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2014.03.23

349 東京オリンピックと『おもてなし』

歓喜の東京オリンピック決定から,早7か月,オリンピックまであと6年となった.あの歓喜が,ずっと以前の出来事のように感じる.都知事選やソチの冬季オリンピックあったせいだろうか.

そんな折,ふと,準備が進んでいるのだろうか,招致プレゼンで言った事と実際に差異が発生していないだろうか,等が頭をかすめるのである.

ここで,東京オリンピック招致の最後のプレゼンを思い出しておきたい.

昨年9月7日,ブエノスアイレスで20年夏季オリンピックの開催地を決める最終の『IOC総会』が開催された.ここで、マドリード、イスタンブール、東京、がオリンピックの招致に向けて、最後のプレゼン合戦が行われた.

東京招致のプレゼンで、最後に登場した滝川クリステルさんは,流暢なフランス語で感情をこめて,東京招致を決定づけるスピーチを披露したのである.

『東京は皆様をユニークにお迎えします』
『日本語では,それを「おもてなし」と言う一言で表現できます』
それは日本人が大切にしてきた『慈しみ,気遣う精神です』

『この日本文化が近代的な未来都市の景観に組込まれています』
『全ての来場者に生涯忘れ得ぬ思いでをお約束します.』

と,具体例を交えてスピーチしたのである.勿論、このスピーチが決め手となったとは言うものの,日本のスピーチ全体に渡って、好感を持たれた上での決め手であったと思うのである.

特に,プレゼンに先立って,日本を代表して、高円妃久子様が震災復興支援への感謝と皇室とスポーツの深いかかわりを,ご披露された事がIOC委員にのみならず,世界に深い感銘を与えたと思うのである.

凛とした口調と圧倒する「オーラ」でフランス語と英語を交えた久子様のスピーチで始まって、最後を滝川さんのフランス語による『おもてなし』のスピーチで締めくくった事は、『国際感覚の中に日本文化を見事に織り交ぜた見事なプレゼン』だったと、今更ながら思うのである.そして,IOC会長が『TOKYO』と宣言した時,怒涛のように歓喜の渦が湧き上がったのである.

さて、世界を魅了した『おもてなしの精神』について、改めて、考えてみたい.

『おもてなしの精神』は『慈しみ,気遣う精神』である.その精神は礼儀作法の文化として定着し,有形,無形を問わず,あらゆる人間の行動に,にじみ出るのである.

この精神は他国語で言えば、servitors(ラテン語の奴隷)から派生したserviceではなく,hosupitalityの精神である.従って,指示されたものではなく,義務ではなく,自発的な無償の行為なのである.言うなれば、『人との交わりを豊かにする潤滑油』 なのである.

このような精神文化は長い歴史を経て、日本に宿ったと思うが、少しずつ、この精神が薄れて来たり、合理性を尊重する国においては違和感がある事も事実である.

その理由は『経済的合理性の意識』,『対等・平等の意識』,『フレンドリィの意識』からすると違和感があったりするからである.『わずらわしい』,『息苦しい』感覚もあるかもしれないのである.

しかし,『困っている時の気遣い』や『思いもよらない気遣い』に違和感を覚える人はいないと思う.むしろ、感動するのである.『おもてなし』の真骨頂は、ここにあると思う.その根底に、互助の精神、和の精神があると思うのである.

勿論,その気遣いは、大げさなものではなく、『ちょっとした気遣い』に,その精神が宿るのである.まさに『神が細部に宿る』の如くである.

さて、東京招致が決まって,早7か月,東京オリンピックの構想が,着々と進んでいるのだろうか.『おもてなし』が『生涯忘れ得ぬ思いで』になるのだうか.心配が頭をよぎるのである.

『日本の文化』だから、『大きな国際的イベント』に慣れているから、とりわけ何もしなくても、『おもてなしの精神』がにじみ出て来ると、楽観して良いのだろうか.しかし、『期待を超えた気遣い』が必要なだけに、このままでは心配である.

そこで、思い出されるのはデズニーランドの『楽しい思い出作り』と言うコンセプトである.このコンセプトのもとで,従事者の一人一人が『期待を超える気遣い』を常に心がけ,臨機応変に,来場者の『楽しい思い出作り』の手助けをしているのである.

従って,このコンセプトは事業方針であり,同時に,現場の自発的な対応を促す為の指針なのである.単なる標語ではないのである.このコンセプトの実現に当たって,マニュアルはないと言う.もしマニュアルを作ったら現場で義務感が強くなり,自発性がなくなるからである.もっとも,あらゆるシーンを想定したマニュアルなど出来るはずがないのである.

