に次のような掘り下げが不足していると思う.

みずほ銀行の問題は,総額2億円になるそうだが,ほとんどが,リース会社経由の車のローンだと言う.一部報道によると,反社と認定されれば一括返済を要求できるのだが,その認定が出来ないのだと言う.警察に問い合わせても,返事が帰ってこないと言う.そんなことから,現場では取引が解消されないと言うのである.外から見ると銀行の怠慢,放置に見えるが,これが実情だと言うのである.

多分,金融庁も,警察も,上げた手を下ろせない状況にあると思うのである.

一方,損害保険業界は自動車保険等の損保で反社の排除を強化すると言う.反社のデータベースで一件づつ,全件チェックをすると言う.従来,契約時のチェックは代理店に任せ,保険金支払い時は不正請求が無いかを確認していたと言う.契約時に厳格にチェックしないのは被害者の賠償が払えなくなるケースを避けたいからと言う.今度は全件チェックで反社を排除しつつ,被害者を救済する方法を考えると言うのである.

ここでも,認定の意問題や過去の契約の自動継続の問題もある.現場では、言うほど簡単ではないはずである.

一般企業にも反社との取引排除を義務付けているが,条例レベルの法令である事,上記のように反社の認定が難しい事,電気,ガス,水道,住宅,子供の教育などの生活に必要な取引は除外されている事,反社の認定が裁判沙汰になっている事も聞く.そんなわけで,声高に『反社排除』と言うものの,はたして現場で,実効性がともなうのか,十分な検討が必要なのである.

⑫食品虚偽表示と法的責任

食品虚偽表示の法的責任について,整理されていたので,ここに,そのダイジェストを掲載しておきたい.虚偽表示に関係する主な法律は下記である.

・景品表示法の優良誤認
・日本農林規格(JAS)法の品質表示基準
・不正競争防止法の誤認を引き起こす行為
・刑法の詐欺
・民法の契約責任の不完全履行
・消費者契約法の重要事項の不実告知
・会社法の取締役の善管注意義務,内部統制構築義務

一般的に,消費者の合理的選択を阻害する事から,故意・過失に関係なく,景品表示法違反に該当(罰則は行政処分,課徴金はなし).ただし,表示に使う用語が明確に定義されていない場合や,どの程度,優位誤認に影響を与えているのか,等があり,ケースバイケースになる.尚,騙してもうけようとの意志があって販売していれば,刑法の詐欺(ただし個人)が問われる事もあり得る.

民事上の責任は,食べてしまっているので,正しい履行を迫っても実質無理.経営判断で解決金で対応するしかない.ただし虚偽表示で損害が生じていれば,損害賠償請求もあり得る.

信用失墜で業績悪化については,善管注意義務違反で株主代表訴訟になる場合もあり得る.又,内部統制構築義務違反に問われる可能性もある.

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2013.11.16

338  偽の時代

『虚偽』(キョギ)とは『真実ではないのに,真実のように見せかける事.嘘,偽り』と言う意味である.これをやれば『詐欺行為』となり,刑法の対象になる.一方,『偽りは虚しい』と言う意味もある.『やってはいけない行為』として戒めているのである.

『偽装』(ギソウ)とは『ある事実をおおい隠すために,他の物事・状況を装う事』と言う意味である.厳密に言えば,『虚偽行為』の一歩手前の『装う行為』と理解するか,『偽って装う』のだから,すでに『虚偽行為』だと理解するか,分かれるところである.

辞書をひいても,『虚偽』と『偽装』を区別することは難しい.語源でも調べれば,違いがあるのかもしれない.ただ何となく,『料理の偽装』と言うが『料理の虚偽』とは言わないように、『偽装』の方が多く使われているようである.『装う』の方がイメージに合うからだと思う.

思い返せば,『偽』は,いつの世にも存在する.

政党助成金や権力欲優先の『野合政党』,企業の苦し紛れの『粉飾決算』,儲け話で金を取る『詐欺商法』,法律や検査を潜り抜けた『耐震強度の偽装』,必要性があるとした『無駄な公共事業』,官僚の保身と裁量権を守る『霞が関文学』,客観報道のふりをして世論誘導する『マスコミ報道』,事実より演出を優先する『テレビのやらせ番組』,なりすましの『振込み詐欺』や『ネット犯罪』,そして,どこでもやっていた『食品・料理の偽装』,等,あげたら切りがないのである.

宣伝にも『偽装』が横行している.その手法の一つが,『宣伝と思われないように宣伝をする』,いわゆる『ステルスマーケテング』と言う手法である.宣伝より信頼感や訴求力があるとして,日本では最近,テレビ,ラジオ,ネット,を使った『通販』やブログ,ツイッターを使った『口コミ』,等で,この手法が多く採用されているのである.

例えば,テレビの宣伝や通販の中で,一般人や有名人に『個人の感想です』と但し書きをつけて,商品の良さを言わせたり,企業紹介番組や人生ドラマで商品が紹介されたり,するのである.特にラジオは番組の中で,司会者が堂々と通販の商品をヨイショしているのである.又,ブログやツイッターで,お店や商品をヨイショしている事はよくあるのである.

裏で,宣伝料や台詞などの約束をして,上記のような事をやっていれば,完全な『ヤラセ』『サクラ』であり,『宣伝の偽装』である.もし,言っている内容に,『優位誤認を誘発』したと認定されれば,景品表示法違反,不当競争防止法違反,になる.商品が実際と違えば,売れた段階で『詐欺』が成立するのである.

実際に,金品をもらっている事を隠して,ブログで感想を発信していた芸能人がいた.その商品の使用経験もないまま,『小遣い稼ぎ』程度の認識で引き受けたと言うのである.発覚後,その芸能人は仕事に大きなダメージを受けたと言う.

企業は,『クチコミで流布』させたり,『個人の感想です』と言わせておけば,『責任を回避できる』と思っているのだろうか.この『ヤラセ』を仕掛ける事に罪悪感はないのだろうか,バレないとか,効果の大きさで,罪悪感が吹っ飛んでしまっているのだろうか.何か,『料理の偽装』のように『常識がマヒ』しているように感じるのである.

ヨーロッパでは,『ヤラセ』『サクラ』の『偽装宣伝』,いわゆる,『ステルスマーケテング』は禁止されている.アメリカでは,部外者が商品紹介や感想を言う場合,『企業からの依頼や金品授受の有無』を明示する事になっている.『ヤラセ』『サクラ』ではない事の証明の為である.情報誌に載る,旅行,グルメ,あるいは企業,商品,等の取材記事も同じである.

欧米はこのように『偽り』から消費者を守る事にシビアである.『騙すヤツ』が多いからかも知れない.逆に日本では,『騙すヤツ』が少ないと思っているのか,このステルスマーケテングに限らず,『違法性の意識』や『法による消費者保護』には寛容である.

『激しい競争社会』に生きている中で,日本が『信頼で成り立っている国だ』,『偽は虚しく』,『偽は成長をむしばみ』,『偽は社会から淘汰される』等と達観しているだけでは,『競争のルールが曖昧』になったり,『アンフェアーな事が横行』したり,結果的に『偽りの温床』になってしまうのである.

『競争は悪だ』と叫ぶ事より,積極的に『健全な競争社会』,『ルールによるフェアー・フリーな競争社会』を目指すべきだと思うのである.勿論,そのルールは健全な競争を阻むものであってはならないし,参入障壁になるルールも避けなければならないのである.同時に,『偽りが蔓延している社会』からも脱皮する必要がある.その為に,TPPでも議論されると思うが,『国際基準作りの視点』も必要だと思うのである.

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