このコンセプトのもと,デズニーランド全体をステージに見立て,来園者や催し参加者を『ゲスト』(お客様)と呼び,ステージで働いている人を『キャスト』(役者)と呼んで,この思い出りを進めているのである.このキャストはゲストを案内をしたり,質問に答えたり,迷子の対応をしたり,救護のお世話をしたり,更には園内をいつも清潔にしておく為に,掃除もしているのである.

こんな話を聞いた事がある.若い夫婦がレストランで,お子様ランチを頼んだと言う.病気で亡くなった子供がこのお子様ランチが好きだったと言うのである.それを聞いたウエイトレスは子供用の椅子を,そっと,お二人の間に用意したのである.夫婦は楽しかったデズニーでの思い出のなかに,子供の笑顔を見た事は言うまでもない.コンセプトが細部に宿った瞬間である.

この様に,デズニーのキャラクターや催しの人気に加えて,『おもてなしの精神』がリピーターを増やしていると思うのである.

デズニーランドを見るにつけ,東京オリンピックも,来場者,世界の観戦者,選手の『感動と楽しい思い出作りの場』になって欲しいと思うのだが,それを支える『おもてなし』が日本の専売特許だと思ったら大間違いかも知れないのである.

そこで,『東京オリンピックの構想』を振り返ってみたい.そのコンセプトは『Discover Tomorrow 未来(あした)をつかもう』である.このコンセプトの下で,

・成熟都市でのオリンピック開催意義を示す
・質の高い綿密な計画と安全な大会の開催
・大都市東京の中心で行うダイナミックナ祭典

を掲げ、具体的な構想を示しているのである.

しかし、これは、招致決定前の構想であり、『競合国との差別化』を意識して『実現性を前面に出した構想』の様に感じるのである.言い換えると、招致合戦に勝つ為の構想だったと思うのである.

招致が決まった今としては,正直,違和感がある.『未来をつかもう』と言う主題があまりにもつかみどころがない感じがするのである.デズニーのコンセプトの観点でいえば、『未来をつかもう』は,先ず主語が曖昧である.『勝手に未来をつかんでください』とも取れるのである.『未来につながるような大会にしたい』としても,具体的なイメージや行動が連想しづらいのである.当然,これでは,自発的な臨機応変な行動は望めないのである.

又,上記三つの方針も、実現性を訴える為に、ハードが中心になっていると思うのである.勿論、ハードの構想は費用などを考えれば、きわめて重要な構想である.しかし,それで、何を実現したいのか、がどうしても弱いのである.従って、準備に係わる人、大会の運営に係わる人,からすれば、もう一つ,目標や行動指針が見えないのである.

余談だが,企業で,よく『顧客満足度向上』と言うスローガンを見かけるが,果たして,この言葉から行動が連想できるだろうか.概念が広すぎて,なんとなくボヤーとしているのである.そこで,『顧客貢献度向上』という言い方に変えた経験がある.

この言葉の方が,貢献できているのか,それぞれの顧客へ提案をしているのか,製品に何が必要なのか,等,次から次へと,連想できるのである.勿論,これを事業方針にしたのは当然である.

そこで、こんな東京オリンピックのコンセプト(実現目標)を考えてみた.

東京オリンピックを通じて,『感動を未来に』を目標にし,『快適性・利便性の感動』、『バーチャル観戦の感動』,『クールジャパンの感動』の三つの感動を目指したらどうだろうか.勿論,その感動は『おもてなし』という潤滑油で『期待を超えた感動』にしたいのである.

このコンセプトで,設備,運営,ITなどのすべての分野で,未来につながる感動を考えて欲しいのである.とにかく、開催地全体をデズニーランドのステージにしたい気分なのである.

少し頭の体操的に、勝手に思いをめぐらしたが、すでに発表している構想を変えられないのであれば、発表済みの構想で実現する目標と位置づけたらどうだろうか.いづれにせよ、あまりにも素晴らしいプレゼンだっただけに、これを裏切るような大会にはしたくないのである.7か月たった今、ふとそんな事が頭をよぎったのである.

追記 『おもてなし』雑感

世界的にみると、『おもてなし』は日本の専売特許ではない.大きく分けて、①『お客様としての気遣い』と②『お客様としない気遣い』がある.

①は、お客様として特別の気遣いをする事である.その目に見える『特別な気遣い』が最高のおもてなしになると考えるのである.農耕民族に多い対応だと思う.勿論、何気ない対応もあるが,相手がお客様であるとの意識はある.

②は、特別、何かをするではなく、自分達と分け隔てなく、フレンドリーに対応する事が最高のおもてなしだと考えるのである.狩猟民族に多い対応だと思う.相手に,よそよそしく、他人行儀で、堅苦しく,感じさせないのである.

さて、日本は明らかに①の文化である.しかし,オリンピックでの国民の『おもてなし』は、②ができたら最高だと思うのである.

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